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二公演目――弟たちのセレナーデ
フェルマータ:???
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「おっと、今日も思ったより長くなってしまったね。表通りが明るいうちに帰したかったんだけど」
次からは演奏時間を計算しておくよ、と苦笑を浮かべつつ。店主はレコードをケースにしまい伝票を受け取る。
「まだこどもの足音が聞こえるし大丈夫かな。太陽もギリギリ見えてるね。沈まないうちに帰れるかい? ……はは、まさか! そのへんで寝ちゃうとは思ってないよ」
などと、冗談めかす店主の手元は留守だった。時折思い出したようにレジを打つものの、会話との間に小さく「あ、間違えた」「えーっと……あれ、これって幾らだっけ」といった呟きが混ざる。……暫し返答せずに見守れば、やがて金属音と共に引き出しが開いた。
「はは……お恥ずかしい。こういうのあんまり得意じゃなくてね。はい、お返し」
前回よりもやや控えめに鈴が鳴る。ンン、と気恥ずかしそうな咳払いを境に。一変、店主は優雅なボウ・アンド・スクレープをみせた。
「本日もご来場頂き、ありがとうございました」
次からは演奏時間を計算しておくよ、と苦笑を浮かべつつ。店主はレコードをケースにしまい伝票を受け取る。
「まだこどもの足音が聞こえるし大丈夫かな。太陽もギリギリ見えてるね。沈まないうちに帰れるかい? ……はは、まさか! そのへんで寝ちゃうとは思ってないよ」
などと、冗談めかす店主の手元は留守だった。時折思い出したようにレジを打つものの、会話との間に小さく「あ、間違えた」「えーっと……あれ、これって幾らだっけ」といった呟きが混ざる。……暫し返答せずに見守れば、やがて金属音と共に引き出しが開いた。
「はは……お恥ずかしい。こういうのあんまり得意じゃなくてね。はい、お返し」
前回よりもやや控えめに鈴が鳴る。ンン、と気恥ずかしそうな咳払いを境に。一変、店主は優雅なボウ・アンド・スクレープをみせた。
「本日もご来場頂き、ありがとうございました」
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