6 / 8
聞いてみるならば
しおりを挟む
仕事から帰宅した稔に食事を振る舞い、焼酎を注ぎながらいつ良美の話を聞こうかとタイミングを伺っていた。
稔はいつも決まった焼酎の量しか飲まない。
そして必ず21時になると床につく。
もうすぐその21時がやってくる。
聞くならばいまだ。
「稔さん、ちょっといいかしら」稔は少しだけ頬を赤らめて、いつもと変わらぬ優しい眼差しでこちらを見た。
いまだにこの表情に弱く、目を背けてしまう。
良美は頬に涙の走った跡を残して寝息を立てている。
「百合ちゃんに聞いたんだけれど、良美ちゃんを弟さん夫婦に養女として引き渡すというのは本当なんですか」
ボーンボーンと柱時計が大きな音を立て、一瞬心臓が飛び出そうになった。
いつもなら心地良い低音の時計も、このときばかりは荒々しく聞こえる。
稔さんに声は届いたかしら、と不安そうに稔の顔を見ると、いままでに見たことのない表情をしている。
怒らせてしまったかしら、どう思ったのかしら、怖い。
でも、仮にも私は三人の母であってこの人の夫だ。
この件について私も聞く権利があるはずだ。
稔はいつも決まった焼酎の量しか飲まない。
そして必ず21時になると床につく。
もうすぐその21時がやってくる。
聞くならばいまだ。
「稔さん、ちょっといいかしら」稔は少しだけ頬を赤らめて、いつもと変わらぬ優しい眼差しでこちらを見た。
いまだにこの表情に弱く、目を背けてしまう。
良美は頬に涙の走った跡を残して寝息を立てている。
「百合ちゃんに聞いたんだけれど、良美ちゃんを弟さん夫婦に養女として引き渡すというのは本当なんですか」
ボーンボーンと柱時計が大きな音を立て、一瞬心臓が飛び出そうになった。
いつもなら心地良い低音の時計も、このときばかりは荒々しく聞こえる。
稔さんに声は届いたかしら、と不安そうに稔の顔を見ると、いままでに見たことのない表情をしている。
怒らせてしまったかしら、どう思ったのかしら、怖い。
でも、仮にも私は三人の母であってこの人の夫だ。
この件について私も聞く権利があるはずだ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ダブルの謎
KT
ミステリー
舞台は、港町横浜。ある1人の男が水死した状態で見つかった。しかし、その水死したはずの男を捜査1課刑事の正行は、目撃してしまう。ついに事件は誰も予想がつかない状況に発展していく。真犯人は一体誰で、何のために、、 読み出したら止まらない、迫力満点短編ミステリー
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【朗読の部屋】from 凛音
キルト
ミステリー
凛音の部屋へようこそ♪
眠れない貴方の為に毎晩、ちょっとした話を朗読するよ。
クスッやドキッを貴方へ。
youtubeにてフルボイス版も公開中です♪
https://www.youtube.com/watch?v=mtY1fq0sPDY&list=PLcNss9P7EyCSKS4-UdS-um1mSk1IJRLQ3
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

終焉の教室
シロタカズキ
ミステリー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。
そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。
提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。
最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。
しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。
そして、一人目の犠牲者が決まった――。
果たして、このデスゲームの真の目的は?
誰が裏切り者で、誰が生き残るのか?
友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる