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二章 相棒も変わり者でした!

七話 初めてのクエストです!

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 それから何回戦闘を繰り返しても、ミヤビはことごとくクリティカルを叩き出した。

「すごいね。どうしてそんなに上手くいくの? 」

「自分でも分からないんですけどね。まあ私現実でソフトボールやってたんですよ。もしかしたらそのせいかも。」

絶対それだろ。

「へえ。じゃあ上手かったんだ? 」

「上手いかどうかは分かんないですけど、一応四番でしたよ。」

「主砲じゃないか! 」

だからモンスターもバコバコホームランにできるというわけだ。

 二人になると、獲得できる経験値はそれぞれ折半で半分になってしまうが、むしろ今までより効率よく経験値が稼げるようになった。




 俺たちの両方がレベル14になったあたりで、俺はミヤビに提案をした。

「あのさ、クエストを受けてみないか? 」

 クエストはパーティー単位で可能なシステム。特殊な状況で特殊な依頼をこなすと、報酬が貰えるというもの。まあ他のゲームなんかで出てくるクエストと同じ感じ。

 通常の戦闘では遭遇しない敵に遭遇したり、複雑なダンジョンに入ったりと、難易度が高くはなるが、それ相応の報酬の旨味がある。

「いいですね! せっかくパーティーを組んだことだし。」

ミヤビが快諾したので、俺たちはすぐに町まで戻った。

 クエストは、ギルドで受注することができる。掲示板に貼り付けてある依頼書の中から選ぶという、これまた定番のやり方。

 重ね重ねの紙の中から、初心者の、それも盗賊向けのものを探した。

「これなんか、いいんじゃないんですかね? 」

ミヤビが持ってきたのは、盗賊専用クエストだった。

「戦闘とかじゃないんですけどね。」

紙に書かれた依頼の内容は「洋館からの指輪の奪取」だった。

 「にしても、洋館なんてどこにあるのか? 」

「それも依頼書に載ってますよ。町から出て道なりに行った先の森の中にあるみたいです。」

 しかし、盗みがクエストになってるとは。盗賊にお誂え向きだ。

 クエストを受けるのは簡単だった。紙を受付に持っていくと、二言三言説明がされただけで、受注が完了してしまった。

 すっかり夜中。プレイヤーの数はますます増えていた。それなのに、外に一歩出ると途端に暗く寂しくなってしまう。まあ逆に盗みに入るには持ってこいなのだが。

 平原を通り抜けると、森が見えてきた。明かりは月しかないので、並ぶ木々が黒い塊に見える。

「これじゃ洋館の場所なんて分からないよ。」

「一応座標は分かるので、それを頼りに行きましょうか。」

 森を歩き回る中で何度も敵には遭遇したが、苦戦することは無かった。ミヤビのフルスイングがことごとく炸裂するので、敵は全て一撃で沈んでしまうのである。

 そんなんだから、洋館には程なくしてついた。急にひらけた場所に出たと思ったら館が目の前にそびえていたものだから驚いてしまった。

「ここですね、洋館。」

「思ったより大きいな。指輪を探すの、大変そうだ。」

 今回のターゲットとなる指輪はギュゲスの指輪。指にはめて念じると、姿が見えなくなるという代物だ。まあ、それが既にできてしまう俺たちにとっては無用な長物だ。

 ただ、それが洋館のどこにあるかは分からない。

「どこから入ればいいんでしょうかね? 」

「どこからでもいいんじゃないか? どうせ見えないんだし、問題ないだろう。」

「そんな大胆な。」

正面の門には門番が二人いる。さすがに門を開いてしまうと、バレてしまう。

「横の塀を飛び越えていこう。」

提案したが、俺にはなかなか難しかった。運動不足が祟って飛び越えるのに時間がかかってしまった。

 ミヤビはひょいっと飛び越えてしまった。さすがの身体能力だ。俺たちは当然見えていないので、門番たちに気づかれることもなかった。

 塀の内側は広い庭になっていたが、暗くて雰囲気は楽しめない。素通りして館内に入るのも簡単だった。

 建物の中には灯りがあるが、なおも薄暗い。ろうそくが廊下に一定間隔で並び、それぞれが揺らめく。

「部屋がたくさんありますね。」

「どこから探そうか? 」

「手当たり次第でいいんじゃないですか? 」

ミヤビはすぐ目の前の部屋に入った。

 台所だった。ただの一般的なキッチン、変わったところは何もなかった。壁に掛けられた鍋は取っ手が少し焦げている。

「ロータスさん! あそこ! 人がいますよ。」

ミヤビは小声でそう言った。

 彼女が指差す方を見ると、確かに人が一人、こちらに背を向けて立っていた。女の人か。髪が長い。

 女の人は料理をしているようだった。カタカタカタカタとリズムよく音が鳴る。

 いかにも普通の風景。彼女は後ろに二人も盗賊がいるなんて夢にも思っていないだろうな。

 「ここに指輪はないだろうな。」

そう言って台所から出ようとしたときだった。女の人がこちらへ振り返った。

 その瞬間、俺もミヤビも背筋が凍った。

「ロータスさん! あれ! あれ! 」

「言わなくても分かってるさ! 」

「ガイコツですよ! あの人! 」

そう、人間ではなかったのだ。あの女の人は、ガイコツだった。

 こちらを向いたガイコツ女の上には、「スケルトン」という名前の表示。

 俺たちは叫びたいのを必死に我慢して口を塞いだ。
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