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第二夜
年代記『五公国記 盆地の王と獅子の歌姫』
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「パリス宗主カシアス・セリウィスの名において、10歳以下のメルシゴナ家男児全員の処刑を命じる」
冷たいカシアスの声。その意味を一瞬誰もが理解できなかった。あまりにも苛烈な処罰、その命を聞いたパリス市民で一番驚愕したのは誰だったであろう。
ゴルヴィが声を出そうと立ち上がりかけた。ゴルヴィよりも先に隣の男が立ち上がっている。隣の男ヴリン・マッシュハガは今までの余裕と自信に満ちた顔をどこかへ放り投げ青白い顔をしていた。
「カシ…いや宗主。そのようなことを一存で決められては我らも困る」
ヴリンは思い違いをしていると若い宗主を諭そうと試みた。
ゆっくりと壇上の中央えとヴリンが歩み出ていき、宗主となった若者に目線をやった。いつもであればヴリンが前に立つとどこか自信なさげな若者がそこにいるはずで、いくらでも説き伏せれると思っている。侮りがどこかヴリンの声色にも含まれていた。
壇上に到達しカシアスを睨みつける。わがままを言う小僧を諭しなだめ、そしてわからせてやるつもりでいたヴリンは、カシアスの感上の薄い冷たく刺さるような視線と表情にわずかに眉を上げた。生意気な印象以上に不愉快さをヴリンは受けた。
「宗主、宗主。そういきり立たれるな。いくらメルシゴナが反逆の意志があったとしてもその…」
いつものようにわずかな笑みを浮かべて問いかけるヴリンにカシアスの顔から怒気が上がっているのが理解できた。
怒り、そうカシアスの中にある得体のしれない怒りの感情がヴリンに直撃する。黒く冷たい怒りがカシアスの目から放たれ、ヴリンを圧倒する。
「何か意見が?」
「ダルダンに反逆の意志があったとしてもメルシゴナ家、ひいては氏族にその意思があったとは言えますまい。ましてやその小男の証言だけでありましょうぞ」
「それで?」
「これだけでメルシゴナを反逆者にし、その首と心臓をパーリウィスに捧げれば、パリス市民にいらぬ恐怖心を打言えつけることになりましょう。麗しきパリスの宗主には寛大な心をお持ちくださりますよ…」
ヴリンの言葉にはカシアスに対する嘲りとも侮りともつかないものがこもっていた。コルピン家当主の自分が諭せば若い宗主が引き下がるという思惑がその声色の中に含まれている。ヴリンの発する粘度のある苦言を若い宗主の鋭い声がはっきりと拒絶した。
「くどい!」
カシアスはヴリンに背を向ける。控える兵士の元へ歩み寄ると、その横にある刃が広く湾曲した刀を手に取る。目方がかなりあるその曲刀を片手に携えバータの目の前に立ち曲刀をつきだした。
「切れ」
カシアスの冷たく表情の読めない顔にバータは気圧される。震える手で曲刀を受け取るが極度の緊張のためかつかみ損ねてしまう。額から冷たい汗が流れ背中にも脂汗が沁みだしているのがわかるほどであった。
「しっかり握れ。さあ切れ。パリスの反逆者を切って見せろ」
曲刀を受け取ったバータはそれまでの饒舌も見栄もどこかへ放り投げたかのように肩に力を入れガタガタと震えだした。緊張と恐怖に押しつぶされ今にも泣きだしそうになっていた。広場に集まった市民が事の成り行きを静かに見守っている。
ヴリンが本気になった宗主の気合いを薄ら笑いで流そうと割って入ろうとする。もはや一歩も引かぬことを悟ったゴルヴィが前のめりになる。アイザイアが哀れなバータを助けようと一歩踏み出す。そのだれよりも速く壇上へと進み出た影があった。
「宗主、わが宗主。どうか怒りを納めください」
片膝をつきカシアスの前に頭を垂れた影、それはレイヴンであった。
「レイヴンお主も私を愚弄するか?誰も私に忠誠を見せようとせぬ。新しい宗主はそれほどまでに取るに足らぬか?」
「いえ。カシアス様は唯一無二のパリス宗主」
「では、そのパリス宗主に忠誠をしめせアケドナよ」
レイヴンが顔を上げた。その表情はカシアスと同じ物であった。苛烈極まりない若い宗主に対する忠誠をアケドナの当主はだれよりも速く示している。音もなく立ち上がりバータの前に立った。
「貸せ」
バータの喉は乾ききり張り付いて声も出せずにいる。まだ震えの収まらないまま両手を突き出し曲刀をレイヴンへと差し出した。壇上で行われるあまりにも苛烈すぎるカシアスの命にコルピン家の男たちも声を出せずにいた。道化のようなヴリンの顔と対照的なレイヴンの姿にみな圧倒されている。戦場にいるような空気感に男たちの肝は冷え切っていた。
曲刀を受け取ったレイヴンはダルダンの差し出された首の真横に立った。
「もっと頭を下に」
誰も止めない。誰も止めれない。カシアスはその光景を表情一つ変えず睨んでいる。ダルダンの表情は見えない。絶望したものだったのか。怒りだったのか。地面に向けられた頭部は誰の目にも見れなかった。
レイヴンの曲刀が振り下ろされる。躊躇なく真直ぐダルダンの頸部に向かっていく刀身は小さな光の線を引きダルダンの首を切り落とした。壇上から転がり落ちるメルシゴナ当主の首がバータの目の前を転がり、壇上から下へと落ちる。
「全員だ。メルシゴナ家のものは全員首をはねろ」
もはや誰もその流れを止めることは出来なかった。ダルダン子飼いの男たちは壇上で次々と頭部を切り離されていく。無造作に転がり大量の血を吹き出しながら絶命していく。壇上は血の池となっていた。
カシアスが転がり落ちたダルダンの首を拾い上げ、無造作に台の上に置く。ダルダンの目は閉じいた。恨みがましい表情はそこになく苦痛も見て取れなかった。
腰を抜かし放心状態のままバータはその場に座り込んでいた。男たちの首から噴き出していた血がバータのズボンを汚している。恐怖と血の匂いにバータはわずかに漏らしていた。幸いなことに小便のあともメルシゴナの血で隠されていく。
落とされた首は次々とダルダンと同じように台の上に置かれていった。カシアスがへたり込んだバータへと近づく。その手には血にまみれた曲刀が握られていた。
「立て」
カシアスの傍らから一歩ガイアスが進み出る。血なまぐさくなった壇上でカシアスだけが違和感がない。高級そうだが使い込まれ古びた絹の上衣も血の池となったその場では異様なまでに不自然さが無くなっている。血と肉片と泥。戦場と似た壇上の光景がガイアスの本質をあらわにしていた。
ガイアスの背を一瞥するとカシアスは踵を返し宗主の席へと戻った。誰にも憚りがない。その椅子は誰のものでもなく間違いなくカシアスのものであった。
曲刀を受け取ったバータをガイアスが支える。その光景をヴリンが呪うような顔で睨んでいた。バータは何とか支えられ立ち上がる。
「お気を確かに」
冷たい声。ガイアスの声はバータ以外にはほとんど聞こえていない。バータを最後に残った小男の前に引きずるように連れる。モズロはこんな状況でもどこか余裕を感じさせていた。バータの前にはアイザイアが立ちモズロを見下ろしていた。
「アイザイア、約束は守ったぞ。次はそちらが…」
モズロを見下ろすアイザイアはわずかに笑っている。美しい顔が酷く歪んだ気色をはらんでいた。アイザイアが身をかわす。目の前には曲刀を持ったバータが見えている。おもむろにモズロの両肩が押さえつけれられた。
「アイザイア! 約束が!」
モズロが抗議の声を上げようとする。その口に軍靴が蹴り込まれる。アイザイアの軍靴がモズロの顎を砕き下顎が粉砕される。声を出せなくなったモズロが痛みに耐えて上半身を起こそうと抵抗した。
「バータ様。さぁこの者の首を」
ガイアスが感情の無い声でバータを促す。しかしバータの勇気は欠片も残ってはいない。刀を握ることすらできなくなっていた。
震えはない、しかし振るうための胆力が生まれない。その姿を父親のヴリンは止めようとする。そのヴリンの姿をカシアスはジッと睨んでいた。視線を敏感に感じ取ったヴリンはそのまま動くことが出来ない。若い宗主がヴリンとコルピン家に対してどう考えその処遇を決めるかをこの瞬間に決めようとする意志を読んだヴリンは本能的に止まったのである。
バータは曲刀を振れない。モズロの贅肉がたっぷりとついた脂肪の塊のような首を見ることもできない。戦場の勇者を好むパリスの男たちでもこれほどの仕打ちを見せられると、バータの醜態も同情の目で見られていた。
アイザイアとガイアスは涙目のバータを冷たく見守る。戦場では当たり前の光景であり、二人にすれば今この場でバータが首を落とさなければ、コルピン家の跡継ぎの資質をパリス市民の前でさらけ出すことになるであった。
望めるような助けはない。バータは観念しなけなしの勇気を振り絞る。曲刀を振り上げモズロの首を見下ろした。
贅肉に食い込む刃先、作り立ての干し肉に刃を入れたような感触が掌に伝わるがすぐに硬いものにぶつかる。肉の間に刃がめり込み血が噴き出ている。
モズロは首を左右に振り抵抗する。激痛なのか砕けた口から声にならない叫び声をあげている。頸椎の間に刃が通らず骨を砕いたのである。モズロは少しだけ首が伸びたようにりさらに左右に激しくふった。続けざまに連続してバータは刀を振り下ろす。しかしモズロの首を落とすことが出来ず頸骨を完全に粉砕しているにもかかわらず苦痛だけを与えていた。
何度も振り下ろしているがやはり切り落とせない。焦りと恐怖、何よりも首が異様に伸びた状態にもかかわらず首をふるモズロの姿に吐き気を覚えていた。力いっぱい握り何度も曲刀を振り下ろしたためバータの指は柄にがっちりと固まり腕も痺れていた。
必死の形相で刀を振るバータを後ろの二人がまんじりともせず見つめる。ガイアスが一歩踏み出し筋肉の緊張しきったバータの腕を掴む。柄から剥ぎ取るように指を離し、曲刀を受け取る。ガイアスは物も言わずモズロの伸び切った首の横に仁王立ちになった。背中を押さえつけているマッシュハガ兵にも緊張が伝わっていく。
両手で柄を握る。曲刀を振りかぶり、脂肪の間から切れた肉とわずかに砕かれた骨が覗いている首元に一閃した。
グズグズに切り裂かれたモズロの首の肉も砕かれ伸びた頸骨もカシアスの曲刀が両断する。贅肉まみれのモズロの頭部が木の板の上を転がり鮮血が飛び散った。
壇上に連れてこられたメルシゴナの男たちの首が並べられる。全部の首が台の上に乗せられると、カシアスが立ち上がった。
「レイヴン。ダルダンの心臓と首をパーリウィスに捧げよ。アケドナの忠誠しかと見届けた。アイザイア、メルシゴナ氏族の罪は問わぬ。兵役に出ておる者達に伝え、逆賊メルシゴナの首を取った物には褒美を出すと触れををだすのだ」
メルシゴナ氏族の分断を謀ろうとする策。すぐにアイザイアは理解する。
「御意」
「戦だ。全パリス市民に告ぐ。パーリウィスにメルシゴナの首と心臓を捧げよ。臆するな我らにはパーリウィスの加護がある」
怒りに体を震わせたヴリンの前を素通りし、無表情のままメルシゴナの男たちの首を睨んでいたゴルヴィにカシアスが近づき壇上から見下ろす。
「ゴルヴィ。コルピン家の忠誠示す覚悟があるか?」
ゴルヴィはカシアスに見向きもしなかった。
カシアスの策が上手くいけばメルシゴナの兵は半分以下になるであろう。しかしヴァルドを結んだ者たちは決してメルシゴナを裏切ることはない。何よりも勝ち目のない戦に一族の名誉と死に場所を探して死兵となるであろう男たちの強さを若い宗主はわかっていない。
「コルピンは私に対する忠誠が薄いようだな」
「宗主に対するメルシゴナの怨み末代まで続きましょう…」
感情の無い声にカシアスは恐怖を覚える。暴力や権力にはない気味の悪さがあった。
「メルシゴナの怨み我がコルピン家が肩代わりいたす。なにとぞメルシゴナから離れた氏族には寛大な心をおもちくださいますよう」
カシアスはゴルヴィの意図を測りかねた。
「我らにメルシゴナ反乱の鎮圧、その先陣を所望いたす」
ゴルヴィ・コルピンの先陣の申し出。それはパリスへの忠誠であったのか、ゴルヴィの深慮があったのかはこの時カシアスは推し量れなかった。
血なまぐさい惨劇と血臭に満たされたパリス市民が集まる中央広場に怒声が響き渡る。集まった群衆が割れ幾人かの男たちがせめぎ合っているのが壇上からも見て取れた。もみ合う人の先頭に若い男とそれを取り押さえる幾人かの男がいる。若い男は掴む腕を振りほどき、壇上へ迫ってきていた。
若い男、その顔をゴルヴィは良く知っている。そして若い男を取り押さえようとしている者達にも見覚えがあった。先頭で他の物たちを引きずるように向かっていくる若者、カズンズ・コルピンの顔には焦りと怒りに満ち溢れ、額からは大量の汗を出している。カズンズを止めるために腕を抑えているのは、父親のシャルキンであった。
何人もの男たちの腕を振りほどきカズンズは壇上の前までくると、コルピン家の男たちよりも前に進み出た。
「叔父貴! なんでこんなことになっちまったんだ!」
怒声。感情が高ぶり異常なまでに声が通る。悲痛なその声にみなが注目する。
カズンズをシャルキンが掴み引き下がらせようとする。コルピン氏族のものがカズンズの周りを囲った。
「控えよ! 何事だシャルキン」
ゴルヴィは壇上からコルピン氏族を見下ろした。ゴルヴィの姿を見ると全員が一歩下がる。しかしカズンズだけは仁王立ちでゴルヴィを見上げている。
「カズ! 何用だ!?」
ゴルヴィはカズンズ瞳に射抜かれる。元々意志の強い頑固な少年であった。怒鳴りつけるゴルヴィを睨み目を離そうとしない。ゴルヴィの横にはカシアスがいるにもかかわらずカズンズは全く控える気配がなかった。
「これは無法でしょう!? メルシゴナが反逆を企てたという証拠もなしに証言だけで家を潰し、その上いたずらに生命を奪うなど、これから先パリス政道はいくらでも曲げられることになります」
カズンズの正しさはコルピン家の立場を危うくする一言であった。無法と罵られたカシアスの顔色がそれとわかるほど紅く変わっていく。若い宗主はカズンズの正しさを認めることが出来なかった。カシアスの怒声が放たれるその一寸前にシャルキンともう一人の中年がカズンズを地面に押さえつけた。
「ばかもん! 生意気なことを!」
割って入られた形になりカシアスは言葉を吐き出せなかった。壇上の縁に立ちコルピン家の男たちをおろす。その顔ははっきりと怒りが現れていた。
「宗主、カシアス様。この馬鹿者はメルシゴナを擁護し、パリスの政道などと生意気なことを言っておりますが、そのじつ、義兄弟の手無しのタイロン坊主の命乞いをしておるのです」
カシアスは黙ったまま広場に向かう階段を降りてくると、地面に押し付けられたカズンズの頭上に立つ。ゴルヴィとアイザイア、少し後ろにガイアスが連れ立っている。
「賢しいなコルピンの小僧…」
カズンズは顔だけを上げ、カシアスを睨んでいる。
「なぜ最初から義兄弟の命乞いをせぬ。パリスの政道などと詭弁を使う」
カシアスの言葉には剣呑としていた。カズンズの言葉はカシアスに鋭い刃のように届く。それゆえにカシアスは不快になっていた。
カシアスがカズンズに近づく。
「なぜ賢しげに政道などという…。なぜ己の本心を隠してさも正しい事のように説く…」
カシアスがカズンズを足蹴にした。肩を踏みつけ地面に転がす。
「なぜだ? 言ってみろコルピンの小僧! 貴様らは己が正義を押し付けるためにパリスの政道やら宗家のあるべき姿なんぞを盾にしておるではないか! 違うか? 違うなら言うてみよ!」
何度も蹴飛ばされ、泥まみれになりながらもカズンズは体を起こし、目を離さない。ここで曲げればタイロンの命もなくなり、パリスの法も正されることはなくなる。カズンズも意地になっていた。
蹴られ転がされながらもカズンズは決してカシアスから目を離さなかった。額を切り血がにじむ。口の中を切ったためなのか口からも血を滴らせる。泥にまみれそれでもカズンズは引こうとしなかった。
見かねたシャルキンとコルピン家の男たちがカズンズを取り押さえ間に入った。シャルキンがカシアスの前で両膝を付き地面に頭をつけた。
カシアスは息が上がり、髪が乱れている。まったく引こうとしないカズンズの顔がさらにカシアスを不愉快にさせていく。
「アイザイア! このガキの義兄弟とやらを連れてこい!」
地面に額を付けたままシャルキンが早口でカシアスを説く。
「お待ちください宗主。生意気でできの悪い息子ではございます。しかしながら義兄弟を見捨てるようなことは人倫を捨てろということにございます。なにとぞ、なにとぞご容赦ください!」
「やかましい! アイザイア。速く連れてこい。このクソ生意気なガキの目の前で首をはねてやる」
アイザイアは黙ったまま頷くとコルピン氏族の横を通り抜けようとする。アイザイアがシャルキンの横を通り抜け群衆に割って入ろうとすると、群衆が割れ後ろに控える兵装のマッシュハガ氏族を招き寄せようとした。しかし誰も近づかない。一瞬の間がありマッシュハガ兵が割れると、二人の男が姿を現す。
その場に似つかわしくないと言われれば似つかわしくなかった。どこか忠誠的な雰囲気を残し神官衣をまとった姿、パリスの神官パミルタスと、その後に腕を支えられてついて歩くのは老境にあるパリスの長老カシュガルである。二人の姿をみたアイザイアが驚きの顔を表した。
パミルタスはまだしもカシュガルはほとんど姿を見せることが無くなっている。その長老がわざわざ出向いてくることに空気が緊張していく。
「神官殿…何用か?」
アイザイアの問いかけにパミルタスは表情を変えない。
「死者の弔い。それ以外に何が? たとえ罪人であろうと死の祈りを捧げてはならぬ法はパリスにはありませんよ」
傷だらけ泥まみれになりながら、カズンズはパミルタスと支えられ歩くカシュガルに顔を向けた。セリウィス家の宗廟を守るのがカシアスであるならば、パリス市民の信仰を守るのがパミルタスである。パリス神官の弔いを止めることは宗主であっても出来る事ではないかった。それが罪人であってもパリス市民であるならば、弔わなければならない。
パミルタスとカシュガルが並びカシアスの前にたった。
「宗主。メルシゴナの弔い禁ずるとは申しませぬな? 祭ろわぬ者たちを生み出せばいかなパリス宗家の宗廟といえどそこに呪がかかることになりましょう」
カシアスはパミルタスに相対した。
「もちろんだ神官殿。しかしこの反逆者一族を生かしておくことは許さぬ。これは宗主の命だ」
一息入れる。パミルタスの表情は硬かった。血の匂いが残る壇上は神官が姿をあらわしたことによりさらに陰鬱で見えない棘が敷き詰められたかのようになっていた。
「アイザイア。何をしている。早くこのボンクラの義兄弟とやらを連れてこい。私自ら首をはねてくれる」
カシアスが目配せする。アイザイアは黙って頷くと、もう一度群衆の中にいる兵士の方を向き命令をしようとした。その機先をそれまで押し黙っていたカシュガルが遮る。
「カシアス。反逆の罪はメルシゴナ氏族すべてに問うか?」
「老カシュガル。罪はメルシゴナにしか問わぬ」
「ザウストラをはじめメルシゴナに連なる氏には罪は問わぬか宗主」
カシアスは黙ったまま頷いた。カシュガルが念を押した理由を少々いぶかしんでいる。
「宗主の言葉として二言はないな?カシアス」
カシュガルは懐から羊皮紙にを取り出すとアイザイアに渡す。
「アイザイアそこに書かれている内容を宗主に伝えよ。タイロン・ザウストラを罪に問うことは許されない」
羊皮紙にかかれた内容をアイザイアが目で追う。表情は全く変わらなかったが読み終えると小さく安堵とも受け取れる溜息を吐き出した。
「どうしたアイザイア!? 何が書かれている!」
かなり古い羊皮紙である。それをカシアスはアイザイアからひったくるように奪った。そこに書かれている文章を読むカシアスの表情が不満を現していく。
「カシアス。あの手無しの坊主はメルシゴナ家の者として育てられていたが、そこに書かれておる通りトラーガル・ザウストラの買った奴隷身分から解放された者だ。その後やつが養子として引き取っておる。たった今メルシゴナの他に罪は問わぬとお主は宣言した二言はないな?」
カシュガルは諭すようにつぶやいた。カシアスは難しい顔になりカシュガルとパミルタスを睨む。若い宗主には迷いが見て取れた。
アイザイアはカシアスの元に戻る。若い宗主の憤懣がありありと見てとれ少し疲れたように溜息をついた。アイザイアの計算ははやい、ここはカシアスが引かなければメルシゴナ氏族全員がパリスに反抗することになり外にいるメルシゴナの兵たちは一致団結することは必定である。
アイザイアは何も言わない、何も言えなかった。パミルタスの申し出はある意味カシアスに助け船を出しているとさえいえる。この荒れた場を納めるには寛容も必要になる。何も答えることが出来なくなったカシアスの後ろからのそりと近づく影があらわれる。
「ヴリン…」
カシュガルの声にアイザイアが振り向いた。パミルタスはじっとマッシュハガ当主の姿から目をはなさなかった。ヴリンの顔にはいつものように感情が読み取れない笑顔が戻っている。
「神官殿、左様か。コルピンの小僧の義兄弟とやらは解放奴隷か」
ヴリンという男の人間性の負の部分がこれでもかと出ている。バータよりもはるかに人の感情を逆なでする触手ような言葉の棘。ヴリン生来の性が隠されもされず出てきていた。
「神官殿、カシュガル老。その解放奴隷、テリデス様から許可をもらってのことかな?」
パミルタスはヴリンの底暗く、嫌悪感を覚えさせる悪意に気づいていた。ヴリンの顔に浮かび上がった薄笑いが息子のバータと瓜二つである。芝居がかった動き、声のトーン。バータが父親を真似ているのか生来から似ているのかおそらく両方の理由であろう。
「先代宗主の許可はない」
カシュガルの声は思いのほか強かった。しかしヴリンはカシュガルの言葉にかぶせるように追い立てる。
「宗家の許可なく奴隷を持つことは許されぬ。つまりその奴隷はパリスの所有の奴隷身分のままということだ。違うか?カシュガル老」
パミルタスは顔色を変えない。宗法とパリスの法を持ち出されればいかんともしがたいことは最初からわかっていたことである。カシュガルは不機嫌さを隠そうとしなかったが、何も言わずにいた。
「ザウストラの放浪者は謀反人の義兄弟であったな。宗家の許可なく奴隷を買い入れ解放するなど言語道断。その小僧は今まだパリスの市奴隷である。そういうことになるな神官殿」
ヴリンはその場にいた皆に聞こえるように言って聞かせた。押さえつけられたカズンズは憤怒に満ちた視線をヴリンに向けようとしていたが、それもかなわない。
ヴリンは息が上がったカシアスのほうに体を向けた。
「宗主が御采配を振るうまでもありませぬな」
カシアスは落ち着きをとりもどしていた。同時に面倒にもなっている。コルピン氏族とヴリンに背を向けると壇上に戻り自分の椅子に座った。
「アイザイア、後はお主に任せる。ヴリン、レイヴン後で顔を見せろ」
一息つくカシアスの周りは死体と血で彩られている。全員の首が台の上に置かれていたがカシアスは見向きもしなかった。
アイザイアがヴリンの横にたち押さえつけられたカズンズを見下ろす。
「カズンズ・コルピン。宗主に盾突いた罪軽くはないぞ。シャルキン殿、父親のあなたにも類は責任を持っていただくことになる。カズンズ、パリス宗法のもと其方に命ずる。向こう5年の兵労と宗主カシアスの許しががあるまではパリス城内での履物を禁ずる」
カズンズは血が滲み泥にまみれた顔をアイザイアに向けた。
「テルベは! タイロンはどうする気だ!」
咆哮。若いカズンズの口から放たれたそれはアイザイアの取り繕ったものを吹き飛ばす勢いがあった。一瞬怯んだがアイザイアはすぐに表情を消す。
「そのものは未開放奴隷だ。パリス所有の奴隷として扱うだけだ。貴様が気に留める事ではない!」
アイザイアはそれを告げるとシャルキンに向きなおる。平伏するシャルキンの後頭部に向かって言葉を吐いた。
「コルピン家はこの度の反乱、先陣を命じる。シャルキン殿お主はその際戦車の仕様を禁ずる。子の犯した罪を戦場で償うがよい」
アイザイアは踵を返す。ようやく気を取り戻したバータが両脇を抱えられてたっていた。
(やはり駄目だな…ヴリン様のようにはなれぬ)
パリス宗主カシアス・セリウィスの血にまみれた即位式は様々な因縁を生んだ。
メルシゴナ家と氏族に対する仕置きは即位から五日後ときまる。その間に親と子、夫と妻、兄弟や友と強制的に別れ捨てさせ、多くの悲哀が生み出された。それにあらがえばメルシゴナの縁者として罪に問われることになる。
ザウストラはメルシゴナとの婚姻を全て絶ちアセロはザウストラ家の者として身分を許される。しかしこのケイラはメルシゴナ家の生まれであり、奴隷身分に落とされることとなった。パリスのやり様に納得できぬメルシゴナ氏族の男たちの中にはそのままパリスを出ようと謀る者も多くいたが、そのほとんどが拘束されることとなる。
うそ寒い赤の月の始まりにコルピン家の兵は慌ただしく兵馬を整えている。頭をそり上げられたカズンズは半ば監禁に近い状態に置かれていたが、この戦いには参加を許されなかった。名誉ある戦も許されなかったのである。
ようやくシャルキンから許しを得たユーラが見舞いがてらカズンズの家に上がり込んでいる。カズンズは足を組まんじりともせずコルピン家の兵たちが行き来する姿を二階から見つめていた。
「メルシゴナ家の女子供は都市奴隷だそうだ」
カズンズの表情は険しい。ケイラとタイロンのことしか頭にない。
「どうするカズ?」
二人には打つ手が無くなっていた。二人が動けばマッシュハガは間違いなく捻じ込んでくるであろう。今は監視ではなくはっきりと見張りがカズンズとユーラにはついていた。何も言わずだんまりを決め込むカズンズの背中を睨みユーラは思わず息を吐いた。
ふいに、ユーラは空気が冷たくなったのを感じる。はっきりと部屋の空気が物理的に下がっている。ユーラの腕が鳥肌を立てるほどで間違いはなかった。そのことはカズンズも感じ取ったのか顔を左右に振る。二人が部屋の変化に気づいたその時開いた木戸に小さな影が飛び込んできた。瑠璃色の鮮やかな毛をもった小鳥が木戸に掴まる。
二人がはっとなりその小鳥に目をやると、部屋の隅に小さな影が入り込んでいた。ユーラはいち速くそちらに体を向け、気を放つ。部屋の影に紛れて姿は見えていなかった。
「誰だ!?」
ユーラは鋭く咎めた。
影がゆっくりと姿を現す。小さな人影、少女のような姿が差し込む日差しにあたる。
