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## 21 決壊

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「んんっ……!んあああああああっ……!イヤっ、見ないで! 見ないでええええっ!」



ガルディアナ・マレアの精神体が絶望の表情を浮かべ叫びながらしゃがみ込む。

それに呼応して、"岩"の向こう側からゲイリーの驚きに満ちた叫び声が聞こえてきた。

「な、なんだこれは! 貴様ら! 何をした! ま、まさか! やめろ! 正気か! ぐわああああああーっ!」

ゲイリーの非難の叫びから逃げ出すかのように、俺は叫んだ。

「押し込めええっ!」

俺は"岩"──、いや、もう取り繕うのはやめよう。ウンコに向かって体当たりを仕掛ける。表面がぬるぬるになって滑りが良くなり蠕動運動も始めている腸の中で、それはいとも簡単にスポッと前へ進んでいく。

「うおおおおおおお!」

近衛兵や船乗りたちも俺の後に続き、一気にウンコを押し込む。

「やめてくれえええええええっ! この人でなし共があああああっ! ぎゃあああああああああああっ!」」

呪術師ゲイリーは心からの呪詛の言葉を吐く。やがてゲイリーは断末魔の叫びと共に、遥か遠く……、ガルディアナ・マレアの"出口"へと消えていった……。悪の呪術師はおよそ人類が体験し得る中でも最も酷い部類に入るであろう最期を迎えた。

「ハァ……、ハァ……、やった……、か?」

思わず口から飛び出すフラグ的な発言。だが、きっと大丈夫だろう。そう確信出来たのは、俺の分析スキルにガルディアナ・マレアの更新された新たなステータス情報が表示された為だ。

「名前:ガルディアナ・マレア
年齢:[計測失敗](100歳以上?)
性別:女性
身長:156cm
スリーサイズ:B101 W68 H 95
種族:精霊
Lv:88
HP:2050/58742
MP:55/32568
力:385
魔力:432
精神力:495
スキル:潮汐操作Lv10、自然治癒Lv10、聖なる守りLv7
特殊能力:水中呼吸、超音波、くいしんぼう
祝福:無し
呪い:![肉体分離]、![便秘気味]」

マレアの精神体を見ると、呪いの項目の[肉体分離]と[便秘気味]の両方の項目が明滅し、少しずつ消えて行っているのが見えた。呪いが解けると共に、便秘も解消されようとしているのだ。

だが、これは終わりではない。哺乳類の腸は長い。腸から"出口"へと向かう旅路、そしてその出口を制御する最後の儀式は、ガルディアナ・マレア、彼女自身に委ねられる。

そう。これは、始まりなのだ。

本当の意味での便秘解消の、最後の最後となるフィニッシュは、彼女自身が、彼女自身で括約筋に力を込めることで解決しなければならない。

「イヤああああああああっ♡ らめえええええっ♡ 見ちゃらめええええええっ♡ マレアがウンチする所見ないでえええええええっ♡」

ゴゴゴゴゴ! と凄まじい音がマレアの体内に響き渡る。

今この瞬間、きっとここから遠く離れたマレアの"出口"──いや、もう取り繕うのはやめよう、マレアの肛門から、ゲイリーの身体やそれを巻き込んだ固形物、更には溜まっていたガスなどが激しく吹き放たれているのだろう。実際に目で見ることは出来ないし見たくもないが、その衝撃が俺達の現在位置まで伝わってきているのだ。

「やあああああああっ♡ 出てるっ♡ ウンチ出ちゃってるっ♡ らめええっ♡ らめえええっ♡ ハァ……♡ ハァ……♡ あああああああっ♡ 見ないでええええっ♡」

マレアの精神体はその場でしゃがみ込み、女性として決して他人に見せてはいけない表情……、痛みと快楽と羞恥が入り混じったとんでもない表情を周囲に晒してしまっている。

「こ、これは……」

「マレア様……」

「マレアちゃん! がんばって! もうすぐだよ!」

ハルとフローラは顔を真っ赤にして目を逸らし、ルナは何故か妙に嬉しそうに瞳をキラキラさせながら彼女を応援している。

(あくまでウンコをしてるのはただのクジラ。この女の子じゃない。あくまでウンコをしてるのはただのクジラ。この女の子じゃない)

俺は必死で自分にそう言い聞かせる。実際、マレアの精神体の身体(精神体の身体というのも変な話だが)はビクンビクンと震えてはいるものの、それだけだ。

しゃがみ込み、震え、まるで女の子が排泄しているかのような仕草と表情をしているが、あくまで実際に排泄しているのはクジラだ。この女の子じゃない。

お尻から何かが出てきているということもない。だが、それがかえってエロく感じられてしまうのもまた事実だ。

もしウンコを見せつけられていたら、そういう性癖の人間でもない限りエロく感じるというよりドン引きしてしまうだけだったかもしれないが、リアクションだけで実際にブツは出てきていない"エアうんこ"なせいで、エロさだけが強調されてしまっていた。

「やぁ……♡ ああ……♡ 出ちゃっ……♡ あー……♡ はぁ……♡ はぁ……♡」

波が収まったのか、マレアは大口を開けて息を荒げたまま放心し始めた。

そんな彼女の痴態を見て、俺や近衛兵や船乗りといった男性陣は、全員が気まずそうにしていた。

中には前屈みになってしまっている者も居た。

俺も、その、一人だった。
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