主観の良し悪しでなく正解か不正解かで判断される平等な異世界に人間偏差値25の僕が飛ばされて

序章

置錐の地

「残念ながら不合格です」

　最後の花びらが散った瞬間だった。ひょっとしたら２浪を決めたあのときからすでに決まっていたのかもしれない。桜の木そのものがなかったとすれば諦めがつくし、土台無理な話だったことも頷ける。受験に失敗し中高ともに不本意極まりない底辺校に進んだものの、悪事に手を染めることに対しなんの抵抗もない集まりが揃う環境のもとで当然のようにイジメのターゲットとされ、唯一の拠り所でもあった勉強でもこの体たらく──この人生、いったいなんだったのか──「これ以上恥をかかせないで」と家族からも白い目を向けられているなかで、その現実は想像以上にキツイものだった。
　気づいたときにはドアノブに巻きつけた制服のネクタイで首を吊っていた。全身から力が抜け、下からとめどなく漏れ出てくる──どういう状況かはいうまでもない。誰に発見されるかは知らないが、しくじりの連続だった男の末路としては存外相応しいというべきか──夢や希望とはまるで無縁の過去が走馬灯のごとく駆け巡るなか、解放にも似た気分を味わいながら最後の眠りについた。


「名前：コウガ　年齢：20。登録完了」

　フィルター越しに聞こえてくる機械的ながらも優しい声──。親からも厄介者扱いされていた身として、包み込むような温かさすら感じられた。半ば誘われる形で目を覚まし、辺りを見回す。

「ここは──？」

　赤い煉瓦壁が目を引く二畳ほどの空間。先ほどのナビも考慮に入れると、地獄の入り口というよりライトノベルによくある異世界といったほうが妥当なのかもしれない。いわゆるチートスキルが与えられ、周りからはちやほやされて──みたいな展開でもあるのだろうか──。願望にも近い感情が芽生えたのも束の間、扉の前にこんな一文が表示された。

「これって……」

　しっかり読めるそれは明らかにこちらの力量を試すものだった。