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兆す15歳→16歳
56.ボーナスステージはR18テンプレ触手魔物とともに 2
しおりを挟む「はぁ。ラズが無事なら良かった。俺も魔物討伐で多少耐性があるから……」
「……私も少なからず耐性が……」
「…………」
「……そっか。あのさ、頼みがあるんだ」
アッシュとエリアスは瘴気に慣れたのか、表情は落ち着いたものに変わっていた。
レオはまだ少し苦しそうだ。
そんな3人を見上げ僕はぎゅっと拳を握りながら、切り出した。
「僕1人じゃ無理なんだ……」
3人が訝しげに僕を覗き込む。
反対されるのはわかっている。
それだけ彼らが僕を大切に想ってくれているということだからさ。
でもね、僕は気がついたんだ。いや、やっと腹をくくることができた。
「あの魔物を倒したい」
ぐっと顔を上げ大好きな皆の瞳をまっすぐ見つめた。
「っダメだ! あの魔物は訓練された騎士を30人集めても倒せるかわからないくらい強い」
「そうですっいけません!! ラズ様が怪我をされたら!!」
「わかってるよ。でも、僕にしかあいつは倒せないんだ……」
アッシュが言い含めるように僕の肩をつかみ、エリアスも叱りつけるような厳しい声をだす。
3人の瞳には僕を心配する優しい色が宿っている。
エリアスなんていつもの無表情が形無しだ。
今はそんなことに喜んでいる場合ではないけど、じわじわ心の奥が温まる。
その温もりに勇気をもらう。
ふうっと小さく息を吐き、唇を湿らせる。
「僕は皆が見えないものが見えるんだ」
僕の突然の告白に皆が息を呑む。
「瘴気や怪我をした部位、聖力が色のついたモヤとして見える。魔物の弱点である核さえ見えているんだ」
だから僕しかあの魔物を倒すことができない、と折れない意志を伝えるため繰り返した。
口を閉じ、固まる3人だ。いきなり聞かされたら驚くのも無理もないよね。
この力のことはお母様には話してはイケないといわれていた。
ただでさえ『色無し』であり、白髪やピンクの瞳は人々にとっては得体の知れないものだ。
ピンク色の瞳が持つ力を気味悪がり拒絶される、もしくは激しく攻撃されるかもしれないから、と。
得体の知れない不自然なものを、恐怖し、拒絶するのは本能的に当たり前なこと。
それ故に『色無し』である僕は『普通』であらなければ、なにも知らない人々へいとも簡単に攻撃される余地を与えることになる。
けれど、僕はこの大切な仲間たちと協力し魔物を倒したい。
今まで彼らと過ごして来た日々が、無駄では無く。
ともに紡いで来たはずのかけがえの無い毎日が、この秘密を受け入れてくれるはずだ、と僕の背中を押した。
それにね、今日贈ったすずらんのしおりを作りながら気がついたんだ。
僕にはこんなにも大切にしたい人が沢山いるんだってさ。
しおりにリボンを通す度に皆の優しいお顔が浮かび、愛しさに心がぽかぽか温もりに包まれる。
あぁ。僕はなんて幸せ者なんだろう、てね。
未来に闇落ちラスボスへなった僕は孤独を悲しみ怒り狂っていた。
ねえ。僕は思うんだ。
独りにならないように、ありがたくも自分に差し出されている手をしっかりと握り返せば良いんだよ。
独りで死にたくないなら、皆の手を取り生き抜くしかない。
やっと引きずり出した僕の答えであり願い。
皆を巻き込むことを憂いて僕から手を離すことは、もうしない。
とても長い沈黙の末にアッシュの柔らかな声が鼓膜を揺らす。
「ありがとう」
「え?」
「ラズ。ありがとう」
「ありがとうございます。ラズ様」
突然皆から口々にお礼を言われポカンと口が開く。
「ラズが私達に……勇気を出して隠したかった秘密を話してくれたからだよ」
顔色が少し悪いレオも優しく目元を緩めている。
「それに、エリアスさんも知らない秘密ってかなり貴重じゃ無いのか?」
「あ、あ。うん」
レオと顔を見合せアッシュはニヤリッと愉しげに笑った。
初めて見たアッシュの野性的な笑顔に、少しドキッとしながら頷き返す。
「私としたことが気付けなかったのが悔しいです……」
エリアスが拗ねたようにぼそっと漏らす。
こんなわかりやすく感情を顕にするエリアスは初めてだ。
先程から怒涛のように予想外の反応しかされず、意味が飲み込めず目をぱちくりするしかできない。
「俺達はラズに秘密を打ち明けても良い相手と信頼されたことや、秘密を共有しもっとラズに近付けたのが嬉しいんだよ」
アッシュはとろりと目を細め嬉しそうにはにかみ、僕の頭を優しく撫でた。
皆の眼差しや言葉が優しすぎて、目の奥がじんと熱を持ち始める。
「魔物の核を壊すのはできるのか?」
レオが魔物にちらりと視線を向けながら問いかけた。
「うん。魔物の核の色はドドメ色をしているから、僕の聖力を大量に流し込めば破壊できる……はず」
「では、ラズ様。その魔物の核の位置は?」
いつもの無表情に戻ったエリアスだ。僕は指で魔物の核がある位置を指し示す。
半透明な魔物の本体左側、しかも無数の触手が生えている根本付近だ。
3人が何かを探すように目を眇め魔物をじっと見つめる。
すると、エリアスが跪き、僕の手を掬うように持つ。
「良いですか。ラズ様」
声を紡ぎながら僕の手を握る彼の瞳はいつになく真剣で、無意識に背筋が伸びる。
「私達に何があろうが、躊躇わないで魔物へ向かって下さい。そして、お怪我を絶対されませんように、自身の安全だけを考えてくださいね。特にこの小さく魅力的なお尻を守ってください」
重い。またまたエリアスの想いが。
最悪の事態まで想定し、真摯な覚悟を持ってまで協力してくれる彼の想いが嬉しい。
「俺達が盾となり、剣となりラズを魔物まで必ずや送り出すから、絶対に怪我だけはするな」
アッシュがエリアスから手を取り上げ、剣だこで硬い両手の平で僕の手を優しく包み込んだ。
穏やかな声ではあるけれど、切実さを感じさせた。
それに、いつもは温かな手が指先まで冷たくなっている。
あの魔物を討伐することは、それだけ危険であり困難だということだ。
でも、彼は自らを奮い立たせ、勇敢にも僕と一緒に戦ってくれる。
「わかった。僕の騎士様。ともに戦おう」
真剣なエメラルドグリーンの瞳を見つめ、誓うようにゆっくり頷き返す。
アッシュの瞳が大きく揺れる。
しかし、すぐに瞳は鋭い光を放ち、気迫を高めながら剣を握り隣へ立った。
その鋭い眼差しの先には、R18えろ触手モンスターが何人目かわからない触手でなぶった少年を丸呑みしていた。
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