【完結】ラスボスヤンデレ悪役令息(仮)に転生。皆に執着溺愛され過ぎて世界滅亡エンドの危機です

日月ゆの

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はじまりの10歳

14. 初めまして子猫ちゃん

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「これが今日からラズの弟だ」

 突然の弟です。

 お父様に呼ばれているって、エリアスに案内されて付いて来ただけなのに。

 あ、と言ってもお父様が浮気していたってことではないんだ。
 お母さま大好き教過激派のお父様は世界が滅んでもそんなことはありえないよ。

 クレイドル分家の男爵家からの養子さん。年は僕の1つ下。名前はイヴくん。
 お父様が書類を読みながら、報告するみたいに淡々と説明してくれた。

 目の前のその子はクレイドル直系の特徴をとても色濃く受け継いでいたんだ。

 胸元まで伸びた艶やかな髪は濃紺。くりっと大きな紫の鮮やかな瞳。
 白い肌に映えるほわんと染まる頬と小さな淡い紅色の唇。

「…………」

 きれい。クレイドルの持つ色彩の美しさを完璧に表している美少年だ。
 彼の持つ色のキレイさに圧倒された僕。お口をぽかんと開け、しばしだんまり。

「嫌なら返してくるが……」

 無表情なのに、瞳はわかりやすく感情が出るお父様が言う。最近気づいたんだけどね。
 瞳をみれば、しゅんと落ち込んでいるみたい。
 そんな拾ってきた猫みたいな扱いしないでよ。大事な弟なんだから。

「弟が出来て嬉しいよ!」

 にっこり本心からお父様にそう笑いかければ、お父様も優しく目を細めた。
 ほんのちょっぴりだけど。
 でも、そのままお父様はだんまりしちゃうから気まずい静寂が、僕達3人の間に漂う。

 公爵家の広く壮大な玄関ホールにぽつんと独りで立つイヴくん。
 なんだか僕を上から下までじーっと舐めるようにゆっくりと見てくる。
 細かく観察されているような、でも、興味がある訳でも無い感じの視線。
 なんていうか珍しい生き物を見た時のやつだ。
 僕はパンダじゃないけど、『色無し』だからだよね。だって、今は僕のお顔に視線が釘付けだ。

 お父様が大人としてのお仕事を放棄したから、僕がお兄ちゃんのお仕事をします。

 イヴくんに向き直り、にっこり笑い掛け、『色無し』の僕を怖がら無いように気を付ける。
 そして、手を差し出しながら、挨拶をした。

「こんにちは。イヴくん。僕はラズ・クレイドル。よろしくね」

 目をまんまる見開いて、びくっと大きく肩を跳ねさすイヴくん。全身で驚きを表現している。
 あ、これ見たことある。猫が驚いた時にする仕草だ。

 前世は猫派の僕。弟すっごい可愛い!!
 床と僕の差し出した手の間をウロウロしていた視線が僕のお顔に戻ってきたから、にこにこ微笑みかけた。
 
 イヴくんの動きが一瞬止まって、またまた目を見開くと、頬を淡く染めた。
 何故かお顔を真っ赤にしているイヴくんは可愛い。緊張しているのかな。
 それとも、僕がついついにまにましてお顔がゆるんじゃっていたかも。

 それが良くなかったかな。

 執事長とエリアスにいつもこれを防犯上注意されるのに油断しちゃった。
 むやみに目を合わせてヘラヘラ笑いかけたら、その人の人生を狂わせちゃうからダメなんだって。
 『色無し』だから相手を恐がらせちゃうからかな?

 でも、イヴくんとは仲良くしたいよー。
 今から僕もお父様みたいな怖いお顔したら、イヴくんも大丈夫かな。
 お父様の息子ってわかりやすいし、親近感を印象付けられないかな。
 怖いお顔ってどうやったらできるんだろう。

「あ、あの。僕は聖女になって、王族と結婚しますっ!」
 
 ぐるぐると考えていたら、ぐっと顔を上げたイヴくんは大きな声を上げた。
 紫紺の瞳に射抜かれ、1歩前に出た小さな手に両手でぐっと掴まれる。

 ん?
 僕は良くわからない意気込みを聞かされているよね。と、とりあえず何か返したほうが良いよね。
 無視するなんて、第一印象が最悪になってしまう。
 僕の手を握る小さな手はだんだんと力を強める。
 真正面から僕をじっと見据え、逸らすことの無い色濃い瞳は真剣だ。
 

「が、頑張って?」
「……ありがとうございます」

 前世の日本人としての経験で空気を読み、なんとか声を返した。
 再びじっと観察するように目を細めて僕を見つめるイヴくん。未だに手を握られているからなのか、若干の圧を感じます。

 すると、何かを納得したような顔をすると、パッと手を離す。
 いびつに唇を歪めふっと嗤いお礼を言う。同じくらいの背丈なのに、僕を上からゆっくりと見下ろしながら。
 そのまま彼は、良くわからない展開に固まるした僕の横を素通りし、お父様に丁寧に頭を下げる。

 鷹揚に頷くお父様は執事長にイヴくんのお部屋へ案内するように指示をする。
 イヴくんはトコトコ執事長の背中を追い、自室に案内されて行く。

「しきたりの抜け道は、正解だったな。あいつもクレイドルだ」

 謎に満足気なお父様の呟きを聞きながら、僕はイヴくんの背中を見送った。
 視界の隅のエリアスがお父様に拍手を送っている。

 僕の弟は、中々に警戒心が強い変わった子猫なのかもしれないな。

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