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はじまりの10歳

20. 今さらのチュートリアル1

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 今日は家族みんなで初めてのお出かけです。

 お父様とイヴくんと僕を乗せた馬車は神殿へとまっすぐ向かいます。
 今から行く神殿には、聖女様に選ばれたおじさまもいるし、お友達のアッシュもいるから。
 その2人に会えるのはとっても楽しみ!
 でも、『色無し』の僕はとっても目立つから、少し気をつけないとダメ。

 ジェスター教は漆黒を髪と瞳に纏う創造神を崇める宗教だから。
 あのコスプレ神様は実はとってもすごいらしい。
 この世界の人々はこのジェスター教を必ず信仰していて、特に何の疑問も持たずに髪色や瞳の色で簡単に人を判断、判別する。

 日本出身者からすると驚きだけどね。

 そういう訳で、僕とお友達になってくれたアッシュや婚約者候補のレオはとーっても優しくて素敵な人ってこと。
 あ、イヴくんやお父様、おじさまもか。家族にも恵まれている僕なんだよね。

 僕としては、あんまり近寄りたくない場所ではあるんだけど。
 ちょーっと神様に聞きたいことがあって、神殿にいくことにしたんだ。
 そうしたら、あの事件以降神殿嫌いなお父様に猛反対された。
 とっても困っていたらイヴくんが神殿に行き聖女様に会ってみたいってお父様に掛け合ってくれ、無事いけることになったんだよ。持つべきものは、可愛い弟だよね。

 あ、、もう着きそうだ。僕はいそいそとフードのついたマントを羽織る。
 フードを目深にかぶり、髪の毛が見えないように準備をした。

「ラズ。やっぱり……」
「帰らないよ。大丈夫。礼拝のときには1人になるからコレとるし」

 お父様が心配そうな瞳でフードを見ながら言う。
 僕が大丈夫だよ、と笑いかけると、ちょうど良いタイミングで馬車はゆっくりスピードを落としながら止まった。

「ラズー! おじさまはとーっても会いたかったよー! あ、背も3.24cm大きくなった? ほら! 天使で妖精なぷくぷくほっぺを」
「ラズに触るな。減る」
「はんっ! リヒトっお前しらないのか?! ラズの可愛さは無限に湧くから減りまっせーん! おあ゙っ! あいたたたっ!」

 馬車から降りると、おじさまが自らお出迎えしてくれていた。
 まくし立てるように話しながら、ヌルっと近づき僕の頬に触れようと手を伸ばしたところ。
 お父様がその手を捻り上げた。
 いつもの光景だけど、賑やかすぎる。
 隣のイヴくんなんてお口を開けてポカーンとしている。

 そうだよね。聖女さましている時のおじさましか知らないものね。
 おじさまはお父様のお兄さんで、お父様と全てが真反対な人だ。
 いつもにこにこ笑顔を浮かべて、ペラペラおしゃべりも上手。
 ついでに感情が全てお顔に、いや全身にでちゃうなんとも可愛らしい人なんだ。

 見た目はお父様と瓜ふたつなんだけどね。

「あっ! ラズは礼拝堂に行きたいんだったよな?」
「うん。おじさま。今日はちょっと長めでもいい?」
「いいぞー。あの従者は必ず連れていけよ。まあ、私のとーってもかわいい甥に何かするやつはいないと思うけどな……」

 言い終わった途端に控えている神官様たちをぐるーとゆっくり真顔で睨めつけるおじさま。
 先程お父様とじゃれていた人と同一人物とは思えないほどの、冷えきった眼差しと、どす黒いオーラだ。
 こういうところはすっごくお父様と兄弟なんだなーと思うよね。クレイドルなのに。

 そのあとは、僕と離れるのを渋るおじさまにイヴくんが何故か僕のことを質問攻めにし、足止め。
 そのすきに僕は顔色が悪い手と足が同時にギクシャク出る変わった歩き方の神官様に、礼拝堂まで案内してもらった。
 
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