黒き死神が笑う日

神通百力

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吐瀉物愛好家

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 俺は会場を見渡した。会場には大勢の老若男女が集まっている。俺たちは吐瀉物愛好家だ。吐瀉物をこよなく愛している。
 この会場ではあるパーティーが行われる。それは吐瀉物のお披露目会だ。事前にエントリーした参加者たちが壇上に上がり、各々の思いでブレンドした吐瀉物を披露するのだ。
「ようこそおいでくださいました! 今宵もパーティーを開催いたします。それでは早速、エントリナンバー①番に登場してもらいましょう! ①番の方、どうぞ!」
 パーティーの司会者が手を袖幕に向け、参加者の登場を促した。金髪の女性がしっかりとした足取りで壇上の真ん中まで歩いてきた。それと同時に台に乗せられた吐瀉物が運ばれてくる。
「エントリーナンバー①番の谷塚清子たにづかきよこです。私は以前から美しい吐瀉物を吐いてみたいと思っていました。そこで見た目が美しいサラダや刺身の盛り合わせをブレンドしてみました」
 吐瀉物の中に人参と思われる物体やキャベツと思われる物体、刺身らしき物体が混ざっている。世間一般的に見れば汚いかもしれないが、俺から見ればとても美しかった。家の中に飾りたいくらいだ。
「続いてエントリーナンバー②番の方に登場してもらいましょう。②番の方、どうぞ!」
 袖幕から黒髪でショートカットの女性が壇上の真ん中まで歩いてきた。台に乗せられた吐瀉物も運ばれてくる。
「エントリーナンバー②番の西川弓香さいかわゆみかです。私は色の濃い吐瀉物を吐いてみたいと思っていました。そこでカレーやウ〇チをブレンドしてみました。ウ〇チを食べるのには勇気がいりましたが、吐瀉物のために頑張りました」
 先ほどの作品とは違ってとても色の濃い吐瀉物だった。ところどころに茶色の物体が見受けられるが、恐らくウ〇チだろう。それにしてもまさか女性の口からウ○チという言葉が聞けるとは思わなかった。それに全然臭くないし、それどころか良い匂いだ。
「続いてエントリーナンバー③番の方に登場してもらいましょう。③番の方、どうぞ!」
 袖幕から黒髪でポニーテイルの女性が壇上の真ん中まで歩いてくる。台に乗せられた吐瀉物も運ばれてきた。
「エントリーナンバー③番の咲村真由美さきむらまゆみです。私は以前から大量の麺が混ざった吐瀉物を吐いてみたいと思っていました。そこでいくつかの麺類をブレンドしてみました」
 この作品は数種類の麺が絡み合って美しい螺旋状を描いている。吸い込まれそうなほどに美しい螺旋だった。吐瀉物の中にはラーメンやそばと思しきものが窺えた。
「次が最後の方になります。それではエントリーナンバー④番の方に登場してもらいましょう。④番の方、どうぞ!」
 袖幕から金髪でセミロングの女性が壇上の真ん中まで歩いてきた。それと同時に台に乗せられた吐瀉物も運ばれてくる。
「エントリーナンバー④番の舞川裕子まいかわゆうこです。私は以前からフルーツ盛りだくさんの吐瀉物を吐いてみたいと思っていました。そこで数種類の果物をブレンドしてみました」
 これまでの作品と違ってかなりのボリュームがあった。パイナップルやキウイ、りんごなどが混ざっている。①番に負けないくらいに美しい吐瀉物だった。
「続いて『吐瀉物口移し』のコーナーに参りたいと思います。それでは皆さん、口移ししてもらいたい女性の前に並んでください」
 愛好家たちは移動し、各女性の前に並び始めた。俺も移動を開始し、①番の女性の列に並んだ。前列の口移しを眺めながら、順番が来るのを待った。
「私を選んでいただきありがとうございます。料理を選択してもらえますか?」
 目の前には数種類の料理が並んでいる。俺は味噌汁を選択した。谷塚はニッコリと微笑み、味噌汁を飲む。
 俺は口を開け、口移しされるのを待った。谷塚は手を口に突っ込み、上下に動かす。数秒ほど手を動かした後、唇を重ねてきた。吐瀉物が流れ込んでくるのを感じる。なんて美味しい吐瀉物なんだ。
 その後も余韻に浸りながら、パーティーを楽しんだ。
「皆さん、今日のパーティーは楽しんでいただけましたか? ぜひ次回のパーティーもご参加ください。お土産を用意しているので、忘れずに受け取ってくださいね」
 出口付近でお土産を受け取った。中身を確認すると、数種類の吐瀉物だった。
 酒のあてにでもしよう。俺はワクワクしながら、帰路についた。

 ――吐瀉物は最高だ。
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