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六章 プレドーラ攻城戦
三十五話
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ホルンメラン分団は進軍速度を大幅に上げていた。プレドーラの攻城戦で一日分のロスが生まれてしまったので、それを取り戻すためだ。
森を突っ切っていくので、時々曲がらなければならず、その度に我が巨大馬車は遅れてしまっていた。
気づけば軍の最後尾。僕たちより後ろにホルンメランの兵はいないという状況だ。
流石に僕たちだけを置いていくなんてことはしなかったが、それはそれで迷惑をかけているようでいたたまれなかった。
地図を見ると、もうすぐ森を抜けるというところまで来ていた。森を抜けると少しの砂地があり、その先の河を渡ればニフライン管轄内に入ることができる。
目的地まであと少しだと思ってホッとした瞬間だった。
「みんな! 後ろに兵がいます! 」
窓から顔を出していた兵士くんが叫んだ。僕とライアンくんも外を見ると、たしかに兵士の一団。軽騎兵だった。
いないはずである。僕たちの後ろに兵など。
「敵ですよ! あれ! 」
「敵襲だ! 」
みんなが口々に叫んだところに、矢が降り始めた。
ニフライン管轄内に入っていないからといって勝手に安心してしまっていた。そもそもホルンメランじゃない時点で敵襲は十分にありえるのだ。
この部隊の指揮をとるメイデン少将が全体に指示を出した。
「全員、速度を少し上げろ! 振り切れないギリギリだ。」
何言ってるんだ! 振り切れないとダメじゃないか!
訓練された兵士たちは混乱することなく少将に従って速度を速めはじめた。堂々としているのは頼もしいが、どうして振り切ろうとしないのかが理解できない。
メイデン少将は振り切れないまま、それ以上速度を上げなかった。その間も相手方の攻撃は続いている。この馬車にも矢がいくらか刺さった。
「あと少しだ! 頑張れよ。」
何があと少し? 全くわけがわからないまま逃げる身にもなってほしいよ。
そんなときだった。後ろが一層騒がしくなった。
「なんだ? 敵が増えたのか? 」
「いえ、そうじゃなさそうですよ。だってほら。」
矢が飛んで来なくなっていた。さっきからどういうことだろうと首をかしげていたところ
「あれ! 見てください。」
ライアンくんが指さした先には、なんとホルンメランの大将旗。
「パゴスキー少将が来たんですよ! 」
ピオーネが? 彼女は先頭にいるんじゃなかったのか?
敵団は奇襲部隊で数は数百程度だったので、こちらの本隊に攻撃されるとすぐに敗走していった。
ピオーネは僕たちの部隊の安否を確認するためにこちらに単騎でやってきた。
「大丈夫ですか? あなたたち。」
「大丈夫だけど、どういうこと、これ。」
とりあえずは事情が知りたかった。
ピオーネはひとまず僕たちの馬車に乗り込んだ。
「私はもともと、この森で後背から敵襲を受けるだろうとは予想していました。予想通り、敵の影を確認したので、その前を通過したあとにぐるっと回ってあなたたちの後ろに回り込んでいました。」
突然後ろから現れたのはそういうことだったのか。
「しかし、どうして後ろから攻撃されると? 」
「私たちはさっきまで大将旗を仕舞ってたんですよ。木に引っかかって邪魔だから。すると次に目立ってしまうのはあなた方の馬車だったんです。」
僕たちはもう慣れてしまったが、この馬車はやはり巨大すぎる。
「なので、これを見た敵兵はこの馬車に指揮官たる私がいると勘違いするはずです。なので、後ろから攻撃してくると予想していました。」
てことはこれからも僕たちは狙われる可能性があるのか。それは困る。もういっそずっと大将旗は立てておいてもらえないかな。
ピオーネは説明し終えると、すぐに馬車から降りようとした。
「もうここは敵地に等しいですから、先を急ぎましょう。」
本隊が僕たちの後ろについたまま、進軍は再開された。
森を突っ切ると、草がわずかに生えている程度の砂地に出た。砂煙が風に流されて時々こちらにも届いたから、馬車の中も少しざらついてしまった。
「ちょっと暑くありません? 」
兵士くんは袖をまくしあげていた。たしかに暑くなってきた。
「砂漠が近いからね。」
ライアンくんが答えた。
「砂漠? そんなもの地図に描かれていたかい? 」
「ああ、地図にはのってませんよ。砂漠があるのはニフラインのもっと向こう、シャラパナの外ですからね。」
「忘れそうになってたけど、そういえばシャラパナ以外の国もあったんだな。」
「不思議なことを言いますね、タイセイさん。」
雑談をしているうちに砂地は終わりそうになっていた。川が見えてきたのだ。あれを渡ればニフラインだ。
しかし簡単にはいかなそうだ。川の対岸には多数の軍団。ニフライン分団だった。
「ここに兵を配備している余裕があるってことは、まだ本団はニフラインに侵入してはいないようですね。」
兵士くんは双眼鏡で川の向こうを見ていた。
ホルンメラン分団は一旦停止した。このまま渡っても攻撃されてしまう。
と思ったらまた進軍を開始した。しかも、川の中に真っ直ぐ入り始めたのだ。
「何してるんだ? 狙い撃ちにされちゃうんじゃないのか? 」
「分かりません! 何を考えてるんでしょうかね、パゴスキー少将は。」
まるで敵がいないかのようにホルンメランの兵士たちはずんずん進んでいった。
しかし、さらに驚くことが起きた。ニフライン分団は全く攻撃してこないのだ。こちらには当然気づいているはずだ。なのに矢の一本も飛んでこない。
そうこうしているうちに、僕たちの馬車も川に入ってしまった。川底は浅いので、乗っている感じは陸と大して変わらない。
窓外にはメイデン少将が見えたので、彼に尋ねてみた。
「少将! どうしてニフラインは攻撃してこないのです? 」
僕の質問に少将は焦った顔をしていた。彼は無言のまま必死になって人差し指を口の前に立てている。静かにしろっことか?
釈然としないが、少将があまりに必死になっているので、それに従った。
結局少しも攻撃されないまま、僕たちは川を渡りきってしまった。ニフライン分団は相変わらず僕たちのことを静かに見守っている。
ホルンメラン分団が近くに寄ると、ニフラインの兵たちは道を開けてしまった。
「おいおい、どういうことだ? 敵同士だろ? 」
「分かりませんが、何か事情があるのでしょう。」
僕たちはわけの分からないままだったが、軍自体は実にスムーズに進んでいってしまっている。
そのままホルンメランの軍全体が、全く戦闘をしないままニフラインの防衛線を通過してしまった。ホルンメラン一同は予定通りのニフライン入りを果たしたのだ。
軍は速度を少し上げて、ニフライン管轄内を進軍した。渡った川にそのまま沿って北上する方角だ。防衛線は見えないあたりまで進んでから、久しぶりの休憩がとられた。
そこでようやく僕はメイデン少将に話を聞いた。
「あの、さっきは一体どういうことだったんですか? 」
「ああ、あれかい。悪かったな、話してなくて。この軍を見て何か思わないか? 」
僕は軍団を見回した。……なんだあれ。旗が違うじゃないか。
「気づいたかい? 今この軍はニフラインの軍旗を立てているんだよ。」
そんな大胆な。
「そんなんすぐに気づかれるんじゃないんです? 」
「普通はね。だけど今回は状況がよかった。」
「状況? 」
「俺たちプレドーラを落としてから来ただろ? ニフラインの連中もすでにそのことは知っているはずだ。そこでニフラインの旗を立てた軍がニフライン領内に入ってきたらどう思う? 」
「あ! なるほど、プレドーラに駐屯していた部隊が帰ってきたみたいになるんですね。」
なんでも利用するんだな。
「プレドーラのニフライン兵を全員捕虜にできていたのも良い方に働いたよ。証人がいなくなってしまうからね。」
しかしそうなると、本団は傷一つない防衛線を突破しないといけないのか。ちゃんと宣言通りの日程で来られるのか?
