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五章 ドリーム・リゾートです!
三十三話 久々に最初のエリアです!
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砂漠を抜けるには、また少しかかったのだけれど、ともかく、最初のエリアまで戻ってくることができた。戻ってくるのでは、また違った景色に見えるから面白い。
さて、懐かしむ暇もなくミヤビは敵を探し始めた。
「なるべく大量の敵が一斉に出てきて欲しいですね。」
プレイヤーの数は、南国や砂漠よりも少なくなって見えた。
当たり前といえば当たり前。本来ならさっさと抜けて行ってしまうエリア。わざわざ戻ってくるやつなんて、俺たちのほかにはいない。
見当るプレイヤーたちは、どれも初心者ばかりだった。彼らも彼らで、俺たちのことを不思議そうにみている。
「何がそんなにおかしいんでしょうね? 」
「何もかもだろ。」
砂漠、南国と進んでいくうちに、プレイヤーが増えたおかげで俺たちも注目をさほど集めなくなり、忘れかけていることだが、俺たちは見た目からして奇怪。
大剣と杖を担いだ盗賊二人が歩いているのだから、普通は変な目で見られる。いまさらそれを思い出した。
昼下がりの頃合い、ミヤビはまどろむ陽気も吹き飛ばすほどの必死さでモンスターを追いかけまわしている。新しいモンスターも見られず、微塵も新鮮さは感じられなかったが、それでもゴールドが出てくるのだから文句はない。
遭遇する頻度もなかなか高いので、南国で雑魚狩りをするよりは全然効率が良かった。俺たちはレベルも上がってきたので、一度に出てくる敵モンスターの数も多くなっている。
これなら早々に金欠から脱出できそうだ。すでに財布袋には4,500ゴールド。もうやめてもよいのだが、ミヤビはなかなかやめようとはしなかった。
「もうちょっとやっていきましょうよ! 」
「いやもういいだろ。十分稼いだから。」
ああ、またいつもの癖だ。周りが全く見えなくなっちゃってる。彼女は原っぱの道から外れていってしまい、森の中へと入り始めた。
森の中の敵は原っぱの敵よりも多少強いものの、ミヤビが負けるとは到底思えないから、そこは心配無用。ただし迷ってしまって森から出てこられなくなってしまったら大変なので、俺はミヤビの後を追った。
斜めに差す日のおかげで、森は軽やかに明るい。夢の中を歩いているようで心地よいが、前を行くミヤビはそれをぶち壊しにするような騒々しさで突き進んでいく。
そんな彼女を恐れてか、さっきまでよりもエンカウントの頻度が落ちたように思えてしまう。静かな森の中で、ミヤビが草々を踏みしめる音だけが規則正しく聞こえる。
俺たちだけがこの森の中にいて、このまま取り残されていくんじゃなかろうかという心地がしたころ、静寂を破る声が一つ。
「ギャー! 助けてくれ! 」
声は左手の方からだった。
俺たちは示し合わせるわけでもなく、二人合わせて声のする方へと向かった。声ははっきりと聞こえてきたから、そう遠くはないはずだ。
走ると、悲鳴はより大きく聞こえるようになってきた。
「もうダメだー! 」
見えた! 男がトラに襲われている。しりもちをついた男に向かって、虎が今にもとびかかろうとしていた。
足の速いミヤビが先に男のところまでたどり着いていた。
「ガチン! 」
ミヤビは男と虎の間に杖を差し込み、虎の攻撃を食い止めた。
虎は後ろに飛びのいた。ミヤビはそのすきに、腰の抜けた男を引っ張って離れていったので、代わりに俺が虎と対峙した。
虎の表示名は「フォレストファング」。特別指定のマークがついていた。もはや特別指定を珍しいとも思っていないが、ここで会うことになろうとは。
「へえ、おまえ。懸賞金かかってるのか。」
何度も言うが、俺たちは金欠なのだ。特別指定に出会うことができたのは僥倖だ。やっぱりいいことってのはするもんだな。
虎は、俺にもかまうことなく飛び込んできた。ただ、いまさらそんな単調な攻撃に当たるわけがない。すっと横によけて、俺は背中の大剣を抜いた。
姿勢を立て直した虎はもう一度俺に飛びつこうとしていた。俺の方もすでに大剣を構えていたので、これを振りかぶる。
大きな武器なので、後ろにミヤビたちがいないか確認したが、彼女たちは二十メートルは離れた木陰まで下がっていた。男は心配そうにこちらを見ている。
「グオオオオ!! 」
虎が覆いかぶさるようにとびかかってきた。
「おりゃ! 」
なので、俺はそのさらに上から大剣を振り下ろした。
「ズドドドドドドドドォォォォォォォォ! 」
あ、忘れてた。
そういえば、この大剣はこんな感じだったな。目の前一直線の木々が根こそぎ持っていかれ、その下の地面も抉れてしまい、すっかり明るくすっきりしてしまった。
言わずもがな、フォレストファングは木っ端みじんになっていた。ただ、牙一本だけが残されていたので、それはありがたく頂いておく。
ミヤビのもとに行くと、男はまだ腰を抜かしていた。
「きみ、もう大丈夫だから。虎はもういないよ。」
「いやいや、虎じゃなくて、ロータスさんの剣にビビってるんですよ。」
男は俺のことを見たまま、しばらく何もしゃべらなかった。
さて、懐かしむ暇もなくミヤビは敵を探し始めた。
「なるべく大量の敵が一斉に出てきて欲しいですね。」
プレイヤーの数は、南国や砂漠よりも少なくなって見えた。
当たり前といえば当たり前。本来ならさっさと抜けて行ってしまうエリア。わざわざ戻ってくるやつなんて、俺たちのほかにはいない。
見当るプレイヤーたちは、どれも初心者ばかりだった。彼らも彼らで、俺たちのことを不思議そうにみている。
「何がそんなにおかしいんでしょうね? 」
「何もかもだろ。」
砂漠、南国と進んでいくうちに、プレイヤーが増えたおかげで俺たちも注目をさほど集めなくなり、忘れかけていることだが、俺たちは見た目からして奇怪。
大剣と杖を担いだ盗賊二人が歩いているのだから、普通は変な目で見られる。いまさらそれを思い出した。
昼下がりの頃合い、ミヤビはまどろむ陽気も吹き飛ばすほどの必死さでモンスターを追いかけまわしている。新しいモンスターも見られず、微塵も新鮮さは感じられなかったが、それでもゴールドが出てくるのだから文句はない。
遭遇する頻度もなかなか高いので、南国で雑魚狩りをするよりは全然効率が良かった。俺たちはレベルも上がってきたので、一度に出てくる敵モンスターの数も多くなっている。
これなら早々に金欠から脱出できそうだ。すでに財布袋には4,500ゴールド。もうやめてもよいのだが、ミヤビはなかなかやめようとはしなかった。
「もうちょっとやっていきましょうよ! 」
「いやもういいだろ。十分稼いだから。」
ああ、またいつもの癖だ。周りが全く見えなくなっちゃってる。彼女は原っぱの道から外れていってしまい、森の中へと入り始めた。
森の中の敵は原っぱの敵よりも多少強いものの、ミヤビが負けるとは到底思えないから、そこは心配無用。ただし迷ってしまって森から出てこられなくなってしまったら大変なので、俺はミヤビの後を追った。
斜めに差す日のおかげで、森は軽やかに明るい。夢の中を歩いているようで心地よいが、前を行くミヤビはそれをぶち壊しにするような騒々しさで突き進んでいく。
そんな彼女を恐れてか、さっきまでよりもエンカウントの頻度が落ちたように思えてしまう。静かな森の中で、ミヤビが草々を踏みしめる音だけが規則正しく聞こえる。
俺たちだけがこの森の中にいて、このまま取り残されていくんじゃなかろうかという心地がしたころ、静寂を破る声が一つ。
「ギャー! 助けてくれ! 」
声は左手の方からだった。
俺たちは示し合わせるわけでもなく、二人合わせて声のする方へと向かった。声ははっきりと聞こえてきたから、そう遠くはないはずだ。
走ると、悲鳴はより大きく聞こえるようになってきた。
「もうダメだー! 」
見えた! 男がトラに襲われている。しりもちをついた男に向かって、虎が今にもとびかかろうとしていた。
足の速いミヤビが先に男のところまでたどり着いていた。
「ガチン! 」
ミヤビは男と虎の間に杖を差し込み、虎の攻撃を食い止めた。
虎は後ろに飛びのいた。ミヤビはそのすきに、腰の抜けた男を引っ張って離れていったので、代わりに俺が虎と対峙した。
虎の表示名は「フォレストファング」。特別指定のマークがついていた。もはや特別指定を珍しいとも思っていないが、ここで会うことになろうとは。
「へえ、おまえ。懸賞金かかってるのか。」
何度も言うが、俺たちは金欠なのだ。特別指定に出会うことができたのは僥倖だ。やっぱりいいことってのはするもんだな。
虎は、俺にもかまうことなく飛び込んできた。ただ、いまさらそんな単調な攻撃に当たるわけがない。すっと横によけて、俺は背中の大剣を抜いた。
姿勢を立て直した虎はもう一度俺に飛びつこうとしていた。俺の方もすでに大剣を構えていたので、これを振りかぶる。
大きな武器なので、後ろにミヤビたちがいないか確認したが、彼女たちは二十メートルは離れた木陰まで下がっていた。男は心配そうにこちらを見ている。
「グオオオオ!! 」
虎が覆いかぶさるようにとびかかってきた。
「おりゃ! 」
なので、俺はそのさらに上から大剣を振り下ろした。
「ズドドドドドドドドォォォォォォォォ! 」
あ、忘れてた。
そういえば、この大剣はこんな感じだったな。目の前一直線の木々が根こそぎ持っていかれ、その下の地面も抉れてしまい、すっかり明るくすっきりしてしまった。
言わずもがな、フォレストファングは木っ端みじんになっていた。ただ、牙一本だけが残されていたので、それはありがたく頂いておく。
ミヤビのもとに行くと、男はまだ腰を抜かしていた。
「きみ、もう大丈夫だから。虎はもういないよ。」
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