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少女は兵士に志願!!
5話 合格発表
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現在は朝日が登り王国を照らしている。
あれから3日が経ち、朝方は多くの人たちが賑わっている。
「楽しみだな~。受かっているといいが…まあ、筆記は簡単だったし実力試験も勝ったからいいけど…
壁、壊したからな…それで合格にならなかったらどうしよ?」
そんなことを気にしながら歩いていくと城の前が慌ただしかった。
「あそこに群がっている所に合格者の名前が書いてあるな」
合格者の名前が書いてある大きな紙が見える範囲で近くの家の壁に向かいに走り飛び上がり登る。少しの壁の凹みや小窓の凹み、壁同士を蹴ったりしながら上に上がる。
「これで合格者の名前が見えるな」
目の能力は簡単に言えば千里眼。
千里眼が使えるのでここからでもはっきり見える。もっと言うと師匠に目の能力があるならそれに合わせて耳を強化しよう。なんて言うから地獄耳になっちゃったけどね。
普段は使わないように制御してるよ?このせいで師匠にこき使われたことを思い出す。思わずぶるりと体を震わせる。
「思い出したくない記憶までも蘇った…
おっ!右端に僕の名前あるじゃん!しかも1番最初に!!なんだよ左端から見ていたい見ないじゃん」
屋根の上でいつまでも嬉しがっていると不審者と勘違いされるので早々に降りた。
「さて、城の門まで行くか」
スタスタと歩いて城まで行く。城の近くでは、「おちたァァァ!」「なんで俺じゃだめなんだぁ!!」「なんでこんな奴が合格なんだ!!」など叫んでいる。
そんなのお前らの努力が足りないからだ。なんて言ったら絶対絡まれるので言わない。自分は比較的平和主義者だ!まあ、一般的に見られたら平和主義者ではないだろうが…まあ、比較的だからな!うん!相手が手を出しさえしなければこっちだって大人しいんだからそうだよな。うん。
そんなことを考えながら門の前に着き受付で名前を言って何やら驚いた顔をしている受付の獣人の男はジッとこちらを見る。
「なにか?」
「あぁ。いや、何でもないよ。さ、これを持って奥に進めば合格者達がいるよ。そこにいるのはこれからの君の同僚になる。頑張りなさい」
「はい。ありがとうございます!頑張ります!」
いい人だった。しかも獣人で耳がピコピコしていて可愛かった。いや、男として可愛いは失礼だ。
そういえば、師匠って種族って何だろ人族(人間)かな?でも、能力なしで素手で大岩砕いてたしな…うん、まず人族ではない。師匠もそうだけど僕の種族って何だろ?見た目は人間だし人族にも見えるけど…あの能力使ったらアレだしな~…考えても仕方が無いか。兵士の先輩にでも聞くか。
「合格者の方~!こちらに集まってくださーい!」
大声をあげながら誘導している年上の若い男。
…この国の兵士って全員若過ぎやしませんか?もっと30代40代いてもおかしくないんだけど?というか、まだ1人も見かけてません。
沢山の合格者達。10代20代ばかりの合格者だ。1番若くても成人したばかりの13歳だ。つまり僕だな。まだ同い年見つけてないから。
「お集まりの皆さん。合格おめでとうございます。私はペスタルティナ王国、副総隊長のサーナです。この王国の歴代最初の女性兵士です。
今回兵士志願者には類まれなる才能を持った方々が多くいます。今日からその才能に目覚める方もいるでしょう。多くの努力と知識を経て、この国を守る若き兵士諸君、共に頑張りましょう」
壇上から現れ演説をしたかと思えば終わると姿が瞬きした瞬間に消えたサーナ副隊長。新たに30代前半ぐらいの男が現れた。
「諸君、まずはおめでとう。私はペスタルティナ王国の総隊長のコルグ。副総隊長のパートナーだ。
まず簡単に新兵兵士諸君に説明しよう。我が国にはある程度戦えないものは戦場に出す気は無い。君たちの中には人を殺す覚悟がまだ無い者が大半だ。意思を固めても実戦できぬものが多い。そして何より戦う技術が無い。まずはそれぞれ基本的な体作りにそれぞれ合った戦い方をこちらで教えよう。
そして、各隊長達の元で修行しなさい」
総隊長のコルグは帰ろうと後ろを向く。
「質問しても宜しいでしょうか?」
静寂の中で一人の少年が手を上げて言う。
小さいが故にきっと姿が見えないだろうが声がした方へと向き直り視線を向ける。それだけでも強者とわかるほどに。
シュオナは自分の姿が見えるように出入口の近くにいたので壁を蹴り天井にぶら下がっているライトに手をかけ振り子の原理で壇上の上に着地した。総隊長の近くまで行く。
「君は?」
「僕はシュオナ。今日合格させてもらいました」
「君が噂のシュオナか」
「噂?」
なんの噂か気になる。変な噂なら噂をばらまいた奴をブチのめすだけ。噂はいいものと悪いものがあるし、どんな噂でも大きくなりすぎる。
「ルディルに武器を持たずして圧勝したという期待の新人の噂だよ。どうやって城の壁にヒビに小さなクレーターのようなものを付けたのか不思議だったものでね。私も名前を覚えていてね。君みたいな小さな子が何故できるのか是非とも教えて欲しいよ」
「師匠から教えて貰ったとしか言えませんね…アレはちょっと特殊な訓練方法ですし…それに武器は使いましたよ?武器は使ってはいけないと規定になかったものですので武器も使いましたから」
「ほう?武器を使ったのか?ルディルの話だと素手だと聞いたが?」
「そう見えたのでしょう。僕の武器は自作ですので見たことがないでしょうし、武器は武器でもどちらかと言うと暗殺に使うような武器ですし…」
その言葉に周りはシーンとなる。流石のコルグも言葉を失う。なぜなら見た目が子供でしかない子が武器を自作し、ましてや暗殺用の武器だと言う。もう何処に手をつけていいのかわからない。だが、1つ疑問に思う所が出てきた。
「ルディルからも少し聞いたが君はさっきも師匠と言っていたが師匠の名は分かるか?君のような歳の子がそこまで力をつける必要があるのか私にはにわかに思えない」
「え?師匠の名前知りませんよ?毎回偽名でしたし、色々な名前がありましたから。それに師匠は僕を拾ってくれた恩人で育て親ですから信用もしてましたし。
何故力つけさせたかは師匠の跡を継いで欲しかったみたいですよ?
でも僕は幼い頃から兵士になることが夢でしたので師匠には生憎ながら断りました。その時は大喧嘩でしたね。初めて師匠に殺されかけました。容赦ないですよ。僕も師匠に殺しにかからないといけないぐらい本気で戦いましたし、師匠の怒りが収まった後その本気を見込まれて諦めてくれましたし。技術を継承出来ただけいいかとも言ってくれましたから」
「……そうか。その師匠は何処に?」
「5年前のこの国で公開処刑で死にましたよ?」
その言葉に驚きと恐怖でこの場を支配する。流石にコルグもさらなる衝撃を受けた。それもそのはず、5年前のこの国で公開処刑になった男は最悪の夜を約100年間与え続けた男だ。そしてこの男を捕らえたのは昔のコルグだ。
それを知らない少年はこちらを不思議そうに見る。自分の言っていることが何を意味するのかを知らずに。
「それに師匠はかなり歳だったからいつ死んでもおかしくなかった。それに僕にし最後に話した言葉が『最後は大舞台で死にたい。だから儂の力を受け止めこの国で最も力のあり、この国の未来を良くしてくれる良心ある男に捕まる。
そして儂は大衆の前で殺される。お前はわしが死ぬところを最後までその目で焼き付けなさい。儂の最後がどれほど華々しかったかを』って言っていた。
その良心ある男ってコルグ総隊長でしょ?僕、師匠を超えたい。だからいつか貴方を超えて師匠を越える。僕はこの国が好きだし守りたい。今度こそ大切な人を守る力が欲しい。だからこの国の兵士になるために努力をした。
………すみません。私情と感情的になりすぎました」
頭を下げる。その行為と意思は少年と最悪の夜を作った男とは何が違うという事がこの場をもって誰もが理解した。そしてこの少年の強さの元となった原因も。
