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八公演目――ハウクドウィースタンピード?
二曲目:ウィリアム・セイラー
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その日は、『うわぁ……!』って抑えめの大きさで喜ぶアーティーのふわふわした声で目が覚めた。ほんとに小さかったから、隣のベッドで寝てたオレたちとアーティーの上で丸まってたベルぐらいしか聞こえてなかったと思う。オレが小声でどうしたの、って尋ねたのを境に、四人だけこっそり早めに起きだした。
「あ、あのね……! 起きたらこれが置いてあって……そう、枕元に!」
「封筒? 手紙か?」
「ううん、それがね……チケットだったんだ、ビッグバンドコンサートの!」
ほらね! って、アーティーは中から一枚の紙を出して見せてくれる。……別に今起きてるメンバーは盗りやしないと思うけど、自然と指に力が入ってた。
「すごいじゃん! 誰がくれたの?」
「わかんない。差出人、書いてなくて……ベル、知らない?」
「知るかよオ。盗オて売られねエよウになア」
「うん! 夕方まで守りきるよ」
「夕方? 随分急なプレゼントだな」
確かに、チケットに書かれた日付は今日……十月十二日。ああ、そっか!
「誕生日プレゼントってことだね! おめでとう!」
「ん? アア、そウイやそウだアたなア。今日で十四か?」
「え~っと……うん! これで、みんなと一緒」
そう。毎年、この日になるとオレたちは同い年になる。……学校に行ってたら別学年だろうけど、まあ新聞売りには関係ないし。でもアーティーは、オレとチャーリー、最近はベルにも。追いつくのを嬉しがってるみたいだった。だから毎年この日を楽しみにしてたけど、今年はそれに加えてコンサートのチケット。いつも穏やかなアーティーでも、流石に興奮が抑えきれないのか動きに落ち着きがなかった。
「えっとえっと、公演は夕方の五時からだから……歩いていくなら二時には出たい……」
「歩いてくの!? 流石に誕生日ぐらい地下鉄使ったら? 着いた頃には疲れちゃうって」
「チャーリーが誕生日ボーナスでもくれんだろオ?」
「そんなシステムはない。というかそれよりも……」
オレの隣に座ってるチャーリーが、向かいのベッドに座ってるアーティーを頭から爪先まで眺める。寝起きでちょっとぼさぼさしてるけど、いつもどおり優しい栗色の髪だし綺麗な青い目だし、いつも着てる青いシャツと茶色いパンツ。ああ、でも、そっか。まずいのか。いつもどおり、だと。
「お前、その服で行くつもりか?」
「え、あー……」
仕事では着れれば良い、むしろ同情目当てでボロめのを選んだりする奴もいるオレたちの服だけど、シアターへビッグバンドオーケストラを聴きに行くってなると流石に浮く。酒場の突発セッションとかなら許されただろうけど。
「どうせなら服とか交通費までくれたらよかったのにな」
「チケットくれただけ良イ奴だろオ」
「ううん……でも、服買うお金なんてないしなあ……というか、服を買いに行く服もないっていうか……」
にこにこしてたのが一転、今日の主役は困り顔。一緒になって困りはじめたオレとアーティーを交互にみて、――肩を竦めて知らん顔してるベルを睨んでから――チャーリーは溜息まじりで口を開いた。
「……金はやれないが、伝手ならくれてやるよ。誕生日様」
「あ、あのね……! 起きたらこれが置いてあって……そう、枕元に!」
「封筒? 手紙か?」
「ううん、それがね……チケットだったんだ、ビッグバンドコンサートの!」
ほらね! って、アーティーは中から一枚の紙を出して見せてくれる。……別に今起きてるメンバーは盗りやしないと思うけど、自然と指に力が入ってた。
「すごいじゃん! 誰がくれたの?」
「わかんない。差出人、書いてなくて……ベル、知らない?」
「知るかよオ。盗オて売られねエよウになア」
「うん! 夕方まで守りきるよ」
「夕方? 随分急なプレゼントだな」
確かに、チケットに書かれた日付は今日……十月十二日。ああ、そっか!
「誕生日プレゼントってことだね! おめでとう!」
「ん? アア、そウイやそウだアたなア。今日で十四か?」
「え~っと……うん! これで、みんなと一緒」
そう。毎年、この日になるとオレたちは同い年になる。……学校に行ってたら別学年だろうけど、まあ新聞売りには関係ないし。でもアーティーは、オレとチャーリー、最近はベルにも。追いつくのを嬉しがってるみたいだった。だから毎年この日を楽しみにしてたけど、今年はそれに加えてコンサートのチケット。いつも穏やかなアーティーでも、流石に興奮が抑えきれないのか動きに落ち着きがなかった。
「えっとえっと、公演は夕方の五時からだから……歩いていくなら二時には出たい……」
「歩いてくの!? 流石に誕生日ぐらい地下鉄使ったら? 着いた頃には疲れちゃうって」
「チャーリーが誕生日ボーナスでもくれんだろオ?」
「そんなシステムはない。というかそれよりも……」
オレの隣に座ってるチャーリーが、向かいのベッドに座ってるアーティーを頭から爪先まで眺める。寝起きでちょっとぼさぼさしてるけど、いつもどおり優しい栗色の髪だし綺麗な青い目だし、いつも着てる青いシャツと茶色いパンツ。ああ、でも、そっか。まずいのか。いつもどおり、だと。
「お前、その服で行くつもりか?」
「え、あー……」
仕事では着れれば良い、むしろ同情目当てでボロめのを選んだりする奴もいるオレたちの服だけど、シアターへビッグバンドオーケストラを聴きに行くってなると流石に浮く。酒場の突発セッションとかなら許されただろうけど。
「どうせなら服とか交通費までくれたらよかったのにな」
「チケットくれただけ良イ奴だろオ」
「ううん……でも、服買うお金なんてないしなあ……というか、服を買いに行く服もないっていうか……」
にこにこしてたのが一転、今日の主役は困り顔。一緒になって困りはじめたオレとアーティーを交互にみて、――肩を竦めて知らん顔してるベルを睨んでから――チャーリーは溜息まじりで口を開いた。
「……金はやれないが、伝手ならくれてやるよ。誕生日様」
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