「このような形で失礼いたします。カズンズ・コルピン様、ユーラ・アボット様」
二人はぎょっとなった。女が陰から姿を完全に現した。細身で少女のような体つきがわかるようなローブを纏いその胸元にはシルバファーンの紋章がある。
「私はサンサガのビョークと申します。お二人に我が主。タイロン・メルシゴナからの言付けを伝えにまいりました」
場違いこの上ないビョークの言葉に二人は全くついて行けていない。
「タイロン様はお二人に姉上、ケイラ・メルシゴナ様のことを頼むとのことでございます。どうにかどうにかあの方の憂いをなくしてくださいませ…」
ビョークはいきなり二人の前に膝をつき頭を床につけた。
冷たいカシアスの声。その意味を一瞬誰もが理解できなかった。あまりにも苛烈な処罰、その命を聞いたパリス市民で一番驚愕したのは誰だったであろう。
ゴルヴィが声を出そうと立ち上がりかけた。ゴルヴィよりも先に隣の男が立ち上がっている。隣の男ヴリン・マッシュハガは今までの余裕と自信に満ちた顔をどこかへ放り投げ青白い顔をしていた。
「カシ…いや宗主。そのようなことを一存で決められては我らも困る」
ヴリンは思い違いをしていると若い宗主を諭そうと試みた。
ゆっくりと壇上の中央えとヴリンが歩み出ていき、宗主となった若者に目線をやった。いつもであればヴリンが前に立つとどこか自信なさげな若者がそこにいるはずで、いくらでも説き伏せれると思っている。侮りがどこかヴリンの声色にも含まれていた。
壇上に到達しカシアスを睨みつける。わがままを言う小僧を諭しなだめ、そしてわからせてやるつもりでいたヴリンは、カシアスの感上の薄い冷たく刺さるような視線と表情にわずかに眉を上げた。生意気な印象以上に不愉快さをヴリンは受けた。
「宗主、宗主。そういきり立たれるな。いくらメルシゴナが反逆の意志があったとしてもその…」
いつものようにわずかな笑みを浮かべて問いかけるヴリンにカシアスの顔から怒気が上がっているのが理解できた。
怒り、そうカシアスの中にある得体のしれない怒りの感情がヴリンに直撃する。黒く冷たい怒りがカシアスの目から放たれ、ヴリンを圧倒する。
「何か意見が?」
「ダルダンに反逆の意志があったとしてもメルシゴナ家、ひいては氏族にその意思があったとは言えますまい。ましてやその小男の証言だけでありましょうぞ」
「それで?」
「これだけでメルシゴナを反逆者にし、その首と心臓をパーリウィスに捧げれば、パリス市民にいらぬ恐怖心を打言えつけることになりましょう。麗しきパリスの宗主には寛大な心をお持ちくださりますよ…」
ヴリンの言葉にはカシアスに対する嘲りとも侮りともつかないものがこもっていた。コルピン家当主の自分が諭せば若い宗主が引き下がるという思惑がその声色の中に含まれている。ヴリンの発する粘度のある苦言を若い宗主の鋭い声がはっきりと拒絶した。
「くどい!」
カシアスはヴリンに背を向ける。控える兵士の元へ歩み寄ると、その横にある刃が広く湾曲した刀を手に取る。目方がかなりあるその曲刀を片手に携えバータの目の前に立ち曲刀をつきだした。
「切れ」
カシアスの冷たく表情の読めない顔にバータは気圧される。震える手で曲刀を受け取るが極度の緊張のためかつかみ損ねてしまう。額から冷たい汗が流れ背中にも脂汗が沁みだしているのがわかるほどであった。
「しっかり握れ。さあ切れ。パリスの反逆者を切って見せろ」
曲刀を受け取ったバータはそれまでの饒舌も見栄もどこかへ放り投げたかのように肩に力を入れガタガタと震えだした。緊張と恐怖に押しつぶされ今にも泣きだしそうになっていた。広場に集まった市民が事の成り行きを静かに見守っている。
ヴリンが本気になった宗主の気合いを薄ら笑いで流そうと割って入ろうとする。もはや一歩も引かぬことを悟ったゴルヴィが前のめりになる。アイザイアが哀れなバータを助けようと一歩踏み出す。そのだれよりも速く壇上へと進み出た影があった。
「宗主、わが宗主。どうか怒りを納めください」
片膝をつきカシアスの前に頭を垂れた影、それはレイヴンであった。
「レイヴンお主も私を愚弄するか?誰も私に忠誠を見せようとせぬ。新しい宗主はそれほどまでに取るに足らぬか?」
「いえ。カシアス様は唯一無二のパリス宗主」
「では、そのパリス宗主に忠誠をしめせアケドナよ」
レイヴンが顔を上げた。その表情はカシアスと同じ物であった。苛烈極まりない若い宗主に対する忠誠をアケドナの当主はだれよりも速く示している。音もなく立ち上がりバータの前に立った。
「貸せ」
バータの喉は乾ききり張り付いて声も出せずにいる。まだ震えの収まらないまま両手を突き出し曲刀をレイヴンへと差し出した。壇上で行われるあまりにも苛烈すぎるカシアスの命にコルピン家の男たちも声を出せずにいた。道化のようなヴリンの顔と対照的なレイヴンの姿にみな圧倒されている。戦場にいるような空気感に男たちの肝は冷え切っていた。
曲刀を受け取ったレイヴンはダルダンの差し出された首の真横に立った。
「もっと頭を下に」
誰も止めない。誰も止めれない。カシアスはその光景を表情一つ変えず睨んでいる。ダルダンの表情は見えない。絶望したものだったのか。怒りだったのか。地面に向けられた頭部は誰の目にも見れなかった。
レイヴンの曲刀が振り下ろされる。躊躇なく真直ぐダルダンの頸部に向かっていく刀身は小さな光の線を引きダルダンの首を切り落とした。壇上から転がり落ちるメルシゴナ当主の首がバータの目の前を転がり、壇上から下へと落ちる。
「全員だ。メルシゴナ家のものは全員首をはねろ」
もはや誰もその流れを止めることは出来なかった。ダルダン子飼いの男たちは壇上で次々と頭部を切り離されていく。無造作に転がり大量の血を吹き出しながら絶命していく。壇上は血の池となっていた。
カシアスが転がり落ちたダルダンの首を拾い上げ、無造作に台の上に置く。ダルダンの目は閉じいた。恨みがましい表情はそこになく苦痛も見て取れなかった。
腰を抜かし放心状態のままバータはその場に座り込んでいた。男たちの首から噴き出していた血がバータのズボンを汚している。恐怖と血の匂いにバータはわずかに漏らしていた。幸いなことに小便のあともメルシゴナの血で隠されていく。
落とされた首は次々とダルダンと同じように台の上に置かれていった。カシアスがへたり込んだバータへと近づく。その手には血にまみれた曲刀が握られていた。
「立て」
カシアスの傍らから一歩ガイアスが進み出る。血なまぐさくなった壇上でカシアスだけが違和感がない。高級そうだが使い込まれ古びた絹の上衣も血の池となったその場では異様なまでに不自然さが無くなっている。血と肉片と泥。戦場と似た壇上の光景がガイアスの本質をあらわにしていた。
ガイアスの背を一瞥するとカシアスは踵を返し宗主の席へと戻った。誰にも憚りがない。その椅子は誰のものでもなく間違いなくカシアスのものであった。
曲刀を受け取ったバータをガイアスが支える。その光景をヴリンが呪うような顔で睨んでいた。バータは何とか支えられ立ち上がる。
「お気を確かに」
冷たい声。ガイアスの声はバータ以外にはほとんど聞こえていない。バータを最後に残った小男の前に引きずるように連れる。モズロはこんな状況でもどこか余裕を感じさせていた。バータの前にはアイザイアが立ちモズロを見下ろしていた。
「アイザイア、約束は守ったぞ。次はそちらが…」
モズロを見下ろすアイザイアはわずかに笑っている。美しい顔が酷く歪んだ気色をはらんでいた。アイザイアが身をかわす。目の前には曲刀を持ったバータが見えている。おもむろにモズロの両肩が押さえつけれられた。
「アイザイア! 約束が!」
モズロが抗議の声を上げようとする。その口に軍靴が蹴り込まれる。アイザイアの軍靴がモズロの顎を砕き下顎が粉砕される。声を出せなくなったモズロが痛みに耐えて上半身を起こそうと抵抗した。
「バータ様。さぁこの者の首を」
ガイアスが感情の無い声でバータを促す。しかしバータの勇気は欠片も残ってはいない。刀を握ることすらできなくなっていた。
震えはない、しかし振るうための胆力が生まれない。その姿を父親のヴリンは止めようとする。そのヴリンの姿をカシアスはジッと睨んでいた。視線を敏感に感じ取ったヴリンはそのまま動くことが出来ない。若い宗主がヴリンとコルピン家に対してどう考えその処遇を決めるかをこの瞬間に決めようとする意志を読んだヴリンは本能的に止まったのである。
バータは曲刀を振れない。モズロの贅肉がたっぷりとついた脂肪の塊のような首を見ることもできない。戦場の勇者を好むパリスの男たちでもこれほどの仕打ちを見せられると、バータの醜態も同情の目で見られていた。
アイザイアとガイアスは涙目のバータを冷たく見守る。戦場では当たり前の光景であり、二人にすれば今この場でバータが首を落とさなければ、コルピン家の跡継ぎの資質をパリス市民の前でさらけ出すことになるであった。
望めるような助けはない。バータは観念しなけなしの勇気を振り絞る。曲刀を振り上げモズロの首を見下ろした。
贅肉に食い込む刃先、作り立ての干し肉に刃を入れたような感触が掌に伝わるがすぐに硬いものにぶつかる。肉の間に刃がめり込み血が噴き出ている。
モズロは首を左右に振り抵抗する。激痛なのか砕けた口から声にならない叫び声をあげている。頸椎の間に刃が通らず骨を砕いたのである。モズロは少しだけ首が伸びたようにりさらに左右に激しくふった。続けざまに連続してバータは刀を振り下ろす。しかしモズロの首を落とすことが出来ず頸骨を完全に粉砕しているにもかかわらず苦痛だけを与えていた。
何度も振り下ろしているがやはり切り落とせない。焦りと恐怖、何よりも首が異様に伸びた状態にもかかわらず首をふるモズロの姿に吐き気を覚えていた。力いっぱい握り何度も曲刀を振り下ろしたためバータの指は柄にがっちりと固まり腕も痺れていた。
必死の形相で刀を振るバータを後ろの二人がまんじりともせず見つめる。ガイアスが一歩踏み出し筋肉の緊張しきったバータの腕を掴む。柄から剥ぎ取るように指を離し、曲刀を受け取る。ガイアスは物も言わずモズロの伸び切った首の横に仁王立ちになった。背中を押さえつけているマッシュハガ兵にも緊張が伝わっていく。
両手で柄を握る。曲刀を振りかぶり、脂肪の間から切れた肉とわずかに砕かれた骨が覗いている首元に一閃した。
グズグズに切り裂かれたモズロの首の肉も砕かれ伸びた頸骨もカシアスの曲刀が両断する。贅肉まみれのモズロの頭部が木の板の上を転がり鮮血が飛び散った。
壇上に連れてこられたメルシゴナの男たちの首が並べられる。全部の首が台の上に乗せられると、カシアスが立ち上がった。
「レイヴン。ダルダンの心臓と首をパーリウィスに捧げよ。アケドナの忠誠しかと見届けた。アイザイア、メルシゴナ氏族の罪は問わぬ。兵役に出ておる者達に伝え、逆賊メルシゴナの首を取った物には褒美を出すと触れををだすのだ」
メルシゴナ氏族の分断を謀ろうとする策。すぐにアイザイアは理解する。
「御意」
「戦だ。全パリス市民に告ぐ。パーリウィスにメルシゴナの首と心臓を捧げよ。臆するな我らにはパーリウィスの加護がある」
怒りに体を震わせたヴリンの前を素通りし、無表情のままメルシゴナの男たちの首を睨んでいたゴルヴィにカシアスが近づき壇上から見下ろす。
「ゴルヴィ。コルピン家の忠誠示す覚悟があるか?」
ゴルヴィはカシアスに見向きもしなかった。
カシアスの策が上手くいけばメルシゴナの兵は半分以下になるであろう。しかしヴァルドを結んだ者たちは決してメルシゴナを裏切ることはない。何よりも勝ち目のない戦に一族の名誉と死に場所を探して死兵となるであろう男たちの強さを若い宗主はわかっていない。
「コルピンは私に対する忠誠が薄いようだな」
「宗主に対するメルシゴナの怨み末代まで続きましょう…」
感情の無い声にカシアスは恐怖を覚える。暴力や権力にはない気味の悪さがあった。
「メルシゴナの怨み我がコルピン家が肩代わりいたす。なにとぞメルシゴナから離れた氏族には寛大な心をおもちくださいますよう」
カシアスはゴルヴィの意図を測りかねた。
「我らにメルシゴナ反乱の鎮圧、その先陣を所望いたす」
ゴルヴィ・コルピンの先陣の申し出。それはパリスへの忠誠であったのか、ゴルヴィの深慮があったのかはこの時カシアスは推し量れなかった。
血なまぐさい惨劇と血臭に満たされたパリス市民が集まる中央広場に怒声が響き渡る。集まった群衆が割れ幾人かの男たちがせめぎ合っているのが壇上からも見て取れた。もみ合う人の先頭に若い男とそれを取り押さえる幾人かの男がいる。若い男は掴む腕を振りほどき、壇上へ迫ってきていた。
若い男、その顔をゴルヴィは良く知っている。そして若い男を取り押さえようとしている者達にも見覚えがあった。先頭で他の物たちを引きずるように向かっていくる若者、カズンズ・コルピンの顔には焦りと怒りに満ち溢れ、額からは大量の汗を出している。カズンズを止めるために腕を抑えているのは、父親のシャルキンであった。
何人もの男たちの腕を振りほどきカズンズは壇上の前までくると、コルピン家の男たちよりも前に進み出た。
「叔父貴! なんでこんなことになっちまったんだ!」
