黒き死神が笑う日

神通百力

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食事

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 買い物から帰宅すると、リビングに見知らぬ少女の死体があった。死体から少し離れたところで輝也てるやは座り、テレビを観ていた。
 私は食材を冷蔵庫に入れてから、輝也の隣に座った。
「この少女は誰なんだ?」
「知らない。ここに来る途中で僕にぶつかってきたから、殺しただけだよ」
 輝也はチラリと死体を一瞥すると、すぐに視線をテレビに戻した。
 私はあらためて死体を確認する。十代前半と思しき少女だった。首には絞められた跡がある。輝也は首を絞めて殺したわけか。この少女は首を絞められた時、どういう気持ちだったのだろうか? 死にたくないと思ったのだろうか? まあ、そんな些末な問題はどうでもいいことだ。
「それでこの死体はどうするつもりだ」
「もちろん食べるんだよ」
「それなら私も食べるのを協力しよう」
「ありがとう」
 私の言葉がよほど嬉しかったのか、輝也は満面の笑みを浮かべた。
 私は台所に行き、ホットプレートに包丁や皿、箸を載せてリビングに戻ってきた。
 包丁で少女の肉を削ぎ落し、ホットプレートに並べて焼いていく。人間の肉を焼くのは初めてだが、念のために長めに焼いた方がいいだろう。
「味付けはどうする?」
「そうだね。タレがいいかな」
「分かった。タレだな」
 私はリビングからタレを取ってくると、小皿にたっぷりと入れた。
 じっくりと肉を焼き、中まで火が通ったかを確認してから小皿に入れた。肉をタレに絡ませて口に頬張った。思ったよりも美味しかった。人間の肉は何となくまずそうなイメージだったが、これはクセになりそうだ。
「けっこう美味しいね。余るだろうから、明日も食べようか」
「ああ、そうだな。ついでに明日の分も焼いて冷蔵庫で保存しておくか」
 私は包丁で少女の肉を薄めに切り落とし、ホットプレートに並べた。
 輝也が少女を殺してくれたおかげで人間の肉の美味しさを知ることができた。しばらくは人間の肉を食べられるのが嬉しい。

 ――人間の肉は最高の嗜好品だ。
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