11 / 14
11
しおりを挟む
「おいっ!ルーナ!お前、こんな魔法何時思い付いたんだよ?!」
「ふぇ、ひぃまぁ。ひょらを……みちぇ……、きゃみぃにゃり……」
「はぁ。今、雷が鳴っている空を見て思い付いたのかよ……」
ギルバートがルーナの頬を片手で掴み、ズイッと顔を近づけ詰め寄る。
律儀にルーナは片頬を掴まれた状態で回答をし、慣れたギルバートはその言葉になっていない回答を理解した。
溜息を洩らすとルーナの頬の手を退ける。頭をガシガシ掻き出し、その後は顔を片手で覆い再び大きくて深い体中の息を吐き切った。
ルーナは掴まれた頬が痛むため擦りながらそんなかなり疲れた様子のギルバートを苦笑いを浮かべながら、気まずそうに見やる。
「あの、さ……、ギ——」
「ルーナさん?1つよろしいですか?」
ルーナがギルバートに話掛けようと手を伸ばした瞬間、先程まで口元を抑えて俯いて思案にくれていたベルンハルトが至極爽やかな笑顔をうかべ遮る様に口を開く。
恐る恐る返事をして振り返ったルーナの行き場を失った手をサッと掬い取ると、強くは無いが明らかに何らかの意図を含みながら握る。
突然、手を取られたことも驚いたルーナだったがそれ以上にベルンハルトが纏う雰囲気の変化に戸惑う。
「ルーナさんこの氷の海で足止めする戦い方をどうやって知りました?」
「ふぇっ?!あの……、兵法書で見ましたかな?アハハハ……」
ルーナは笑顔を浮かべてはいるが先程から冷ややかな雰囲気を纏いだしたベルンハルトに怯み、言葉を濁し過ぎて可笑しな言葉づかいになっている。もちろん顔色も青くさせ、背中にはじっとりと汗をかいている。
隣でギルバートの小さい嘆息が聞こえる。
そんなルーナの様子を意図の読めない菫色の瞳でじっと見つめるベルンハルト。
静かに緊張感が増していく。
「へえー、おかしいですね。これだけの広範囲を凍らせることが可能な魔導師はほとんどいません。そんな戦い方が可能な人なんて歴史上数人だと思うので、そんな稀な方法を兵法書にのせるでしょうか。
魔法研究書ならまだしも……」
「それです!魔法研究書!」
「っふふ!ルーナさんは大変お可愛らしいですね」
「へぇあ?!」
突然、カラカラと声を上げながら笑い出したベルンハルト。その菫色の瞳はとろんと蕩ける程の熱を湛えながらルーナを見つめている。
ルーナは突然目の前で無邪気にあどけなく笑いながら「可愛い」とベルンハルトに言われ、顔に熱が集まっていく。熱を湛えた瞳でじっとルーナを見つめるベルンハルトを直視できずに自然と視線が下に向く。
すると、ベルンハルトはおもむろにずっと握っていたルーナの手の甲に顔を近付け、唇を軽く落とした。
ルーナは口づけされたことに驚き、小さく悲鳴をあげ大きく肩をはねさせる。先程よりももっと顔に熱が集まるルーナ。
クスリと小さく一笑し顔を挙げると、再びルーナをとろんと熱湛えた瞳で見据えながらベルンハルトは口を開く。言い終わると同時に顔中を綻ばせ綺麗に微笑んだ。
「ルーナさん。あなたをずっと探していました。私と結婚してください」
『はうわわわぁ。推しカプの生プロポーズスチル最高です。異世界転生ヒャッホゥ!!赤面ルーナたんきゃわたん!ペロペロしてやりたいわぁ!!』
「おい、ルーナ?!息しろー?!!!」
『イザベル様キャラ変わりすぎいぃぃぃ……』
ルーナはベルンハルトからの突然のプロポーズやイザベルの早口日本語でのえげつなき内容、顔中が溶け鼻の下を伸ばした貴族令嬢としては禁忌な表情など、諸々情報過多のために脳が考えることを拒否し身体がグラリと傾いた。
徐々に薄れ行く意識の中ルーナは、「殿下の手すっごい震えていたな」と全く関係ないことを考え、意識がぷつりと途切れた。
「ふぇ、ひぃまぁ。ひょらを……みちぇ……、きゃみぃにゃり……」
「はぁ。今、雷が鳴っている空を見て思い付いたのかよ……」
ギルバートがルーナの頬を片手で掴み、ズイッと顔を近づけ詰め寄る。
律儀にルーナは片頬を掴まれた状態で回答をし、慣れたギルバートはその言葉になっていない回答を理解した。
溜息を洩らすとルーナの頬の手を退ける。頭をガシガシ掻き出し、その後は顔を片手で覆い再び大きくて深い体中の息を吐き切った。
ルーナは掴まれた頬が痛むため擦りながらそんなかなり疲れた様子のギルバートを苦笑いを浮かべながら、気まずそうに見やる。
「あの、さ……、ギ——」
「ルーナさん?1つよろしいですか?」
ルーナがギルバートに話掛けようと手を伸ばした瞬間、先程まで口元を抑えて俯いて思案にくれていたベルンハルトが至極爽やかな笑顔をうかべ遮る様に口を開く。
恐る恐る返事をして振り返ったルーナの行き場を失った手をサッと掬い取ると、強くは無いが明らかに何らかの意図を含みながら握る。
突然、手を取られたことも驚いたルーナだったがそれ以上にベルンハルトが纏う雰囲気の変化に戸惑う。
「ルーナさんこの氷の海で足止めする戦い方をどうやって知りました?」
「ふぇっ?!あの……、兵法書で見ましたかな?アハハハ……」
ルーナは笑顔を浮かべてはいるが先程から冷ややかな雰囲気を纏いだしたベルンハルトに怯み、言葉を濁し過ぎて可笑しな言葉づかいになっている。もちろん顔色も青くさせ、背中にはじっとりと汗をかいている。
隣でギルバートの小さい嘆息が聞こえる。
そんなルーナの様子を意図の読めない菫色の瞳でじっと見つめるベルンハルト。
静かに緊張感が増していく。
「へえー、おかしいですね。これだけの広範囲を凍らせることが可能な魔導師はほとんどいません。そんな戦い方が可能な人なんて歴史上数人だと思うので、そんな稀な方法を兵法書にのせるでしょうか。
魔法研究書ならまだしも……」
「それです!魔法研究書!」
「っふふ!ルーナさんは大変お可愛らしいですね」
「へぇあ?!」
突然、カラカラと声を上げながら笑い出したベルンハルト。その菫色の瞳はとろんと蕩ける程の熱を湛えながらルーナを見つめている。
ルーナは突然目の前で無邪気にあどけなく笑いながら「可愛い」とベルンハルトに言われ、顔に熱が集まっていく。熱を湛えた瞳でじっとルーナを見つめるベルンハルトを直視できずに自然と視線が下に向く。
すると、ベルンハルトはおもむろにずっと握っていたルーナの手の甲に顔を近付け、唇を軽く落とした。
ルーナは口づけされたことに驚き、小さく悲鳴をあげ大きく肩をはねさせる。先程よりももっと顔に熱が集まるルーナ。
クスリと小さく一笑し顔を挙げると、再びルーナをとろんと熱湛えた瞳で見据えながらベルンハルトは口を開く。言い終わると同時に顔中を綻ばせ綺麗に微笑んだ。
「ルーナさん。あなたをずっと探していました。私と結婚してください」
『はうわわわぁ。推しカプの生プロポーズスチル最高です。異世界転生ヒャッホゥ!!赤面ルーナたんきゃわたん!ペロペロしてやりたいわぁ!!』
「おい、ルーナ?!息しろー?!!!」
『イザベル様キャラ変わりすぎいぃぃぃ……』
ルーナはベルンハルトからの突然のプロポーズやイザベルの早口日本語でのえげつなき内容、顔中が溶け鼻の下を伸ばした貴族令嬢としては禁忌な表情など、諸々情報過多のために脳が考えることを拒否し身体がグラリと傾いた。
徐々に薄れ行く意識の中ルーナは、「殿下の手すっごい震えていたな」と全く関係ないことを考え、意識がぷつりと途切れた。
10
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前!
さて、どうやって切り抜けようか?
(全6話で完結)
※一般的なざまぁではありません
※他サイト様にも掲載中
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。
白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。
筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。
ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。
王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?
完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
水鳥楓椛
恋愛
わたくし、エリザベート・ラ・ツェリーナは今日愛しの婚約者である王太子レオンハルト・フォン・アイゼンハーツに婚約破棄をされる。
なんでそんなことが分かるかって?
それはわたくしに前世の記憶があるから。
婚約破棄されるって分かっているならば逃げればいいって思うでしょう?
でも、わたくしは愛しの婚約者さまの役に立ちたい。
だから、どんなに惨めなめに遭うとしても、わたくしは彼の前に立つ。
さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる