35 / 45
五章 ドリーム・リゾートです!
三十五話 南国行きの手助けです!
しおりを挟む
トルクは、関所の見えない壁に阻まれたのだ。
「あれ、僕だけ通れませんよ。」
「そうだった。まだトルクだけエリア進出条件を満たしていないんだった。」
最初のエリアから次のエリアに進むために必要な条件は特別指定のモンスター一匹の討伐だ。
「これってさっき倒したあの虎はカウントされないんですか?」
「フォレストファング」を倒したのはトルクが正式に加入する前だったからね。そういえば忘れてたよ。条件が設定されているの。」
このままではトルクだけがこのエリアを出ることができない。
俺たちは一旦エリアの中に戻った。
「特別指定を倒さなきゃいけないらしい。これってパーティーで倒せばトルク本人がとどめをささなくてもいいんだよな。」
「確かそうだったはずです。スケルトンを倒したときだって、トドメをさしたのは私でしたけど、ロータスさんも条件クリアになってましたから。」
それじゃあ、もう一度特別指定のモンスターを探して倒さなければならないということか。
というわけで、二度手間も甚だしいが、ギルドに戻った。
「クエストの中に、特別指定のモンスターと戦えるやつがあるはずですよ。」
ミヤビはガサゴソと掲示板をいじくり回したあげく、一枚の紙を引っこ抜いてきた。
「これ、どうですか?」
「ふーん、『ラビットホーンの討伐』か。いいんじゃないか。」
「僕が太刀打ちできる相手なんですか?」
「いやいや、心配しなくても大丈夫だよ。」
ラビットホーン、名前からしてウサギの魔物だろう。懸賞金は、3,500ゴールドと出ていた。
さっきの森の中に現れるようだ。まるっきりさっきまでと逆行している。
森の中まで行くのに、苦労するわけはなかった。ただし、このエリアで派手な攻撃をするのは憚られるので、俺は攻撃を控えた。代わりにミヤビが現れる敵全てを処理してくれた。
「強いんですね、お二人とも。」
「そりゃあ二つ先のエリアまで進んでいますから。」
「それじゃあどうしてこのエリアに?」
「ゔっ、それは諸事情がありまして……」
森の深くまで潜るにつれて、モンスターも多様化していくが、今はそんなものに興味はない。
今、俺とミヤビは共にレベル28だ。敵と遭遇したところで、何も感じない。もはや倒しても経験値の足しにはならないし、ダメージも当然受けない。
一方でトルクはまだレベル7。一般的なレベルだが、独りでいるには心許ない。実際、さっきのように特別指定に遭遇してしまったら万事休すだ。
それだから、俺たちは彼を庇うようにしながら進んでいた。
「でも、寄生プレイみたいで申し訳ないですね。」
「いやいや、今はさっさとW4まで進むことが最優先だよ。そこから始めよう。君にだって、ゆくゆくは活躍してもらうよ。」
森の中の、依頼書で指定された場所に着いた。クエストなので、100%遭遇できるのが嬉しいところ。これが本来の次へ進む順路なのだ。
一分もしないうちに、目の前に巨大なウサギが現れた。
「なんか見覚えがありますよね。」
「さっきも何回か見たしな。」
ラビットホーンは、グラスラビットをそのまま大きくしたような見た目だった。おそらくは群れのボスなのだろう。ただひとつだけ違ったのは、巨大な角が生えていることだ。
体の大きさは軽自動車くらい。パワーもそれに見合ったくらいはあるのだろう。
「さあ、行きますよ。」
「オッケー、トルクは下がってた方がいいよ。」
「すいません、任せました。」
トルクは後ろの岩の陰に隠れた。
俺とミヤビはいつも通り『隠密』を使って身を隠した。身を隠す必要もないくらいの敵だとは思うが、それでも念には念を入れて。
「おりゃ!」
「バキッ!」
ラビットホーンの脇腹を横殴りにすると、ラビットの体は浮き上がって吹っ飛んだ。
そのままラビットホーンは近くの木々を道連れに薙ぎ倒しながら、地面に落ちた。
一撃でカタがついてしまった。ラビットホーンの体は崩れていき、大きな角の部分だけが残った。
「あらら、一撃で沈んじゃいましたね。」
結局ミヤビは一度も攻撃することなく『隠密』を解いた。
静かになったのを見計らって、岩陰からトルクが出てきた。
「おお、やっぱり強いんですね。」
「まあこんなもんだよ。」
我ながらちょっとカッコつけてしまった。
ともかく、これでトルクの討伐実績にも、「ラビットホーン」の名前が追加されていた。
「よし! これで大丈夫なはずだ。」
「換金はW5でもできますよね?」
「うん、だから、さっきの関所に直行しよう。」
行ったり来たりを繰り返しているが、もうこれで一区切りのはずだ。
トルクだけ、受付で手続きをさっさと済ませると、俺たちと一緒に関所の向こう側へと抜けた。
「本当にありがとうございます。このままずっとここから抜けられないと思ってました。」
「ハハ、まだ気が早いよ。次のエリアだって突破しないといけないんだからね。」
この前、リゾートでソロプレイが可能になるという話は聞いていたが、トルクを見ていると、難度が高すぎるように思えてしまう。
でもまあ、今はパーティーを組めている。このままW4まで早く戻るためにも、俺たちはW5の砂漠に足を踏み入れた。
「あれ、僕だけ通れませんよ。」
「そうだった。まだトルクだけエリア進出条件を満たしていないんだった。」
最初のエリアから次のエリアに進むために必要な条件は特別指定のモンスター一匹の討伐だ。
「これってさっき倒したあの虎はカウントされないんですか?」
「フォレストファング」を倒したのはトルクが正式に加入する前だったからね。そういえば忘れてたよ。条件が設定されているの。」
このままではトルクだけがこのエリアを出ることができない。
俺たちは一旦エリアの中に戻った。
「特別指定を倒さなきゃいけないらしい。これってパーティーで倒せばトルク本人がとどめをささなくてもいいんだよな。」
「確かそうだったはずです。スケルトンを倒したときだって、トドメをさしたのは私でしたけど、ロータスさんも条件クリアになってましたから。」
それじゃあ、もう一度特別指定のモンスターを探して倒さなければならないということか。
というわけで、二度手間も甚だしいが、ギルドに戻った。
「クエストの中に、特別指定のモンスターと戦えるやつがあるはずですよ。」
ミヤビはガサゴソと掲示板をいじくり回したあげく、一枚の紙を引っこ抜いてきた。
「これ、どうですか?」
「ふーん、『ラビットホーンの討伐』か。いいんじゃないか。」
「僕が太刀打ちできる相手なんですか?」
「いやいや、心配しなくても大丈夫だよ。」
ラビットホーン、名前からしてウサギの魔物だろう。懸賞金は、3,500ゴールドと出ていた。
さっきの森の中に現れるようだ。まるっきりさっきまでと逆行している。
森の中まで行くのに、苦労するわけはなかった。ただし、このエリアで派手な攻撃をするのは憚られるので、俺は攻撃を控えた。代わりにミヤビが現れる敵全てを処理してくれた。
「強いんですね、お二人とも。」
「そりゃあ二つ先のエリアまで進んでいますから。」
「それじゃあどうしてこのエリアに?」
「ゔっ、それは諸事情がありまして……」
森の深くまで潜るにつれて、モンスターも多様化していくが、今はそんなものに興味はない。
今、俺とミヤビは共にレベル28だ。敵と遭遇したところで、何も感じない。もはや倒しても経験値の足しにはならないし、ダメージも当然受けない。
一方でトルクはまだレベル7。一般的なレベルだが、独りでいるには心許ない。実際、さっきのように特別指定に遭遇してしまったら万事休すだ。
それだから、俺たちは彼を庇うようにしながら進んでいた。
「でも、寄生プレイみたいで申し訳ないですね。」
「いやいや、今はさっさとW4まで進むことが最優先だよ。そこから始めよう。君にだって、ゆくゆくは活躍してもらうよ。」
森の中の、依頼書で指定された場所に着いた。クエストなので、100%遭遇できるのが嬉しいところ。これが本来の次へ進む順路なのだ。
一分もしないうちに、目の前に巨大なウサギが現れた。
「なんか見覚えがありますよね。」
「さっきも何回か見たしな。」
ラビットホーンは、グラスラビットをそのまま大きくしたような見た目だった。おそらくは群れのボスなのだろう。ただひとつだけ違ったのは、巨大な角が生えていることだ。
体の大きさは軽自動車くらい。パワーもそれに見合ったくらいはあるのだろう。
「さあ、行きますよ。」
「オッケー、トルクは下がってた方がいいよ。」
「すいません、任せました。」
トルクは後ろの岩の陰に隠れた。
俺とミヤビはいつも通り『隠密』を使って身を隠した。身を隠す必要もないくらいの敵だとは思うが、それでも念には念を入れて。
「おりゃ!」
「バキッ!」
ラビットホーンの脇腹を横殴りにすると、ラビットの体は浮き上がって吹っ飛んだ。
そのままラビットホーンは近くの木々を道連れに薙ぎ倒しながら、地面に落ちた。
一撃でカタがついてしまった。ラビットホーンの体は崩れていき、大きな角の部分だけが残った。
「あらら、一撃で沈んじゃいましたね。」
結局ミヤビは一度も攻撃することなく『隠密』を解いた。
静かになったのを見計らって、岩陰からトルクが出てきた。
「おお、やっぱり強いんですね。」
「まあこんなもんだよ。」
我ながらちょっとカッコつけてしまった。
ともかく、これでトルクの討伐実績にも、「ラビットホーン」の名前が追加されていた。
「よし! これで大丈夫なはずだ。」
「換金はW5でもできますよね?」
「うん、だから、さっきの関所に直行しよう。」
行ったり来たりを繰り返しているが、もうこれで一区切りのはずだ。
トルクだけ、受付で手続きをさっさと済ませると、俺たちと一緒に関所の向こう側へと抜けた。
「本当にありがとうございます。このままずっとここから抜けられないと思ってました。」
「ハハ、まだ気が早いよ。次のエリアだって突破しないといけないんだからね。」
この前、リゾートでソロプレイが可能になるという話は聞いていたが、トルクを見ていると、難度が高すぎるように思えてしまう。
でもまあ、今はパーティーを組めている。このままW4まで早く戻るためにも、俺たちはW5の砂漠に足を踏み入れた。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
【14万PV感謝!!】異世界で配合屋始めたら思いのほか需要がありました! 〜魔物の配合が世界を変える〜
中島菘
ファンタジー
電車で刺された男・タイセイは気づけば魔物が人間と共に堂々と道の真ん中を闊歩するような異世界にいた。身分も何もかもない状態になってしまい、途方に暮れる彼だったが、偶然取り組み始めた配合による小魚の新種の作成を始めた。
配合というアイデアは、画期的なアイデアで、ある日彼が転生した大都市ホルンメランの美少女首長がそれに目をつけ、タイセイを呼び出す。
彼女との出会いをきっかけとして、タイセイの異世界生活は大きく動き出しはじめた!
やがてタイセイの数奇な運命は異世界全体を巻き込んでいく……

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる