32 / 45
五章 ドリーム・リゾートです!
三十二話 やっぱり盗賊は盗賊らしく!
しおりを挟む
ペガサスレースは競馬とは全く違っていた。俺は次こそは、次こそはと意気込んで何レースも勝負したのだけど、結果はボロボロ。200ゴールドを残して、残りは全部すってしまった。
ミヤビはずっと冷たい目で見てきている。
「ロータスさん、あなただって人のこと言えないじゃないですか! この体たらく、全然勝ててないじゃないですか。」
これはぐうの音も出ない。こんなはずじゃなかったのに。
ミヤビはもう開き直っていた。
「そもそも、私たちがギャンブルで儲けようなんてのがおかしかったんですよ。私たちは盗賊です。盗賊なら盗賊らしく、盗みでゴールドを稼ぐべきなんです! 」
「でも、盗みなんて、どうするのさ? またクエストでも受けるのかい? 」
このまえ、初めてのクエストがちょうど盗みのクエストだったが、あれはさんざんな結果だった。スケルトンの討伐報酬があったからよかったものの、クエスト自体は大失敗である。正直向いていないと思う。
ただ、ミヤビは自信ありげだった。
「いやいや、違いますよ。今回は、私が新しく覚えたスキルを使って盗みを働きます。」
スキルか、そういえばスキルポイントがたくさん貯まっているのに、割り振るのを忘れていたな。
「盗賊スキルの『カットスティール』です。ロータスさんはまだ覚えていないんですか?」
「ああうん。まだ覚えていないな。スキルポイントを振り分けるのを忘れていた。」
スキル欄のところを見れば、獲得可能スキルの中にその名前があった。
「早速どんなもんか試したいので、リゾートの外に出ましょうよ。」
俺たち二人は外に出た。リゾートが喧騒に包まれていただけに、外はしんと静かだ。原っぱの上には俺たち以外のプレイヤーは数人しか見えない。
このエリアは敵の数が少ないので、遭遇するまでには時間がかかった。その間、ミヤビはずっとむずむずしていた。
ようやく現れた敵は……
「なにこれ? 狛犬? 」
「シーサーですよ! 一番間違えちゃいけないやつ! 」
表示名は「ストーンシーザー」。名前どうり、体が石でできていた。
ミヤビはやる気満々、さっそく杖を抜き出した。
「あまり適任のモンスターとは思えませんが、お試しですしね。」
ミヤビは杖を振りかぶると、
「『カットスティール』! 」
と杖を振り下ろし一撃。
当然の様にストーンシーザーは倒れてしまったのだが、驚くべきことが起きた。
「チャリーン! 」
ミヤビの杖がストーンシーザーに命中した瞬間、シーザーからゴールドがはじけて出てきたのだ。正真正銘、本物のゴールドである。
ミヤビはその散らばったゴールドをかき集めた。
「見てくださいよ。本当にゴールドがドロップしましたよ! 」
「すごいな、このスキル。攻撃するだけでゴールドが出てくるのか。」
まるで打ち出の小槌だ。出てきたゴールドは少額だったが、なにより、何もないところから出てくるのが驚くべきことなのだ。
そのすごさを目の当たりにして、俺もすぐに『カットスティール』を獲得した。
「敵を見つけ次第、どんどん倒していきましょう! 」
俺たち二人は、フィールド上で雑魚狩りを始めた。敵と遭遇次第、『カットスティール』を使って敵を倒していく。一回敵を倒すたびに、ドロップするのは平均で150ゴールド。ついさっきまで数万ゴールドを持っていた身からしてみれば、かなりの少額ではあるが、今はありがたい限りだ。
しかし、ミヤビはイライラし始めていた。またさっきの不機嫌が戻ってきたのかとも思ったが、どうやら今度は違うらしい。
「どうしたのさ? 」
「いえ、ただですね。」
「ただ? 」
「モンスター少なすぎるでしょう! 」
ああそういうこと。このエリアはモンスターがそもそも少ないから、なかなか遭遇しないのは当たり前の話だ。
俺はユルくやるのも嫌いじゃないから、それでもよかったんだけれど、ミヤビにはちょっと暇だったらしい。
俺は彼女に提案した。
「なあ、敵との遭遇を増やしたいんなら、前のエリアに戻らないか? 」
「ええ、ロータスさんってば、あの砂漠に戻りたいんですか? 」
「それは俺もやだな。だから、一番最初のエリアまで戻ればいいんじゃない? 」
一番最初のエリアは初心者のレベル上げのために敵が多くいる。俺達でもそこに戻ることはできるわけだから、そこで相応の稼ぎが期待できる。
ただまだミヤビには引っかかることがあるようだ。
「でも、最初のエリアの敵って弱いですよね? そんな敵を攻撃しても全然ゴールド出てこないんじゃないですか? 」
「そこは心配ご無用。出てくるゴールドの金額は、敵の強さには関係してない。俺たちの攻撃力にだけ依存しているようだよ。」
スキルの説明にはそう書かれてあった。つまりは、俺たちがここのW4にいる多少強い敵を攻撃しようが、最初のW6にいる初心者向けの弱いモンスターを攻撃しようが、ドロップするゴールドの金額は全く変わらないということである。
俺の説明にミヤビは納得してくれたので、二人でW4を抜けて、最初のエリアを目指した。途中W5の砂漠をまた通っていかなければならないのは億劫だけど。
ミヤビはずっと冷たい目で見てきている。
「ロータスさん、あなただって人のこと言えないじゃないですか! この体たらく、全然勝ててないじゃないですか。」
これはぐうの音も出ない。こんなはずじゃなかったのに。
ミヤビはもう開き直っていた。
「そもそも、私たちがギャンブルで儲けようなんてのがおかしかったんですよ。私たちは盗賊です。盗賊なら盗賊らしく、盗みでゴールドを稼ぐべきなんです! 」
「でも、盗みなんて、どうするのさ? またクエストでも受けるのかい? 」
このまえ、初めてのクエストがちょうど盗みのクエストだったが、あれはさんざんな結果だった。スケルトンの討伐報酬があったからよかったものの、クエスト自体は大失敗である。正直向いていないと思う。
ただ、ミヤビは自信ありげだった。
「いやいや、違いますよ。今回は、私が新しく覚えたスキルを使って盗みを働きます。」
スキルか、そういえばスキルポイントがたくさん貯まっているのに、割り振るのを忘れていたな。
「盗賊スキルの『カットスティール』です。ロータスさんはまだ覚えていないんですか?」
「ああうん。まだ覚えていないな。スキルポイントを振り分けるのを忘れていた。」
スキル欄のところを見れば、獲得可能スキルの中にその名前があった。
「早速どんなもんか試したいので、リゾートの外に出ましょうよ。」
俺たち二人は外に出た。リゾートが喧騒に包まれていただけに、外はしんと静かだ。原っぱの上には俺たち以外のプレイヤーは数人しか見えない。
このエリアは敵の数が少ないので、遭遇するまでには時間がかかった。その間、ミヤビはずっとむずむずしていた。
ようやく現れた敵は……
「なにこれ? 狛犬? 」
「シーサーですよ! 一番間違えちゃいけないやつ! 」
表示名は「ストーンシーザー」。名前どうり、体が石でできていた。
ミヤビはやる気満々、さっそく杖を抜き出した。
「あまり適任のモンスターとは思えませんが、お試しですしね。」
ミヤビは杖を振りかぶると、
「『カットスティール』! 」
と杖を振り下ろし一撃。
当然の様にストーンシーザーは倒れてしまったのだが、驚くべきことが起きた。
「チャリーン! 」
ミヤビの杖がストーンシーザーに命中した瞬間、シーザーからゴールドがはじけて出てきたのだ。正真正銘、本物のゴールドである。
ミヤビはその散らばったゴールドをかき集めた。
「見てくださいよ。本当にゴールドがドロップしましたよ! 」
「すごいな、このスキル。攻撃するだけでゴールドが出てくるのか。」
まるで打ち出の小槌だ。出てきたゴールドは少額だったが、なにより、何もないところから出てくるのが驚くべきことなのだ。
そのすごさを目の当たりにして、俺もすぐに『カットスティール』を獲得した。
「敵を見つけ次第、どんどん倒していきましょう! 」
俺たち二人は、フィールド上で雑魚狩りを始めた。敵と遭遇次第、『カットスティール』を使って敵を倒していく。一回敵を倒すたびに、ドロップするのは平均で150ゴールド。ついさっきまで数万ゴールドを持っていた身からしてみれば、かなりの少額ではあるが、今はありがたい限りだ。
しかし、ミヤビはイライラし始めていた。またさっきの不機嫌が戻ってきたのかとも思ったが、どうやら今度は違うらしい。
「どうしたのさ? 」
「いえ、ただですね。」
「ただ? 」
「モンスター少なすぎるでしょう! 」
ああそういうこと。このエリアはモンスターがそもそも少ないから、なかなか遭遇しないのは当たり前の話だ。
俺はユルくやるのも嫌いじゃないから、それでもよかったんだけれど、ミヤビにはちょっと暇だったらしい。
俺は彼女に提案した。
「なあ、敵との遭遇を増やしたいんなら、前のエリアに戻らないか? 」
「ええ、ロータスさんってば、あの砂漠に戻りたいんですか? 」
「それは俺もやだな。だから、一番最初のエリアまで戻ればいいんじゃない? 」
一番最初のエリアは初心者のレベル上げのために敵が多くいる。俺達でもそこに戻ることはできるわけだから、そこで相応の稼ぎが期待できる。
ただまだミヤビには引っかかることがあるようだ。
「でも、最初のエリアの敵って弱いですよね? そんな敵を攻撃しても全然ゴールド出てこないんじゃないですか? 」
「そこは心配ご無用。出てくるゴールドの金額は、敵の強さには関係してない。俺たちの攻撃力にだけ依存しているようだよ。」
スキルの説明にはそう書かれてあった。つまりは、俺たちがここのW4にいる多少強い敵を攻撃しようが、最初のW6にいる初心者向けの弱いモンスターを攻撃しようが、ドロップするゴールドの金額は全く変わらないということである。
俺の説明にミヤビは納得してくれたので、二人でW4を抜けて、最初のエリアを目指した。途中W5の砂漠をまた通っていかなければならないのは億劫だけど。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
異世界で趣味(ハンドメイド)のお店を開きます!
ree
ファンタジー
波乱万丈な人生を送ってきたアラフォー主婦の檜山梨沙。
生活費を切り詰めつつ、細々と趣味を矜持し、細やかなに愉しみながら過ごしていた彼女だったが、突然余命宣告を受ける。
夫や娘は全く関心を示さず、心配もされず、ヤケになった彼女は家を飛び出す。
神様の力でいつの間にか目の前に中世のような風景が広がっていて、そこには普通の人間の他に、二足歩行の耳や尻尾が生えている兎人間?鱗の生えたトカゲ人間?3メートルを超えるでかい人間?その逆の1メートルでずんぐりとした人間?達が暮らしていた。
これは不遇な境遇ながらも健気に生きてきた彼女に与えられたご褒美であり、この世界に齎された奇跡でもある。
ハンドメイドの趣味を超えて、世界に認められるアクセサリー屋になった彼女の軌跡。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!
しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。
βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。
そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。
そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する!
※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。
※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください!
※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる