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そしてまた不幸を選択肢する
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【前世の記憶を思い出す前のアルミス視点】
15才になる少し前、館を飛び出した僕はボロボロの身体で館が見えなくなるまで歩き、川の近くの大きな岩陰で初めて全力で自分に治癒魔法をかけた。
身体中の傷が古傷まで無くなるばかりか、パサパサだった髪すらツヤツヤのサラサラになって驚いた。
しかも魔法を使ったからといって疲れる事も無く、むしろ体調が良くなった。
この魔法は外傷だけでなく病、僕の場合栄養失調まで良くなったようだ。変色し変形していた爪までが綺麗になっている。
流石に太る事は出来ないようで浮いた肋はそのままだったけれど、きちんと食べるようになれば改善されるだろう。
川を覗くと母さんそっくりの顔が映る。
残念な事に色彩は母さんに似なかった。
薄い金髪に青い目は旦那様と同じ色…。
地味だ汚いと奥様は言っていたけど、母さんの目は琥珀みたいで綺麗だったし、柔らかい茶色の髪も素敵だった。
色も同じだったら良かったのに。そうしたら、仮の世継ぎなんて…。
僕は川に向かってニッコリと笑い掛ける。
「僕は元気だよ。母さん」
死んでしまった母さん…。僕を愛し、守ってくれた母さん…。
母さんの為にも、僕は幸せにならなくちゃ。
そのまま川沿いに歩き続ける。日が傾き始める前に隣町に行きたかったけど、無理そうだ。
「野宿をするなら、早めに準備しなきゃだよね」
とりあえず歩きながら、乾いた枝を拾ってゆく。
ひと晩火を消さないくらいには、集めておかないと。
注意が散漫だったせいで、目の前の大きな生き物に気づかなかった。
「ヒヒィン」
「わっ」
バラバラと枝を落としてしまう。
見上げると立派な鞍をつけた馬がいた。
「すごい…綺麗…」
旦那様の馬も立派だったけど、この馬は大きさも美しさも段違いだ。
黒い毛並みがツヤツヤと輝いている。
「あれ?御主人様はどうしたの?」
何故かあちらこちらを行き来し、しきりに首をふる馬に違和感を覚える。
「あ、もしかして御主人様に何かあったとか?」
馬は賢い。
しかもこんな立派な鞍をつけた馬が御主人様をほっぽり出して一頭でうろつくなんて有り得ない。
よく見るとなんとなく着いて来てほしそうにしてるような…。
「まあ、気のせいなら気のせいでいっか」
どうせ野宿をするつもりだし、まだ日は高い。
僕は慌てて枝を拾うと、立派な馬の後を着いて行った。
そこで怪我をして倒れているヴィクトールを見つけ介抱したのが彼との出会いだった。
全部治すとバレちゃうから、背中に斜めに裂かれた大きな傷と太腿の傷を治していく。
小さな傷には僕の替えのシャツを裂いて手当てをした。
目覚めた彼はキラキラとした太陽みたいな人で…。
それが僕の幸せと、絶望の始まりだった。
15才になる少し前、館を飛び出した僕はボロボロの身体で館が見えなくなるまで歩き、川の近くの大きな岩陰で初めて全力で自分に治癒魔法をかけた。
身体中の傷が古傷まで無くなるばかりか、パサパサだった髪すらツヤツヤのサラサラになって驚いた。
しかも魔法を使ったからといって疲れる事も無く、むしろ体調が良くなった。
この魔法は外傷だけでなく病、僕の場合栄養失調まで良くなったようだ。変色し変形していた爪までが綺麗になっている。
流石に太る事は出来ないようで浮いた肋はそのままだったけれど、きちんと食べるようになれば改善されるだろう。
川を覗くと母さんそっくりの顔が映る。
残念な事に色彩は母さんに似なかった。
薄い金髪に青い目は旦那様と同じ色…。
地味だ汚いと奥様は言っていたけど、母さんの目は琥珀みたいで綺麗だったし、柔らかい茶色の髪も素敵だった。
色も同じだったら良かったのに。そうしたら、仮の世継ぎなんて…。
僕は川に向かってニッコリと笑い掛ける。
「僕は元気だよ。母さん」
死んでしまった母さん…。僕を愛し、守ってくれた母さん…。
母さんの為にも、僕は幸せにならなくちゃ。
そのまま川沿いに歩き続ける。日が傾き始める前に隣町に行きたかったけど、無理そうだ。
「野宿をするなら、早めに準備しなきゃだよね」
とりあえず歩きながら、乾いた枝を拾ってゆく。
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注意が散漫だったせいで、目の前の大きな生き物に気づかなかった。
「ヒヒィン」
「わっ」
バラバラと枝を落としてしまう。
見上げると立派な鞍をつけた馬がいた。
「すごい…綺麗…」
旦那様の馬も立派だったけど、この馬は大きさも美しさも段違いだ。
黒い毛並みがツヤツヤと輝いている。
「あれ?御主人様はどうしたの?」
何故かあちらこちらを行き来し、しきりに首をふる馬に違和感を覚える。
「あ、もしかして御主人様に何かあったとか?」
馬は賢い。
しかもこんな立派な鞍をつけた馬が御主人様をほっぽり出して一頭でうろつくなんて有り得ない。
よく見るとなんとなく着いて来てほしそうにしてるような…。
「まあ、気のせいなら気のせいでいっか」
どうせ野宿をするつもりだし、まだ日は高い。
僕は慌てて枝を拾うと、立派な馬の後を着いて行った。
そこで怪我をして倒れているヴィクトールを見つけ介抱したのが彼との出会いだった。
全部治すとバレちゃうから、背中に斜めに裂かれた大きな傷と太腿の傷を治していく。
小さな傷には僕の替えのシャツを裂いて手当てをした。
目覚めた彼はキラキラとした太陽みたいな人で…。
それが僕の幸せと、絶望の始まりだった。
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