悲劇のヒロイン系男子に転生してしまったので取り敢えず家出します。

さっさと出て行こう

偽臭薔薇の実を水洗いし熱湯に通す。
こうするとあんまり日持ちはしないけど匂いは落ちるんだ。
持ち歩くのに酷い悪臭振り撒いてたら目立つからな。

ここにお湯を沸かす道具があってほんと良かったよ。
スープも作れるし。
ちなみにスープに使ってる塩は、クソ皇子の晩酌に出てきた岩塩プレートの上に刺身とオイルとハーブが乗った洒落たツマミから頂戴した。
流石王宮、高級岩塩使い捨てかー。

王宮に来た当初は俺を他の男に見られたくない&皆に反対されてるのを知られたくないって気持ちから晩酌の準備が済んだら朝まで誰も来るなよって事でお茶を淹れるのは俺の仕事だった。
だからお湯を沸かす道具もあるってわけなんだけど。
勿論食事の準備なんかをする時は俺は天蓋ベッドに隔離。
嫌がらせにわざわざ来てくれる以外に人と接触する機会は無かった。
ついでに食事も来なかったけど。

そんなわけで残り物から岩塩プレートまでをこっそり部屋に隠しつつカートに皿を乗せておけば特に詮索される事なく朝食時にカートは回収された。

ちなみにシーツ交換や掃除も自分でやってた。
最初にそれくらいはやらせて欲しいとアルミスが頼んだからだ。
その時は健気な気持ちで頼んだんだけど、俺グッジョブ。
部屋に入って来られてたら残り物も回収されて兵糧攻めだったもん。

昔は身分の無い情婦がこの温室で殺される事件が多かったらしく、今ではここに居る人物を害す者は一族郎党処刑と法で決まっているから、食料さえあれば俺は安全だった。
きっと昔の王様はお妃様に恋人殺されまくってブチ切れちゃったんだろうな～。
まぁ一族郎党処刑が怖いってよりも、（天涯孤独の奴に押し付ければいいからな）こんな理由で裁判開かれたりして事件が公表されるのが恥だから安全ってのが何とも王侯貴族らしいけども。

ここに来た当初、俺を妃にしたかった皇子が温室に俺を押し込めるのに納得したのも他の部屋じゃ安全が保障されないと分かっていたからだろう。
まあバカ皇子のことだから陛下に丸め込まれただけかも知らんけど。
『絶対に臣下どもに認めさせてお前を正妃にする！！』とかアホな事言ってたしな…。
そう考えると今の状況は婚約者の令嬢というより両陛下の思惑通りに進んだ結果なのか。
下手に俺を処分してまた嫁探しに出掛けられても困るから、許したフリして性欲を発散させつつその間に公爵令嬢に落とさせようと…。
うんうん。
こりゃ結婚して子作り解禁になってここ追い出されたら、いよいよ俺殺されるな～。