分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY

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## 38 ものすごく強くて、ありえないほど脆弱

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ベンの顔から血の気が引いていく。彼は絶望の表情を浮かべ、無言になった。

あれだけお喋りな男が黙り込んでしまうということは、今度こそ本当に万策が尽きたのだろう。

俺はベンの前に歩み寄り、低い声で尋ねた。

「さて、まずはルナの居場所を教えてもらおうか。そもそも、どうしてルナを攫った?」

ハルもまた、ベンに視線を向けながら、疑問を口にする。

「私もそれを不思議に思っていたんです。偽の女王を演じさせるだけなら、そこの偽者で十分だったはず。なのに、どうしてルナ様を攫う必要があったのでしょうか」

ベンは沈黙を破り、重い口を開いた。

「ルナ?……ああ、ノヴェのことか」

「ノヴェ?」

聞き慣れない言葉に、俺は首を傾げた。

ベンは鼻で笑うと、吐き捨てるように言った。

「フン!アレはまだ吾輩が複製スキルを完全に使いこなせていなかった頃の……失敗作よ!」

「失敗作、……だと?」

思わず眉をひそめる俺を後目にベンは構わず言葉を続ける。

「初期の“ハルシリーズ”には、どれにも欠陥があった。頭が悪く威厳ある女王の役割を演じる能力が無かったり、生意気で吾輩の言うことをまともに聞かなかったり……。問題だらけでな。全て封印してきた。そうして試行錯誤を繰り返した末に、ようやく能力と吾輩への従順さが両立した完成品……それが、そこにいるハル・ドディチ十二番目のハルよ」

ベンは偽ハルを指差しながら、誇らしげに言った。

ハル・ノヴェ九番目のハルに至っては、性格はポンコツ!スキルも皆無!毎晩おねしょをして泣き喚く!更には外見すら別物!複製されたのは造形だけで、髪の色も瞳の色も全く異なる役立たずだったわ!他のハルシリーズはバックアップとして念の為保管しておいたが、あの失敗作に限ってはそれにすら使えん!だから記憶を消して奴隷商館へと売り飛ばし、研究資金の足しにしたのだ!」

再びルナのことを『失敗作』呼ばわりするベン。

「……ちっ」

俺は怒りで拳が震えるのを必死に抑えつけながら、腰のポーチから針のケースを取り出した。

ケースを開き、麻痺属性の針『ヴァジュラの橙』を手に取る。

そして、ベンの手の甲へと勢いよく突き刺した。

「ギャアアアアッ!」

ベンは悲鳴を上げ、のたうち回る。

「言葉に気を付けろ。ルナは失敗作なんかじゃない」

俺の剣幕に、フローラ、ハル、ヒナギク、イザベラは驚愕の表情を浮かべながらも、何も言えないでいる様子だった。

「坊や。少し落ち着きなさい。もうそいつのバックアップは居ないんだから、殺してしまったら何も聞き出せなくなるわ」

イザベラの言葉で、俺はハッとする。やりきれない怒りは収まらないが、確かに彼女の言う通りだ。俺は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。

「……ああ、すまない」

ヒナギクは、気まずそうに咳払いをしてから、ベンに質問を投げかけた。

「話を戻しましょう。それなのに、どうしてわざわざルナ様を攫ったのですか?そして今、ルナ様はどこに居るのですか?」

ベンは苦痛に歪んだ顔で、答えた。

「ヒィ……ヒィ……。くっ……。ノインを連れ戻したのは吾輩の指示ではない、そこの無能な先王が勝手にやらかしたこと……!」

ベンの言葉に、俺達は一斉にアルフォンソ二世を見た。アルフォンソ二世は、青ざめた顔で立ち尽くしている。

「し、知らなかったんだ!術士殿が既にハル役の女の子を確保済だったなんて!」

アルフォンソ二世は慌てた様子で弁明する。捕縛され身動きの取れないベンと、その背後で腕組みをし仁王立ちしているフローラ。その光景を横目に、アルフォンソ二世は早口で捲し立てるように言葉を続ける。

「私がガーベラ島を脱出して本土を目指し船旅をしていた最中、ちょうどサルソ島の近くを通った頃のことだ。ハルに瓜二つの女の子を人気の無い漁村で見かけたっていう斥候の知らせがガレーに届いた。だから私は船長たちにその女の子──ルナちゃんを攫うように命令したんだ。私も計画に少しは貢献したくてね。ハル役にぴったりな女の子を確保すれば、魔術師殿やコロノ王達も喜んでくれるかな、って……。でも……」

アルフォンソ二世の視線が、偽ハル――ハル・ドディチへと向かう。

「いざルナちゃんを本土のアジトへ連れて行ってみたら、みんなからは『え?偽女王役はもっと似てる子を既に用意してるのに何でお前余計なことしてんの?』みたいな顔をされて……」

つまり、ルナの拉致の動機は単なる連絡不備。状況や計画の把握が曖昧だったアルフォンソ二世による勇み足だったということだ。

ハル・ドディチは呆れたような視線をアルフォンソ二世に送りながらため息を漏らす。

「ほんっと無能!しなくてもいいことをして!ドヤ顔で仕事してきましたみたいな顔して!そのせいで敵に余計な手がかりまで与えるなんて最悪よ!」

ハル・ドディチの言葉に、アルフォンソ二世は心底シュンとした表情を見せる。

「は、ハル?どうしてパパにそんな冷たいことを言うんだい?ちょっと前までパパ大好きって言ってくれてたじゃないか!」

「あんなの演技に決まってるでしょ!この変態スケベオヤジ!誰があなたみたいなセクハラロリコンドMを好きになるもんですか!」

ハル・ドディチは心の底からアルフォンソ二世に嫌悪感を向ける。その変貌ぶりに、俺は思わず息を呑んだ。さっきまでまるで恋人のような態度でアルフォンソ二世に対して親愛の目線を向けていたのに。あれも演技だったのか……。女って怖い……。

「この計画が上手く行ったら私をパパじゃなく夫にしてくれるってのも嘘だったのかい!?」

アルフォンソ二世の問いかけに、ハル・ドディチは吐き捨てるように答えた。

「アンタなんか計画が上手く行ったら速攻で殺すつもりだったわよ!調子に乗るなクズ!」

アルフォンソ二世は肩を落とし、項垂れる。

ベンはドディチを"能力と従順さを兼ね備えた完成品"と評していたが、恐らく彼女の従順さというのもベンの浅はかな思い込みだろう。きっと、このドディチは計画が成功したらベンも排除して自分が主導権を握るつもりで、従う演技をしていたに違いない。

「うぅ……。ルナちゃんが本当の娘だったら良かったのになぁ。あの子は自分を拉致した私にもとても優しく接してくれて、本当に天使だった……」

その言葉に、ハル・ドディチの怒りが再び爆発する。

「はあ?私に脈が無いってわかったら速攻で色違いの別の女に乗り換え!?最悪!死ね!この変態!」

その剣幕に、アルフォンソ二世はさらに小さくなってしまった。

「私……。正直に言うと今、少しだけあの偽者に共感しています」

本物のハルがポツリと呟く。その言葉に、ヒナギクが頷いた。

「先王があまりにクズ過ぎますからね」

その言葉に、場の一同全員が同意するように頷いた。

「ともかく、ルナさんは無事なんですね?」

フローラの言葉に、アルフォンソ二世は我に返ったように答えた。

「あ、ああ……。我々のアジトで軟禁しているけど、丁重に扱っているよ。ルナちゃんは本当に良い子だよね。とても素直だし、お掃除や洗濯も率先してやってくれるし。あっという間に一味の海賊たちや使用人たちからも人気者になっちゃったよ。毎晩のようにおねしょをするのと、ちょっとおねだりが多いのが難点だけど……」



どうやらルナは持ち前の愛嬌を武器に軟禁先で自分の居場所を確立することに成功していたようだ。

アルフォンソ二世の話によれば、今となってはルナの私室は海賊から"おねだり"で巻き上げた珍重な品であふれかえっているという。

(ルナ……。良かった、元気で過ごしてたみたいだし、うまくやってたみたいだな。やっぱりあの子はすごい子だ)

「さて。これで概ね事件は解決かしら?あとはルナちゃんを迎えに行くくらいね」

イザベラの言葉に、俺は頷いた。

「ああ、そうだな」

「でも、個人的に……。女としてこの変態パパだけはどうしても許せないわ。全てを企てたそこのジジイ以上に嫌悪感を催す存在よ。ジジイと違って他に知ってることも無さそうだし、もう殺しちゃってもいいんじゃない?」

イザベラはそう言いながら火の球を掌に生み出す。

「……ちょっと待ってください」

ハルが慌ててイザベラの腕を掴み、制止した。掌に灯っていた小さな火球が消える。

「どれだけ最低の人間でも、一応、私の父であり、そしてかつてのサルソ王です。裁判も経ず即座に処刑するのはあまりにも……。今後は罪を償わせるべく、より厳重な場所に幽閉……、そうですね、今度は遠島に軟禁とは言わず、本土の牢獄に収監することにします」

ハルの言葉に、イザベラは不満そうに唇を尖らせる。

「ハル、あなたは優しいのね。でもね、あなたと違って……。私、悪い魔女なの」

イザベラは再び火球を掌に生み出しながら、凄まじい殺気を放つ。その剣幕に、アルフォンソ二世はガタガタと震えながら後ずさりする。

「……お、お願いします!イザベラ様!」

ハルは潤んだ瞳でイザベラを見上げ、懇願した。その表情は、まるで縋り付くようだった。

その仕草と表情に、イザベラはハッと息を呑んだ。

「うぐっ!ハァ……ハァ……♡」

イザベラの頬が紅潮し、視線が泳ぐ。明らかに、平常心を失っている。

「そ、そうね……。女王様がそう言うのなら……、し、仕方ないわ……♡ハァハァ……♡」

(やれやれ……。またイザベラの『年下のロリ系美少女におねだりされると断れない呪い』が発動したか)

俺は内心でため息をつきながら、二人のやり取りを眺めていた。

かつて古代魔法文明が生み出した、強力無比な魔女イザベラ。

数千年という時を超え現代に蘇った最強の魔法使い。

その実力は、まさに規格外。

禁術を操り、おそらくはロマリ王国全てを一人で滅ぼすことすら可能な力を持っている。

だが、そんな最強の魔女にもたった一つだけ弱点があった。

それは、『年下のロリ系美少女におねだりされると断れない呪い』。

普段のイザベラは落ち着いた大人の女性だが、この呪いが発動するとまるで人が変わったようになる。

「……ふふっ」

俺は思わず笑みをこぼした。イザベラの反応は、何度見ても面白い。

最強の魔女が、年下の少女に翻弄される姿は、どこか滑稽で、そして可愛らしくもある。

(これで一件落着、だな)

俺は安堵の息を吐き出した。

だが、次の瞬間、俺は凍り付いた。

「イザベラお姉ちゃん!私を助けて!お願い!そいつらを皆殺しにして!」

拘束されたハル・ドディチが、イザベラに向かって叫んだのだ。その声は、まるで子猫が鳴くように甘く、そして切ない。

慌ててハル・ドディチの方を振り返ると、彼女もまたハルと同じように、胸の前で腕を組みながら潤んだ瞳でイザベラを見つめなながら懇願しているのが見えた。



年下の──ロリ系美少女──!

「お、おいイザベラ!まさか!」

今度はイザベラの方を見る。すると彼女の瞳孔から光が消えていた。

そして、イザベラは苦しそうに頭を抱え始めた。

「ハァ……♡ハァ……♡ダメ……♡ダメよこんなの……♡」

イザベラは呪いに必死に逆らおうとするが、抗いきれず、両手を高く掲げ火の球を作り始めてしまう。

火球のサイズは小さいが……。分析スキルは、その"重なり"が数万個分に及ぶことを示している。

「ぼ、坊やっ、みんなっ、逃げてっ!早く逃げてっ!」

イザベラは必死に訴えかける。

ハル・ドディチがニヤリと微笑む。

「お姉ちゃん♡がんばれっ♡お姉ちゃん大好きっ♡」

ハル・ドディチが媚びたかわいらしいおねだりをする程、イザベラは逆らえなくなってゆく。

「あ……♡ああああああああっ……♡に、逃げてえっ……♡」

性的な興奮の絶頂に達した時の喘ぎ声のような響きと、悲痛な心の叫びが入り混じったような──、そんなイザベラの声がコロシアムに木霊した。

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