黒き死神が笑う日

神通百力

文字の大きさ
上 下
136 / 211

ジグソーパズル

しおりを挟む
「素敵な店を見つけたけど、一人では入り難くて」

 食事は本当にして、ドサクサに紛れて酒を飲ませた彼女を介抱する態で自分の家へ招き入れれば、後は簡単だ。外気の匂いを纏うジャケットを脱いで煙草に火を付ける。美空は案内されたベッドの上でふらふらと酩酊感に躰を揺らしながら「るいうさぁん」と無意味に自分の名を呼び小首を傾げていた。味わい慣れた煙草の味が、今日は一段と格別に思えて涙雨は唇を釣り上げる。

「みぃちゃんって本当におバカさんねぇ」

 吸い込んだ煙草の煙を、愛しい顔へと吹きかけた。





 力の入らない手足から服と下着を抜き取った。女の残り香を吸い込み、滑らかな肌を舐めしゃぶり、涙雨はいたいけな獲物をどんどんと追い詰めてゆく。筋肉量の多い男は華奢な女のそれとの差は歴然で、広いベッドの真ん中に押し倒した細い輪郭は簡単に涙雨の躰の下で踊ってみせた。

(嗚呼、最高だ)

 涙雨は微笑む唇をきめ細やかな肌に押し付け、音を立てながら降下してゆく。柔く波打つパープルの髪にくしゃりとか細い指が絡みついて引っ張られる感覚がして、それしきの抵抗で止められるものかと余計に愉しさが増してゆく。

「あ、ぅ」

 美空は紅潮した頬で涙雨の行動を見ていた。先程外で食事をした際、彼女は酒に弱いのか慣れていないだけなのか、ずいぶん簡単に酔っていたようだった。それにしても現在進行形のこの行為における抵抗は、本当に形だけのように思えた。そう、まるで暗黙の内に合意をして一夜限りの関係にしけこむ男女のように。
 『キスをして良いか』という合図を込めて小さな顎に指を添えた。やたら赤く染まった半開きの唇は、舌を差し込まれるのを待ち侘びていた。天真爛漫で純朴そうに見える普段の姿からは想像もつかない、淫靡な匂い。さあ満願成就の夜は来た。彼女に己の存在を刻むこむ為に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

恥ずかしすぎる教室おねしょ

カルラ アンジェリ
大衆娯楽
女子中学生の松本彩花(まつもと あやか)は授業中に居眠りしておねしょしてしまう そのことに混乱した彼女とフォローする友人のストーリー

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...