3 / 3
国防大臣
しおりを挟む 声がした方を振り返ると、そこには茶色の髪を刈り上げ、無精ひげを生やして眼鏡をかけている武骨そうな男が立っていた。千景は男の姿を目で捉えた瞬間に、身構えた。透明状態を維持しているのに、男にはこちらの姿が見えている。
「そんな怖い顔をしなくてもいいぞ少年、少なくとも今は味方だ」
――今は? 引っかかる物言いをする
「そんな目で睨むなよ、あいつにきつい一撃を食らわせたのをお前も見ていただろ、少年?」男が手に持っている巨大な黒い十字架に、円形の突起物がついたもので、賢石を指しながら言った。千景は男への警戒を解くことなく「ああ、見ていた。ただ俺は少年なんて言われる年じゃない」と返した。
「そうかい、大分若く見えるな、まあ考えてみればそりゃそうか、あれだけ強いんだから、年もそれ相応にいってるか」
「お前は何者だ?」
「いきなり本題かい、初対面同士もっと会話を楽しもうぜ」
「俺は正体を知らないやつと会話をしない、せめて名前を名乗ったらどうだ?」
「そうかあ……まあ隠したところで、お前にはいつかバレるだろうし先に言っておくか、俺の名前はザックフォードだ、よろしくな」ザックフォードはそういうと同時に、白い手袋をした手で握手を求めてきた。千景は、その手を握るのを躊躇した。
「用心深いのもいいことだが、俺はなにもしねえよ」と言ってザックフォードは千景の手をひったくるように握って、無理やり握手をした。
「な? なにもないだろってことでよろしくな、えっと……じゃあ次はお前の名前がなんなのか教える番だな」
名前を教える番とか……ザックフォードに会話のペースを握られているように感じたが千景は、素直に自分の名前を名乗った。こんなところにいるんだこちらのことも少なからず知っているだろう。
「千景か、そうか……千景か……」ザックフォードは、口の中で名前の感触を確かめているようであった。そして「千景はノブナガという名前のやつを知らないか?」ザックフォードは唐突に思いもかけない名前を口にした。
「知っている」
「そうか、それは千景の味方だったのか? それとも敵だったのか?」
――歴史上の信長の事をいっているのなら敵も味方もない、俺は知らない。ゲーム内のノブナガなら明らかな敵。ただそれ以外にもノブナガなんていう名前はわりと多い気がする、漫画やドラマにも大量にでてくるし……
「ザックフォードが言うノブナガがどういうものかわからないから答えられないな」千景は思っていることを口に出した。
「そうか……なんていったらいいのかヴィネリアみたいに巨大な力を持ったやつとでもいったらいいのかそういう化物みたいなやつだと思うんだが」
「ああそれなら、敵だ、間違いなく」
「そ、そうか、なるほどな……」
「ノブナガがどうしたんだ? 何か関係があるのか?」
「いや……」ザックフォードは口ごもり、次に話すことを選んでいるようであった。そして「ちょっとな、こちらの事情ってやつだ」と歯切れが悪く続けた。
そんなザックフォードの態度を見ると千景もあまり自分達のことを話す気にはなれなかった。ヴィネリアと共闘したことは確かだが、それだけで信頼するにはあまりにも、材料が少なすぎる。千景がザックフォードに対して知っている事実は、ヴィネリアに重い一撃を与えることが出来た。ただそれだけだった。
「そんな怖い顔をしなくてもいいぞ少年、少なくとも今は味方だ」
――今は? 引っかかる物言いをする
「そんな目で睨むなよ、あいつにきつい一撃を食らわせたのをお前も見ていただろ、少年?」男が手に持っている巨大な黒い十字架に、円形の突起物がついたもので、賢石を指しながら言った。千景は男への警戒を解くことなく「ああ、見ていた。ただ俺は少年なんて言われる年じゃない」と返した。
「そうかい、大分若く見えるな、まあ考えてみればそりゃそうか、あれだけ強いんだから、年もそれ相応にいってるか」
「お前は何者だ?」
「いきなり本題かい、初対面同士もっと会話を楽しもうぜ」
「俺は正体を知らないやつと会話をしない、せめて名前を名乗ったらどうだ?」
「そうかあ……まあ隠したところで、お前にはいつかバレるだろうし先に言っておくか、俺の名前はザックフォードだ、よろしくな」ザックフォードはそういうと同時に、白い手袋をした手で握手を求めてきた。千景は、その手を握るのを躊躇した。
