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四章 W5・砂漠エリアです!

十五話 次のエリアは砂漠でした!

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 門を抜けると、新しいエリア。このときのワクワク感は、VRになると格別だ。

 関所を完全に抜けると、そこは大砂漠だった。一面の砂である。

「これはまた毛色が全然違うというか……」

「そうですよね。一気に変わってしまいましたね。」

「隣のエリアなのに、不思議だな。」

「東西のエリアは特にバラエティに富んでるみたいですよ。」

 ここは、ウエストエリアの五番地だ。地図を開いてみると、エリアのほぼ全てが砂漠になっているようだ。

 ひとまずは町を目指すことにした。町は一エリアに一つ以上は必ず置かれているので、まずはそこを目指すのが定石だ。

「町ってどこの方角ですか? 」

「北東に進めばいいみたいだよ。オアシスが見えて来るらしい。」

 砂漠はずっと何もないように見えたが、すぐに敵モンスターと遭遇した。

 エリアが変わっただけあって、全く見たことがないモンスターが現れた。敵は五匹だ。

「蛇ですね、これ。」

「蛇だね。しかもコブラだよ、砂漠とかじゃ定番の。」

「コブラなんて現実でも見たことないのに。」

コブラたちの正式名称は「化けコブラ」だった。前のエリアの敵より強そうだ。

 戦闘になったが、俺には試したいことが一つあった。敵が多いときこそ役立つスキルだ。

「この前レベルが上がったおかげで大剣スキルを一つ覚えたんだけど、試してみてもいいかな? 」

「おお! いいじゃないですか! 試しましょう。」

 ミヤビの了解も得たことだし、新スキルの試運転といこう。

 コブラはこちらの様子を伺っていたので、俺が先に動いた。

「『グラウンドクラッシュ』!! 」

俺は大剣をコブラの前の地面に叩きつけた。

 地面は裂けて砕け散り、その衝撃波はコブラたちをまとめて吹き飛ばしてしまった。

 レベルが上がっていたおかげで十分すぎる威力。コブラたちはそのまま倒れてしまった。

「凄いじゃないですか! 全体攻撃なんて。」

「思った以上だったよ。」

 火力バカのミヤビの唯一の欠点ともいえるのが、単体攻撃しか出来ないことだった。

 そこで俺が全体攻撃出来るとなれば、これはかなりの長所になる。戦略の幅も広がるのだ。 



 次に現れた敵が、俺たちと相性が悪かった。そいつらは、三体の群れで現れた。

 見た目はサソリだった。これまた砂漠では定番。

 ただし、上に表示された種族名を見て、ちょっと身構えてしまった。「鉄サソリ」という名前。確かによく見てみると、体がメタリックになっていた。見るからに防御力が高そうだ。

 この手のモンスターもRPGでは定番だ。物理攻撃が効きにくいタイプの敵。魔法攻撃で倒してしまうのが定石だ。

「硬そうじゃない? 俺たちの攻撃が通らなかったらどうしよう。」

「その時はその時ですよ。無理だと分かれば『隠密』でも使って尻尾巻いて逃げてしまえばいいんです。」

「ああ確かに。てか最初からずっとそれでよかったんじゃない? 」

「それだと面白くないでしょ。」

ミヤビは背中の杖を引き抜いた。

 サソリたちは先に仕掛けてきたが、動きは遅い。ミヤビは飛んできたサソリの尻尾をさっとよけて、俺も剣で受け止めた。

 ミヤビはサソリの頭に杖を振り下ろす。

「Critical!! 」

いつも通りクリティカル判定が出た。が、それでもサソリは倒れない。

「やっぱり無理だって! あんまり攻撃通ってないし。」

「そうですね、思わぬ落とし穴でした。」

俺たちはすぐさま『隠密』で身を隠して逃げた。

 一旦逃げ出してしまえば、『隠密』を使った俺たちが敵に遭遇するはずもなく、オアシスまでは簡単に辿り着くことができた。

 しかし、予想外の壁にぶち当たっているところだ。

「物理が効かないなんて言われてもねえ、魔法なんて二人とも使えないし。」

「ですね。魔法使いの人にでも加わってもらいますか? 」

「それができれば苦労しないさ。」

「それもそうですね。私たちとパーティーを組んでくれる人がまずいませんからね。」

あの鉄サソリのように、物理耐性が異常に高い敵は今後も現れるだろう。その度に逃げるのでは、いつか限界がくる。

 なんとか対策は練らなければならない。

「俺たちが魔法を使う方法は無いのかい? 」

「あいにく、盗賊ですから。」

盗賊はいくら極めても魔法が覚えられない。

 考えても埒があかないので、一旦この話題はやめた。

「せっかく新エリアに来たんだし、武器と防具を見に行かないかい? 」

「そうですね! せっかくお金いっぱいあるし。」

 武器屋は看板が分かりやすいので、すぐに見つかった。中に入ると、おじさんがいた。

「あれ、このおじさん前のエリアにも……」

「それ触れちゃダメなやつじゃないんですか? 」

おじさんの顔は、前のエリアの武器屋にいたおじさんと全く同じだった。

「もしかしたら、兄弟とか? 」

「いやいや、無理があるだろ。」

 おじさんは、やはりここでもプレイヤー一人一人に合わせて分身していた。

「ほ、ほら! 五十三人兄弟くらいかもしれませんよ? 」

「無茶苦茶じゃないか。」

冗談を言っている間に、おじさんは俺たちの前にも現れて、武器一覧を示してくれた。

 武器は、前のエリアにはなかったものばかりだった。大剣のレパートリーもかなり豊かだ。

 しかし、大剣よりも気になるものがあった。

「ロータスさん! これ見てください! 」

「え、これは⁉︎ 」

ミヤビが指さしたのは、『ファイアロッド』。火をあしらった杖だった。

 着目すべきはその特殊効果。「戦闘で振りかざすと火が出て敵を燃やす」というものだった。
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