盗賊だけど大剣しか使えません! 〜VRゲームで盗賊になったのに、大剣しか装備することが出来ず絶望していたけど、それはそれで最強だった! 〜

中島菘

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四章 W5・砂漠エリアです!

十八話 やっぱり少人数は不利でした!

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 21時の鐘がなった。イベントの開始だ!

 イベント参加パーティーのプレイヤーたちは一斉に町の外へと駆け出していった。

「俺たちも早く行こう! 」

「そうですね! 時間がもったいないですから。」

俺たちも他のプレイヤーに混じって町を飛び出した。

 外は普段では見られないような活気に包まれていた。そこらじゅうにプレイヤーが見えるのだ。

 モンスターの方が足りていないのではないかとさえ思えてしまう。

「これじゃあ他の人たちと取り合いになっちゃいますよ! 」

「もっと端の方に行こう! 」

二人で、プレイヤーたちがひしめいている横を通りすぎて、エリアの端の方を目指した。

 その道中で、敵に遭遇するにはしたが、やはりいつもよりもだいぶ頻度は少なかった。

「厳しいですね。」

出会った敵はもちろんすぐに倒していったが、獲得ポイントは雀の涙程度。

 イベントの最中は、自分たちがいま全体で何位なのかが見ることができる。今は……

「おいおい! やばいよ。17位だよ! 」

「あれ? 他の人たちはそんなに倒せてるんですか? 」

見回してみると、すぐにタネはわかった。

 他のパーティーは、人員を割いているのだ。四人を二人ずつに分けて、効率よく敵を倒して行っているわけだから、もちろん俺たちよりは全然速い。

 一方で俺たちは分かれて戦うわけにはいかない。俺は全体攻撃が得意だから、一体一体の敵相手だと時間がかかってしまう。

 ミヤビはミヤビで、単体攻撃の火力は半端ないものの、全体攻撃ができないので、敵が何体も一斉に飛び出してくると、一気に効率悪くなってしまう。

 俺たちは互いの得意分野で互いの弱点を補わなければならない。ここにきて、今まさに数の不利を受けているのだ。

 エリアの端の方までたどり着いたものの、やはりこの数の不利は消えなかった。

「どうしますか? これ。」

「分からない。でもこのままだと十位以内には絶対に入らないことは確かだ! 」

 今の俺たちの順位は十九位だった。この不利な状態で、ここから九パーティーを抜かさなければならないのだ。

 一気にポイントを取って、追い上げるしかない。

「確か、普通のモンスターは全部10ポイントぽっちだったよな? 」

「はい、だからほんとは倒す相手を選ぶ必要もあるのですけれど、今の私たちはそうも言ってられません! 」

「いや、選ぶんだ。普通のモンスターはもう相手にしない。」

 もう、10ポイントずつ拾っていったところで、数の不利でこのまま押し切られてしまう。

「特別指定だ! 特別指定のモンスターだけを狙うよ! 」

「なるほど! 奇策中の奇策ですけど、確かにそれしかありませんね! 」

 特別指定はエリアのフィールド上に現れるはずだ。問題は、さっき下見したときに一度も出会っていないこと。

「このエリアに特別指定のモンスターって何種類いるの? 」

「ええと、四種類かな? 『クレセントオウル』、『キングコブラ』、『ミイラナイト』、『サンドディザスター』だったと思います。」

「個性豊かだな。見れば一発で分かりそう。」

「そうですよね。さっきは影も形もありませんでしたけど。」

「そこなんだよなあ。一体どこにいるのやら。」

イベントの開始と同時に特別指定モンスターたちも解放されたのだろうか? 

 いる場所がわからないのであれば、本当に運任せになってしまう。

「人が普段足を踏み入れるような中心の方にはいないでしょうね。」

「そうだね。『メイジスケルトン』も森の奥にいたし、多分他もそうなんだろう。」

思うに、特別指定モンスターは、ボスのような役回りをしているのだろう。もしかしたら、遺跡だったり、洞窟だったり、特別なフィールドに現れるのかもしれない。

 俺たちは、なおもエリアの端を目指して走っていた。特別指定狙いを決めたので、途中で遭遇した普通のモンスターたちも全力で無視した。

 腐っても盗賊だ。戦いたくない敵から逃げるのは楽勝だ。

「でも、どんどん順位が下がっていってしまいますよ。」

「我慢だよ。今は。」

まったくモンスターを倒していないので、順位はみるみるうちに下がって行き、ついに27位。下に三パーティーしかいないという状況だ。

 さすがに焦ってきてしまう。どこにいるのかさえ分からない特別指定モンスターを当てにしているのだから、余裕なんてもちろんない。

 時間も気にしなければならない。このイベントで忘れてはいけないことだ。

「今何時くらいですかね? 」

「21時40分だよ。あと25分残っている。」

「え! もう半分以上経ってるんですか! 本当にヤバいじゃないですか! 」

エリアの端まで行くのに15分はかかってしまったから、こんな時間になってしまった。

 だから、ただ特別指定と出会うだけではもうダメなのだ。制限時間以内に倒せてしまわなければならない。そこまで逆算していなければならないのだ。

 ミヤビが突然足を止めた。

「どうしたの? 」

「あれです。」

彼女が杖で指し示した先には、「デザートワーム」がいた。

「たしかに珍しいかもしれないけど、そいつもたった10ポイントだよ。」

「でも、弱くて倒しやすいですし、倒して行きましょう。」

ミヤビはデザートワームに向かって走り出してしまった。

 彼女はデザートワームに駆け寄り思い切りフルスイング!
だが、ワームはクルリとその杖をかわしてしまった。

「なに! 」

もう一度フルスイングしたが、やっぱり避けられてしまった。

「なんでよ! 」

「おいおい! 熱くなるな! もう追わなくていいから!


ああ、もう手遅れだ。ミヤビはデザートワームを追いかけていってしまった。
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