盗賊だけど大剣しか使えません! 〜VRゲームで盗賊になったのに、大剣しか装備することが出来ず絶望していたけど、それはそれで最強だった! 〜

中島菘

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五章 ドリーム・リゾートです!

三十二話 やっぱり盗賊は盗賊らしく!

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 ペガサスレースは競馬とは全く違っていた。俺は次こそは、次こそはと意気込んで何レースも勝負したのだけど、結果はボロボロ。200ゴールドを残して、残りは全部すってしまった。

 ミヤビはずっと冷たい目で見てきている。

「ロータスさん、あなただって人のこと言えないじゃないですか! この体たらく、全然勝ててないじゃないですか。」

これはぐうの音も出ない。こんなはずじゃなかったのに。

 ミヤビはもう開き直っていた。

「そもそも、私たちがギャンブルで儲けようなんてのがおかしかったんですよ。私たちは盗賊です。盗賊なら盗賊らしく、盗みでゴールドを稼ぐべきなんです! 」

「でも、盗みなんて、どうするのさ? またクエストでも受けるのかい? 」

このまえ、初めてのクエストがちょうど盗みのクエストだったが、あれはさんざんな結果だった。スケルトンの討伐報酬があったからよかったものの、クエスト自体は大失敗である。正直向いていないと思う。

 ただ、ミヤビは自信ありげだった。

「いやいや、違いますよ。今回は、私が新しく覚えたスキルを使って盗みを働きます。」

スキルか、そういえばスキルポイントがたくさん貯まっているのに、割り振るのを忘れていたな。

「盗賊スキルの『カットスティール』です。ロータスさんはまだ覚えていないんですか?」

「ああうん。まだ覚えていないな。スキルポイントを振り分けるのを忘れていた。」

スキル欄のところを見れば、獲得可能スキルの中にその名前があった。

「早速どんなもんか試したいので、リゾートの外に出ましょうよ。」

 俺たち二人は外に出た。リゾートが喧騒に包まれていただけに、外はしんと静かだ。原っぱの上には俺たち以外のプレイヤーは数人しか見えない。

 このエリアは敵の数が少ないので、遭遇するまでには時間がかかった。その間、ミヤビはずっとむずむずしていた。

 ようやく現れた敵は……

「なにこれ? 狛犬? 」

「シーサーですよ! 一番間違えちゃいけないやつ! 」

表示名は「ストーンシーザー」。名前どうり、体が石でできていた。

 ミヤビはやる気満々、さっそく杖を抜き出した。

「あまり適任のモンスターとは思えませんが、お試しですしね。」

ミヤビは杖を振りかぶると、

「『カットスティール』! 」

と杖を振り下ろし一撃。

 当然の様にストーンシーザーは倒れてしまったのだが、驚くべきことが起きた。

「チャリーン! 」

ミヤビの杖がストーンシーザーに命中した瞬間、シーザーからゴールドがはじけて出てきたのだ。正真正銘、本物のゴールドである。

 ミヤビはその散らばったゴールドをかき集めた。

「見てくださいよ。本当にゴールドがドロップしましたよ! 」

「すごいな、このスキル。攻撃するだけでゴールドが出てくるのか。」

まるで打ち出の小槌だ。出てきたゴールドは少額だったが、なにより、何もないところから出てくるのが驚くべきことなのだ。

 そのすごさを目の当たりにして、俺もすぐに『カットスティール』を獲得した。

「敵を見つけ次第、どんどん倒していきましょう! 」

 俺たち二人は、フィールド上で雑魚狩りを始めた。敵と遭遇次第、『カットスティール』を使って敵を倒していく。一回敵を倒すたびに、ドロップするのは平均で150ゴールド。ついさっきまで数万ゴールドを持っていた身からしてみれば、かなりの少額ではあるが、今はありがたい限りだ。

 しかし、ミヤビはイライラし始めていた。またさっきの不機嫌が戻ってきたのかとも思ったが、どうやら今度は違うらしい。

「どうしたのさ? 」

「いえ、ただですね。」

「ただ? 」

「モンスター少なすぎるでしょう! 」

ああそういうこと。このエリアはモンスターがそもそも少ないから、なかなか遭遇しないのは当たり前の話だ。

 俺はユルくやるのも嫌いじゃないから、それでもよかったんだけれど、ミヤビにはちょっと暇だったらしい。

 俺は彼女に提案した。

「なあ、敵との遭遇を増やしたいんなら、前のエリアに戻らないか? 」

「ええ、ロータスさんってば、あの砂漠に戻りたいんですか? 」

「それは俺もやだな。だから、一番最初のエリアまで戻ればいいんじゃない? 」

一番最初のエリアは初心者のレベル上げのために敵が多くいる。俺達でもそこに戻ることはできるわけだから、そこで相応の稼ぎが期待できる。

 ただまだミヤビには引っかかることがあるようだ。

「でも、最初のエリアの敵って弱いですよね? そんな敵を攻撃しても全然ゴールド出てこないんじゃないですか? 」

「そこは心配ご無用。出てくるゴールドの金額は、敵の強さには関係してない。俺たちの攻撃力にだけ依存しているようだよ。」

スキルの説明にはそう書かれてあった。つまりは、俺たちがここのW4にいる多少強い敵を攻撃しようが、最初のW6にいる初心者向けの弱いモンスターを攻撃しようが、ドロップするゴールドの金額は全く変わらないということである。

 俺の説明にミヤビは納得してくれたので、二人でW4を抜けて、最初のエリアを目指した。途中W5の砂漠をまた通っていかなければならないのは億劫だけど。
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