川沿いに進み続けると、山の麓にたどり着いた。ホルンメラン分団はそのあたりで止まると、陣を敷いた。各々の兵たちがテントを組み立てて、馬を木柵に繋いでいた。
メイデン少将は、設営された本部テントに呼ばれてしばらく離れていたが、少しすると戻ってきた。
彼は僕たちの馬車に来た。
「先程、司令官から連絡があった。ここに留まって本団の到着を待つとのことだ。」
本団の到着は、予定通りであれば半日後になるはずだ。その通りになるかは分からないけど、ちょっとの間はゆっくりすることができそうだ。
森を突っ切っていくので、時々曲がらなければならず、その度に我が巨大馬車は遅れてしまっていた。
気づけば軍の最後尾。僕たちより後ろにホルンメランの兵はいないという状況だ。
流石に僕たちだけを置いていくなんてことはしなかったが、それはそれで迷惑をかけているようでいたたまれなかった。
地図を見ると、もうすぐ森を抜けるというところまで来ていた。森を抜けると少しの砂地があり、その先の河を渡ればニフライン管轄内に入ることができる。
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「みんな! 後ろに兵がいます! 」
窓から顔を出していた兵士くんが叫んだ。僕とライアンくんも外を見ると、たしかに兵士の一団。軽騎兵だった。
いないはずである。僕たちの後ろに兵など。
「敵ですよ! あれ! 」
「敵襲だ! 」
みんなが口々に叫んだところに、矢が降り始めた。
ニフライン管轄内に入っていないからといって勝手に安心してしまっていた。そもそもホルンメランじゃない時点で敵襲は十分にありえるのだ。
この部隊の指揮をとるメイデン少将が全体に指示を出した。
「全員、速度を少し上げろ! 振り切れないギリギリだ。」
何言ってるんだ! 振り切れないとダメじゃないか!
訓練された兵士たちは混乱することなく少将に従って速度を速めはじめた。堂々としているのは頼もしいが、どうして振り切ろうとしないのかが理解できない。
メイデン少将は振り切れないまま、それ以上速度を上げなかった。その間も相手方の攻撃は続いている。この馬車にも矢がいくらか刺さった。
「あと少しだ! 頑張れよ。」
何があと少し? 全くわけがわからないまま逃げる身にもなってほしいよ。
そんなときだった。後ろが一層騒がしくなった。
「なんだ? 敵が増えたのか? 」
「いえ、そうじゃなさそうですよ。だってほら。」
矢が飛んで来なくなっていた。さっきからどういうことだろうと首をかしげていたところ
「あれ! 見てください。」
ライアンくんが指さした先には、なんとホルンメランの大将旗。
「パゴスキー少将が来たんですよ! 」
ピオーネが? 彼女は先頭にいるんじゃなかったのか?
敵団は奇襲部隊で数は数百程度だったので、こちらの本隊に攻撃されるとすぐに敗走していった。
ピオーネは僕たちの部隊の安否を確認するためにこちらに単騎でやってきた。
「大丈夫ですか? あなたたち。」
「大丈夫だけど、どういうこと、これ。」
とりあえずは事情が知りたかった。
ピオーネはひとまず僕たちの馬車に乗り込んだ。
「私はもともと、この森で後背から敵襲を受けるだろうとは予想していました。予想通り、敵の影を確認したので、その前を通過したあとにぐるっと回ってあなたたちの後ろに回り込んでいました。」
突然後ろから現れたのはそういうことだったのか。
「しかし、どうして後ろから攻撃されると? 」
「私たちはさっきまで大将旗を仕舞ってたんですよ。木に引っかかって邪魔だから。すると次に目立ってしまうのはあなた方の馬車だったんです。」
僕たちはもう慣れてしまったが、この馬車はやはり巨大すぎる。
「なので、これを見た敵兵はこの馬車に指揮官たる私がいると勘違いするはずです。なので、後ろから攻撃してくると予想していました。」
てことはこれからも僕たちは狙われる可能性があるのか。それは困る。もういっそずっと大将旗は立てておいてもらえないかな。
ピオーネは説明し終えると、すぐに馬車から降りようとした。
「もうここは敵地に等しいですから、先を急ぎましょう。」
本隊が僕たちの後ろについたまま、進軍は再開された。
森を突っ切ると、草がわずかに生えている程度の砂地に出た。砂煙が風に流されて時々こちらにも届いたから、馬車の中も少しざらついてしまった。
