アンダーグラウンド ~下層世界より~

核の暴力とも言われた第三次大戦から二十余年。
人々は地上に住むことを断念し、各地の地中深くに構築した螺旋隧道型地下人工都市(らせんずいどうがた ちかじんこうとし)――ジオフロントに移住した。

しかし、消耗一方のフロントにはすべての人間を生かすほどの余裕は無い。

ここ、第十三区地中都市――通称"ブルート"は比較的恵まれているほうだが、とうとう選択の時が訪れようとしていた。

食料問題、衛生問題。

そして何より地上から流れ込む強酸性の雨が、ジオフロントが水没しないように稼働するポンプを痛めつける。

故障すれば替えはきかない。煤煙の出せないジオフロントでは、機械工業はとうの昔に無くなっていた。

このままの稼働を続ければあと数年と持たずに、このジオフロント全てが水没する。
しかし稼働率を下げれば――螺旋のトンネルの下層部に住む、身分の低い者達を見捨てることになるとはいえ――大多数の人間は助かることになる。

ようするに命の選別だ。

残酷だろうか。しかし、この政策がとられなければ、このジオフロントは近いうちに全滅となるだろう。

そして、その時はやってきた。

今夜零時。フロントの最下層、「第二十二層」一帯が閉鎖・入水(じゅすい)する。数多くの下層民を、置き去りにして。

__________________________

★一部、閑話等は変更することがありますが、カクヨムにて連載中のものと基本的には同内容となります。

★不定期更新ではありますが、なるべくマメに更新してまいりますので、宜しくお願い致します。
24h.ポイント 0pt
0
小説 195,587 位 / 195,587件 SF 5,581 位 / 5,581件

あなたにおすすめの小説

荒れ果てた世界の内側で、少女は何を観る(ERROR).

歩夢
SF
世界から殆どの人間の姿が消えた時代。 女性は、特殊なエネルギーを運搬する仕事を淡々とこなしていた。 彼女は何故、自ら危険な仕事を選び、運び続けるのか。理由のなさが、彼女の身の内を内側から傷付ける。 旅を続けていく中で、彼女は様々な生き方を見つめることになる。 彼女の生き方、それぞれの他者の生き方、そして、己の生きている理由。 世界が真実の一様を明らかにするにつれ、女性の疑問も、やがては氷解していく。 私達が何故、生きているのか。 不条理の支配する世界の中で、彼女が選ぶ、最後の選択は。 己と世界の歴史と、生きる理由に悩む者たちに共通する、愚かで静謐な悦びのある、小さな物語。 ーーーー 第一稿 2022 10/末→2023 1/15. 完結 長編になりますが、良ければ覗いてみて下さい。

思惟ちゃんと式神的な巨大ロボット

健野屋文乃(たけのやふみの)
ファンタジー
思惟が高校に進学した年に、街は何者かによって結界で封鎖された。結界で封鎖された街で、思惟は地下世界の妖精の存在を知る。

【完結】R・I・N・G〜フルダイブ式VRゲームの報酬は、リアル世界の夢も叶える〜

呑兵衛和尚
SF
世界初のバーチャルMMORPG、ヨルムンガンド・オンライン。 そのファーストロットの抽選販売に当選した大学生の本田小町は、VRMMOゲームなのにも関わらず、冒険に出ることもなく領地経営を楽しんでいた。 そんなある日。 突発的に起こった大規模討伐クエストの最中であるにも関わらず、公式サイドに公開された大型アップデートの内容を見て、呆然としてしまった。 【ハイパークエスト、R・I・N・Gが実装されます】 公式サイド曰く、【R・I・N・G】クエストをクリアすることにより、世界に七つしか存在しない『願いを叶える指輪』が手に入るという。 【これは世界のどこかに存在する七つの指輪、それを求める旅。指輪を手にしたものは、望みのものが与えられます】 ──ゾクゾクッ  これを見たユーザーたちは、誰もが歓喜に震え始めた。  これは普通のオンラインゲームじゃない。  願いを叶えることができる、オンラインゲーム。  それこそ、莫大な富と財宝が手に入る可能性がある。   誰もが知りたい、莫大な富。  それはゲームの世界のものなのか、それとも現実なのか。  そう考えたユーザーが、無理を承知で公式に質問した。 Q:ゲーム内ではなくリアルで現金一億円とかを望んでも叶いますか? A:まあ、望むものとは言いましたが、現金なら10億円までですね。  公式サイトでは、最大10億円ぐらいまでならば、賞金としてお渡しすることができますと公式回答を発表。  オンラインゲームは娯楽だけではなく、まさに一攫千金を求めることができるものに変化した。  言わば、現代のゴールドラッシュが始まろうとしているのである。 そしてこの公式解答は、瞬く間に日本だけでなく全世界にも広がっていった。 「こ、これは大変なことになった……」 主人公の本田小町は、このクエストの情報を求める。 彼女と親友の夢を取り戻す為に。 【R・I・N・G】クエストをクリアするために。 注)このストーリーは、『ユメカガク研究所』というチームによって生み出されたシェアワールドを舞台としています。 こちらのシェアワールドを使用している作品には、全て『ユメカガク研究所』のタグがついていますので。

帝国の曙

Admiral-56
SF
 第三次世界大戦により文明の大半が滅んでから数千年。第三次世界大戦以前のほとんどの記憶が失われた人類は、再び同じ歴史を繰り返そうとしていた。  しかし第四次世界大戦は、第二次世界大戦と似た様相を見せながらも、少しずつ違う方向へと進みつつあった…  ベースは第二次世界大戦の史実パクってますが、ご都合エンジンやらとんでも兵器が登場してあんなやことやこんなことするif戦記です  主人公は“日本”です。ハイ。  結構私個人の見解が多く含まれるので、あまり深く考えないで読んでもらえるとありがたいです   小説家になろうにも投稿しています

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

日本国破産?そんなことはない、財政拡大・ICTを駆使して再生プロジェクトだ!

黄昏人
SF
日本国政府の借金は1010兆円あり、GDP550兆円の約2倍でやばいと言いますね。でも所有している金融性の資産(固定資産控除)を除くとその借金は560兆円です。また、日本国の子会社である日銀が460兆円の国債、すなわち日本政府の借金を背負っています。まあ、言ってみれば奥さんに借りているようなもので、その国債の利子は結局日本政府に返ってきます。え、それなら別にやばくないじゃん、と思うでしょう。 でもやっぱりやばいのよね。政府の予算(2018年度)では98兆円の予算のうち収入は64兆円たらずで、34兆円がまた借金なのです。だから、今はあまりやばくないけど、このままいけばドボンになると思うな。 この物語は、このドツボに嵌まったような日本の財政をどうするか、中身のない頭で考えてみたものです。だから、異世界も超能力も出てきませんし、超天才も出現しません。でも、大変にボジティブなものにするつもりですので、楽しんで頂ければ幸いです。

星間の旅人たち

阪口克
SF
空を覆い尽くすほどに巨大な星間移民船マザー。今から数千年の昔、多くの人々をその胎内に抱え、マザーは母星を旅立った。 未知の移住星を求めて彷徨う巨大な移民船。この船を護り未知の移住星を開拓するため、マザーセントラルには強大な力を持った護衛軍が存在する。 護衛軍探索部第3課に所属するハイダ・トール軍曹は、ある星での”事件”をきっかけに、出航時刻に間に合わなくなってしまう。 飛び立つマザーを必死に追いかけるハイダ軍曹は、指揮官の助言に従い、船の最末端部から内部へと侵入することに成功した。 しかしそこは、護衛軍の力の及ばない未知の領域だった。 マザー本体から伸びる長大な柱……その内部はセントラルの管理が及ばない世界。何千年もの歴史を積み重ねた、移民たちによる異文明が支配する地であった。 セントラルへの帰還を目指すハイダ軍曹は、移民世界での試練と人々との邂逅の中、巧みな交渉力や戦闘技術を駆使し苦難の旅路を行く。しかし、マザー中心部への道のりは険しく遠い。 果たして、ハイダ・トール軍曹は無事帰還を果たすことができるのだろうか。

【短編 完結】ファンタジー用チートで万全の準備をしたのに転移したのはSFの世界でした。

東堂大稀(旧:To-do)
SF
捕鳥ハルヤは、気が付くと真っ白な空間にいた。 ライトノベルを読み漁り、高校2年になった現在も中二病を発症して異世界で活躍する自分を空想していた彼は、それがすぐに異世界転移だと気が付く。 女神に準備されたリソース内なら自由に能力を選べると言われ、異世界転移ファンタジーでお約束のチート能力を選んだが、転移した先は宇宙を舞台としたSFの世界だった……。 ※ゴールデンウィーク企画。毎日二回更新で5月5日まで連載予定の短編です。

処理中です...