盗賊だけど大剣しか使えません! 〜VRゲームで盗賊になったのに、大剣しか装備することが出来ず絶望していたけど、それはそれで最強だった! 〜

中島菘

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五章 ドリーム・リゾートです!

三十九話 PVPアリーナです!

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 その後、トルクはいろいろなギャンブルを試していた。俺もついていくのだけど、ことごとく負けてしまう。

 一方でトルクはずっと勝ちっぱなし、それなのに全く欲をかかないので、勝ち方も控えめである。

「面白いですね、初めてやりましたけど。」

「それならよかった……。」

 途中から俺はもうやらなくなった。せっかくトルクが勝った分を、俺が無駄にしてしまうからだ。

 結果としては1,200ゴールドのプラス。上々じゃなかろうか。無くならなかった時点で大勝ちだ。

 しばらくすると、ミヤビが戻ってきた。今度は割と時間がかかったな。

「全部無くなっちゃいました!」

「知ってる。」

はじめから勝つなんて思ってない。

 「それよりみんな聞いてくださいよ。」

ゴールド全部擦ったことより大事なことがあるのかよ。

「さっき壁に案内が貼られてるのを見かけたんですけどね。」

「あれ、そんなものあったっけ?」

「僕も夢中で全く見てませんでした。」

「あらあら、仕方ないですね、二人とも。いいですか? 次のエリアへの進出に関わることですよ。」

ミヤビは俺たちを連れて壁際まで歩いた。

 ミヤビが指さした方をみると、貼り紙が一枚掲示されていた。

「『PVPアリーナ開催中!!』だって。これって?」

「パーティー同士の決闘ですよ。毎日トーナメント形式で行われてるらしくて、入賞すると次のエリアに進めるみたいです。」

「へえ、じゃあ今日もあるの?」

「ええありますとも。時間は13時ちょうどから。昼過ぎですね。」

「参加するんですか? 僕たちも?」

「そりゃもちろんですよ。もちろんここも楽しいですけど、早いとこ次に進みたいじゃないですか!」

「僕は足手まといにならないでしょうか?」

「大丈夫! なんとかなりますよ。まだなにも考えてないけど。」

ノープランで行き当たりばったりになるのは毎度のことだから今回もそれでいいだろう。

 でもたしかにこのままではトルクがいささか心許ない。トルクだけがやられるのだってあり得る。できることなら、三人揃って勝ち上がっていきたい。

「それなら、準備しようか。」

「準備ってったって、時間はあと少ししかないですよ?」

「いやいや、レベル上げを少しするくらいならできるよ。」

「私も賛成ですね。トルクさんにも早く強くなってもらいたいですから。」



 そんなわけで、一旦リゾートをでてきた。

「でもこのエリア、モンスター少ないんでしたよね。」

「敵は多少弱くなっちゃうけど、砂漠まで戻るか。」

「えー! また砂漠ですか。」

案の定ミヤビはゴネたけど、砂漠まで直行した。

 砂漠に着くと一気にモンスターが現れるようになった。もちろんその全てを倒していく。

 『隠密』を使うまでもない。大剣で吹き飛ばすか、毒まみれにするかの二択だ。モンスターたちが群れで現れたとしても、一網打尽にできる。

 トルクはほぼ戦闘に参加していないようなものだったが、経験値は貰えるので、期待通りにレベルが上がった。

「戦ってないのにレベルが上がるってのも不思議な話ですね。」

「RPGのおかしなところだよ。でも確かにトルクが戦い慣れていないのも問題だよな。」

 というわけで、一回トルク自身にも戦ってもらうことにした。

 さっそく現れた敵は化けコブラ一匹。空気を読んで一匹で現れてくれたありがたいコブラだ。

「『隠密』!」

さっそくトルクは身を隠した。

 あ、そういえばトルクも使えるのか。その作戦。

「おおおりゃ!」

トルクはコブラの頭を打ち抜いた。

 コブラはスタンして、地面に這いつくばって動かなくなってしまった。

 トルクはそのコブラに対してハンマーを何度も振り下ろした。スタンプ、スタンプ、スタンプ、スタンプ!

 レベル不足の攻撃力不足であっても、こう何度も攻撃すれば流石にコブラも力尽きた。

「お! やりましたよ。」

「す、すごいじゃないか。」

やっぱり教えなくてもみんな同じ戦い方をするようになるんだな、バグプレイヤーってのは。

 忘れがちだが、この『隠密』というスキルは、普通の盗賊が使えば別にぶっ壊れスキルではない。

 そもそも盗賊は今のところ短剣しか装備出来ないので、攻撃力は低い。だから『隠密』で隠れたところで、ショボい攻撃一発当てたら解除されてしまうのだ。

 

 リゾートに戻った頃には、俺とミヤビのレベルが26と25。トルクのレベルは18になっていた。多分問題ないだろうと思う。

 入場時間が迫ってきたので、俺たちは会場となるリゾートタワー3階に上がった。エントリーはすでにミヤビが済ませてくれているらしく、3階の受付ではすぐに中へと通してもらえた。

 案内されたのは控え室。現実のスポーツ大会さながらだ。試合会場を映す大きなモニターも置かれていた。

 控室の前にはトーナメント表が貼ってあった。参加パーティーは32パーティーだ。5回勝てば優勝だ。

 控え室には他のプレイヤーも集まっていた。この中のいくらかとは実際これから戦う。

 13時になった。

「始まりますよ、ロータスさん。」

二人が見つめるモニターには、いつもの案内ドラゴンが現れた。
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