「頭をあげなさい。君の強さのわけも分かった。だが、あまりそのことは言わない方がいい。君の師匠は国民達からは悪魔としか写ってないのだから」
「分かっています。師匠は強さを求め過ぎたあまり人を殺すことがやめられなくなったようです。僕の前ではそんな素振りは見せないように必死になって隠していましたし…まあ、隠しきれていませんでしたが…」
「なら何故この場で言ったのかな?君を危険人物として捕まえていたかもしれないのですよ?」
「その時はその時です。捕まるでしょうが僕は悪いことは何もしていませんし。育て親がアレですしね。疑われても仕方がないでしょう。
それにきっといつまでも隠しきれないし、そんなことを最初から隠し続けたら、信頼されませんしね」
その覚悟は誰もができるものではない。ましてや13歳では普通はできない。大人でもできる人は少ない。
「そうか…
総隊長の命令でこのことは他言無用だ」
「ありがとうございます。
皆さんこれから同僚になりますがよろしくお願いします」
これから同僚になる人達に向け頭を下げる。そんなシュオナの頭を荒く撫で回すコルグ。
「して、質問とは?」
「そうでした。各隊長というのは一体何人いるのでしょうか?各隊長たちも総隊長や総副隊長のように2人1組なのでしょうか?」
「ふむ、まず各隊長は12人いる。そこには必ずパートナーの副隊長がいる。各隊長は1番隊~12番隊まであるが、だいたい1番隊隊長とか言われているな。
各隊長や副隊長になるには各ランクずけされている最高ランクにならなければならない。最高ランクはSSSランクだ。
まあ、この説明は後々あるだろう」
なるほど、そう分かれているのか。各隊長になるにはランクを上げてなるしかないということか。
「質問に答えて下さりありがとうございます」
「私はこれから会議がある。何かあったら私の元に来なさい」
そう言い終わると瞬く間に消えていた。
もう見えない姿に「ありがとうございました!!」とまた頭を下げるのだった。
壇上から降りた後、各人に紙を渡された。それは兵士達に各部屋を用意される部屋割りだった。
シュオナは自分の部屋の名前を探す。
探した結果、何故か集団部屋ではなく一人部屋だった。不思議に思いながら自分の部屋になる部屋に向かうのだった。
会議では…
「それは本当のことなの?」
副総隊長は驚き、各隊長達も驚く。
「それは私も驚いた。まさかあの男が最後に言っていた言葉がかあの少年に向けてだとは…」
「もっと驚くことはそこじゃないんじゃないかしら?あの男の技術を受け継いだというところよ」
「それもそうですね。あの男の力と技術を手に入れていたら、俺だったら兵士にならず力に溺れて好きに暴れ回ってそうですし」
「それを思うとその場で己がどういう存在で警戒しなければいけない人物か言うのはかなり勇気がいる。ましてや最悪の夜のようになる人物ではないとわかる。だが、危険人物として捕まえられたかもしれない。キモが座っている」
「いい子ではあった。覚悟もできていた。実力もあの男が鍛えたのなら折り紙付きだ」
「…とんでもない逸材ね」
「そうだな。俺はあの子のサポートをしていいとも思っている。お前達もあの子に直接会ってみて力になりたいと思ったら力になってやってくれ」
「そうだな…会ってみるか」
「俺は…別にどうでもいい」
「おいおい、そう言うなよ!男の子にしては可愛い子らしいじゃん?会おうぜ?」
「僕は興味がありますので会って話してみたいですね」
「俺は実力試験の時帰るところ見たことあるがそんな危険な人物では無さそうだしあってみようと思います。なんだか弟って感じがして構いたくなりますし」
「弟ってシュオナ君可哀想だな」
「…何が言いたい?」
「おっと、そんな睨まないでよ!せっかくの好青年のお兄さん顔が台無しだって!!」
「お前に言われても嬉しくないぞチャラ男」
「ひでぇ(笑)」
「そういうことだ。今回はここまで。各隊長と副隊長は今回の資料をちゃんと目をとうしておくように。解散」
そうして会議は解散され各隊長と副隊長は自分の仕事をしに会議室から出ていった。
あれから3日が経ち、朝方は多くの人たちが賑わっている。
「楽しみだな~。受かっているといいが…まあ、筆記は簡単だったし実力試験も勝ったからいいけど…
壁、壊したからな…それで合格にならなかったらどうしよ?」
そんなことを気にしながら歩いていくと城の前が慌ただしかった。
「あそこに群がっている所に合格者の名前が書いてあるな」
合格者の名前が書いてある大きな紙が見える範囲で近くの家の壁に向かいに走り飛び上がり登る。少しの壁の凹みや小窓の凹み、壁同士を蹴ったりしながら上に上がる。
「これで合格者の名前が見えるな」
目の能力は簡単に言えば千里眼。
千里眼が使えるのでここからでもはっきり見える。もっと言うと師匠に目の能力があるならそれに合わせて耳を強化しよう。なんて言うから地獄耳になっちゃったけどね。
普段は使わないように制御してるよ?このせいで師匠にこき使われたことを思い出す。思わずぶるりと体を震わせる。
「思い出したくない記憶までも蘇った…
おっ!右端に僕の名前あるじゃん!しかも1番最初に!!なんだよ左端から見ていたい見ないじゃん」
屋根の上でいつまでも嬉しがっていると不審者と勘違いされるので早々に降りた。
「さて、城の門まで行くか」
スタスタと歩いて城まで行く。城の近くでは、「おちたァァァ!」「なんで俺じゃだめなんだぁ!!」「なんでこんな奴が合格なんだ!!」など叫んでいる。
そんなのお前らの努力が足りないからだ。なんて言ったら絶対絡まれるので言わない。自分は比較的平和主義者だ!まあ、一般的に見られたら平和主義者ではないだろうが…まあ、比較的だからな!うん!相手が手を出しさえしなければこっちだって大人しいんだからそうだよな。うん。
そんなことを考えながら門の前に着き受付で名前を言って何やら驚いた顔をしている受付の獣人の男はジッとこちらを見る。
「なにか?」
「あぁ。いや、何でもないよ。さ、これを持って奥に進めば合格者達がいるよ。そこにいるのはこれからの君の同僚になる。頑張りなさい」
「はい。ありがとうございます!頑張ります!」
いい人だった。しかも獣人で耳がピコピコしていて可愛かった。いや、男として可愛いは失礼だ。
そういえば、師匠って種族って何だろ人族(人間)かな?でも、能力なしで素手で大岩砕いてたしな…うん、まず人族ではない。師匠もそうだけど僕の種族って何だろ?見た目は人間だし人族にも見えるけど…あの能力使ったらアレだしな~…考えても仕方が無いか。兵士の先輩にでも聞くか。
「合格者の方~!こちらに集まってくださーい!」
大声をあげながら誘導している年上の若い男。
…この国の兵士って全員若過ぎやしませんか?もっと30代40代いてもおかしくないんだけど?というか、まだ1人も見かけてません。
沢山の合格者達。10代20代ばかりの合格者だ。1番若くても成人したばかりの13歳だ。つまり僕だな。まだ同い年見つけてないから。
「お集まりの皆さん。合格おめでとうございます。私はペスタルティナ王国、副総隊長のサーナです。この王国の歴代最初の女性兵士です。
今回兵士志願者には類まれなる才能を持った方々が多くいます。今日からその才能に目覚める方もいるでしょう。多くの努力と知識を経て、この国を守る若き兵士諸君、共に頑張りましょう」
壇上から現れ演説をしたかと思えば終わると姿が瞬きした瞬間に消えたサーナ副隊長。新たに30代前半ぐらいの男が現れた。
「諸君、まずはおめでとう。私はペスタルティナ王国の総隊長のコルグ。副総隊長のパートナーだ。
まず簡単に新兵兵士諸君に説明しよう。我が国にはある程度戦えないものは戦場に出す気は無い。君たちの中には人を殺す覚悟がまだ無い者が大半だ。意思を固めても実戦できぬものが多い。そして何より戦う技術が無い。まずはそれぞれ基本的な体作りにそれぞれ合った戦い方をこちらで教えよう。
そして、各隊長達の元で修行しなさい」
総隊長のコルグは帰ろうと後ろを向く。
「質問しても宜しいでしょうか?」
静寂の中で一人の少年が手を上げて言う。
小さいが故にきっと姿が見えないだろうが声がした方へと向き直り視線を向ける。それだけでも強者とわかるほどに。
シュオナは自分の姿が見えるように出入口の近くにいたので壁を蹴り天井にぶら下がっているライトに手をかけ振り子の原理で壇上の上に着地した。総隊長の近くまで行く。
「君は?」
「僕はシュオナ。今日合格させてもらいました」
「君が噂のシュオナか」
「噂?」
なんの噂か気になる。変な噂なら噂をばらまいた奴をブチのめすだけ。噂はいいものと悪いものがあるし、どんな噂でも大きくなりすぎる。
「ルディルに武器を持たずして圧勝したという期待の新人の噂だよ。どうやって城の壁にヒビに小さなクレーターのようなものを付けたのか不思議だったものでね。私も名前を覚えていてね。君みたいな小さな子が何故できるのか是非とも教えて欲しいよ」
「師匠から教えて貰ったとしか言えませんね…アレはちょっと特殊な訓練方法ですし…それに武器は使いましたよ?武器は使ってはいけないと規定になかったものですので武器も使いましたから」
「ほう?武器を使ったのか?ルディルの話だと素手だと聞いたが?」
「そう見えたのでしょう。僕の武器は自作ですので見たことがないでしょうし、武器は武器でもどちらかと言うと暗殺に使うような武器ですし…」
その言葉に周りはシーンとなる。流石のコルグも言葉を失う。なぜなら見た目が子供でしかない子が武器を自作し、ましてや暗殺用の武器だと言う。もう何処に手をつけていいのかわからない。だが、1つ疑問に思う所が出てきた。
「ルディルからも少し聞いたが君はさっきも師匠と言っていたが師匠の名は分かるか?君のような歳の子がそこまで力をつける必要があるのか私にはにわかに思えない」
「え?師匠の名前知りませんよ?毎回偽名でしたし、色々な名前がありましたから。それに師匠は僕を拾ってくれた恩人で育て親ですから信用もしてましたし。
何故力つけさせたかは師匠の跡を継いで欲しかったみたいですよ?
でも僕は幼い頃から兵士になることが夢でしたので師匠には生憎ながら断りました。その時は大喧嘩でしたね。初めて師匠に殺されかけました。容赦ないですよ。僕も師匠に殺しにかからないといけないぐらい本気で戦いましたし、師匠の怒りが収まった後その本気を見込まれて諦めてくれましたし。技術を継承出来ただけいいかとも言ってくれましたから」
「……そうか。その師匠は何処に?」
「5年前のこの国で公開処刑で死にましたよ?」
その言葉に驚きと恐怖でこの場を支配する。流石にコルグもさらなる衝撃を受けた。それもそのはず、5年前のこの国で公開処刑になった男は最悪の夜を約100年間与え続けた男だ。そしてこの男を捕らえたのは昔のコルグだ。
それを知らない少年はこちらを不思議そうに見る。自分の言っていることが何を意味するのかを知らずに。
「それに師匠はかなり歳だったからいつ死んでもおかしくなかった。それに僕にし最後に話した言葉が『最後は大舞台で死にたい。だから儂の力を受け止めこの国で最も力のあり、この国の未来を良くしてくれる良心ある男に捕まる。
そして儂は大衆の前で殺される。お前はわしが死ぬところを最後までその目で焼き付けなさい。儂の最後がどれほど華々しかったかを』って言っていた。
その良心ある男ってコルグ総隊長でしょ?僕、師匠を超えたい。だからいつか貴方を超えて師匠を越える。僕はこの国が好きだし守りたい。今度こそ大切な人を守る力が欲しい。だからこの国の兵士になるために努力をした。
………すみません。私情と感情的になりすぎました」
頭を下げる。その行為と意思は少年と最悪の夜を作った男とは何が違うという事がこの場をもって誰もが理解した。そしてこの少年の強さの元となった原因も。
「頭をあげなさい。君の強さのわけも分かった。だが、あまりそのことは言わない方がいい。君の師匠は国民達からは悪魔としか写ってないのだから」
「分かっています。師匠は強さを求め過ぎたあまり人を殺すことがやめられなくなったようです。僕の前ではそんな素振りは見せないように必死になって隠していましたし…まあ、隠しきれていませんでしたが…」
「なら何故この場で言ったのかな?君を危険人物として捕まえていたかもしれないのですよ?」
「その時はその時です。捕まるでしょうが僕は悪いことは何もしていませんし。育て親がアレですしね。疑われても仕方がないでしょう。
それにきっといつまでも隠しきれないし、そんなことを最初から隠し続けたら、信頼されませんしね」
その覚悟は誰もができるものではない。ましてや13歳では普通はできない。大人でもできる人は少ない。
「そうか…
総隊長の命令でこのことは他言無用だ」
「ありがとうございます。
皆さんこれから同僚になりますがよろしくお願いします」
これから同僚になる人達に向け頭を下げる。そんなシュオナの頭を荒く撫で回すコルグ。
「して、質問とは?」
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「ふむ、まず各隊長は12人いる。そこには必ずパートナーの副隊長がいる。各隊長は1番隊~12番隊まであるが、だいたい1番隊隊長とか言われているな。
各隊長や副隊長になるには各ランクずけされている最高ランクにならなければならない。最高ランクはSSSランクだ。
まあ、この説明は後々あるだろう」
なるほど、そう分かれているのか。各隊長になるにはランクを上げてなるしかないということか。
「質問に答えて下さりありがとうございます」
「私はこれから会議がある。何かあったら私の元に来なさい」
そう言い終わると瞬く間に消えていた。
もう見えない姿に「ありがとうございました!!」とまた頭を下げるのだった。
壇上から降りた後、各人に紙を渡された。それは兵士達に各部屋を用意される部屋割りだった。
シュオナは自分の部屋の名前を探す。
探した結果、何故か集団部屋ではなく一人部屋だった。不思議に思いながら自分の部屋になる部屋に向かうのだった。
会議では…
「それは本当のことなの?」
副総隊長は驚き、各隊長達も驚く。
「それは私も驚いた。まさかあの男が最後に言っていた言葉がかあの少年に向けてだとは…」
「もっと驚くことはそこじゃないんじゃないかしら?あの男の技術を受け継いだというところよ」
「それもそうですね。あの男の力と技術を手に入れていたら、俺だったら兵士にならず力に溺れて好きに暴れ回ってそうですし」
「それを思うとその場で己がどういう存在で警戒しなければいけない人物か言うのはかなり勇気がいる。ましてや最悪の夜のようになる人物ではないとわかる。だが、危険人物として捕まえられたかもしれない。キモが座っている」
「いい子ではあった。覚悟もできていた。実力もあの男が鍛えたのなら折り紙付きだ」
「…とんでもない逸材ね」
「そうだな。俺はあの子のサポートをしていいとも思っている。お前達もあの子に直接会ってみて力になりたいと思ったら力になってやってくれ」
「そうだな…会ってみるか」
「俺は…別にどうでもいい」
「おいおい、そう言うなよ!男の子にしては可愛い子らしいじゃん?会おうぜ?」
「僕は興味がありますので会って話してみたいですね」
「俺は実力試験の時帰るところ見たことあるがそんな危険な人物では無さそうだしあってみようと思います。なんだか弟って感じがして構いたくなりますし」
「弟ってシュオナ君可哀想だな」
「…何が言いたい?」
「おっと、そんな睨まないでよ!せっかくの好青年のお兄さん顔が台無しだって!!」
「お前に言われても嬉しくないぞチャラ男」
「ひでぇ(笑)」
「そういうことだ。今回はここまで。各隊長と副隊長は今回の資料をちゃんと目をとうしておくように。解散」
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