黒き死神が笑う日

神通百力

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眼球部屋

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 私は部屋の壁に金づちと釘で穴をあけていた。小さな円形の穴をあけては眼球を埋める作業を繰り返した。眼球は手当たり次第に人を殺しまくって手に入れたものだ。眼球の大きさを測ってから穴をあけ、壁から抜け落ちないようにする。
 部屋の壁を眼球で埋めるのに一週間以上もかかった。部屋の中央に立ち、壁を見回した。数えきれないほどの眼球に見つめられて私は興奮した。人生でこれほどの視線を感じたことはなかった。
 興奮冷めやらぬまま、私はゆっくりと服を脱いだ。一糸まとわぬ姿で一回転する。無数の視線が私の体を貫く。まるでアイドルになったかのような気分だった。
 壁に埋めた眼球だけが私を見てくれる。これまでの人生において誰も私を見てくれなかった。両親も祖父母も私に見向きもしなかった。出来の良い美愛みあばかり可愛がった。
 妹の美愛と違って出来が悪かった私は可愛がられなかった。ことあるごとに説教していた両親も祖父母もいつしか私に関心を示さなくなった。家族という枠から私は外された。
 けれどこれからは両親も祖父母も美愛も私のことを見てくれる。私はそれがたまらく嬉しかった。無関係な他人よりも身内に見られる方が嬉しいに決まっている。
 私は首を動かして正面の壁の中心に視線を向けた。そこには両親と祖父母、そして美愛の眼球があった。視線を逸らさずに、私を見てくれている。
 私は嬉しくなり、清々しい気分で踊り出した。ちゃんと私を見てくれていると思うと、体が火照った。
「お母さんもお父さんもお祖母ちゃんもお祖父ちゃんも美愛も知らない人たちも私の裸を目に焼き付けてね。成長した体を見て欲しいの」
 すべての眼球に裸を記憶させるために、私は体力が尽きるまで踊り続けた。
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