25 / 45
四章 W5・砂漠エリアです!
二十五話 蛇の杖です!
しおりを挟む
男性は、剣か杖かの選択を求めてきた。キングコブラの討伐報酬として貰えるようだ。
「これは迷う必要ないよな。」
「そうですよ。晴れて私も装備を新調できるってもんです。」
ミヤビは杖を選択した。剣を選んだところで、二人とも装備することができない。ミヤビが装備できる杖を選ぶのは当たり前だ。
男性は奥から例のように大きい袋を持ってきた。
「こちらが特別報酬『ファラオロッド』でございます。」
袋はミヤビに手渡された。
ギルドのテーブルにつくやいなや、ミヤビは袋を開けた。大剣よりは袋が小さかったので、すぐに杖は見えた。
「ほお、これは……。」
中から現れたのは、黒い杖。上端に金と黒のコブラがあしらわれていた。艶でピカピカに黒光っている。コブラの眼が紅く光っているのも、よく目立つ。
「カッコいいじゃないか! 」
「そうですよね! 」
ミヤビはご満悦で、新しい杖を抱えていた。
翌日、昼下がりに俺たちはまた集合した。やんわりと眠くなってくる頃合いだが、ゲームを始めると目はすっかり覚めてしまった。
ミヤビはやる気満々。
「早く外に行きましょう! 試し打ちですよ! 試し打ち! 」
杖の試し打ちって言ったって、俺たち魔法使えねえじゃないか。
ミヤビは肩に杖をかけたまま、ギルドを出てしまった。一人で行かせるのもどうかと思うので、俺も彼女の後を追う。
砂漠の外まで走ると、ミヤビは何度か素振りをした。空気を切る音がブンブンと鳴っている。
「フン! フン! 」
砂も舞っている。
ミヤビは肩で風を切りながらそこら辺を歩き始めた。
「ロータスさん! はやくしないと置いて行っちゃいますよ? 」
「待ってくれよ。どうしてそんなにテンション高いんだよ? 」
「そりゃもう! 新しい武器なんだから、テンション上がるに決まっているでしょう! ロータスさんの武器だってすごい威力だったんだから、私のこの杖にも期待が持てますよ! 」
杖なのだから、物理的な威力はそんなに無いと思うのだが……。
歩くと、そう経たないうちに敵と遭遇した。相手がどんなに強かろうとも、出てきて戦わなければならない敵モンスターたちは不憫だ。
「さあて、敵はよりによってこいつらですか。」
目の前に飛び出してきたのは、鉄サソリたちだった。
鉄サソリたちは全部で八匹いた。昨日といい、一気に沢山の敵と遭遇するようになった。
このゲーム、レベルによって現れる敵の数が変化するようだ。俺たちはすでにレベル25と22。このエリア内ではどのモンスターにも苦戦しないレベル。
それだから、一度に遭遇する敵の数もそれなりに多くなっているのだ。
「さあ、試運転ですよ! 」
ミヤビは大きく杖を振りかぶった。
彼女は手当たり次第杖をフルスイング。もちろんクリティカルの判定。
しかし、ダメージ量はイマイチパッとしなかった。
「あれ? どういうことでしょうか。」
確かに前よりは威力は高かった。けれどそれも少しだけ、鉄サソリには貫通しなかった。
鉄サソリはまだピンピンしている。
「ちょっとー! なんかガッカリなんですけど! どうしてそんなに強くないんですか? この杖。」
当たり前っちゃ当たり前の話だ。だって杖だもの。そもそもぶん殴る用途で作られてはいない。
「振りかざしてみれば何か起きるんじゃない? 」
「ああ、そうですよね。この前のファイアロッドみたいに。」
ミヤビは杖を振りかざした。
するとどうだろう。コブラが大口を開けて、中から紫の塊を吐き出した。
塊は最初の鉄サソリに直撃した。
「グゴォォ! 」
鉄サソリの体はみるみるうちに溶け落ちてしまった。
「うお! 危ないな! 」
あんなに硬かった鉄サソリが泥のようになってしまった。
どうやら、「ファラオロッド」が吐き出した紫の塊は、毒である。それも、かなりの強酸だ。
鉄でできている鉄サソリも酸には勝てない。
「それっ! 」
またミヤビは杖を振りかざす。紫の塊がまた一つ飛び出て、二体目の鉄サソリを溶かしてしまった。
ミヤビは勢いづいた。
「これ、いいですね! あんなに手こずっていたサソリたちがどんどん倒れて行きますよ! 」
八匹いた鉄サソリは、瞬く間に全滅してしまった。
敵を倒せたのは良かったのだが……。
「シュゥゥゥゥ。」
ところどころで煙が立っていた。砂まで溶けてしまって、煙が立ち昇っているのだ。
俺の「デザートストーム」もそうだが、ミヤビの杖も相当はた迷惑な代物だ。強いのはいいのだが。
偶然居合わせた他のプレイヤーたちも唖然としていた。みんな驚いて、俺たちには近寄ってこない。ただでさえ他のプレイヤーたちからは避けられ気味の俺たちなのに、これでは一層人が近づいてきてくれなくなってしまう。
ミヤビは満足したらしく、杖を背中にさした。
「さあ、気が済んだので町に戻りましょうか。ロータスさんのときみたいに特別指定が乱入してきても困りますし。」
彼女の言う通り、長居は無用だ。予期せぬような特別指定のモンスターに絡まれたくないのもあるが、何より周りの視線が痛い。
俺は意気揚々のミヤビを連れて、そそくさと町に帰った。
「これは迷う必要ないよな。」
「そうですよ。晴れて私も装備を新調できるってもんです。」
ミヤビは杖を選択した。剣を選んだところで、二人とも装備することができない。ミヤビが装備できる杖を選ぶのは当たり前だ。
男性は奥から例のように大きい袋を持ってきた。
「こちらが特別報酬『ファラオロッド』でございます。」
袋はミヤビに手渡された。
ギルドのテーブルにつくやいなや、ミヤビは袋を開けた。大剣よりは袋が小さかったので、すぐに杖は見えた。
「ほお、これは……。」
中から現れたのは、黒い杖。上端に金と黒のコブラがあしらわれていた。艶でピカピカに黒光っている。コブラの眼が紅く光っているのも、よく目立つ。
「カッコいいじゃないか! 」
「そうですよね! 」
ミヤビはご満悦で、新しい杖を抱えていた。
翌日、昼下がりに俺たちはまた集合した。やんわりと眠くなってくる頃合いだが、ゲームを始めると目はすっかり覚めてしまった。
ミヤビはやる気満々。
「早く外に行きましょう! 試し打ちですよ! 試し打ち! 」
杖の試し打ちって言ったって、俺たち魔法使えねえじゃないか。
ミヤビは肩に杖をかけたまま、ギルドを出てしまった。一人で行かせるのもどうかと思うので、俺も彼女の後を追う。
砂漠の外まで走ると、ミヤビは何度か素振りをした。空気を切る音がブンブンと鳴っている。
「フン! フン! 」
砂も舞っている。
ミヤビは肩で風を切りながらそこら辺を歩き始めた。
「ロータスさん! はやくしないと置いて行っちゃいますよ? 」
「待ってくれよ。どうしてそんなにテンション高いんだよ? 」
「そりゃもう! 新しい武器なんだから、テンション上がるに決まっているでしょう! ロータスさんの武器だってすごい威力だったんだから、私のこの杖にも期待が持てますよ! 」
杖なのだから、物理的な威力はそんなに無いと思うのだが……。
歩くと、そう経たないうちに敵と遭遇した。相手がどんなに強かろうとも、出てきて戦わなければならない敵モンスターたちは不憫だ。
「さあて、敵はよりによってこいつらですか。」
目の前に飛び出してきたのは、鉄サソリたちだった。
鉄サソリたちは全部で八匹いた。昨日といい、一気に沢山の敵と遭遇するようになった。
このゲーム、レベルによって現れる敵の数が変化するようだ。俺たちはすでにレベル25と22。このエリア内ではどのモンスターにも苦戦しないレベル。
それだから、一度に遭遇する敵の数もそれなりに多くなっているのだ。
「さあ、試運転ですよ! 」
ミヤビは大きく杖を振りかぶった。
彼女は手当たり次第杖をフルスイング。もちろんクリティカルの判定。
しかし、ダメージ量はイマイチパッとしなかった。
「あれ? どういうことでしょうか。」
確かに前よりは威力は高かった。けれどそれも少しだけ、鉄サソリには貫通しなかった。
鉄サソリはまだピンピンしている。
「ちょっとー! なんかガッカリなんですけど! どうしてそんなに強くないんですか? この杖。」
当たり前っちゃ当たり前の話だ。だって杖だもの。そもそもぶん殴る用途で作られてはいない。
「振りかざしてみれば何か起きるんじゃない? 」
「ああ、そうですよね。この前のファイアロッドみたいに。」
ミヤビは杖を振りかざした。
するとどうだろう。コブラが大口を開けて、中から紫の塊を吐き出した。
塊は最初の鉄サソリに直撃した。
「グゴォォ! 」
鉄サソリの体はみるみるうちに溶け落ちてしまった。
「うお! 危ないな! 」
あんなに硬かった鉄サソリが泥のようになってしまった。
どうやら、「ファラオロッド」が吐き出した紫の塊は、毒である。それも、かなりの強酸だ。
鉄でできている鉄サソリも酸には勝てない。
「それっ! 」
またミヤビは杖を振りかざす。紫の塊がまた一つ飛び出て、二体目の鉄サソリを溶かしてしまった。
ミヤビは勢いづいた。
「これ、いいですね! あんなに手こずっていたサソリたちがどんどん倒れて行きますよ! 」
八匹いた鉄サソリは、瞬く間に全滅してしまった。
敵を倒せたのは良かったのだが……。
「シュゥゥゥゥ。」
ところどころで煙が立っていた。砂まで溶けてしまって、煙が立ち昇っているのだ。
俺の「デザートストーム」もそうだが、ミヤビの杖も相当はた迷惑な代物だ。強いのはいいのだが。
偶然居合わせた他のプレイヤーたちも唖然としていた。みんな驚いて、俺たちには近寄ってこない。ただでさえ他のプレイヤーたちからは避けられ気味の俺たちなのに、これでは一層人が近づいてきてくれなくなってしまう。
ミヤビは満足したらしく、杖を背中にさした。
「さあ、気が済んだので町に戻りましょうか。ロータスさんのときみたいに特別指定が乱入してきても困りますし。」
彼女の言う通り、長居は無用だ。予期せぬような特別指定のモンスターに絡まれたくないのもあるが、何より周りの視線が痛い。
俺は意気揚々のミヤビを連れて、そそくさと町に帰った。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に転移す万国旗
あずき
ファンタジー
202X年、震度3ほどの地震と共に海底ケーブルが寸断された。
日本政府はアメリカ政府と協力し、情報収集を開始した。
ワシントンD.Cから出港した米艦隊が日本海に現れたことで、
アメリカ大陸が日本の西に移動していることが判明。
さらに横須賀から出発した護衛艦隊がグレートブリテン島を発見。
このことから、世界中の国々が位置や向きを変え、
違う惑星、もしくは世界に転移していることが判明した。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
恋人が実は 前世の息子/母親の生まれ変わり だった?!
琴葉悠
恋愛
好きになった相手が、実は前世の息子/母親の生まれ変わりだった?!
そんな事に気づいた二人のちょっと短めのお話です。
人外×人外的な力を持つ人のお話
https://ncode.syosetu.com/n5584gr/ のifのお話です。(書いたのは私です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる