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## 30 戴冠式
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聖地ボルミオラ・ウノ。
サルソ島から船で2日程の所にある大陸本土の港町へ渡り、そこから更に徒歩で内陸へ2日。
大陸内でもロマリ半島と呼ばれる地域の中心部に位置する小さな平野部一帯は、聖地としてロマリの諸王たちが共同で派遣した各国の兵と官僚が持ち回りで統治を行っており、各諸王国の緩衝地帯としての役割も担っている。
建前上は聖地での流血沙汰は禁止ということになっているが、ロマリ王の称号を僭称しようとする不逞の輩やその部下に対してまで彼らがその合意を守る可能性は低い。
ロマリ王の戴冠式は、そんな聖地の中でも中心部にある、古代に建てられた伝統あるコロシアムで行われるのが慣例だった。
しかし俺達が聖地へ到着した頃には、既に辺り一帯は一触即発の緊張感に包まれていた。
特にサルソ王国から派遣されてきた兵と官僚が宿泊する施設に関しては、他の諸王国たちが露骨な包囲網を敷き、いつでも攻撃出来るようにと身構えている様子が伺えた。
現地のサルソ人と無理にコンタクトを取ろうとしてはせっかくお忍びで変装をしてまでここへやって来た意味が無いとして、俺達はあくまで戴冠式を見物に来た一般観光客という体裁で金を払って普通の宿を取り、そこで戴冠式に備えて入念な打ち合わせを重ねた。
そうして訪れた、戴冠式当日。
コロシアムには多くの市民が詰めかけていた。一般市民が入場を許されるのはいわゆる三階席と呼ばれるような外周部迄だったが、ひとまず俺達はそこに陣取り、式が始まるまでの様子を観察することにしていた。
「そろそろ正午、ですね」
フローラが太陽の高さで時刻に検討を付けながら呟いた。
コロシアムには多くの市民が詰めかけており、熱気と緊張感が入り混じった独特の雰囲気に包まれている。
「偽ハル、……ルナちゃんがアリーナに現れるのは、あと一時間後くらいよね」
イザベラが扇子で口元を隠し、真剣な表情で呟く。ルナが攫われたのは既に二週間以上も前のことだ。一体どんな目に遭わされていたのか、想像するだけで胸が締め付けられる。
「各国の諸王の出席状況を確認してきました」
ヒナギクが報告を始める。彼女は式典開始前に、こっそりと各国の控室を訪れ、出席者たちの様子を探っていたのだ。
「多くの王はこの戴冠式を無効だと主張し、出席自体していません。代わりに名代や武装した兵士を派遣し、宣言を撤回するよう今も控室で最後通告のやり取りを続けていると思われます」
「なるほど……。やはり、どの国もこの戴冠式を認めてはいないようだな」
俺は頷いた。
「私の推測が当たっていれば、事件の黒幕の国王だけは土壇場で賛成に転じるかもしれないけどね」
と、イザベラが補足する。
「現地に派遣されているサルソ王宮関係者たちと直接のコンタクトは取れていませんが、彼らはどうしていますか?」
ハルが尋ねる。彼女は同胞であるサルソ人の現状を心配しているようだった。
「こちらの動きが察されないようこっそり探った限りの感触ですが、彼らは困惑しつつも"偽女王"の命令に従い警護の職務を全うしようとしているように見えました。深い事情までは把握してない可能性が高いです」
ヒナギクはサルソ王宮関係者たちの様子を説明する。
「なるほど……。彼らは騙されているんですね……」
フローラがそう呟くと、ハルは悲しげな表情で視線を落とした。自分の臣下たちが偽の女王に仕えていることを知るのは辛いだろう。
「ただ……」
ヒナギクが言いかけた言葉を、イザベラが遮って代わりに述べる。
「一部には、そんな本当の一般兵だけじゃなく、黒幕の息がかかった奴が混ざっているのは確実でしょうね。つまり、ルナちゃん誘拐やアルフォンソ二世強奪の実行犯達が……」
「その通りです。傍から見て、誰が本当の同胞で誰が敵なのかを見分けるのは困難ですが……」
ヒナギクは頷いた。敵は我々のすぐ近くに潜んでいるかもしれない。緊張感が高まる。
「俺が近付いて分析をすればわかるかもしれない」
俺は提案するが、ハルは首を横に振った。
「今はまだやめておきましょう。偽女王を操る黒幕の出方を伺ってからです。私達が行動を起こすのは」
ハルは冷静な判断を下す。確かに、今はまだ軽率な行動は避けるべきだろう。
俺たちはコロシアムの外周部に設けられた一般席に座り、戴冠式の開始を待った。周囲には多くの市民が集まっており、ざわめきが響いている。
暫く話していると、一人の神官がアリーナ中央に現れ、高らかに宣言した。
「ただいまより、ロマリ王戴冠の儀、開始いたします!」
神官の声が、魔法によって増幅され、コロシアム全体に響き渡る。それと同時に、アリーナ奥の扉が開き、ハルに瓜二つの少女、即ちルナが現れた。
本物のハルに合わせたのだろう、美しかった銀髪は金色に染められ、豪華なドレスを身に纏っている。
距離が遠すぎて表情までは読めないが、きっと不安で震えているか、あるいは精神支配の魔法のようなもので正気を失わされているか、そのどちらかに違いない。
彼女の傍らには、"本物のハル"の父アルフォンソ二世と思しき立派なローブを着用した中年男性と、数名の武装した兵士達、そして怪しげなローブを身に纏った魔術師らしき男が付き従っている。
「ルナ……」
俺は呟いた。ルナはまるで操り人形のように、ゆっくりとアリーナ中央へと歩みを進める。
「お父様……」
ハルは悲しげな表情で、アリーナ上のアルフォンソ二世を見つめていた。半年前、決別のつもりで自ら追放した父の姿をこのような形で見ることになり、しかもその父が自分にそっくりな偽者の少女の傍に父親面をして付き従っているのを見るのがどのような心境なのか、俺には想像すら出来ない。ただ、とても辛い想いをしていることだけは間違いないだろう。
少し遅れて、各諸王国の関係者達がアリーナに上がり始める。数名だが、立派な王冠を身につけた、王の身分と思しき人間の姿も見える。
「ここでどんなやり取りが行われるか、ですね」
フローラが呟いた。彼女の言葉通り、これからアリーナ上で何が起こるかは誰にもわからない。
神官が再び音声増幅の魔法を発動し、コロシアム全体にアリーナ上の音が伝える。
「今ここに、サルソ王、ベリーチェ王、ハル・ローゼンブルクによる、ロマリ王戴冠の儀、開始を宣言する」
神官の声が響き渡る。その言葉に呼応して、各国の王やその名代が次々と発言を始める。
「バラノス王、ゴルドン一世だ。バラノスとしてはこの儀に反対である。バラノス王国はハル・ローゼンブルクによるロマリ王僭称を容認する気は一切無い!」
「ペレア女王、ビアンカ一世の名代です。ペレアとしてもハル女王の戴冠は承認しません」
次々と上がる反対の声。ハルは、その言葉を聞きながら、静かに拳を握りしめていた。
「僭王ハルの戴冠に反対する!」
「ロマリ王の座を我が物顔で宣言するとは片腹痛い!」
「サルソ王国に制裁を加える!」
「こんな小娘に任せられるか!」
「そもそもこいつは自分の父親を追放したような簒奪者だぞ!」
次々と上がる反対の声。ハルは、その言葉を聞きながら、静かに拳を握りしめていた。
殆どの諸王たちがハルの即位に反対の意を示しており、このままでは戴冠式は収拾の付かない事態に陥るだろう。
しかし、ルナを攫った犯人、そしてこの騒動を企てた黒幕はまだ正体を現していない。
俺は内心で焦燥感を募らせていた。
「このまま全員が偽ハルの即位に反対するのか?」
俺が呟いたその時、イザベラが俺の腕を掴んだ。
「待って」
次の瞬間、流れを大きく変える出来事が起こった。
「我がコロノ王国は、ハル・ローゼンブルク女王陛下のロマリ王即位を支持する!」
コロノ王、ロベルト一世の声が響き渡る。
一人の王が立ち上がり、偽ハルの即位を容認する意思を示したのだ。
その言葉に、会場は驚きの声に包まれた。
殆どの諸王が反対する中で、なぜコロノ王はハルを支持するのか。
誰もが理解できないという表情で顔を見合わせる。
イザベラは扇子で口元を隠し、鋭い視線でコロノ王を見つめていた。
「どうやらあいつが黒幕みたいね」
彼女は静かに言った。
俺はイザベラの言葉に頷いた。
「ああ。以前にイザベラが予想していた通りだ」
黒幕は偽女王ハルを傀儡化した上でそのロマリ王即位を追認し、影のロマリ王になろうとしている。
数日前にイザベラはそう予測していた。だからこの戴冠式で偽のハルのロマリ王戴冠に賛成する人間こそが、この一連の事件の黒幕である、と。
コロノ王、ロベルト一世。
奴が諸王国に数多の偽手紙を配り、幽閉されていたアルフォンソ二世を強奪し、そしてルナを誘拐した犯人──。
そう確信した俺は拳を強く握り締める。
「全ては、あの男が……」
しかし、事態はそれだけでは終わらなかった。
ロベルト一世に続き、更に二人の王が立ち上がり、戴冠に賛意を示し始めたのだ。
「我がメサージュ王国も、ハル・ローゼンブルク女王陛下のロマリ王即位を支持する!」
「ポルタ王国も賛成だ!」
メサージュ王アルベルト二世、ポルタ王リカルド三世の声が響き渡る。
会場の驚きは更に大きくなり、野次とも歓声ともつかない群衆の声でコロシアムが埋め尽くされる。
神官の男が必死に杖を地面に打ち付けながら静粛にするよう訴えかけている。
「そんな……。どういうこと……?」
あの卓越した知性を持つイザベラですら、この状況は予想していなかったらしく驚いている。
俺達が『黒幕はコロノ王、ロベルト一世』と確信してから、ほんの数十秒でその確信は打ち砕かれてしまったのだ。
サルソ島から船で2日程の所にある大陸本土の港町へ渡り、そこから更に徒歩で内陸へ2日。
大陸内でもロマリ半島と呼ばれる地域の中心部に位置する小さな平野部一帯は、聖地としてロマリの諸王たちが共同で派遣した各国の兵と官僚が持ち回りで統治を行っており、各諸王国の緩衝地帯としての役割も担っている。
建前上は聖地での流血沙汰は禁止ということになっているが、ロマリ王の称号を僭称しようとする不逞の輩やその部下に対してまで彼らがその合意を守る可能性は低い。
ロマリ王の戴冠式は、そんな聖地の中でも中心部にある、古代に建てられた伝統あるコロシアムで行われるのが慣例だった。
しかし俺達が聖地へ到着した頃には、既に辺り一帯は一触即発の緊張感に包まれていた。
特にサルソ王国から派遣されてきた兵と官僚が宿泊する施設に関しては、他の諸王国たちが露骨な包囲網を敷き、いつでも攻撃出来るようにと身構えている様子が伺えた。
現地のサルソ人と無理にコンタクトを取ろうとしてはせっかくお忍びで変装をしてまでここへやって来た意味が無いとして、俺達はあくまで戴冠式を見物に来た一般観光客という体裁で金を払って普通の宿を取り、そこで戴冠式に備えて入念な打ち合わせを重ねた。
そうして訪れた、戴冠式当日。
コロシアムには多くの市民が詰めかけていた。一般市民が入場を許されるのはいわゆる三階席と呼ばれるような外周部迄だったが、ひとまず俺達はそこに陣取り、式が始まるまでの様子を観察することにしていた。
「そろそろ正午、ですね」
フローラが太陽の高さで時刻に検討を付けながら呟いた。
コロシアムには多くの市民が詰めかけており、熱気と緊張感が入り混じった独特の雰囲気に包まれている。
「偽ハル、……ルナちゃんがアリーナに現れるのは、あと一時間後くらいよね」
イザベラが扇子で口元を隠し、真剣な表情で呟く。ルナが攫われたのは既に二週間以上も前のことだ。一体どんな目に遭わされていたのか、想像するだけで胸が締め付けられる。
「各国の諸王の出席状況を確認してきました」
ヒナギクが報告を始める。彼女は式典開始前に、こっそりと各国の控室を訪れ、出席者たちの様子を探っていたのだ。
「多くの王はこの戴冠式を無効だと主張し、出席自体していません。代わりに名代や武装した兵士を派遣し、宣言を撤回するよう今も控室で最後通告のやり取りを続けていると思われます」
「なるほど……。やはり、どの国もこの戴冠式を認めてはいないようだな」
俺は頷いた。
「私の推測が当たっていれば、事件の黒幕の国王だけは土壇場で賛成に転じるかもしれないけどね」
と、イザベラが補足する。
「現地に派遣されているサルソ王宮関係者たちと直接のコンタクトは取れていませんが、彼らはどうしていますか?」
ハルが尋ねる。彼女は同胞であるサルソ人の現状を心配しているようだった。
「こちらの動きが察されないようこっそり探った限りの感触ですが、彼らは困惑しつつも"偽女王"の命令に従い警護の職務を全うしようとしているように見えました。深い事情までは把握してない可能性が高いです」
ヒナギクはサルソ王宮関係者たちの様子を説明する。
「なるほど……。彼らは騙されているんですね……」
フローラがそう呟くと、ハルは悲しげな表情で視線を落とした。自分の臣下たちが偽の女王に仕えていることを知るのは辛いだろう。
「ただ……」
ヒナギクが言いかけた言葉を、イザベラが遮って代わりに述べる。
「一部には、そんな本当の一般兵だけじゃなく、黒幕の息がかかった奴が混ざっているのは確実でしょうね。つまり、ルナちゃん誘拐やアルフォンソ二世強奪の実行犯達が……」
「その通りです。傍から見て、誰が本当の同胞で誰が敵なのかを見分けるのは困難ですが……」
ヒナギクは頷いた。敵は我々のすぐ近くに潜んでいるかもしれない。緊張感が高まる。
「俺が近付いて分析をすればわかるかもしれない」
俺は提案するが、ハルは首を横に振った。
「今はまだやめておきましょう。偽女王を操る黒幕の出方を伺ってからです。私達が行動を起こすのは」
ハルは冷静な判断を下す。確かに、今はまだ軽率な行動は避けるべきだろう。
俺たちはコロシアムの外周部に設けられた一般席に座り、戴冠式の開始を待った。周囲には多くの市民が集まっており、ざわめきが響いている。
暫く話していると、一人の神官がアリーナ中央に現れ、高らかに宣言した。
「ただいまより、ロマリ王戴冠の儀、開始いたします!」
神官の声が、魔法によって増幅され、コロシアム全体に響き渡る。それと同時に、アリーナ奥の扉が開き、ハルに瓜二つの少女、即ちルナが現れた。
本物のハルに合わせたのだろう、美しかった銀髪は金色に染められ、豪華なドレスを身に纏っている。
距離が遠すぎて表情までは読めないが、きっと不安で震えているか、あるいは精神支配の魔法のようなもので正気を失わされているか、そのどちらかに違いない。
彼女の傍らには、"本物のハル"の父アルフォンソ二世と思しき立派なローブを着用した中年男性と、数名の武装した兵士達、そして怪しげなローブを身に纏った魔術師らしき男が付き従っている。
「ルナ……」
俺は呟いた。ルナはまるで操り人形のように、ゆっくりとアリーナ中央へと歩みを進める。
「お父様……」
ハルは悲しげな表情で、アリーナ上のアルフォンソ二世を見つめていた。半年前、決別のつもりで自ら追放した父の姿をこのような形で見ることになり、しかもその父が自分にそっくりな偽者の少女の傍に父親面をして付き従っているのを見るのがどのような心境なのか、俺には想像すら出来ない。ただ、とても辛い想いをしていることだけは間違いないだろう。
少し遅れて、各諸王国の関係者達がアリーナに上がり始める。数名だが、立派な王冠を身につけた、王の身分と思しき人間の姿も見える。
「ここでどんなやり取りが行われるか、ですね」
フローラが呟いた。彼女の言葉通り、これからアリーナ上で何が起こるかは誰にもわからない。
神官が再び音声増幅の魔法を発動し、コロシアム全体にアリーナ上の音が伝える。
「今ここに、サルソ王、ベリーチェ王、ハル・ローゼンブルクによる、ロマリ王戴冠の儀、開始を宣言する」
神官の声が響き渡る。その言葉に呼応して、各国の王やその名代が次々と発言を始める。
「バラノス王、ゴルドン一世だ。バラノスとしてはこの儀に反対である。バラノス王国はハル・ローゼンブルクによるロマリ王僭称を容認する気は一切無い!」
「ペレア女王、ビアンカ一世の名代です。ペレアとしてもハル女王の戴冠は承認しません」
次々と上がる反対の声。ハルは、その言葉を聞きながら、静かに拳を握りしめていた。
「僭王ハルの戴冠に反対する!」
「ロマリ王の座を我が物顔で宣言するとは片腹痛い!」
「サルソ王国に制裁を加える!」
「こんな小娘に任せられるか!」
「そもそもこいつは自分の父親を追放したような簒奪者だぞ!」
次々と上がる反対の声。ハルは、その言葉を聞きながら、静かに拳を握りしめていた。
殆どの諸王たちがハルの即位に反対の意を示しており、このままでは戴冠式は収拾の付かない事態に陥るだろう。
しかし、ルナを攫った犯人、そしてこの騒動を企てた黒幕はまだ正体を現していない。
俺は内心で焦燥感を募らせていた。
「このまま全員が偽ハルの即位に反対するのか?」
俺が呟いたその時、イザベラが俺の腕を掴んだ。
「待って」
次の瞬間、流れを大きく変える出来事が起こった。
「我がコロノ王国は、ハル・ローゼンブルク女王陛下のロマリ王即位を支持する!」
コロノ王、ロベルト一世の声が響き渡る。
一人の王が立ち上がり、偽ハルの即位を容認する意思を示したのだ。
その言葉に、会場は驚きの声に包まれた。
殆どの諸王が反対する中で、なぜコロノ王はハルを支持するのか。
誰もが理解できないという表情で顔を見合わせる。
イザベラは扇子で口元を隠し、鋭い視線でコロノ王を見つめていた。
「どうやらあいつが黒幕みたいね」
彼女は静かに言った。
俺はイザベラの言葉に頷いた。
「ああ。以前にイザベラが予想していた通りだ」
黒幕は偽女王ハルを傀儡化した上でそのロマリ王即位を追認し、影のロマリ王になろうとしている。
数日前にイザベラはそう予測していた。だからこの戴冠式で偽のハルのロマリ王戴冠に賛成する人間こそが、この一連の事件の黒幕である、と。
コロノ王、ロベルト一世。
奴が諸王国に数多の偽手紙を配り、幽閉されていたアルフォンソ二世を強奪し、そしてルナを誘拐した犯人──。
そう確信した俺は拳を強く握り締める。
「全ては、あの男が……」
しかし、事態はそれだけでは終わらなかった。
ロベルト一世に続き、更に二人の王が立ち上がり、戴冠に賛意を示し始めたのだ。
「我がメサージュ王国も、ハル・ローゼンブルク女王陛下のロマリ王即位を支持する!」
「ポルタ王国も賛成だ!」
メサージュ王アルベルト二世、ポルタ王リカルド三世の声が響き渡る。
会場の驚きは更に大きくなり、野次とも歓声ともつかない群衆の声でコロシアムが埋め尽くされる。
神官の男が必死に杖を地面に打ち付けながら静粛にするよう訴えかけている。
「そんな……。どういうこと……?」
あの卓越した知性を持つイザベラですら、この状況は予想していなかったらしく驚いている。
俺達が『黒幕はコロノ王、ロベルト一世』と確信してから、ほんの数十秒でその確信は打ち砕かれてしまったのだ。
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