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成長期の12才 

25. 突然、王子様とお姫様の出会い?

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 とっても大きな王宮内を神殿の馬車で顔パスで突っ切り、騎士団の治癒院のある敷地に到着。

 白髪かくしのため、ヴェールを頭に被り馬車からゆっくりと降りる。

「よくぞおいでくださいました。聖女様、ラズ・クレイドル公爵令息、イヴ・クレイドル公爵令息」

 なぜか美々しく微笑む騎士団服姿のレオが騎士団長らを従えお出迎えしてくれていた。
 レオを先頭に治癒院への道をずらーっと導くように並ぶ騎士団の皆様も正装だし。
 大層な式典や祭典なのかな、と錯覚してしまいそうなほど、お出迎えの景色が煌びやかで壮観だ。
 いつもは騎士団の方々がお出迎えしてくださるだけなんだけど。

 騎士団服を着ている姿初めて見たけど、うわー。レオかっこいい!!
 本に出てきそうな程美しい佇まいは、凛々しくも気品に満ちた王子様だ!

 見惚れてぽやんとした僕に一瞬だけ、視線を向けにこ、と笑みを深めたレオ。
 そのままレオは優雅な所作で胸元に手をあて、おじさまに挨拶をした。

「お初にお目にかかります、聖女様。レオン・リューグナーと申します。ラズの婚約者として、以後お見知りおきください」
「私は婚約者候補・・と聞いています。私達には患者が待っているのでこれで失礼する」

 とんでもなく低い声の聖女さまは頭を下げたレオを無視し、ツンと顔を背けさっさと治癒院へ向けて歩きだす。

 不敬だよね。レオは第二王子殿下であり、王族だ。
 でも『聖女様』だから、これでも許される。
『聖女様』は神に仕える存在、俗世の階級などには囚われない、という建前があるから。

 それでも、いつも朗らか笑顔なおじさまが珍しい。
 陛下や王族の皆様に対しても、こんな態度を取らないのに。


「丁重なお出迎えありがとうございます。レオン・リューグナー殿下、騎士団の皆様がた。若輩者の私達ですが、本日はどうぞよろしくお願いいたします」

 僕とイヴくんはこの美麗集団の前にポツンと取り残されてしまったので、一応ご挨拶。

「ははっ! ラズが来ると知ってね。少し頑張ったよ」

 からりと笑うレオは柔らかそうな黄金色の髪をキラリと揺らす。
 おかげで、僕達や騎士団の方々の緊張した雰囲気が和やかなものに変わる。

 さらに背も高くなって、男の人っぽくなったレオは初めて会った時よりさらにカッコ良くなったな。
 口調も穏やかに、いつも微笑んで物腰も柔らかくて、こういうさり気ない気遣いもできる。
 僕の好きな本に出てくる王子様そのもの。

「イヴくんは初めましてだよね? よろしく!」

 にこやかに優しく笑うと大きな手をイヴくんに差し出すレオ。

 イヴくんはなぜか一瞬クッと眉を寄せる。すぐにパッと可愛らしい笑みを浮かべながらレオの手を取った。

「ラズ兄様の婚約者候補・・である、レオン・リューグナー殿下にお会い出来て光栄です!」
「いずれは兄弟になるんだから殿下はやめてくれ。レオ兄様って」
「ふふっ! 僕にもまだあの甘く美しい花に選ばれる権利はあるんですよ。婚約者候補・・殿下?」
「ははっ……。困るな……」

 二人ともが途轍もなく綺麗な笑みを浮かべ握手している、とてもにこやかな場面。
 煌めく黄金色の王子様と濃紺の髪が美しいお姫様。
 あの場面の再来だ……?

 どうしてだろう。あの二人の素敵すぎる笑顔がとっても怖い。
 唇は綺麗な弧を描いているのに、目が冷えきっているみたい。
 なぜか僕は、エリアスがブチ切れた時にする整った笑顔が頭をよぎった。

 うーん。僕がウインドウの指示をしているから未来が少し変わった?
 それともこれからそう云う仲になるのかな、と考えていると。

 ピコンッ!

『Lv3 step1「僕のこともちゃんと見て!」と婚約者候補に指を絡め、捕まえながら言おう!』

 やーっぱり来た。レオと会う度にウインドウが出てくるよ。
 一時期レオが修行すると言い出し、陛下の公務に付き合うようになった。
 それにより、交流が減った時期は大人しくしていたのに!

 でも僕もこの『清く正しく美しいヤンデレをめざせ!』ゲームに攻略法を見出したんだよ。

 そっとレオに近づき、袖をクンとひっぱると手招き。
 気づいたレオが「ん?」と微笑みながら屈み、近くなった端正な耳に唇を触れそうなほど寄せる。
 長い指にするりと指を絡め、きゅっと握る。
 小声であれを囁いた。

「レオ。僕のことも、ちょっとはちゃんと見てね」
「がっ?! ぐぅ?!」

 あれ? レオが胸を押さえ膝がカクンとなっちゃった。
 気を取り直すようにスーハー深呼吸を繰り返すレオ。

 出会った頃の様なおかしな行動に、なんだか懐かしさを感じちゃう。
 レオは最近とってもカッコ良くなっちゃって、知らない男の人みたいなんだもん。
 背もあんまり伸びないちびで、変わりない僕は置いてけぼりにされた気がしていた。
 すこーし寂しかったから、変わりないところもあるレオで安心。

 でも、初めてお互いに絡めた指は熱い。
 レオの大きな手のひらや長い指に、やっぱり知らない男の人みたいでトクリと鼓動が小さく跳ねる。
 熱が顔に伝わったように、頬がほんのり熱くて思わず俯いた。
 
 最近ウインドウからのセリフ指示がちょっと恥ずかしい内容が多い。
 だからね。レオだけに聞こえるように、コソッと言うの。
 レオは優しいからちゃんと答えてくれる。

 それが僕はちょこっと嬉しい。

 ピコンっ!

 《『Lv3 step1「僕のこともちゃんと見て!」と婚約者候補に指を絡め捕まえながら言おう!』をクリアしました! 》
 《クリア報酬【聖女のかけら 1/6】を獲得! おめでとう! 全て集まりました! 》
 《次回も『清く正しく美しいヤンデレ』を目指して頑張りましょう! 》

 
 
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