27 / 45
五章 ドリーム・リゾートです!
二十七話 南国・W4です!
しおりを挟む・・・ん?・・・朝?
もう、そんな時間?
何だか、温かいな。
それに、顔に何か当たってる?
何だろう。
もぞもぞ動いてみる。
まぁ、気持ち良いし、いいか。
ああ。でも、そろそろ鍛練を始める時間だから起きないと・・・
幼い頃から早朝鍛練に興味を持ち、お父様や護衛騎士の鍛練に勝手に参加していた私は早起きすること十四年。
体が勝手に目覚め、シャキッと動き出すというのに、どうも今朝は勝手が違った。
「シュガー、熱烈なのは大歓迎だが、そんなにひっついて呼吸されたり、もぞもぞされると流石にくすぐったいぞ」
頭のすぐ上から聞こえてくる、深みがあるのに甘く、吐息が混じった艶のある声に慌てて飛び起きる。
「ちょっ・・・、どうして人のベッドに!」
信じられないことに、アントニオが私のベッドで横になっている。
しかもその胸元ははだけていて、貞操の危機といったものが頭を過ぎる。
オロオロして自分の姿を確認すると、昨夜借りた見慣れない男性用の寝間着をきちんと身につけている事にほっとする。
「人を犯罪者のように・・・。
俺は呼び鈴が鳴ったからこの部屋に来ただけだ。
そしたら、魘されているお前が水を飲みたいような事を言ってるから、手を貸して飲ませた。
寝かせてやったら、今度は俺の腕を離さない。
というより、しがみついてきた。
仕舞いに抱きついてきて、今に至る」
どうだ、解ったか?
ベッドに肩ひじをついて横になったまま、なぜか嬉しそうに笑顔を浮かべている。
はだけた白いシャツの胸元からは逞しい身体が見えて、なぜか直視出来なかった。
落ち着かないので部屋を出て行ってもらうことにする。
「普通に起き上がれるみたいで良かった。
頬はその湿布薬を貼っておけば、腫れや痛みは治るはずだ。
朝食はここに運ぶから待ってろ。
ああそう。
三日はベッドで安静にするんだぞ。
後になってから、調子が悪くなる場合もあるからな。
間違っても鍛練なんてするな」
アントニオはガバッとベッドから起き上がると、私の頭を数回撫でて行った。
・・・湿布薬?
頬に触れてみると、確かに冷たいものが貼られていた。
しかも、痛みも腫れも引いている・・・。
昨夜、てっきり頬を冷やすものと思いきや、医師にはスースーする塗り薬を塗られた。
『アレは無いのか?』
アントニオが医師に聞いていたのは、この湿布薬だったのかな。
寝る前は貼ってなかったはず。
・・・ってことは、貼ってくれた?
呼び鈴を鳴らした記憶もなければ、水を飲みたいなんて言ったことも覚えていない。
でも、結果的に異性と同衾してしまった。
起こってしまったものは、しょうがない。
私はもぞもぞしたのが、実際にはアントニオに擦り寄っていたという恥ずかしい記憶を封印することにした。
「この湿布薬の効き目すごいですね」
朝食を運んできてくれたアントニオは、自分の分も持ってきたようで、分厚いベーコンを口に運んでいる。
私のベーコンは、食べやすいように薄く小さくカットされている。
「この国にはない湿布薬だ。
フレジアって国知ってるか?」
私は頷く。
フレジアは四方を海に囲まれた神秘の国。
フレジアの王族、そして一部の貴族は魔法や錬金術を使うと聞いたことがある。
「この国に来る前はそこで役者をしていた。
まぁ、フレジアでも一流だった俺は色々とツテがあるんだ」
「ヘェ~」
フレジアの魔法薬。
どおりで、あんな効果があったんだ。
「何だ、俺のすごさが解ったか」
アントニオはコーヒーに角砂糖を四つも入れて、それを飲み干す。
「・・・シュガー、そういえばお前、短剣を持っていただろう。
なぜ髪を切ろうとした時、出さなかった?」
「ああ、あれはですね、スパイスさんでしたっけ?
彼がこう、嫌な雰囲気を出してたので」
スパイスさんは私に警戒していた。
多分スパイスさんは、アントニオの護衛的な役割なのかも。
「そうか。
実は、お前が昨夜使った短剣が見つからなかった」
「・・・そうですか」
あの時、図体の大きい男の短剣と同時に飛んで行った。
辺りは暗かったし、見つからなくても仕方ない。
そう思った。
でも、あのライアン様から贈られた短剣が、翌朝騎士によって発見され、血痕のついた短剣が現在捜索願いの出されている私ジュリアナ・アッシュフィールドの私物であることが判り、捜索が拡大しているなんて、私は知る由もなかった。
もう、そんな時間?
何だか、温かいな。
それに、顔に何か当たってる?
何だろう。
もぞもぞ動いてみる。
まぁ、気持ち良いし、いいか。
ああ。でも、そろそろ鍛練を始める時間だから起きないと・・・
幼い頃から早朝鍛練に興味を持ち、お父様や護衛騎士の鍛練に勝手に参加していた私は早起きすること十四年。
体が勝手に目覚め、シャキッと動き出すというのに、どうも今朝は勝手が違った。
「シュガー、熱烈なのは大歓迎だが、そんなにひっついて呼吸されたり、もぞもぞされると流石にくすぐったいぞ」
頭のすぐ上から聞こえてくる、深みがあるのに甘く、吐息が混じった艶のある声に慌てて飛び起きる。
「ちょっ・・・、どうして人のベッドに!」
信じられないことに、アントニオが私のベッドで横になっている。
しかもその胸元ははだけていて、貞操の危機といったものが頭を過ぎる。
オロオロして自分の姿を確認すると、昨夜借りた見慣れない男性用の寝間着をきちんと身につけている事にほっとする。
「人を犯罪者のように・・・。
俺は呼び鈴が鳴ったからこの部屋に来ただけだ。
そしたら、魘されているお前が水を飲みたいような事を言ってるから、手を貸して飲ませた。
寝かせてやったら、今度は俺の腕を離さない。
というより、しがみついてきた。
仕舞いに抱きついてきて、今に至る」
どうだ、解ったか?
ベッドに肩ひじをついて横になったまま、なぜか嬉しそうに笑顔を浮かべている。
はだけた白いシャツの胸元からは逞しい身体が見えて、なぜか直視出来なかった。
落ち着かないので部屋を出て行ってもらうことにする。
「普通に起き上がれるみたいで良かった。
頬はその湿布薬を貼っておけば、腫れや痛みは治るはずだ。
朝食はここに運ぶから待ってろ。
ああそう。
三日はベッドで安静にするんだぞ。
後になってから、調子が悪くなる場合もあるからな。
間違っても鍛練なんてするな」
アントニオはガバッとベッドから起き上がると、私の頭を数回撫でて行った。
・・・湿布薬?
頬に触れてみると、確かに冷たいものが貼られていた。
しかも、痛みも腫れも引いている・・・。
昨夜、てっきり頬を冷やすものと思いきや、医師にはスースーする塗り薬を塗られた。
『アレは無いのか?』
アントニオが医師に聞いていたのは、この湿布薬だったのかな。
寝る前は貼ってなかったはず。
・・・ってことは、貼ってくれた?
呼び鈴を鳴らした記憶もなければ、水を飲みたいなんて言ったことも覚えていない。
でも、結果的に異性と同衾してしまった。
起こってしまったものは、しょうがない。
私はもぞもぞしたのが、実際にはアントニオに擦り寄っていたという恥ずかしい記憶を封印することにした。
「この湿布薬の効き目すごいですね」
朝食を運んできてくれたアントニオは、自分の分も持ってきたようで、分厚いベーコンを口に運んでいる。
私のベーコンは、食べやすいように薄く小さくカットされている。
「この国にはない湿布薬だ。
フレジアって国知ってるか?」
私は頷く。
フレジアは四方を海に囲まれた神秘の国。
フレジアの王族、そして一部の貴族は魔法や錬金術を使うと聞いたことがある。
「この国に来る前はそこで役者をしていた。
まぁ、フレジアでも一流だった俺は色々とツテがあるんだ」
「ヘェ~」
フレジアの魔法薬。
どおりで、あんな効果があったんだ。
「何だ、俺のすごさが解ったか」
アントニオはコーヒーに角砂糖を四つも入れて、それを飲み干す。
「・・・シュガー、そういえばお前、短剣を持っていただろう。
なぜ髪を切ろうとした時、出さなかった?」
「ああ、あれはですね、スパイスさんでしたっけ?
彼がこう、嫌な雰囲気を出してたので」
スパイスさんは私に警戒していた。
多分スパイスさんは、アントニオの護衛的な役割なのかも。
「そうか。
実は、お前が昨夜使った短剣が見つからなかった」
「・・・そうですか」
あの時、図体の大きい男の短剣と同時に飛んで行った。
辺りは暗かったし、見つからなくても仕方ない。
そう思った。
でも、あのライアン様から贈られた短剣が、翌朝騎士によって発見され、血痕のついた短剣が現在捜索願いの出されている私ジュリアナ・アッシュフィールドの私物であることが判り、捜索が拡大しているなんて、私は知る由もなかった。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説

World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
【14万PV感謝!!】異世界で配合屋始めたら思いのほか需要がありました! 〜魔物の配合が世界を変える〜
中島菘
ファンタジー
電車で刺された男・タイセイは気づけば魔物が人間と共に堂々と道の真ん中を闊歩するような異世界にいた。身分も何もかもない状態になってしまい、途方に暮れる彼だったが、偶然取り組み始めた配合による小魚の新種の作成を始めた。
配合というアイデアは、画期的なアイデアで、ある日彼が転生した大都市ホルンメランの美少女首長がそれに目をつけ、タイセイを呼び出す。
彼女との出会いをきっかけとして、タイセイの異世界生活は大きく動き出しはじめた!
やがてタイセイの数奇な運命は異世界全体を巻き込んでいく……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる