主観の良し悪しでなく正解か不正解かで判断される平等な異世界に人間偏差値25の僕が飛ばされて

一章

尋常一様

「実は──」
　隠しておくつもりだったが、そこまで知られている以上、なんの説明もなしというのは通らないだろうと、夢か現《うつつ》かも分からないあの空白の時間について語った。信じてもらおうとか共感などといったポジティブなものは求めていない──あくまで、介抱された身としてそれくらいの義務はあるだろうと気が変わっただけだ。ドン引きでもされれば、勝手に離れてくれるだろう。そうなったら今度こそ誰とも関わらなくてすむ場所で永遠の眠りにつこう──それが俗にいう「俺TUEEE」だの「無双」だのといった異世界転生のお約束にも当てはまらなかった人間偏差値25の男に相応しい末路である。「いわゆるチートスキルが与えられ、周りからはちやほやされて──みたいな展開でもあるのだろうか──」という一縷の望みも浮かびはしたが、RPGじゃあるまいし、ボタン１つで出てくるステータス画面とか立ち絵とか、そんな二次元めいたものはもちろん、すべてが主人公のために存在するなんてお膳立ても甚だしい展開なども今は想像すらしていないし、そうするだけ無駄とすら思っている。
「あのときわざとでも間違っておけば──もっと早く楽になれたのでしょうか……」
「……えっ!!!!!?」
　ぽつりとこぼすように言ったつもりが、周囲のリアクションは大爆発の瞬間でも目の当たりにしたかのごとくだった。
「それって……どういう……」
　なんとも間が持てない空気をいち早く破ったのは金髪の男性だった。文字どおり探りを入れるような口振りは、こちらの様子を窺いつつも心から疑問に感じているといったていである。