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違和感
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私は教室の扉に手をかけ、違和感を覚えた。しかし、それが何なのかは分からなかった。気にしないことにし、扉を左に動かして教室に入った。一番前の席で明美が座っていた。明美とは小学生の頃からの親友で、高校生になった今でも大の仲良しだ。
「明美、おはよう!」
じっと席に座っていた明美に声をかけた。明美はゆっくりと顔を上げ、私を見た。
「……おはよう」
明美は普段とは雰囲気が違っていた。いつもなら元気よく挨拶を返してくれるのに、今日は何だか素っ気なかった。別人ではないかと疑ってしまうほどに明るさが消え失せ、やけに暗かった。
「何かあったの? 私でよければ相談に乗るよ」
「…………」
明美は何も答えず、ゆっくりと下を向いた。私は余計に明美のことが心配になった。明らかに様子がおかしい。明美がこれほどまでに暗くなるなんて、いったい何があったというのだろうか?
明るさを取り戻す方法はないかと考えていると、教室の後方が騒がしいことに気付いた。何気なく教室の後ろに視線を向け、私は驚愕した。一人の女子生徒を中心にクラスの女子たちが談笑していた。それ自体はよくある光景だ。問題はそのメンバーだった。談笑している女子たちは全員――無口の子ばかりだった。こんな楽しそうに喋っている姿は見たことがなかった。
どうなっているのかと思っていると、あることに気付いた。教室の扉が反対側にあることに。違和感の正体はこれだったのか。あらためて周りを見回すと、掃除用具入れも反対側にあった。
なぜ教室の扉や掃除用具入れが反対になっているのだろうか? 混乱した頭では状況が把握できなかった。頭を冷やそうと、私は女子トイレに行き、水で顔を洗った。
すぐに顔を上げ、私は目を見張った。鏡に明美が映っていた。明美は何かを叫んでいる。口の動きから察するに私の名前を叫んでいるようだった。鏡に映っているのは私のよく知る明美に思えた。
明美は鏡の中に閉じ込められたのだろうか? だとしたらさっきの明美は誰なんだ? いや、鏡の中に閉じ込められたのは私の方か。ここは鏡の中だから、明美たちの性格や教室の作りが正反対になっていたんだ。
「明美! 私はここだよ!」
私は必死で叫んだが、向こう側には届かなかった。
――私はもう元の世界には戻れない。
「明美、おはよう!」
じっと席に座っていた明美に声をかけた。明美はゆっくりと顔を上げ、私を見た。
「……おはよう」
明美は普段とは雰囲気が違っていた。いつもなら元気よく挨拶を返してくれるのに、今日は何だか素っ気なかった。別人ではないかと疑ってしまうほどに明るさが消え失せ、やけに暗かった。
「何かあったの? 私でよければ相談に乗るよ」
「…………」
明美は何も答えず、ゆっくりと下を向いた。私は余計に明美のことが心配になった。明らかに様子がおかしい。明美がこれほどまでに暗くなるなんて、いったい何があったというのだろうか?
明るさを取り戻す方法はないかと考えていると、教室の後方が騒がしいことに気付いた。何気なく教室の後ろに視線を向け、私は驚愕した。一人の女子生徒を中心にクラスの女子たちが談笑していた。それ自体はよくある光景だ。問題はそのメンバーだった。談笑している女子たちは全員――無口の子ばかりだった。こんな楽しそうに喋っている姿は見たことがなかった。
どうなっているのかと思っていると、あることに気付いた。教室の扉が反対側にあることに。違和感の正体はこれだったのか。あらためて周りを見回すと、掃除用具入れも反対側にあった。
なぜ教室の扉や掃除用具入れが反対になっているのだろうか? 混乱した頭では状況が把握できなかった。頭を冷やそうと、私は女子トイレに行き、水で顔を洗った。
すぐに顔を上げ、私は目を見張った。鏡に明美が映っていた。明美は何かを叫んでいる。口の動きから察するに私の名前を叫んでいるようだった。鏡に映っているのは私のよく知る明美に思えた。
明美は鏡の中に閉じ込められたのだろうか? だとしたらさっきの明美は誰なんだ? いや、鏡の中に閉じ込められたのは私の方か。ここは鏡の中だから、明美たちの性格や教室の作りが正反対になっていたんだ。
「明美! 私はここだよ!」
私は必死で叫んだが、向こう側には届かなかった。
――私はもう元の世界には戻れない。
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