盗賊だけど大剣しか使えません! 〜VRゲームで盗賊になったのに、大剣しか装備することが出来ず絶望していたけど、それはそれで最強だった! 〜

中島菘

文字の大きさ
上 下
20 / 45
四章 W5・砂漠エリアです!

二十話 出会ったのは砂漠の災厄でした!

しおりを挟む
 サンドディザスターは静かに俺たちを見下ろしていた。すごい大きさだ。顎だけで俺たち二人の身長の合計よりも長い。

 不思議と向こうから仕掛けてくる様子はなかった。

「こいつ、特別指定ならポイントは高いのかい? 」

「そうですよ! 800ポイントが獲得できます。」

それだけのポイントがあれば、一気にトップまで躍り出ることが可能だ。

 普通のモンスターに換算して80匹分のポイント。それだけのモンスターを倒すパーティーが他にあるとは思えない。

 だが問題は、そもそもこいつを倒すことができるのかということだった。

「どのくらい強いの? このサンドディザスターって。」

「懸賞金は12,000ゴールドです。このエリアの特別指定の中では最も高額ですよ。強さもまた、この金額の通りです。」

「どえらい強敵じゃないか! 」

その12,000ゴールドの特別指定が、今目の前にいる。

 サンドディザスターは、不自然なほどに動かない。

「仕掛けますか。」

「やるしかないだろう。」

このチャンスを逃せば、もう十位以内は狙えない。

 俺たちは、合図で同時に『隠密』で身を隠した。

「俺は右から、ミヤビは左からでいこう! 」

「分かりました! 」

サンドディザスターは俺たちの姿が消えても、動じなかった。

 俺たちはすぐにサンドディザスターの左右に回り込んだ。

「行きますよ! 」

「おう! 」

何度もやっている戦法だから、もう息はピッタリだ。二人同時に敵を叩けば、相応のダメージが入る。

「ズドーン! 」

相変わらず凄い音がする。

 しかし、その轟音ほどの手応えはなかった。サンドディザスターの黒紫の体には傷がついていないのだ。

「おいおい、どういうことだ? 」

「思った以上に硬いみたいですね。」

 サンドディザスターは、怯む様子も見せなかった。

「ボーッとしてたら危ないですよ! 今私たちは見えてるんですから! 」

「しまっ……!! 」

その場から離脱しようといたころには、すでに薙ぎ払われようという大アゴが俺の側まで迫っていた。

 とっさに大剣で体をカバーしたが、大アゴで俺は吹き飛ばされてしまった。

「ゴワァ! 」

俺はそのまま凄まじい速度で洞窟の壁面にぶち当たった。

「大丈夫ですか! 」

「う、ううん。」

意識が飛びそうになった。とんでもない攻撃だ。HPは半分以上が削られていた。

「とりあえず『隠密』で身を隠して! 」

俺はミヤビに言われるがままに『隠密』を使って洞窟の端のミヤビのもとまで戻った。

「思ったよりヤバいな‥…。」

「さすがは12,000ゴールドの特別指定モンスターですね。」

 ミヤビは道具屋で買い込んでいたキズ薬を渡してくれた。それを受け取ってすぐに使った。

「どうです? 」

「少し癒えてきたような感じだよ。ポカポカする。」

RPGをやるたびに浮かび上がる「普通色々な怪我するのに全部同じ薬とか呪文とかで治るわけなくね? 」という疑問を、力技で納得させられるような感覚。

 全身から痛みが暖かさに乗って飛んでいく。

「これすごいよ。」

HPが八割あたりまで回復した。

 だが依然として強大なサンドディザスターは目の前にいる。ダメージもほとんど入ってはいないだろう。

「普通に攻撃するんじゃダメだろうね。」

「弱点を狙いますか。」

先程はただ胴体を考え無しに攻撃しただけだった。

 だがモンスターには、普通の生き物同様に弱点が存在している。

「コイツの弱点は? 」

「頭じゃないですか? それ以外は全部外殻に覆われています。」

頭か。真正面から切り込むのはかなり胆力がいる。

 二本の大アゴの間に入って攻撃しなければならない。

「流石に弱点を突けばダメージが入ると思いますがね。」

「結構な危なさじゃない? 」

「けど、もうやるしかないでしょう。」

サンドディザスターの大アゴは静かに口を開いている。





 ミヤビは『隠密』を使ったまま、迷いなくアゴの間へと入り込んだ。

「ほら! ロータスさんも早く! 」

俺は促されたが、彼女ほど躊躇なくはいけなかった。

「おいおい! そんなにズカズカ行っても大丈夫なのかい? 」

「どうせぶっ叩くんですから、どう近づいても一緒ですよ。」

ミヤビは杖を大きく振りかぶった。

 俺も動かないサンドディザスターの顔面の真前まできた。顔面は俺たちの背丈以上にデカい。

「じゃあ早速いきますよ。」

「いやいや! 心の準備ってもんがあるだろ。」

「はい? 何を怖がってるんですか? 」

「君はあの攻撃を喰らっていないからそんなことが言えるんだ! 」

「でもやらなくちゃいけないことは同じです。」

ミヤビに促されて俺も大剣を振り上げた。

 「おありゃあ! 」

手慣れた攻撃は正確にサンドディザスターの頭を打った。

「ギャアオオオオオオ!!! 」

今度は効いた! サンドディザスターは、けたたましい鳴き声を上げた。

「お! 効いたじゃないですか! 」

「よかった! これで効かなかったらお手上げだもんな。」

 だが、次の瞬間だった。

「グォォォォォ!! 」

サンドディザスターが体を唸らせだした。

「ちょっとちょっと! なんなんですか? 」

「分からないよ! でもヤバいよこれ……うわあ! 」

サンドディザスターが暴れ出した! 俺たちはそれに巻き込まれ、周りの土ごと巻き上げられた。

 体が強烈に上へと引っ張られる。

「体が千切れそうだ! 」

「私たち、宙に浮いてますよ! 」

ふと見下ろすと、下にはさっきまで歩いていた砂漠が広がっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【14万PV感謝!!】異世界で配合屋始めたら思いのほか需要がありました! 〜魔物の配合が世界を変える〜

中島菘
ファンタジー
 電車で刺された男・タイセイは気づけば魔物が人間と共に堂々と道の真ん中を闊歩するような異世界にいた。身分も何もかもない状態になってしまい、途方に暮れる彼だったが、偶然取り組み始めた配合による小魚の新種の作成を始めた。  配合というアイデアは、画期的なアイデアで、ある日彼が転生した大都市ホルンメランの美少女首長がそれに目をつけ、タイセイを呼び出す。  彼女との出会いをきっかけとして、タイセイの異世界生活は大きく動き出しはじめた!   やがてタイセイの数奇な運命は異世界全体を巻き込んでいく……

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...