上 下
4 / 60
少女は兵士に志願!!

3話 幻術

しおりを挟む
ついに兵士志願者の試験時間がやってきた。
まずは受付で年齢確認と名前を記入する。だが、やはり見た目というのは大事なのか何度も何度も本当に成人??と聞かれた。腹が立ったので血の契約書でも書いてやるから持ってこい!!と言うと周りが焦りだし「ごめんなさい!」と頭を下げて謝罪した。
ちなみに血の契約書というのは簡単に言えば自分の血で書いたら嘘を付けない契約書。大体は死刑囚に使うものだ。
何故かって?己の死刑日まで強制労働させるためにはやらなければならないからだ。ぶっちゃけ、奴隷書とも言われている。まあ、こんな使い方は王家の信頼されている者にしか知らされてもいなければ一般人でもあまり知られていない。どっちかと言うと血の契約書というのが一般的に知られている名前だ。
騒ぎにはなったが無事に通過出来た。言われた方へ足を動かしていると開けた場所に出た。といっても机が並んでいたが…
「よぉ!来たな!」
大きな声でこちらに呼びかけてくるのは今朝助けたルディルだった。
その他もろもろもいるが…
「二日酔いは改善されたようで何よりだ」
「まあ、それは世話になったよ。それよりこちらの人たちを紹介するぜ」
「兵士様たちを僕のようなまだ兵士になってない一般人に紹介していいのか??」
「いや、それは別にいいんだよ。お前はきっと試験なんて全部合格するだろうしな」
「……期待されて光栄だよ」
「その間はなんだよ」
それについては押し黙る。
だってそうだろ?自分で言って自分の傷を抉るのは心苦しいが、見た目がこんな子供に期待って言われても信じ難いのは当たり前。ましてや自分の実力を1度でも見せていれば納得はまだいくが、見せてもないのに期待などされるはずがない。
そんなことを思っていると一人の大男が近寄ってきた。
「疑り深い奴だな。小僧、安心して大丈夫だぞ!大体の上位兵士は対面した相手の力量ぐらい感じ取れる」
豪快に笑う大男。パッと見では30代半ばぐらいだが…
「初対面を警戒するのは分かるけど一般人にまでそういう警戒はあまり良くないんじゃないか?…お兄さん」
その言葉にルディルと一緒にいた兵士達も驚きを隠せない。
どう見ても大男はおじさんという見た目だ。それをどう見たらお兄さんと言えるのかと周りはきっと思うだろう。
「それともこれも何かの試験か?」
「何を言っているんだ小僧?俺はどう見てもおじさんって歳だろ?お兄さんって言ってくれるのは嬉しいが流石に小っ恥ずかしい」
「僕、今すごく可哀想な子ってレッテル貼られた気がするから、解いてくれると嬉しいんだが…うん。する気なしか。なら、こうすればいいって事だな」
大男に自然に自身を近づけて行き大男に触れる。触れた瞬間、花瓶でも割れたかのようなパリン!という音が響いた。
大男に触れていたはずの手はいつの間にか20代ぐらいの青年の体に触れていた。
青年は自分の手や体を見たあとルディル側へと視線を送る。
ルディル達は驚いた顔はまだ続いていたが青年がルディル達に視線を向けられていることに気が付き、解かれていると顔を縦に動かす。それを見た青年はこちらに向き直った。もちろんもう青年から手は離してる。
僕は変態じゃないから当たり前だ。
「どうやって…いや、いつから俺が幻術を自身にかけていることが分かった?」
「最初からだが?」
それを聞いて青年はもう驚きを通り越して呆れていた。ため息まで付いている。
「最初から、か。自信なくすな…」
「いやいや。一般人や幻術に対して対抗意識が元々高くない人は分からないでしょう。それに僕もここまで高い幻術を使いながら演技力まで高い方は久々です。生憎ながら、僕には通用しなかったと言うだけですよ」
「君の師匠から教わったのか?」
それを聞いた瞬間少し焦った。だが、何故知っていたかは瞬時に分かった。
ルディルに少しばかり殺気を送り「勝手に人の情報を渡すな」と目で訴えた。
そこに割り込んできたのは好青年の美男子だった。
「まあまあ、そんなに怒らないでくれ。俺達が、逸材は今年はいるのかという話をしていた時にルディルが『シュオナがそうだな』っていうから聞いたんだよ。師匠であり親って羨ましいね。俺もそう言うこと言ってみたいよ。
あ、俺はルバ。気軽に呼んでくれ」
「名乗り遅れたが俺はラスア。ラスと呼ばれている。好きに呼んでくれ」
「にしてもよくラスの幻術見破ったね!本当に期待の新人だよ!」
そんな話を長いこと話し続けた。
精神的にかなり疲れた。
もちろん筆記もちゃんと受けた。意外と簡単に終わってあっけなかった。実力試験は明日行われる。一旦家に帰宅するように言われたのでまた明日城に来ることになった。
明日はルディルと戦うのだろうが、今回、人の勝手な情報を売った分はきっちり返す。まぁ、それなりの実力者なのは確かだが、上手くいくか…まあ、師匠程ではないしなんとかなるだろう。
明日のために早く寝ますか。







その夜ルディル達は…

「にしても、確かシュオナだったか。アイツは本当に一般人なのか?どこかの兵士とかの間違いではないのか?」
「一般人で間違いありません。調べてもこの国で育った一般人ですよ。ただ、親が全くと言っていいほど分からなかったのですが…」
「ふむ。実力は十分にある。そして知識面はさらに高い今回の筆記は一般人からすれば国立大学に行けるほどの問題もあるのだからな。普通に暮らしていても優秀な子だろう」
「問題は戦闘経験があるかどうかですね。私はルディルの話を聞いている限り対人戦闘があり、尚且つ人を殺したことがあるような口ぶりでしたし」
「一応警戒しといた方がいいな。敵側だったら厄介だ。あの年で人を殺めたことがあるなど考えたくもないものだがな」
「どう考えても仕方ないでしょう。明日になれば分かることよ。
それにしても可愛い子だったな~」
その言葉を言った女性に皆苦笑するしかなかった。
「それではそろそろ解散しよう。また明日も頼むぞ?」
部屋にいた皆は一人一人次々と部屋から出ていき帰っていった。
しおりを挟む
感想 82

あなたにおすすめの小説

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を庇おうとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...