18 / 35
一章
甜言蜜語
しおりを挟む
「だって……間違えたら間違えたでペナルティくらいはあるのでしょう? なんとか必死で問題に答えていたのに、その結果がこれじゃあね……だったら、どんな目に遭ってもいいとその時点で覚悟を決めるべきでした……」
「……そんな……そこまで投げやりにならなくても……」
緑髪の男性がやんわりと宥《なだ》めに入るも──、
「いつもそうなんです……。中途半端なところばかりうまくいって、もっとも肝心なときに限って取り返しのつかないほどのミスをする……。もう、そんな人生に疲れたんですよ……」
「あっ……」
もっとも胸の奥に秘めておくべき本音が口を突いて出てしまった──その直後のことである。
──それがあなたの答えですか。
「えっ……?」
黙っていられないとばかりにまた例の声が脳内に響いた。怒りというより失望にも近い調子で、まさに受験で全敗したときの家族を彷彿とさせた。死してなおそういうのを聞かされたくないから自ら距離を置こうとしているのに──。頼むからもうそっとしておいてほしい──ほどなくして、抑えていたものが堰を切ったように流れだした。
「よく話してくれましたね……」
「……えっ……?」
こんな聞くに堪えない世迷言《よまいごと》、後で酒の肴にでもされるのがオチだと思っていたら──、
「大丈夫、そこまで真剣に心情を吐露された方を笑うような者などここにはおりませんから」青髪の男性はこちらの目元をそっと拭って、「とりあえず1週間、ここでゆっくりするといい──お代はちゃんと払ってあるからお気になさらず──」
「……えぇっ……?」
「私たちもしばらくこの宿屋に滞在しているから、何かあったらすぐに呼ぶといい──」
「…………」
それに続く形で緑髪の男性も優しくつけ加えた。これが薄っぺらい同情・親切心だとしたら、無駄に愛される「魅力ゼロの主人公」にでもなれるのだろうか──そんな皮肉が頭を擡《もた》げていた。
「……そんな……そこまで投げやりにならなくても……」
緑髪の男性がやんわりと宥《なだ》めに入るも──、
「いつもそうなんです……。中途半端なところばかりうまくいって、もっとも肝心なときに限って取り返しのつかないほどのミスをする……。もう、そんな人生に疲れたんですよ……」
「あっ……」
もっとも胸の奥に秘めておくべき本音が口を突いて出てしまった──その直後のことである。
──それがあなたの答えですか。
「えっ……?」
黙っていられないとばかりにまた例の声が脳内に響いた。怒りというより失望にも近い調子で、まさに受験で全敗したときの家族を彷彿とさせた。死してなおそういうのを聞かされたくないから自ら距離を置こうとしているのに──。頼むからもうそっとしておいてほしい──ほどなくして、抑えていたものが堰を切ったように流れだした。
「よく話してくれましたね……」
「……えっ……?」
こんな聞くに堪えない世迷言《よまいごと》、後で酒の肴にでもされるのがオチだと思っていたら──、
「大丈夫、そこまで真剣に心情を吐露された方を笑うような者などここにはおりませんから」青髪の男性はこちらの目元をそっと拭って、「とりあえず1週間、ここでゆっくりするといい──お代はちゃんと払ってあるからお気になさらず──」
「……えぇっ……?」
「私たちもしばらくこの宿屋に滞在しているから、何かあったらすぐに呼ぶといい──」
「…………」
それに続く形で緑髪の男性も優しくつけ加えた。これが薄っぺらい同情・親切心だとしたら、無駄に愛される「魅力ゼロの主人公」にでもなれるのだろうか──そんな皮肉が頭を擡《もた》げていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
【BL-R18】魔王の性奴隷になった勇者
ぬお
BL
※ほぼ性的描写です。
魔王に敗北し、勇者の力を封印されて性奴隷にされてしまった勇者。しかし、勇者は魔王の討伐を諦めていなかった。そんな勇者の心を見透かしていた魔王は逆にそれを利用して、勇者を淫乱に調教する策を思いついたのだった。
※【BL-R18】敗北勇者への快楽調教 の続編という設定です。読まなくても問題ありませんが、読んでください。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/17913308/134446860/
※この話の続編はこちらです。
↓ ↓ ↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/17913308/974452211
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。
俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~
アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。
これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。
※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。
初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。
投稿頻度は亀並です。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる