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五章 ドリーム・リゾートです!
三十六話 三人で南国入りです!
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W5の突破条件は、オイルタンクが出すオイルを1バレル一杯を納品することだ。俺たちのときは、結構手こずった記憶があるが、今回は二回目だ。
慣れていると思うし、なによりも人員が増えている。
「もう町に寄らなくったっていいでしょう?」
「いや、トルクの装備を整えよう。」
「何から何までほんとにありがとうございます。」
町によって、武器屋に入った。
次のエリアについてからでもいいが、南国の装備の店には、水着ばかりが並んでいるから、ノーマルな装備を買おうと思ったら、むしろこちらの方がいいのだ。
トルクの武器はハンマー。今彼が背負っているのは初期装備。「ストーンハンマー」という石の武器だった。
「ここにあるハンマーで一番強いのは……。」
「これじゃないですか?」
ハンマーのリストの一番下にあったのは、「鉄槌」という名前のハンマー。確かに攻撃力は一番だった。
「じゃあとりあえずこれかな?」
「そうですね。」
2,500ゴールドを支払って、その「鉄槌」を受け取った。
金欠の状況だが、新しい仲間のためだから出し惜しみはしない。
防具の方は、俺たちと同じ「盗賊のローブ」を装備してもらった。現状これよりも強い盗賊の装備がないからだ。盗賊はそもそも防御力を重視していない。
三人とも物理系だというのに、これは辛いところだ。ミヤビの武器に関しては、本来物理ではないのだが。
防具屋を出ると、ギルドに向かった。
「そういえば忘れてましたけど、タルとリアカー受け取らないといけませんでしたね。」
「どうやってオイル集めるつもりだったんだよ。」
前にもやった手続きをさっさと済ませると、入り口横に置いてあるリアカーを引っ張って町を出た。
オイルタンクがどこに集まっているのかは、前回の経験で、既に知っている。
「さあ、裏手に向かおう。」
「今回は楽にいきそうですね。」
「そんな簡単なんですか?」
「知ってさえいればね。」
街の裏手のオアシスには、期待通りに大勢のオイルタンクたちがひしめいていた。
「よし、じゃあ始めようか。」
「ロータスさんは全部まとめて吹っ飛ばしちゃうだろうから、後ろに下がっておいてください。」
「あ、うん……。」
ミヤビは俺を置いてオイルタンクに近づいていき、トルクもそれについていった。
トルクがリアカーを引っ張って、ミヤビが倒したオイルタンクからオイルを回収していく。
しばらくミヤビが暴れた後で、彼女は止まった。
「せっかくだから、トルクさんも戦ってみたらどうですか?」
「え、僕が?」
「そうです。このラクダたち弱いし、大丈夫ですよ。」
トルクは促されて前に出た。彼に代わって今度はミヤビがリアカーを引っ張り始めた。
ずっと何もしないのもどうかと思うので、
「俺もタルくらい持つよ。」
と申し出た。繊細な仕事になった瞬間役に立たなくなってしまうのは悲しい。
ミヤビはリアカーの持ち手を差し出してきた。
「それじゃあ、これお願いしますね。私はトルクさんの補助に入るので。」
トルクはハンマーを担いだ。
「『隠密』!」
彼は身を隠した。しばらく沈黙が続いたが
「ギャオ!」
突然一番前にいたオイルタンクが悲鳴を上げて倒れた。
倒れ方からみて、頭を打ち抜かれたらしい。ラクダが倒れたと同時に、トルクが姿を現した。
しかし不思議だった。倒れて動かなくなってしまったオイルタンクの体はいつまでたっても崩れていかない。
つまり、倒したわけではないのだ。ただ、全く動かない。
「どうしたんだ、これ?」
「僕にもよくわからないんですけど、頭を攻撃した時だけこうなるんですよ。」
ミヤビが倒れたオイルタンクに近づいた。
「ああこれ、スタンしてますよ。」
「スタン?」
「気絶してるってことです。打撃武器にはそういう効果がついてるんですよ。頭を攻撃すると倒せなくとも意識は飛ばせるっていう。」
ミヤビは足もとにドロップしているオイルを拾い上げた。
「それに、ほら! オイルが普通よりもたくさん落ちてますよ。」
嬉々としてタルにそのオイルを突っ込んだのをみると、たしかに結構な量だった。
トルクのハンマーのおかげで、ラクダをスタンさせられたらしい。
「僕の攻撃って特殊なんですね。」
「普通はたまたま頭に命中したときに気絶することがあるっていうラッキー要素なんですけどね。貴方の場合は『隠密』が使えますから、ほぼ100%頭に命中させることができるでしょう?」
「ええ、ミスしない限りは。」
ほほう、また盗賊の特性と武器が変な噛み合い方したな。
ほぼ必ず相手の意識を持っていけるのは、かなり強い。つくづく思うが、バグも捉えようだな。
通常よりもオイルがたくさん取れるという特典付きならば、なおのことありがたい。あとは全てトルクが同じように『隠密』からの頭への攻撃でスタンをとってオイルを回収し続けた。
程なくして、1バレルのタルは満杯になってしまった。
「これで晴れてW5も突破ですね。二回目の砂漠はあんまり気乗りしませんでしたが、なんだかんだ楽しかったですよ。」
「いやあ、本当に何から何まで。」
「いやいや、君もかなり活躍だったじゃないか。」
こうして俺たちは三人での南国入りの資格を手にした。
慣れていると思うし、なによりも人員が増えている。
「もう町に寄らなくったっていいでしょう?」
「いや、トルクの装備を整えよう。」
「何から何までほんとにありがとうございます。」
町によって、武器屋に入った。
次のエリアについてからでもいいが、南国の装備の店には、水着ばかりが並んでいるから、ノーマルな装備を買おうと思ったら、むしろこちらの方がいいのだ。
トルクの武器はハンマー。今彼が背負っているのは初期装備。「ストーンハンマー」という石の武器だった。
「ここにあるハンマーで一番強いのは……。」
「これじゃないですか?」
ハンマーのリストの一番下にあったのは、「鉄槌」という名前のハンマー。確かに攻撃力は一番だった。
「じゃあとりあえずこれかな?」
「そうですね。」
2,500ゴールドを支払って、その「鉄槌」を受け取った。
金欠の状況だが、新しい仲間のためだから出し惜しみはしない。
防具の方は、俺たちと同じ「盗賊のローブ」を装備してもらった。現状これよりも強い盗賊の装備がないからだ。盗賊はそもそも防御力を重視していない。
三人とも物理系だというのに、これは辛いところだ。ミヤビの武器に関しては、本来物理ではないのだが。
防具屋を出ると、ギルドに向かった。
「そういえば忘れてましたけど、タルとリアカー受け取らないといけませんでしたね。」
「どうやってオイル集めるつもりだったんだよ。」
前にもやった手続きをさっさと済ませると、入り口横に置いてあるリアカーを引っ張って町を出た。
オイルタンクがどこに集まっているのかは、前回の経験で、既に知っている。
「さあ、裏手に向かおう。」
「今回は楽にいきそうですね。」
「そんな簡単なんですか?」
「知ってさえいればね。」
街の裏手のオアシスには、期待通りに大勢のオイルタンクたちがひしめいていた。
「よし、じゃあ始めようか。」
「ロータスさんは全部まとめて吹っ飛ばしちゃうだろうから、後ろに下がっておいてください。」
「あ、うん……。」
ミヤビは俺を置いてオイルタンクに近づいていき、トルクもそれについていった。
トルクがリアカーを引っ張って、ミヤビが倒したオイルタンクからオイルを回収していく。
しばらくミヤビが暴れた後で、彼女は止まった。
「せっかくだから、トルクさんも戦ってみたらどうですか?」
「え、僕が?」
「そうです。このラクダたち弱いし、大丈夫ですよ。」
トルクは促されて前に出た。彼に代わって今度はミヤビがリアカーを引っ張り始めた。
ずっと何もしないのもどうかと思うので、
「俺もタルくらい持つよ。」
と申し出た。繊細な仕事になった瞬間役に立たなくなってしまうのは悲しい。
ミヤビはリアカーの持ち手を差し出してきた。
「それじゃあ、これお願いしますね。私はトルクさんの補助に入るので。」
トルクはハンマーを担いだ。
「『隠密』!」
彼は身を隠した。しばらく沈黙が続いたが
「ギャオ!」
突然一番前にいたオイルタンクが悲鳴を上げて倒れた。
倒れ方からみて、頭を打ち抜かれたらしい。ラクダが倒れたと同時に、トルクが姿を現した。
しかし不思議だった。倒れて動かなくなってしまったオイルタンクの体はいつまでたっても崩れていかない。
つまり、倒したわけではないのだ。ただ、全く動かない。
「どうしたんだ、これ?」
「僕にもよくわからないんですけど、頭を攻撃した時だけこうなるんですよ。」
ミヤビが倒れたオイルタンクに近づいた。
「ああこれ、スタンしてますよ。」
「スタン?」
「気絶してるってことです。打撃武器にはそういう効果がついてるんですよ。頭を攻撃すると倒せなくとも意識は飛ばせるっていう。」
ミヤビは足もとにドロップしているオイルを拾い上げた。
「それに、ほら! オイルが普通よりもたくさん落ちてますよ。」
嬉々としてタルにそのオイルを突っ込んだのをみると、たしかに結構な量だった。
トルクのハンマーのおかげで、ラクダをスタンさせられたらしい。
「僕の攻撃って特殊なんですね。」
「普通はたまたま頭に命中したときに気絶することがあるっていうラッキー要素なんですけどね。貴方の場合は『隠密』が使えますから、ほぼ100%頭に命中させることができるでしょう?」
「ええ、ミスしない限りは。」
ほほう、また盗賊の特性と武器が変な噛み合い方したな。
ほぼ必ず相手の意識を持っていけるのは、かなり強い。つくづく思うが、バグも捉えようだな。
通常よりもオイルがたくさん取れるという特典付きならば、なおのことありがたい。あとは全てトルクが同じように『隠密』からの頭への攻撃でスタンをとってオイルを回収し続けた。
程なくして、1バレルのタルは満杯になってしまった。
「これで晴れてW5も突破ですね。二回目の砂漠はあんまり気乗りしませんでしたが、なんだかんだ楽しかったですよ。」
「いやあ、本当に何から何まで。」
「いやいや、君もかなり活躍だったじゃないか。」
こうして俺たちは三人での南国入りの資格を手にした。
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