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五章 ドリーム・リゾートです!
二十八話 南国なのになぜか相棒が不機嫌です!
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相変わらず風は暑かったが、こちらは爽やかな海風だった。
「求めてたのはこういうやつだよ! 」
「そうですか? 私は北国くらいがちょうど良かったですけど。」
「そんなこと言わずに、ほら、見てごらんよ! 南国だよ? 」
「まあそうですね、南国ですけど……。」
どうしてか、ミヤビのテンションはあまり高くはなかった。さっきまで川に落ちていたからだろうか?
広い海が見える手前は、草原が一面。奥の方には丘がいくつか見えた。三方向に海が見えているから、空までが広がっているように感じる。
俺は南国よりではあるが、そうでないという中途半端な場所の生まれなので、南国には当たり前にテンションが上がってしまう。
二人で草原を歩き出した。あたりにはプレイヤーたちもいる。いや、今までよりも、うんと増えていた。
ここで、ようやく、三経路に分かれていた初心者たちのルートが一つになるのだという。つまり、俺たちが来たウエストエリアの五番地。
そして、ウエストエリアの七番地と九番地。この三つのルートを進んできたプレイヤーたちが全員ここへと来るのだから、その分だけプレイヤーの数も増えているのだ。
それだから、モンスターに遭遇する頻度よりも、他のプレイヤーと会う頻度の方が多かった。みんな、毎度のことながら俺たちのことを変な目で見ていくのだけど、それにはもう慣れている。
マップを広げた。
「町はどこですか? 」
「二つあるんだけど……。」
「二つ? 」
今回のエリアには、町が二つあった。マップ上には、町のマークが東西二つある。東側に一つと西側にもう一つ。どっちがどうとかはわからないので、
「近い方に行きましょうか? 」
「そうだね。」
俺たちは西の町の方に向かった。道は砂地で、その上を進んでいくと、しばらくして町に到着した。濡れていた俺たちの体も、日差しのお陰ですぐに乾いた。
町は例に漏れず賑やかだ。
「おお! やっぱり南国だよ! ミヤビ、見てる? 」
「見てますよ。やっぱり北の人からしたら新鮮なんでしょうかね? 」
ん?
「ミヤビって、もしかして南国の人なの? 」
「ええ、そうですよ。沖縄の出身です。」
ああ。だからあんまりはしゃいでいなかったのか。
ただ、俺にとっては楽しい雰囲気だ。南国なんて旅行でしか行かないから、今まさに俺は旅行気分なのだ。
「ギルドはどこでしょうか? 」
「ええ! もうギルドに行っちゃうの? 」
俺の旅情虚しく、ミヤビに連れられてギルドに向かった。
ギルドもギルドで南国仕様。全体的にトロピカルな感じに仕上がっていた。
そこにいるプレイヤーたちも心ばかし浮ついている。このエリア限定の装備なのだろうか。南国風の格好をしている人たちもチラホラといる。
ミヤビは近くのテーブルに座った。
「何やりましょうか? クエスト? 」
「え、いきなり? 」
「だって私次行きたいですもん。私だけ実家に帰省したみたいですよ。非日常どころか、ゴリゴリの日常です。」
ゲームの中なのに、住んでた場所と同じようなところが出てきたら、つまらなくなってしまうというのも、仕方のないことなのか。
でも、いきなりクエストってのはなあ。せっかく新しいエリアに来てホッとしているのに。
ミヤビはすでにクエストの掲示板の方まで行ってしまっている。
「それにしても、いくら故郷にそっくりで新鮮じゃないからって、テンション低すぎやしないか? 」
彼女は紙をめくっては見て、クエストを吟味している。
俺はボーッとして、ミヤビの様子を見ていた。クエストならクエストで、どんなやつを選んでくるのだろう。
テーブルで頬杖をついていると、見知らぬプレイヤーから話しかけられた。
「君、こんな陽気なエリアに来たっていうのに、どうしてそんなにつまらなそうに座っているんだい? 」
「ああ、こんにちは。あなたは? 」
「おおすまない。俺の名前はリーチ。『アクシズ』ってパーティーのリーダーをやってる。君は? 」
アクシズ! この前のイベントで、俺たちを抑えて一位になっていたパーティーだ。彼らもこっちに来ていたのか。
というか、よもやこんなところで会うことになろうとは。リーチの装備は標準的な剣使いだった。職業はおそらく戦士。前の砂漠エリアでの最強装備を揃えていた。
レベルも気になるが、それは知ることができない。
「俺はロータスです。『バグ・バンデット』っていうパーティーにいます。」
「おお! この前のイベントで確か二位につけてたよな? 」
おや、認識されてるのか。
「そうです。俺も一位だった『アクシズ』のことが気になってたんだよ。」
「おお、気にしてもらえるのはありがたいな。実を言うと、俺たちも君らのことが気になってたんだ。」
「俺たちを? どうしてです? 」
「そりゃあ君たちは有名だよ。盗賊なのに、大剣やら杖やらを装備している二人組がいるって。」
ああ、やっぱりそういう話か。
リーチは時計を見た。
「おっと、すまない。もう行かなければ。また今度話そう。」
「いえいえ、話せてよかった。」
リーチは去り際、俺の方へ振り返ると、興味深いことを話した。
「そういえば君。そんなにつまらないんだったら、東のリゾートエリアに行ってみたらどうだい? きっと楽しいぞ。」
リゾート……マジか。
「求めてたのはこういうやつだよ! 」
「そうですか? 私は北国くらいがちょうど良かったですけど。」
「そんなこと言わずに、ほら、見てごらんよ! 南国だよ? 」
「まあそうですね、南国ですけど……。」
どうしてか、ミヤビのテンションはあまり高くはなかった。さっきまで川に落ちていたからだろうか?
広い海が見える手前は、草原が一面。奥の方には丘がいくつか見えた。三方向に海が見えているから、空までが広がっているように感じる。
俺は南国よりではあるが、そうでないという中途半端な場所の生まれなので、南国には当たり前にテンションが上がってしまう。
二人で草原を歩き出した。あたりにはプレイヤーたちもいる。いや、今までよりも、うんと増えていた。
ここで、ようやく、三経路に分かれていた初心者たちのルートが一つになるのだという。つまり、俺たちが来たウエストエリアの五番地。
そして、ウエストエリアの七番地と九番地。この三つのルートを進んできたプレイヤーたちが全員ここへと来るのだから、その分だけプレイヤーの数も増えているのだ。
それだから、モンスターに遭遇する頻度よりも、他のプレイヤーと会う頻度の方が多かった。みんな、毎度のことながら俺たちのことを変な目で見ていくのだけど、それにはもう慣れている。
マップを広げた。
「町はどこですか? 」
「二つあるんだけど……。」
「二つ? 」
今回のエリアには、町が二つあった。マップ上には、町のマークが東西二つある。東側に一つと西側にもう一つ。どっちがどうとかはわからないので、
「近い方に行きましょうか? 」
「そうだね。」
俺たちは西の町の方に向かった。道は砂地で、その上を進んでいくと、しばらくして町に到着した。濡れていた俺たちの体も、日差しのお陰ですぐに乾いた。
町は例に漏れず賑やかだ。
「おお! やっぱり南国だよ! ミヤビ、見てる? 」
「見てますよ。やっぱり北の人からしたら新鮮なんでしょうかね? 」
ん?
「ミヤビって、もしかして南国の人なの? 」
「ええ、そうですよ。沖縄の出身です。」
ああ。だからあんまりはしゃいでいなかったのか。
ただ、俺にとっては楽しい雰囲気だ。南国なんて旅行でしか行かないから、今まさに俺は旅行気分なのだ。
「ギルドはどこでしょうか? 」
「ええ! もうギルドに行っちゃうの? 」
俺の旅情虚しく、ミヤビに連れられてギルドに向かった。
ギルドもギルドで南国仕様。全体的にトロピカルな感じに仕上がっていた。
そこにいるプレイヤーたちも心ばかし浮ついている。このエリア限定の装備なのだろうか。南国風の格好をしている人たちもチラホラといる。
ミヤビは近くのテーブルに座った。
「何やりましょうか? クエスト? 」
「え、いきなり? 」
「だって私次行きたいですもん。私だけ実家に帰省したみたいですよ。非日常どころか、ゴリゴリの日常です。」
ゲームの中なのに、住んでた場所と同じようなところが出てきたら、つまらなくなってしまうというのも、仕方のないことなのか。
でも、いきなりクエストってのはなあ。せっかく新しいエリアに来てホッとしているのに。
ミヤビはすでにクエストの掲示板の方まで行ってしまっている。
「それにしても、いくら故郷にそっくりで新鮮じゃないからって、テンション低すぎやしないか? 」
彼女は紙をめくっては見て、クエストを吟味している。
俺はボーッとして、ミヤビの様子を見ていた。クエストならクエストで、どんなやつを選んでくるのだろう。
テーブルで頬杖をついていると、見知らぬプレイヤーから話しかけられた。
「君、こんな陽気なエリアに来たっていうのに、どうしてそんなにつまらなそうに座っているんだい? 」
「ああ、こんにちは。あなたは? 」
「おおすまない。俺の名前はリーチ。『アクシズ』ってパーティーのリーダーをやってる。君は? 」
アクシズ! この前のイベントで、俺たちを抑えて一位になっていたパーティーだ。彼らもこっちに来ていたのか。
というか、よもやこんなところで会うことになろうとは。リーチの装備は標準的な剣使いだった。職業はおそらく戦士。前の砂漠エリアでの最強装備を揃えていた。
レベルも気になるが、それは知ることができない。
「俺はロータスです。『バグ・バンデット』っていうパーティーにいます。」
「おお! この前のイベントで確か二位につけてたよな? 」
おや、認識されてるのか。
「そうです。俺も一位だった『アクシズ』のことが気になってたんだよ。」
「おお、気にしてもらえるのはありがたいな。実を言うと、俺たちも君らのことが気になってたんだ。」
「俺たちを? どうしてです? 」
「そりゃあ君たちは有名だよ。盗賊なのに、大剣やら杖やらを装備している二人組がいるって。」
ああ、やっぱりそういう話か。
リーチは時計を見た。
「おっと、すまない。もう行かなければ。また今度話そう。」
「いえいえ、話せてよかった。」
リーチは去り際、俺の方へ振り返ると、興味深いことを話した。
「そういえば君。そんなにつまらないんだったら、東のリゾートエリアに行ってみたらどうだい? きっと楽しいぞ。」
リゾート……マジか。
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