「用心深いのもいいことだが、俺はなにもしねえよ」と言ってザックフォードは千景の手をひったくるように握って、無理やり握手をした。
「な? なにもないだろってことでよろしくな、えっと……じゃあ次はお前の名前がなんなのか教える番だな」
名前を教える番とか……ザックフォードに会話のペースを握られているように感じたが千景は、素直に自分の名前を名乗った。こんなところにいるんだこちらのことも少なからず知っているだろう。
「千景か、そうか……千景か……」ザックフォードは、口の中で名前の感触を確かめているようであった。そして「千景はノブナガという名前のやつを知らないか?」ザックフォードは唐突に思いもかけない名前を口にした。
「知っている」
「そうか、それは千景の味方だったのか? それとも敵だったのか?」
――歴史上の信長の事をいっているのなら敵も味方もない、俺は知らない。ゲーム内のノブナガなら明らかな敵。ただそれ以外にもノブナガなんていう名前はわりと多い気がする、漫画やドラマにも大量にでてくるし……
「ザックフォードが言うノブナガがどういうものかわからないから答えられないな」千景は思っていることを口に出した。
「そうか……なんていったらいいのかヴィネリアみたいに巨大な力を持ったやつとでもいったらいいのかそういう化物みたいなやつだと思うんだが」
「ああそれなら、敵だ、間違いなく」
「そ、そうか、なるほどな……」
「ノブナガがどうしたんだ? 何か関係があるのか?」
「いや……」ザックフォードは口ごもり、次に話すことを選んでいるようであった。そして「ちょっとな、こちらの事情ってやつだ」と歯切れが悪く続けた。
そんなザックフォードの態度を見ると千景もあまり自分達のことを話す気にはなれなかった。ヴィネリアと共闘したことは確かだが、それだけで信頼するにはあまりにも、材料が少なすぎる。千景がザックフォードに対して知っている事実は、ヴィネリアに重い一撃を与えることが出来た。ただそれだけだった。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
奇怪未解世界
五月 病
ホラー
突如大勢の人間が消えるという事件が起きた。
学内にいた人間の中で唯一生存した女子高生そよぎは自身に降りかかる怪異を退け、消えた友人たちを取り戻すために「怪人アンサー」に助けを求める。
奇妙な契約関係になった怪人アンサーとそよぎは学校の人間が消えた理由を見つけ出すため夕刻から深夜にかけて調査を進めていく。
その過程で様々な怪異に遭遇していくことになっていくが……。
『霧原村』~少女達の遊戯が幽から土地に纏わる怪異を起こす~転校生渉の怪異事変~
潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。
渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。
《主人公は和也(語り部)となります。ライトノベルズ風のホラー物語です》

リューズ
宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。

スクリーム・ノート
藤沢凪
ホラー
少し変態の主人公猫宮イチカ。
保守的で自分の立ち位置の為なら平気で人を陥れる犬養琴子。
蛇喰商店街の主、小鳥優子。
中二病になりきれない兎咲美穂。
催眠術師の十六文字羊子。
女神と呼ばれている猫宮の憧れる三上恵理奈。
天使と呼ばれている犬養と兎咲が想いを寄せる天羽祐羽。
個性的な面々がすれ違いながら青春を台無しにしていく学園ホラー。
闇に蠢く
野村勇輔(ノムラユーリ)
ホラー
関わると行方不明になると噂される喪服の女(少女)に関わってしまった相原奈央と相原響紀。
響紀は女の手にかかり、命を落とす。
さらに奈央も狙われて……
イラスト:ミコトカエ(@takoharamint)様
※無断転載等不可
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる