36 / 45
五章 ドリーム・リゾートです!
三十六話 三人で南国入りです!
しおりを挟む
W5の突破条件は、オイルタンクが出すオイルを1バレル一杯を納品することだ。俺たちのときは、結構手こずった記憶があるが、今回は二回目だ。
慣れていると思うし、なによりも人員が増えている。
「もう町に寄らなくったっていいでしょう?」
「いや、トルクの装備を整えよう。」
「何から何までほんとにありがとうございます。」
町によって、武器屋に入った。
次のエリアについてからでもいいが、南国の装備の店には、水着ばかりが並んでいるから、ノーマルな装備を買おうと思ったら、むしろこちらの方がいいのだ。
トルクの武器はハンマー。今彼が背負っているのは初期装備。「ストーンハンマー」という石の武器だった。
「ここにあるハンマーで一番強いのは……。」
「これじゃないですか?」
ハンマーのリストの一番下にあったのは、「鉄槌」という名前のハンマー。確かに攻撃力は一番だった。
「じゃあとりあえずこれかな?」
「そうですね。」
2,500ゴールドを支払って、その「鉄槌」を受け取った。
金欠の状況だが、新しい仲間のためだから出し惜しみはしない。
防具の方は、俺たちと同じ「盗賊のローブ」を装備してもらった。現状これよりも強い盗賊の装備がないからだ。盗賊はそもそも防御力を重視していない。
三人とも物理系だというのに、これは辛いところだ。ミヤビの武器に関しては、本来物理ではないのだが。
防具屋を出ると、ギルドに向かった。
「そういえば忘れてましたけど、タルとリアカー受け取らないといけませんでしたね。」
「どうやってオイル集めるつもりだったんだよ。」
前にもやった手続きをさっさと済ませると、入り口横に置いてあるリアカーを引っ張って町を出た。
オイルタンクがどこに集まっているのかは、前回の経験で、既に知っている。
「さあ、裏手に向かおう。」
「今回は楽にいきそうですね。」
「そんな簡単なんですか?」
「知ってさえいればね。」
街の裏手のオアシスには、期待通りに大勢のオイルタンクたちがひしめいていた。
「よし、じゃあ始めようか。」
「ロータスさんは全部まとめて吹っ飛ばしちゃうだろうから、後ろに下がっておいてください。」
「あ、うん……。」
ミヤビは俺を置いてオイルタンクに近づいていき、トルクもそれについていった。
トルクがリアカーを引っ張って、ミヤビが倒したオイルタンクからオイルを回収していく。
しばらくミヤビが暴れた後で、彼女は止まった。
「せっかくだから、トルクさんも戦ってみたらどうですか?」
「え、僕が?」
「そうです。このラクダたち弱いし、大丈夫ですよ。」
トルクは促されて前に出た。彼に代わって今度はミヤビがリアカーを引っ張り始めた。
ずっと何もしないのもどうかと思うので、
「俺もタルくらい持つよ。」
と申し出た。繊細な仕事になった瞬間役に立たなくなってしまうのは悲しい。
ミヤビはリアカーの持ち手を差し出してきた。
「それじゃあ、これお願いしますね。私はトルクさんの補助に入るので。」
トルクはハンマーを担いだ。
「『隠密』!」
彼は身を隠した。しばらく沈黙が続いたが
「ギャオ!」
突然一番前にいたオイルタンクが悲鳴を上げて倒れた。
倒れ方からみて、頭を打ち抜かれたらしい。ラクダが倒れたと同時に、トルクが姿を現した。
しかし不思議だった。倒れて動かなくなってしまったオイルタンクの体はいつまでたっても崩れていかない。
つまり、倒したわけではないのだ。ただ、全く動かない。
「どうしたんだ、これ?」
「僕にもよくわからないんですけど、頭を攻撃した時だけこうなるんですよ。」
ミヤビが倒れたオイルタンクに近づいた。
「ああこれ、スタンしてますよ。」
「スタン?」
「気絶してるってことです。打撃武器にはそういう効果がついてるんですよ。頭を攻撃すると倒せなくとも意識は飛ばせるっていう。」
ミヤビは足もとにドロップしているオイルを拾い上げた。
「それに、ほら! オイルが普通よりもたくさん落ちてますよ。」
嬉々としてタルにそのオイルを突っ込んだのをみると、たしかに結構な量だった。
トルクのハンマーのおかげで、ラクダをスタンさせられたらしい。
「僕の攻撃って特殊なんですね。」
「普通はたまたま頭に命中したときに気絶することがあるっていうラッキー要素なんですけどね。貴方の場合は『隠密』が使えますから、ほぼ100%頭に命中させることができるでしょう?」
「ええ、ミスしない限りは。」
ほほう、また盗賊の特性と武器が変な噛み合い方したな。
ほぼ必ず相手の意識を持っていけるのは、かなり強い。つくづく思うが、バグも捉えようだな。
通常よりもオイルがたくさん取れるという特典付きならば、なおのことありがたい。あとは全てトルクが同じように『隠密』からの頭への攻撃でスタンをとってオイルを回収し続けた。
程なくして、1バレルのタルは満杯になってしまった。
「これで晴れてW5も突破ですね。二回目の砂漠はあんまり気乗りしませんでしたが、なんだかんだ楽しかったですよ。」
「いやあ、本当に何から何まで。」
「いやいや、君もかなり活躍だったじゃないか。」
こうして俺たちは三人での南国入りの資格を手にした。
慣れていると思うし、なによりも人員が増えている。
「もう町に寄らなくったっていいでしょう?」
「いや、トルクの装備を整えよう。」
「何から何までほんとにありがとうございます。」
町によって、武器屋に入った。
次のエリアについてからでもいいが、南国の装備の店には、水着ばかりが並んでいるから、ノーマルな装備を買おうと思ったら、むしろこちらの方がいいのだ。
トルクの武器はハンマー。今彼が背負っているのは初期装備。「ストーンハンマー」という石の武器だった。
「ここにあるハンマーで一番強いのは……。」
「これじゃないですか?」
ハンマーのリストの一番下にあったのは、「鉄槌」という名前のハンマー。確かに攻撃力は一番だった。
「じゃあとりあえずこれかな?」
「そうですね。」
2,500ゴールドを支払って、その「鉄槌」を受け取った。
金欠の状況だが、新しい仲間のためだから出し惜しみはしない。
防具の方は、俺たちと同じ「盗賊のローブ」を装備してもらった。現状これよりも強い盗賊の装備がないからだ。盗賊はそもそも防御力を重視していない。
三人とも物理系だというのに、これは辛いところだ。ミヤビの武器に関しては、本来物理ではないのだが。
防具屋を出ると、ギルドに向かった。
「そういえば忘れてましたけど、タルとリアカー受け取らないといけませんでしたね。」
「どうやってオイル集めるつもりだったんだよ。」
前にもやった手続きをさっさと済ませると、入り口横に置いてあるリアカーを引っ張って町を出た。
オイルタンクがどこに集まっているのかは、前回の経験で、既に知っている。
「さあ、裏手に向かおう。」
「今回は楽にいきそうですね。」
「そんな簡単なんですか?」
「知ってさえいればね。」
街の裏手のオアシスには、期待通りに大勢のオイルタンクたちがひしめいていた。
「よし、じゃあ始めようか。」
「ロータスさんは全部まとめて吹っ飛ばしちゃうだろうから、後ろに下がっておいてください。」
「あ、うん……。」
ミヤビは俺を置いてオイルタンクに近づいていき、トルクもそれについていった。
トルクがリアカーを引っ張って、ミヤビが倒したオイルタンクからオイルを回収していく。
しばらくミヤビが暴れた後で、彼女は止まった。
「せっかくだから、トルクさんも戦ってみたらどうですか?」
「え、僕が?」
「そうです。このラクダたち弱いし、大丈夫ですよ。」
トルクは促されて前に出た。彼に代わって今度はミヤビがリアカーを引っ張り始めた。
ずっと何もしないのもどうかと思うので、
「俺もタルくらい持つよ。」
と申し出た。繊細な仕事になった瞬間役に立たなくなってしまうのは悲しい。
ミヤビはリアカーの持ち手を差し出してきた。
「それじゃあ、これお願いしますね。私はトルクさんの補助に入るので。」
トルクはハンマーを担いだ。
「『隠密』!」
彼は身を隠した。しばらく沈黙が続いたが
「ギャオ!」
突然一番前にいたオイルタンクが悲鳴を上げて倒れた。
倒れ方からみて、頭を打ち抜かれたらしい。ラクダが倒れたと同時に、トルクが姿を現した。
しかし不思議だった。倒れて動かなくなってしまったオイルタンクの体はいつまでたっても崩れていかない。
つまり、倒したわけではないのだ。ただ、全く動かない。
「どうしたんだ、これ?」
「僕にもよくわからないんですけど、頭を攻撃した時だけこうなるんですよ。」
ミヤビが倒れたオイルタンクに近づいた。
「ああこれ、スタンしてますよ。」
「スタン?」
「気絶してるってことです。打撃武器にはそういう効果がついてるんですよ。頭を攻撃すると倒せなくとも意識は飛ばせるっていう。」
ミヤビは足もとにドロップしているオイルを拾い上げた。
「それに、ほら! オイルが普通よりもたくさん落ちてますよ。」
嬉々としてタルにそのオイルを突っ込んだのをみると、たしかに結構な量だった。
トルクのハンマーのおかげで、ラクダをスタンさせられたらしい。
「僕の攻撃って特殊なんですね。」
「普通はたまたま頭に命中したときに気絶することがあるっていうラッキー要素なんですけどね。貴方の場合は『隠密』が使えますから、ほぼ100%頭に命中させることができるでしょう?」
「ええ、ミスしない限りは。」
ほほう、また盗賊の特性と武器が変な噛み合い方したな。
ほぼ必ず相手の意識を持っていけるのは、かなり強い。つくづく思うが、バグも捉えようだな。
通常よりもオイルがたくさん取れるという特典付きならば、なおのことありがたい。あとは全てトルクが同じように『隠密』からの頭への攻撃でスタンをとってオイルを回収し続けた。
程なくして、1バレルのタルは満杯になってしまった。
「これで晴れてW5も突破ですね。二回目の砂漠はあんまり気乗りしませんでしたが、なんだかんだ楽しかったですよ。」
「いやあ、本当に何から何まで。」
「いやいや、君もかなり活躍だったじゃないか。」
こうして俺たちは三人での南国入りの資格を手にした。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
【14万PV感謝!!】異世界で配合屋始めたら思いのほか需要がありました! 〜魔物の配合が世界を変える〜
中島菘
ファンタジー
電車で刺された男・タイセイは気づけば魔物が人間と共に堂々と道の真ん中を闊歩するような異世界にいた。身分も何もかもない状態になってしまい、途方に暮れる彼だったが、偶然取り組み始めた配合による小魚の新種の作成を始めた。
配合というアイデアは、画期的なアイデアで、ある日彼が転生した大都市ホルンメランの美少女首長がそれに目をつけ、タイセイを呼び出す。
彼女との出会いをきっかけとして、タイセイの異世界生活は大きく動き出しはじめた!
やがてタイセイの数奇な運命は異世界全体を巻き込んでいく……
沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』
倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる