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前世を思い出した俺、今世の不幸に愕然とする

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「なんだこのクソ人生…」

皇子から受けた手酷いプレイに数日間高熱を出していたらしい俺は、夢うつつに前世の記憶を思い出した。

今世の俺は治癒魔法を使えるみたいなんだが、意識がほぼ無かったせいで苦しむ事になってしまったようだ。
まあでもそのお陰で前世の記憶を思い出せたんだ。良しとしよう。


いまだヒリヒリと痛むちんこや尻にも治癒を施す。
おそるおそる触れると本来キュッと閉じてるハズの場所がゆるゆるに緩んで…。
「ひぇっ」
慌てて治癒する。あと浄化浄化!あれ?浄化は出来ないんだっけ?クソっ。
あと一歩で垂れ流し状態だったぞ、俺。
ほんと皇子には殺意しか湧かねぇな。
なんでコイツ…もとい俺は皇子の事なんかが好きだったんだろう…。






俺、ことアルミス・ドゥアの人生は尽く不幸だった。
そりゃあもうどこのドアマットヒロインですかってぐらいの虐げられ具合だった。


生まれは不幸な出生秘話によくある、貴族の男がメイドを手籠にした結果。
捨ててくれればまだ良かったかもしれない。
戯れにレイプして出来た不要な子だったはずの俺は、貴族の男の妻に子供が出来ない事から、保険として置かれる事になった。
勿論妻にとったら平民ゴミの分際で夫と子供を作った挙げ句、その子供が跡取りになるかもしれないなど発狂モノだったろう。
俺達親子など憎くて憎くてたまらんのは当然で、そりゃあもう手酷い虐めにあった。
辛うじて殺され無かったのは、俺がいなければ世継ぎの産めない妻とは離縁もやむなしだったからだ。
たとえ離婚をしなくとも万が一地位のある相手と子を拵えられたら自分の立場が無くなるとは分かっていたんだろう。

いやでも、そこそこ死んでもおかしくない状態の時はあったな。
冬の池に沈めるられるとか…毒を盛られるとか…。
生きているのは俺と母さんに治癒魔法の能力があったおかげだ。

この魔法…というか魔法自体が大変珍しく貴重なこの国では、見つかれば即国の使者がやって来て連行され、人体実験されたり便利な道具扱いされたりと危険な目に合うからって母親から秘密にするようにと厳命されてた。
なんでも祖母が連行されたその人で、抵抗した祖父が目の前で斬られ連れ去られ、そのまま生死も不明だとか。
そのトラウマで秘密にしてるのは分かるが…。
…今以上に危険で不幸な目ってある?

なんで俺はそれで納得して今でも律儀に秘密にしてんだろ。

そんな感じで死にかける程の壮絶な虐めを受けた俺と母だったが、幸い?母はとても優しい人だった。
そんな母の愛やその他の人間の悪意を受け育ち、元の俺は優しく気弱で卑屈な不幸体質の少年に育った。

そして俺が14才の時に父親の妻が男児を産み、母はとっとと毒殺され、俺は母の『館を出て幸せになれ』と言う遺言を胸に殺される前に家を飛び出したのだった。






    
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