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三章 金塊マネーを狙います!

十話 はじめてのイベント参加です!

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 昼頃になってミヤビはログインしてきた。彼女はすでにフレンド登録しているので、ログインすると俺のところにも通知が来る。さらにパーティーを組むと、お互いの場所までが分かるようになるのだ。

 俺はさっそく町中の広場までミヤビを迎えに行った。人がちらほら増えてはきていたが、簡単に彼女は見つかった。杖持った盗賊なんて彼女しかいない。

「こんにちは! ロータスさん。」

彼女のレベルは17になっていた。俺も先ほどまでレベル上げに専念していたから、16までは上がっていた。お互い、この辺ではもう苦戦しないほどだ。

 俺はその間に、新しいスキルポイントを獲得していた。使い道にはまた悩んでしまう。

 考えた末に、もう大剣しか使えなくなってしまったのだから、大剣も極めてやろうと思い、『大剣』に振り分けた。

『大剣装備時の攻撃力が20上がりました。』

とのこと。

 攻撃力が上がったのは単純に嬉しい。すでに俺のステータスは盗賊のものではなかった。

 何はともあれ、ミヤビがログアウト中に俺はちょっと強くなっていた。パーティーで俺の方だけ弱くなってしまうのは気まずいし、嫌だし。

 ミヤビはテンションが上がっていた。

「見ました? 今日の正午に出てた通知。」

「見てないな。何があったの? 」

俺は朝からずっとゲーム内にいたので、通知は見ていなかった。

「今日の夜からゲリラミッションが開催されるみたいなんですよ! 金鉱山のミッション。」

「金鉱山? 何するのさ。」

 ミヤビは俺をイベント情報のページが示された掲示板のところまで連れて行った。イベント告知によると、隣のエリアとの境界あたりにある金鉱山が開かれるらしい。

 イベント内容は、その金鉱山の中にある金を獲得しようというもの。

「これ、参加しましょうよ! 」

彼女がテンション上がるのも無理はない。俺たちがパーティーを組んでからはじめてのイベントだ。

 ちなみに俺はこのゲームを始めてから二日目だからそもそもイベント自体がはじめてなのだ。俺も実は楽しみになってきている。

 「私、ようやくイベントに参加できるようになったから嬉しいんです。」

ああ、そうか。イベントにはパーティー単位でしか参加できないもんな。

 18時前になると、広場の前に人が集まった。ここがイベントの集合場所になっている。今いる全員イベントに参加するのだろう。

 俺とミヤビももちろん広場に来ている。

「でも金鉱山は町の外にあるんだろ? なんでここで集合するんだ? 」

「それはじき分かりますよ。ほら、もうすぐ18時になりますよ。」

 時計の針が18時を指した。すると、広場の前に謎の渦が現れた。青い渦はどんどん広がってきた。

 渦の上に立っていた人たちはどんどんその中へと吸い込まれていった。

「え、なにこれ? 」

「転送ですよ。この中に入れば金鉱山に送られるんです。」

 渦はやがて俺たちの足元まで近づいてきた。そのまま俺の体は下へと吸い込まれた。

「うわ! なんだこれ! 」

「ヤバいですね! すごい力。」

俺たちは頭のてっぺんまで渦の中に沈んだ。

 目を開くと、そこは山の中だった。

「あれ、すごいな! 一瞬だったぞ。」

「私も初めてでしたから、びっくりしちゃいました。」

他のプレイヤーたちもみんなこちらに運ばれていた。

 「イベント開始」のテロップが金鉱山の入り口の上に表示された。それと同時に、それまで入り口を塞いでいた木の板がずれ落ちた。

「行きますよ! ロータスさん。」

「う、うん。」

入り口になだれ込んでいくプレイヤーたちに続いて、俺たちも金山に入った。





 中は、坑道にしては幅が広かった。プレイヤーたちは一斉に通ることができている。

 俺たちも走りこんだが、すぐに別れ道にでた。

「これ、どっちに行きます? 」

「どっちも同じだろう? 」

「いえ、イベントのお知らせ見てなかったんですか? ハズレがあるんですよ。」

「ハズレって? 」

「敵がいるんですよ。それも結構な強さの。」

ほほう。やっぱりリスクなしのウマい話などないのだ。

 「じゃあ右にいってみよう! 」

「分かりました! 」


……ハズレだった……。めちゃくちゃ魔物いるし。同じ道を選んだプレイヤーはたくさんいたが、みんなその魔物たちに襲われている。

 幸い俺たちは魔物たちに気づかれる前に『隠密』を使用して隠れることができた。

「早速外しちゃいましたね、ロータスさん。」

「いや、ほんとごめん。」

「謝ることないです。どうしようもないことですから。」

でも割と窮地だ。

 魔物の数は五匹。「ゴールデンゴーレム」と表示されていた。金塊にそのまま命が宿ったような見た目の魔物だ。

 プレイヤーたちは皆なす術もなくやられている。彼らの装備が初期装備で、レベルも高くないとはいえ、こんなやられ方をしているのだ。ゴールデンゴーレムはかなり強いのだろう。

「どうしますか、ここから。」

「どうって、引き返すしかないだろう。」

「そうですね。」

俺たちは引きかえそうと後ろを向いた。

 が、すでに手遅れ。後ろの元きた道はすでに塞がれてしまっていた!
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