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五章 ドリーム・リゾートです!
三十一話 ギャンブルの負けはギャンブルで取り返すのです!
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ほぼほぼ全財産を失ってしまった。手元に残ったのはわずかに2,500ゴールド。ここからまた冒険を始めるのはなかなかにハードだ。
なんてったって、ゴールドの使い道はなにも武器や防具だけではない。諸経費というものがある。回復するための道具だって値が張るものも多い。
すなわち、多額のゴールドを失ったまま、また冒険に出るのはなかなかに無茶なのだ。
「なあミヤビ。」
「はいすいません。どうか私を売り飛ばすのだけは勘弁してください。」
「人聞きの悪いことを言うなよ! 」
「え、違うんですか? てっきり私、地下労働でもさせられるのかと思いましたよ。」
「どこの漫画の世界だよ。そうじゃなくて、どうにかこの負けを取り戻そうかっていう話だよ。このなけなしの2,500ゴールドをなんとか増やさなくちゃならない。」
「分かりました! 今度こそは勝ってくるので見ててください! 」
「ストーップ!! 」
まったく、歯止めが利かないんだな。
普段はかなり理知的な子なのに、ギャンブルになると急にアホになったな。やっぱり負けず嫌いにこういうのって向いていないんじゃないかしら。
「今度は俺もついて行くから。」
俺はミヤビを止めながら、辺りを見回してどれで勝負するかを考えた。
ポーカーがいいか? いや、俺は苦手だな。じゃあルーレットは? いやいや、運ゲーすぎる。いざ考えてみると、なかなかいいのは見つからないものだ。やっぱりギャンブルってのは負けるように作られているのだろう。
そんな中でひとつ目に留まるものがあった。朱色の大きな扉があるのだ。そこにプレイヤーが一人、また一人と吸い込まれていく。
「あれは何だろう? 」
「面白そうだし、行ってみましょうよ。」
お金が無くなってるのにミヤビがこんなにものんきなのも、ギャンブルの魔力なのだろうか。
重い扉をボーイ二人が押し開けてくれた。少し開いただけでも、中からどっと歓声が聞こえてくる。
「あれ、競馬ですよ! 」
そう、扉の向こうにあったのはレース場。それを見下ろすように、多くの観客が集まっている。
競馬といえば、ギャンブルの代表格だ。馬に人が乗って走り、着順を競う。客はその着順を予想して金を賭けるというもの。
現実でも少しやったことがあるから分かる。これなら……。
次のレースのパドックがもう始まっていた。ここで賭ける馬を吟味する。調子の良さ、体の筋肉などをよく見ておく。と、よく見ていると……
「あれ、羽が生えてる。」
「あそこにペガサスレースって書いてましたよ、ロータスさん。」
言われて掲示板を見上げると、確かにそう書いてあった。なるほど、ゲームならではということか。
しかしそれでも一応馬だ。やることは現実とさして変わらない。俺はパドックにいるペガサス全てに目を通した。
「なんかわかるんですか? 」
「うん。俺が見るに、あの八番のペガサスが調子良さそうだ。」
八番の白毛のペガサス、っていうかペガサスだからみんな白毛なのだが。とりあえず八番の「アイキャンフライ」が毛艶がよく、筋肉にハリもあって、良さげに見える。
人気を見ると、四番人気だった。あんなに良さそうな馬が四番人気だなんて、やっぱりゲームの中だから素人が多いんだな。
俺はまずは始まったことで、八番の単勝を500ゴールド分購入した。単勝ってのはつまり、俺が買った八番が一着になればいいってことだ。
レースはまもなく始まるようで、レース場にペガサスたちは移動を始めた。
掲示板に示されているレースの名前は『GⅡ 夏空ステークス』。重賞だったのか。距離は2,400メートル。
「はじまるみたいですよ。」
聞きなれたやつをすこしイジった感じのファンファーレが演奏された。もう出走するよう。
ファンファーレが終わると、ゲートの中にペガサスたちはどんどん入っていく。翼を器用に折り畳んで入っていくから、見ていて楽しい。
全頭がゲートに入り、態勢完了。合図とともにゲートが開いた!
「よし、いいぞ! 」
俺が買った八番はなかなかいいスタートを切った。最初の直線の中ほどで四番手につけている。
そのまま第一コーナー、第二コーナーと進んでいく。順位は変動を繰り返したが、第三コーナーに差し掛かるあたりでもまだ四番手を保っている。
「おお! ロータスさんが買った子、よさげじゃないですか! 」
俺が買ったアイキャンフライ号は調子よさそうに走っていた。そのまま第四コーナーを回り、いよいよ最終直線のラストスパートというところ。
しかし、そこで目を疑う光景が飛び込んできた。
「ちょ! あれなんだよ! 」
ペガサスは一斉に飛び上がったのである。翼を大きくはためかせて、レース場の宙を舞って飛び上がり懸命に飛ぶのである。
「ペガサスですからね。そりゃ飛びますよね……。」
驚くまではよかったものの、そのあとだった。
アイキャンフライが、全然前に来ないのだ。走ってるうちは気持ちよさげだったのに、飛び上がってからは精彩を欠いている。
「ルックアットモア先頭にかわった! 」
「ルックアットモアが引き離していく! 三馬身、四馬身! そのまま……ゴーール!! 」
実況には熱が入っていたが、俺はすっかり青ざめてしまっていた。
結局、レースを勝利したのは一番人気のルックアットモア。一番翼の大きなペガサスだった。
なんてったって、ゴールドの使い道はなにも武器や防具だけではない。諸経費というものがある。回復するための道具だって値が張るものも多い。
すなわち、多額のゴールドを失ったまま、また冒険に出るのはなかなかに無茶なのだ。
「なあミヤビ。」
「はいすいません。どうか私を売り飛ばすのだけは勘弁してください。」
「人聞きの悪いことを言うなよ! 」
「え、違うんですか? てっきり私、地下労働でもさせられるのかと思いましたよ。」
「どこの漫画の世界だよ。そうじゃなくて、どうにかこの負けを取り戻そうかっていう話だよ。このなけなしの2,500ゴールドをなんとか増やさなくちゃならない。」
「分かりました! 今度こそは勝ってくるので見ててください! 」
「ストーップ!! 」
まったく、歯止めが利かないんだな。
普段はかなり理知的な子なのに、ギャンブルになると急にアホになったな。やっぱり負けず嫌いにこういうのって向いていないんじゃないかしら。
「今度は俺もついて行くから。」
俺はミヤビを止めながら、辺りを見回してどれで勝負するかを考えた。
ポーカーがいいか? いや、俺は苦手だな。じゃあルーレットは? いやいや、運ゲーすぎる。いざ考えてみると、なかなかいいのは見つからないものだ。やっぱりギャンブルってのは負けるように作られているのだろう。
そんな中でひとつ目に留まるものがあった。朱色の大きな扉があるのだ。そこにプレイヤーが一人、また一人と吸い込まれていく。
「あれは何だろう? 」
「面白そうだし、行ってみましょうよ。」
お金が無くなってるのにミヤビがこんなにものんきなのも、ギャンブルの魔力なのだろうか。
重い扉をボーイ二人が押し開けてくれた。少し開いただけでも、中からどっと歓声が聞こえてくる。
「あれ、競馬ですよ! 」
そう、扉の向こうにあったのはレース場。それを見下ろすように、多くの観客が集まっている。
競馬といえば、ギャンブルの代表格だ。馬に人が乗って走り、着順を競う。客はその着順を予想して金を賭けるというもの。
現実でも少しやったことがあるから分かる。これなら……。
次のレースのパドックがもう始まっていた。ここで賭ける馬を吟味する。調子の良さ、体の筋肉などをよく見ておく。と、よく見ていると……
「あれ、羽が生えてる。」
「あそこにペガサスレースって書いてましたよ、ロータスさん。」
言われて掲示板を見上げると、確かにそう書いてあった。なるほど、ゲームならではということか。
しかしそれでも一応馬だ。やることは現実とさして変わらない。俺はパドックにいるペガサス全てに目を通した。
「なんかわかるんですか? 」
「うん。俺が見るに、あの八番のペガサスが調子良さそうだ。」
八番の白毛のペガサス、っていうかペガサスだからみんな白毛なのだが。とりあえず八番の「アイキャンフライ」が毛艶がよく、筋肉にハリもあって、良さげに見える。
人気を見ると、四番人気だった。あんなに良さそうな馬が四番人気だなんて、やっぱりゲームの中だから素人が多いんだな。
俺はまずは始まったことで、八番の単勝を500ゴールド分購入した。単勝ってのはつまり、俺が買った八番が一着になればいいってことだ。
レースはまもなく始まるようで、レース場にペガサスたちは移動を始めた。
掲示板に示されているレースの名前は『GⅡ 夏空ステークス』。重賞だったのか。距離は2,400メートル。
「はじまるみたいですよ。」
聞きなれたやつをすこしイジった感じのファンファーレが演奏された。もう出走するよう。
ファンファーレが終わると、ゲートの中にペガサスたちはどんどん入っていく。翼を器用に折り畳んで入っていくから、見ていて楽しい。
全頭がゲートに入り、態勢完了。合図とともにゲートが開いた!
「よし、いいぞ! 」
俺が買った八番はなかなかいいスタートを切った。最初の直線の中ほどで四番手につけている。
そのまま第一コーナー、第二コーナーと進んでいく。順位は変動を繰り返したが、第三コーナーに差し掛かるあたりでもまだ四番手を保っている。
「おお! ロータスさんが買った子、よさげじゃないですか! 」
俺が買ったアイキャンフライ号は調子よさそうに走っていた。そのまま第四コーナーを回り、いよいよ最終直線のラストスパートというところ。
しかし、そこで目を疑う光景が飛び込んできた。
「ちょ! あれなんだよ! 」
ペガサスは一斉に飛び上がったのである。翼を大きくはためかせて、レース場の宙を舞って飛び上がり懸命に飛ぶのである。
「ペガサスですからね。そりゃ飛びますよね……。」
驚くまではよかったものの、そのあとだった。
アイキャンフライが、全然前に来ないのだ。走ってるうちは気持ちよさげだったのに、飛び上がってからは精彩を欠いている。
「ルックアットモア先頭にかわった! 」
「ルックアットモアが引き離していく! 三馬身、四馬身! そのまま……ゴーール!! 」
実況には熱が入っていたが、俺はすっかり青ざめてしまっていた。
結局、レースを勝利したのは一番人気のルックアットモア。一番翼の大きなペガサスだった。
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