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成長期の12才
26. 両手に花とコネ
しおりを挟む挨拶だけでなく、騎士団治癒院ヘ視察に来たレオと僕、イブくんは治癒院へとお迎えに来た薬師さまと向かう。
しかも僕は両手に花状態。
右手には黄金色が眩しい王子様、左手には濃紺の髪が風にしなやかに靡くお姫様と、両手とも指を絡めた恋人繋ぎ。
さっきウインドウの指示で指を絡めたらレオが気に入って、繋いだそのままになっちゃった。
イヴくんも今日は何故かこの繋ぎ方をし始めてね。
僕、この繋ぎ方って指の股が擦れるくすぐったさで、変な声出しちゃうから苦手かも。
「ねっ、ゃ、んっ、動かさないでっ!」
「……ここ、ラズ兄様。弱いんですね?」
「イッヴくん!レオもッ!んんっ」
「「「えっろ」」」
僕が困っているのにやめず、なぜかご機嫌な2人はにこにこ美しい笑顔を絶えず振りまいている。
ヴェールを被った僕の怪しさを相殺するくらい、見目麗しい2人だよね。
イジワルだけど!
でも薬師さまはなぜかその2人ではなく、ヴェールで口元しか見えないこの不審者に話し掛け続ける。
「前回の訪問時ラズ様のおっしゃった通り。痛み止めを積極的に使用することで団員達の精神も安定し、現場復帰が早くなりました!!
また、痛みどめを使ってまで、ベッドから早く離れ身体を動す必要があり、長期間ベッドで寝ていては、筋肉が減少していく、という着眼点はさすが聖女様が『天才』と褒めるだけありますねっ!」
「ラズ兄様。いつの間に……天使に」
「あはは。痛み止めには炎症を止める効果と、痛みが続くのはやっぱり辛いから気持ちが落ち込むからね。
あとは、身体が資本の騎士さまは1度筋肉が落ちると大変だから、ちょっとアドバイスを……」
「ラズはどこまでも優しいな……」
うぅ。レオ、イブくんや薬師さまからのキラキラした尊敬の眼差しがヴェール越しでもキツイ。
ザクザク罪悪感が僕の心を突き刺すよ。
自然とあの眼差しから逃げるように視線をすいーっと逸しちゃう。
僕が言ったのは、前世では当たり前の知識だ。
『聖力』の欠点である、病気や解毒を担ってくれている薬師さま達のお仕事が楽になればと思ってね。
前世で言うところの、僕達『聖魔法』が怪我や骨折などの外傷を治す外科医。
痛みや解毒、病気など身体の沢山の不調を治す薬師さまは内科医。
違うアプローチから同じ治療行為をしているにも関わらず、薬師さまのお仕事が多いんだよ。
患者さんの身の回りのお世話である、トイレや着替えまでされている。
内科医さんプラス看護師さんのお仕事内容をされているみたいなもの。頭が下がるよねぇ。
日本だったら過労死寸前、真っ黒黒なお仕事だ。
あっ! 今日はレオが視察に来ているから、『看護師さん』のお仕事内容専用の人を雇って貰えるようにかけ合おう!
義務教育で習った大事なことだよ。『権力とコネは最大限に使う!』
頑張ろう、と気合いを入れるため、レオと指を絡めた右手にぎゅうと力を込める。
気づいて顔を向けたレオをちらりと見上げ、にこ、と笑いかける。
レオの持っているコネと権力使うね!!
突然、レオがつんのめりコケそうになっちゃったけど、どうしたのかな。
さっきもお膝がカクンってなっちゃっていたから、心配だよ。
むう。足に黒いもやもやはないし、怪我ではなさそうだ。
心配してじーっとレオの身体を見ていたら、イブくんが僕の手を引っ張り叫び出した。
「ラズ兄様! 僕の身体も舐め回すように見てくださいよっ!」
「俺の身体を舐め回してくれ!!」
同時にレオも手を引っ張り、珍しく声を荒げ叫ぶ。
なんで?
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