136 / 211
ジグソーパズル
しおりを挟む
私の家の近くには魔女が住んでいるという噂の森があった。おどろおどろしい雰囲気があり、魔女が住んでいても不思議じゃない森だった。
私は輝樹に手を引っ張られつつ、森に足を踏み入れた。輝樹が暇つぶしに森を探検しようと言い出したのだ。以前から興味があったこともあり、私は二つ返事で承諾した。
木の枝に頭をぶつけないように気をつけながら、森の奥へと進んでいく。昨日は雨が降っていたからか、地面はぬかるんでいた。木には見たこともないような種類の実が成っている。見た目が黒く変色しており、あまり美味しそうには見えない。
木の枝を避けながら進んでいくと、やがて拓けた場所へ辿り着いた。その場所には木は生えておらず、中心には屋敷があった。屋敷には蔓が巻き付いており、苔も生えている。まるで廃墟のような外観だった。
感慨深げに屋敷を眺めていると、いつの間にか輝樹が屋敷の門を叩いていた。
「すみません! 誰かいませんか!」
「ちょっと、何してるの?」
「屋敷の中も探検させてもらおうと思って」
輝樹は屈託のない笑みを浮かべた。その笑顔にキュンとしていると、門が開いた。とんがり帽子に杖を持った女性が出てきた。この女性が噂の魔女だろうか?
「……ウドツハ・ルズパーソグジ・ンモユジ」
女性は何かを呟いたが、何を言っているのか全く分からなかった。
「何だ、コレは?」
輝樹が戸惑いの声をあげた。横を見ると、輝樹の体が光っていた。すぐに光は消えたが、輝樹はジグソーパズルに姿を変えられていた。
「……私有地に入った罰よ。ジグソーパズルを完成させれば元の姿に戻る。けれど、失敗すれば死ぬわ」
「そんな……ひどい」
私は女性を睨みつけた。しかし、女性は微笑むだけだった。
「輝樹……すぐに助けるから待っててね」
とは言ったものの、ピースの数が多くてどこから手を付けたらいいのかが分からない。とりあえず下半身から手を付けることにした。
輝樹は確か茶色の靴を履いていたはずだ。ピースの中から茶色の靴を探し、フレームにはめていく。
靴下は黒色だった。ピースの中から靴下を探す。これは黒色だけど、髪の毛だから違う。靴下はどこだ? ピースを漁り、何とか靴下を見つけ、フレームにはめる。
次はジーンズだ。これは青色だったから、すぐに見つけ出せた。ジーンズをフレームにはめていき、下半身は完成した。それから灰色のトレーナーをピースの中から探し出し、フレームにはめていく。
私は一呼吸置いた後、ピースの中から両手を探した。問題はここからだ。この指が右手なのか左手なのかを判断しなければならない。じっくりと観察し、慎重に指をフレームにはめていく。合っているか、何度も確認する。
あとは顔を埋めるだけだ。髪の毛と耳をはめる。それから眉毛、目、鼻、と順番に顔のパーツをはめていき、口だけとなった。口のピースをはめた瞬間、ジグソーパズルは爆発した。
私は何が起きたのか分からず、頭が真っ白になった。
「残念でした。あなたは失敗したのよ」
「そんな……いったいどこが間違えてたの?」
「あなたは右目と左目を逆にはめたのよ。彼氏を助けたいあまり気付かなかったようだけどね」
女性は一頻り笑った後、屋敷の中に戻っていった。
私は茫然自失としたまま、森を後にした。
数日後、私は森を放火した罪で逮捕された。
私は輝樹に手を引っ張られつつ、森に足を踏み入れた。輝樹が暇つぶしに森を探検しようと言い出したのだ。以前から興味があったこともあり、私は二つ返事で承諾した。
木の枝に頭をぶつけないように気をつけながら、森の奥へと進んでいく。昨日は雨が降っていたからか、地面はぬかるんでいた。木には見たこともないような種類の実が成っている。見た目が黒く変色しており、あまり美味しそうには見えない。
木の枝を避けながら進んでいくと、やがて拓けた場所へ辿り着いた。その場所には木は生えておらず、中心には屋敷があった。屋敷には蔓が巻き付いており、苔も生えている。まるで廃墟のような外観だった。
感慨深げに屋敷を眺めていると、いつの間にか輝樹が屋敷の門を叩いていた。
「すみません! 誰かいませんか!」
「ちょっと、何してるの?」
「屋敷の中も探検させてもらおうと思って」
輝樹は屈託のない笑みを浮かべた。その笑顔にキュンとしていると、門が開いた。とんがり帽子に杖を持った女性が出てきた。この女性が噂の魔女だろうか?
「……ウドツハ・ルズパーソグジ・ンモユジ」
女性は何かを呟いたが、何を言っているのか全く分からなかった。
「何だ、コレは?」
輝樹が戸惑いの声をあげた。横を見ると、輝樹の体が光っていた。すぐに光は消えたが、輝樹はジグソーパズルに姿を変えられていた。
「……私有地に入った罰よ。ジグソーパズルを完成させれば元の姿に戻る。けれど、失敗すれば死ぬわ」
「そんな……ひどい」
私は女性を睨みつけた。しかし、女性は微笑むだけだった。
「輝樹……すぐに助けるから待っててね」
とは言ったものの、ピースの数が多くてどこから手を付けたらいいのかが分からない。とりあえず下半身から手を付けることにした。
輝樹は確か茶色の靴を履いていたはずだ。ピースの中から茶色の靴を探し、フレームにはめていく。
靴下は黒色だった。ピースの中から靴下を探す。これは黒色だけど、髪の毛だから違う。靴下はどこだ? ピースを漁り、何とか靴下を見つけ、フレームにはめる。
次はジーンズだ。これは青色だったから、すぐに見つけ出せた。ジーンズをフレームにはめていき、下半身は完成した。それから灰色のトレーナーをピースの中から探し出し、フレームにはめていく。
私は一呼吸置いた後、ピースの中から両手を探した。問題はここからだ。この指が右手なのか左手なのかを判断しなければならない。じっくりと観察し、慎重に指をフレームにはめていく。合っているか、何度も確認する。
あとは顔を埋めるだけだ。髪の毛と耳をはめる。それから眉毛、目、鼻、と順番に顔のパーツをはめていき、口だけとなった。口のピースをはめた瞬間、ジグソーパズルは爆発した。
私は何が起きたのか分からず、頭が真っ白になった。
「残念でした。あなたは失敗したのよ」
「そんな……いったいどこが間違えてたの?」
「あなたは右目と左目を逆にはめたのよ。彼氏を助けたいあまり気付かなかったようだけどね」
女性は一頻り笑った後、屋敷の中に戻っていった。
私は茫然自失としたまま、森を後にした。
数日後、私は森を放火した罪で逮捕された。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixabay並びにUnsplshの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名などはすべて仮称です。
お尻たたき収容所レポート
鞭尻
大衆娯楽
最低でも月に一度はお尻を叩かれないといけない「お尻たたき収容所」。
「お尻たたきのある生活」を望んで収容生となった紗良は、収容生活をレポートする記者としてお尻たたき願望と不安に揺れ動く日々を送る。
ぎりぎりあるかもしれない(?)日常系スパンキング小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる