盗賊だけど大剣しか使えません! 〜VRゲームで盗賊になったのに、大剣しか装備することが出来ず絶望していたけど、それはそれで最強だった! 〜

中島菘

文字の大きさ
上 下
38 / 45
五章 ドリーム・リゾートです!

三十八話 無欲な人ほど?

しおりを挟む
 昨日大負けしたばかりだというのに、またミヤビはギャンブルをしようとしている。

「待て待て、また負けたらどうするんだよ。てか負けるだろ?」

「やってみなくちゃ分からないじゃないですか! それに、昨日の負けも取り返さなきゃならないし。」

ああもうダメだ、完全にハマってしまってる。

 俺はゴールドを取り出した。ミヤビがギャンブルで擦ってから、俺がゴールドの管理をするようにしている。

「こんだけだぞ?」

俺はミヤビに500ゴールドだけを渡した。

「おお! ありがとうございます! 待っててください、増やしてきますから。」

絶対また擦るな。

 500ゴールドを受け取ると、ミヤビはカジノの中へと駆けていった。取り残されたのは俺とトルク。

「俺たちも中に入ろうか。君は初めてだろ。」

ミヤビが入っていった扉から俺たちも続けて入った。

 カジノは今日も盛況だった。ギャンブルが好きなのは人間の習性じゃなかろうかとさえ思ってしまう。

「何しようか?」

「僕、こういうの初めてですから、何があるかも分からないです。」

あら、真面目なことで。

「じゃあ簡単なやつから行こうか。」

俺はトルクと一緒にポーカーのところへ向かった。

 ポーカーなら、わりかし簡単なような気がした。

「ポーカーのルールは知ってる? インディアンじゃなくて、簡単な方のやつ。」

「何かしらでちょっとやったことはあります。役揃えればいいんですよね?」

「うーん、まあそんくらいの認識でいいんじゃないか?」

 俺たちはテーブルについた。ディーラーに参加意思を伝えると、彼は俺たちに賭け金を尋ねた。

「100ゴールドで。」

「へ、へえ。そんなに賭けるものなんですね。じゃあ、僕も100ゴールドで。」

伝えるとディーラーはカードを俺たちに配った。

 ディーラーの役に勝つことができれば、賭け金の二倍が返ってくる。同じ役か、それよりも弱い役ならば、1ゴールドも返ってこない。至極単純なルールだ。

 俺の五枚は、あまりいい手ではなかった。クローバーとハートの8がワンペアで、あとはバラバラ。

「交換は?」

「三枚で。」

交換は一回まで、何枚でも交換できるらしい。

 新しい三枚が配られたが、それらも全部バラバラだった。ディーラーが役なしでもない限りは、俺の賭け金は持っていかれる。

 トルクの方を見てみると、四枚交換していた。そんなに手が悪いのだろうか? トルクのもとには新しい四枚が配られた。

 ディーラーの方はというと、一枚交換していた。これはすでに、ある程度の役が完成しているということだろう。あとはこれがより良くなるかどうか。

 少なくとも俺がディーラーに勝つことは絶望的だ。

「それでは、オープン。」

三人が一斉にカードを表にした。

 俺はワンペア。気になるディーラーの方を見ると、

「あいたた……。」

スリーカードだ。やはり良い役だった。俺は負けだ。

 ディーラーは俺の賭け金を持っていくと、何故かそれをそのままトルクの賭け金のところに合わせた。

「お客様、200ゴールドの払い戻しです。」

「お、ありがとうございます!」

トルクの手札を見ると、これがびっくり。クイーンが三枚に、5が二枚、フルハウスである。

 なんとトルクは初っ端から勝ったのだ。

「すごいな、トルク。」

「いや、ビギナーズラックってやつじゃないですか?」

総額で言えばプラマイゼロだ。俺が負けちゃったから。

 しかし幸先がいいぞ。俺は相変わらず負けがこんでいるようなので、次は大人しくトルクがやるのを後ろから見ていることにした。

「賭け金はいくらになさいますか?」

「じゃあまた100ゴールドで。」

 ディーラーはまた五枚のカードをトルクの前に配った。彼の手札を後ろから覗いてみると、10が二枚と6と2とキング。

 綺麗にばらけてしまっている。やはり、ビギナーズラックは一回きりだということか。

「交換は?」

「じゃあ、三枚で。」

このまま10を二枚残したまま、三枚の交換で役が良くなることを祈るばかりか。

 と、思っていたが、トルクは意外な手に出た。

「じゃあこれで。」

トルクが交換に出した三枚は、2とキング、そして10だった。

「え?」

せっかくペアになっていた10を片方捨てて崩してしまったのだ。

 一見負けに行ってるようにしか見えない。いや、実際後ろの俺には理解が出来なかった。

 新しい三枚がトルクのもとに配られた。そのカードを手札に加えたとき、俺は震えた。

 配られた新しいカードは、7と8、そして9。

「おいおい、嘘だろ。」

ワンペアだったトルクの手札は、ストレートになってしまった。

 ディーラーの手札の交換も終わった。

「では、オープン。」

ディーラーの手札はツーペア。当然トルクの勝ちである。

 200ゴールドが払い戻された。トルクは二連勝してしまったのだ。

 俺はトルクがもう一回戦いくものだと思って見ていたが、トルクは席から立ち上がった。

「楽しかったです。悪くないですね、こういうのも。」

「あれ、もう終わるの?」

「ええ、他のもやってみたくなりましたし。」

あれ、勢いに乗って勝ち続けようとは思わないんだ。

 こいつ、それほどには勝とうと思ってない。ただ純粋にゲームとして楽しんでやがる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

7人のメイド物語

モモん
ファンタジー
理不尽な人生と不自由さ…… そんな物語を描いてみたいなと思います。 そこに、スーパーメイドが絡んで……ドタバタ喜劇になるかもしれません。

Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~

霧氷こあ
SF
 フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。  それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?  見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。 「ここは現実であって、現実ではないの」  自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

処理中です...