怒声。感情が高ぶり異常なまでに声が通る。悲痛なその声にみなが注目する。
カズンズをシャルキンが掴み引き下がらせようとする。コルピン氏族のものがカズンズの周りを囲った。
「控えよ! 何事だシャルキン」
ゴルヴィは壇上からコルピン氏族を見下ろした。ゴルヴィの姿を見ると全員が一歩下がる。しかしカズンズだけは仁王立ちでゴルヴィを見上げている。
「カズ! 何用だ!?」
ゴルヴィはカズンズ瞳に射抜かれる。元々意志の強い頑固な少年であった。怒鳴りつけるゴルヴィを睨み目を離そうとしない。ゴルヴィの横にはカシアスがいるにもかかわらずカズンズは全く控える気配がなかった。
「これは無法でしょう!? メルシゴナが反逆を企てたという証拠もなしに証言だけで家を潰し、その上いたずらに生命を奪うなど、これから先パリス政道はいくらでも曲げられることになります」
カズンズの正しさはコルピン家の立場を危うくする一言であった。無法と罵られたカシアスの顔色がそれとわかるほど紅く変わっていく。若い宗主はカズンズの正しさを認めることが出来なかった。カシアスの怒声が放たれるその一寸前にシャルキンともう一人の中年がカズンズを地面に押さえつけた。
「ばかもん! 生意気なことを!」
割って入られた形になりカシアスは言葉を吐き出せなかった。壇上の縁に立ちコルピン家の男たちをおろす。その顔ははっきりと怒りが現れていた。
「宗主、カシアス様。この馬鹿者はメルシゴナを擁護し、パリスの政道などと生意気なことを言っておりますが、そのじつ、義兄弟の手無しのタイロン坊主の命乞いをしておるのです」
カシアスは黙ったまま広場に向かう階段を降りてくると、地面に押し付けられたカズンズの頭上に立つ。ゴルヴィとアイザイア、少し後ろにガイアスが連れ立っている。
「賢しいなコルピンの小僧…」
カズンズは顔だけを上げ、カシアスを睨んでいる。
「なぜ最初から義兄弟の命乞いをせぬ。パリスの政道などと詭弁を使う」
カシアスの言葉には剣呑としていた。カズンズの言葉はカシアスに鋭い刃のように届く。それゆえにカシアスは不快になっていた。
カシアスがカズンズに近づく。
「なぜ賢しげに政道などという…。なぜ己の本心を隠してさも正しい事のように説く…」
カシアスがカズンズを足蹴にした。肩を踏みつけ地面に転がす。
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何度も蹴飛ばされ、泥まみれになりながらもカズンズは体を起こし、目を離さない。ここで曲げればタイロンの命もなくなり、パリスの法も正されることはなくなる。カズンズも意地になっていた。
蹴られ転がされながらもカズンズは決してカシアスから目を離さなかった。額を切り血がにじむ。口の中を切ったためなのか口からも血を滴らせる。泥にまみれそれでもカズンズは引こうとしなかった。
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カシアスは息が上がり、髪が乱れている。まったく引こうとしないカズンズの顔がさらにカシアスを不愉快にさせていく。
「アイザイア! このガキの義兄弟とやらを連れてこい!」
地面に額を付けたままシャルキンが早口でカシアスを説く。
「お待ちください宗主。生意気でできの悪い息子ではございます。しかしながら義兄弟を見捨てるようなことは人倫を捨てろということにございます。なにとぞ、なにとぞご容赦ください!」
「やかましい! アイザイア。速く連れてこい。このクソ生意気なガキの目の前で首をはねてやる」
アイザイアは黙ったまま頷くとコルピン氏族の横を通り抜けようとする。アイザイアがシャルキンの横を通り抜け群衆に割って入ろうとすると、群衆が割れ後ろに控える兵装のマッシュハガ氏族を招き寄せようとした。しかし誰も近づかない。一瞬の間がありマッシュハガ兵が割れると、二人の男が姿を現す。
その場に似つかわしくないと言われれば似つかわしくなかった。どこか忠誠的な雰囲気を残し神官衣をまとった姿、パリスの神官パミルタスと、その後に腕を支えられてついて歩くのは老境にあるパリスの長老カシュガルである。二人の姿をみたアイザイアが驚きの顔を表した。
パミルタスはまだしもカシュガルはほとんど姿を見せることが無くなっている。その長老がわざわざ出向いてくることに空気が緊張していく。
「神官殿…何用か?」
アイザイアの問いかけにパミルタスは表情を変えない。
「死者の弔い。それ以外に何が? たとえ罪人であろうと死の祈りを捧げてはならぬ法はパリスにはありませんよ」
傷だらけ泥まみれになりながら、カズンズはパミルタスと支えられ歩くカシュガルに顔を向けた。セリウィス家の宗廟を守るのがカシアスであるならば、パリス市民の信仰を守るのがパミルタスである。パリス神官の弔いを止めることは宗主であっても出来る事ではないかった。それが罪人であってもパリス市民であるならば、弔わなければならない。
パミルタスとカシュガルが並びカシアスの前にたった。
「宗主。メルシゴナの弔い禁ずるとは申しませぬな? 祭ろわぬ者たちを生み出せばいかなパリス宗家の宗廟といえどそこに呪がかかることになりましょう」
カシアスはパミルタスに相対した。
「もちろんだ神官殿。しかしこの反逆者一族を生かしておくことは許さぬ。これは宗主の命だ」
一息入れる。パミルタスの表情は硬かった。血の匂いが残る壇上は神官が姿をあらわしたことによりさらに陰鬱で見えない棘が敷き詰められたかのようになっていた。
「アイザイア。何をしている。早くこのボンクラの義兄弟とやらを連れてこい。私自ら首をはねてくれる」
カシアスが目配せする。アイザイアは黙って頷くと、もう一度群衆の中にいる兵士の方を向き命令をしようとした。その機先をそれまで押し黙っていたカシュガルが遮る。
「カシアス。反逆の罪はメルシゴナ氏族すべてに問うか?」
「老カシュガル。罪はメルシゴナにしか問わぬ」
「ザウストラをはじめメルシゴナに連なる氏には罪は問わぬか宗主」
カシアスは黙ったまま頷いた。カシュガルが念を押した理由を少々いぶかしんでいる。
「宗主の言葉として二言はないな?カシアス」
カシュガルは懐から羊皮紙にを取り出すとアイザイアに渡す。
「アイザイアそこに書かれている内容を宗主に伝えよ。タイロン・ザウストラを罪に問うことは許されない」
羊皮紙にかかれた内容をアイザイアが目で追う。表情は全く変わらなかったが読み終えると小さく安堵とも受け取れる溜息を吐き出した。
「どうしたアイザイア!? 何が書かれている!」