「ちょっと暑くありません? 」
兵士くんは袖をまくしあげていた。たしかに暑くなってきた。
「砂漠が近いからね。」
ライアンくんが答えた。
「砂漠? そんなもの地図に描かれていたかい? 」
「ああ、地図にはのってませんよ。砂漠があるのはニフラインのもっと向こう、シャラパナの外ですからね。」
「忘れそうになってたけど、そういえばシャラパナ以外の国もあったんだな。」
「不思議なことを言いますね、タイセイさん。」
雑談をしているうちに砂地は終わりそうになっていた。川が見えてきたのだ。あれを渡ればニフラインだ。
しかし簡単にはいかなそうだ。川の対岸には多数の軍団。ニフライン分団だった。
「ここに兵を配備している余裕があるってことは、まだ本団はニフラインに侵入してはいないようですね。」
兵士くんは双眼鏡で川の向こうを見ていた。
ホルンメラン分団は一旦停止した。このまま渡っても攻撃されてしまう。
と思ったらまた進軍を開始した。しかも、川の中に真っ直ぐ入り始めたのだ。
「何してるんだ? 狙い撃ちにされちゃうんじゃないのか? 」
「分かりません! 何を考えてるんでしょうかね、パゴスキー少将は。」
まるで敵がいないかのようにホルンメランの兵士たちはずんずん進んでいった。
しかし、さらに驚くことが起きた。ニフライン分団は全く攻撃してこないのだ。こちらには当然気づいているはずだ。なのに矢の一本も飛んでこない。
そうこうしているうちに、僕たちの馬車も川に入ってしまった。川底は浅いので、乗っている感じは陸と大して変わらない。
窓外にはメイデン少将が見えたので、彼に尋ねてみた。
「少将! どうしてニフラインは攻撃してこないのです? 」
僕の質問に少将は焦った顔をしていた。彼は無言のまま必死になって人差し指を口の前に立てている。静かにしろっことか?
釈然としないが、少将があまりに必死になっているので、それに従った。
結局少しも攻撃されないまま、僕たちは川を渡りきってしまった。ニフライン分団は相変わらず僕たちのことを静かに見守っている。
ホルンメラン分団が近くに寄ると、ニフラインの兵たちは道を開けてしまった。
「おいおい、どういうことだ? 敵同士だろ? 」
「分かりませんが、何か事情があるのでしょう。」
僕たちはわけの分からないままだったが、軍自体は実にスムーズに進んでいってしまっている。
そのままホルンメランの軍全体が、全く戦闘をしないままニフラインの防衛線を通過してしまった。ホルンメラン一同は予定通りのニフライン入りを果たしたのだ。
軍は速度を少し上げて、ニフライン管轄内を進軍した。渡った川にそのまま沿って北上する方角だ。防衛線は見えないあたりまで進んでから、久しぶりの休憩がとられた。
そこでようやく僕はメイデン少将に話を聞いた。
「あの、さっきは一体どういうことだったんですか? 」
「ああ、あれかい。悪かったな、話してなくて。この軍を見て何か思わないか? 」
僕は軍団を見回した。……なんだあれ。旗が違うじゃないか。
「気づいたかい? 今この軍はニフラインの軍旗を立てているんだよ。」
そんな大胆な。
「そんなんすぐに気づかれるんじゃないんです? 」
「普通はね。だけど今回は状況がよかった。」
「状況? 」
「俺たちプレドーラを落としてから来ただろ? ニフラインの連中もすでにそのことは知っているはずだ。そこでニフラインの旗を立てた軍がニフライン領内に入ってきたらどう思う? 」
「あ! なるほど、プレドーラに駐屯していた部隊が帰ってきたみたいになるんですね。」
なんでも利用するんだな。
「プレドーラのニフライン兵を全員捕虜にできていたのも良い方に働いたよ。証人がいなくなってしまうからね。」
しかしそうなると、本団は傷一つない防衛線を突破しないといけないのか。ちゃんと宣言通りの日程で来られるのか?
川沿いに進み続けると、山の麓にたどり着いた。ホルンメラン分団はそのあたりで止まると、陣を敷いた。各々の兵たちがテントを組み立てて、馬を木柵に繋いでいた。
メイデン少将は、設営された本部テントに呼ばれてしばらく離れていたが、少しすると戻ってきた。
彼は僕たちの馬車に来た。
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