盗賊だけど大剣しか使えません! 〜VRゲームで盗賊になったのに、大剣しか装備することが出来ず絶望していたけど、それはそれで最強だった! 〜

中島菘

文字の大きさ
上 下
39 / 45
五章 ドリーム・リゾートです!

三十九話 PVPアリーナです!

しおりを挟む
 その後、トルクはいろいろなギャンブルを試していた。俺もついていくのだけど、ことごとく負けてしまう。

 一方でトルクはずっと勝ちっぱなし、それなのに全く欲をかかないので、勝ち方も控えめである。

「面白いですね、初めてやりましたけど。」

「それならよかった……。」

 途中から俺はもうやらなくなった。せっかくトルクが勝った分を、俺が無駄にしてしまうからだ。

 結果としては1,200ゴールドのプラス。上々じゃなかろうか。無くならなかった時点で大勝ちだ。

 しばらくすると、ミヤビが戻ってきた。今度は割と時間がかかったな。

「全部無くなっちゃいました!」

「知ってる。」

はじめから勝つなんて思ってない。

 「それよりみんな聞いてくださいよ。」

ゴールド全部擦ったことより大事なことがあるのかよ。

「さっき壁に案内が貼られてるのを見かけたんですけどね。」

「あれ、そんなものあったっけ?」

「僕も夢中で全く見てませんでした。」

「あらあら、仕方ないですね、二人とも。いいですか? 次のエリアへの進出に関わることですよ。」

ミヤビは俺たちを連れて壁際まで歩いた。

 ミヤビが指さした方をみると、貼り紙が一枚掲示されていた。

「『PVPアリーナ開催中!!』だって。これって?」

「パーティー同士の決闘ですよ。毎日トーナメント形式で行われてるらしくて、入賞すると次のエリアに進めるみたいです。」

「へえ、じゃあ今日もあるの?」

「ええありますとも。時間は13時ちょうどから。昼過ぎですね。」

「参加するんですか? 僕たちも?」

「そりゃもちろんですよ。もちろんここも楽しいですけど、早いとこ次に進みたいじゃないですか!」

「僕は足手まといにならないでしょうか?」

「大丈夫! なんとかなりますよ。まだなにも考えてないけど。」

ノープランで行き当たりばったりになるのは毎度のことだから今回もそれでいいだろう。

 でもたしかにこのままではトルクがいささか心許ない。トルクだけがやられるのだってあり得る。できることなら、三人揃って勝ち上がっていきたい。

「それなら、準備しようか。」

「準備ってったって、時間はあと少ししかないですよ?」

「いやいや、レベル上げを少しするくらいならできるよ。」

「私も賛成ですね。トルクさんにも早く強くなってもらいたいですから。」



 そんなわけで、一旦リゾートをでてきた。

「でもこのエリア、モンスター少ないんでしたよね。」

「敵は多少弱くなっちゃうけど、砂漠まで戻るか。」

「えー! また砂漠ですか。」

案の定ミヤビはゴネたけど、砂漠まで直行した。

 砂漠に着くと一気にモンスターが現れるようになった。もちろんその全てを倒していく。

 『隠密』を使うまでもない。大剣で吹き飛ばすか、毒まみれにするかの二択だ。モンスターたちが群れで現れたとしても、一網打尽にできる。

 トルクはほぼ戦闘に参加していないようなものだったが、経験値は貰えるので、期待通りにレベルが上がった。

「戦ってないのにレベルが上がるってのも不思議な話ですね。」

「RPGのおかしなところだよ。でも確かにトルクが戦い慣れていないのも問題だよな。」

 というわけで、一回トルク自身にも戦ってもらうことにした。

 さっそく現れた敵は化けコブラ一匹。空気を読んで一匹で現れてくれたありがたいコブラだ。

「『隠密』!」

さっそくトルクは身を隠した。

 あ、そういえばトルクも使えるのか。その作戦。

「おおおりゃ!」

トルクはコブラの頭を打ち抜いた。

 コブラはスタンして、地面に這いつくばって動かなくなってしまった。

 トルクはそのコブラに対してハンマーを何度も振り下ろした。スタンプ、スタンプ、スタンプ、スタンプ!

 レベル不足の攻撃力不足であっても、こう何度も攻撃すれば流石にコブラも力尽きた。

「お! やりましたよ。」

「す、すごいじゃないか。」

やっぱり教えなくてもみんな同じ戦い方をするようになるんだな、バグプレイヤーってのは。

 忘れがちだが、この『隠密』というスキルは、普通の盗賊が使えば別にぶっ壊れスキルではない。

 そもそも盗賊は今のところ短剣しか装備出来ないので、攻撃力は低い。だから『隠密』で隠れたところで、ショボい攻撃一発当てたら解除されてしまうのだ。

 

 リゾートに戻った頃には、俺とミヤビのレベルが26と25。トルクのレベルは18になっていた。多分問題ないだろうと思う。

 入場時間が迫ってきたので、俺たちは会場となるリゾートタワー3階に上がった。エントリーはすでにミヤビが済ませてくれているらしく、3階の受付ではすぐに中へと通してもらえた。

 案内されたのは控え室。現実のスポーツ大会さながらだ。試合会場を映す大きなモニターも置かれていた。

 控室の前にはトーナメント表が貼ってあった。参加パーティーは32パーティーだ。5回勝てば優勝だ。

 控え室には他のプレイヤーも集まっていた。この中のいくらかとは実際これから戦う。

 13時になった。

「始まりますよ、ロータスさん。」

二人が見つめるモニターには、いつもの案内ドラゴンが現れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

【14万PV感謝!!】異世界で配合屋始めたら思いのほか需要がありました! 〜魔物の配合が世界を変える〜

中島菘
ファンタジー
 電車で刺された男・タイセイは気づけば魔物が人間と共に堂々と道の真ん中を闊歩するような異世界にいた。身分も何もかもない状態になってしまい、途方に暮れる彼だったが、偶然取り組み始めた配合による小魚の新種の作成を始めた。  配合というアイデアは、画期的なアイデアで、ある日彼が転生した大都市ホルンメランの美少女首長がそれに目をつけ、タイセイを呼び出す。  彼女との出会いをきっかけとして、タイセイの異世界生活は大きく動き出しはじめた!   やがてタイセイの数奇な運命は異世界全体を巻き込んでいく……

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

処理中です...