アニマルたちのほのぼの物語

クジ羅はあの子と潮を吹く

　一頭のクジラ――クジ羅は呼吸をしようと海面まで上がり、息を吐き出しました。鼻の周辺に付着した海水が一気に空まで吹き上がります。
　再び海に潜ろうとした時、数メートル先の海面にメスのクジラが現れて潮を吹きました。あの子の潮を吹く姿はとても美しく、クジ羅は思わず見惚れてしまいます。
　クジ羅の視線に気付き、あの子は照れくさそうに微笑みました。あの子の笑顔にキュンとしました。
　この出会いがきっかけでクジ羅はあの子と会話を交わすようになりました。これほどまでに幸福な気持ちになったのは初めてのことでした。会話を交わすうちに、クジ羅の心はあの子に鷲掴みにされたのです。
　クジ羅は海面に浮上して潮を吹きながら、チラリとあの子に視線を向けます。熱い視線に気付いたあの子もチラリとクジ羅に視線を向けました。
　クジ羅とあの子はほぼ同時に微笑んだのでした。