かなり古い羊皮紙である。それをカシアスはアイザイアからひったくるように奪った。そこに書かれている文章を読むカシアスの表情が不満を現していく。
「カシアス。あの手無しの坊主はメルシゴナ家の者として育てられていたが、そこに書かれておる通りトラーガル・ザウストラの買った奴隷身分から解放された者だ。その後やつが養子として引き取っておる。たった今メルシゴナの他に罪は問わぬとお主は宣言した二言はないな?」
カシュガルは諭すようにつぶやいた。カシアスは難しい顔になりカシュガルとパミルタスを睨む。若い宗主には迷いが見て取れた。
アイザイアはカシアスの元に戻る。若い宗主の憤懣がありありと見てとれ少し疲れたように溜息をついた。アイザイアの計算ははやい、ここはカシアスが引かなければメルシゴナ氏族全員がパリスに反抗することになり外にいるメルシゴナの兵たちは一致団結することは必定である。
アイザイアは何も言わない、何も言えなかった。パミルタスの申し出はある意味カシアスに助け船を出しているとさえいえる。この荒れた場を納めるには寛容も必要になる。何も答えることが出来なくなったカシアスの後ろからのそりと近づく影があらわれる。
「ヴリン…」
カシュガルの声にアイザイアが振り向いた。パミルタスはじっとマッシュハガ当主の姿から目をはなさなかった。ヴリンの顔にはいつものように感情が読み取れない笑顔が戻っている。
「神官殿、左様か。コルピンの小僧の義兄弟とやらは解放奴隷か」
ヴリンという男の人間性の負の部分がこれでもかと出ている。バータよりもはるかに人の感情を逆なでする触手ような言葉の棘。ヴリン生来の性が隠されもされず出てきていた。
「神官殿、カシュガル老。その解放奴隷、テリデス様から許可をもらってのことかな?」
パミルタスはヴリンの底暗く、嫌悪感を覚えさせる悪意に気づいていた。ヴリンの顔に浮かび上がった薄笑いが息子のバータと瓜二つである。芝居がかった動き、声のトーン。バータが父親を真似ているのか生来から似ているのかおそらく両方の理由であろう。
「先代宗主の許可はない」
カシュガルの声は思いのほか強かった。しかしヴリンはカシュガルの言葉にかぶせるように追い立てる。
「宗家の許可なく奴隷を持つことは許されぬ。つまりその奴隷はパリスの所有の奴隷身分のままということだ。違うか?カシュガル老」
パミルタスは顔色を変えない。宗法とパリスの法を持ち出されればいかんともしがたいことは最初からわかっていたことである。カシュガルは不機嫌さを隠そうとしなかったが、何も言わずにいた。
「ザウストラの放浪者は謀反人の義兄弟であったな。宗家の許可なく奴隷を買い入れ解放するなど言語道断。その小僧は今まだパリスの市奴隷である。そういうことになるな神官殿」
ヴリンはその場にいた皆に聞こえるように言って聞かせた。押さえつけられたカズンズは憤怒に満ちた視線をヴリンに向けようとしていたが、それもかなわない。
ヴリンは息が上がったカシアスのほうに体を向けた。
「宗主が御采配を振るうまでもありませぬな」
カシアスは落ち着きをとりもどしていた。同時に面倒にもなっている。コルピン氏族とヴリンに背を向けると壇上に戻り自分の椅子に座った。
「アイザイア、後はお主に任せる。ヴリン、レイヴン後で顔を見せろ」
一息つくカシアスの周りは死体と血で彩られている。全員の首が台の上に置かれていたがカシアスは見向きもしなかった。
アイザイアがヴリンの横にたち押さえつけられたカズンズを見下ろす。
「カズンズ・コルピン。宗主に盾突いた罪軽くはないぞ。シャルキン殿、父親のあなたにも類は責任を持っていただくことになる。カズンズ、パリス宗法のもと其方に命ずる。向こう5年の兵労と宗主カシアスの許しががあるまではパリス城内での履物を禁ずる」
カズンズは血が滲み泥にまみれた顔をアイザイアに向けた。
「テルベは! タイロンはどうする気だ!」
咆哮。若いカズンズの口から放たれたそれはアイザイアの取り繕ったものを吹き飛ばす勢いがあった。一瞬怯んだがアイザイアはすぐに表情を消す。
「そのものは未開放奴隷だ。パリス所有の奴隷として扱うだけだ。貴様が気に留める事ではない!」
アイザイアはそれを告げるとシャルキンに向きなおる。平伏するシャルキンの後頭部に向かって言葉を吐いた。
「コルピン家はこの度の反乱、先陣を命じる。シャルキン殿お主はその際戦車の仕様を禁ずる。子の犯した罪を戦場で償うがよい」
アイザイアは踵を返す。ようやく気を取り戻したバータが両脇を抱えられてたっていた。
(やはり駄目だな…ヴリン様のようにはなれぬ)
パリス宗主カシアス・セリウィスの血にまみれた即位式は様々な因縁を生んだ。
メルシゴナ家と氏族に対する仕置きは即位から五日後ときまる。その間に親と子、夫と妻、兄弟や友と強制的に別れ捨てさせ、多くの悲哀が生み出された。それにあらがえばメルシゴナの縁者として罪に問われることになる。
ザウストラはメルシゴナとの婚姻を全て絶ちアセロはザウストラ家の者として身分を許される。しかしこのケイラはメルシゴナ家の生まれであり、奴隷身分に落とされることとなった。パリスのやり様に納得できぬメルシゴナ氏族の男たちの中にはそのままパリスを出ようと謀る者も多くいたが、そのほとんどが拘束されることとなる。
うそ寒い赤の月の始まりにコルピン家の兵は慌ただしく兵馬を整えている。頭をそり上げられたカズンズは半ば監禁に近い状態に置かれていたが、この戦いには参加を許されなかった。名誉ある戦も許されなかったのである。
ようやくシャルキンから許しを得たユーラが見舞いがてらカズンズの家に上がり込んでいる。カズンズは足を組まんじりともせずコルピン家の兵たちが行き来する姿を二階から見つめていた。
「メルシゴナ家の女子供は都市奴隷だそうだ」
カズンズの表情は険しい。ケイラとタイロンのことしか頭にない。
「どうするカズ?」
二人には打つ手が無くなっていた。二人が動けばマッシュハガは間違いなく捻じ込んでくるであろう。今は監視ではなくはっきりと見張りがカズンズとユーラにはついていた。何も言わずだんまりを決め込むカズンズの背中を睨みユーラは思わず息を吐いた。
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空色蜻蛉
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枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
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