36 / 38
36話・恋と性欲と愛との未来
しおりを挟む
その日――誠高校から帰宅する放課後の道は人でごった返していた。
グレイの主人公のモデルであるソウジロウの俺に会いたい全ての人間に対して、俺は笑顔で対応している。基本的に女しか来ないから、高校とは違い少し年齢の幅が広がったという認識で対応していた。ファンレターや、差し入れなどを渡す人間もおり、グレイのソウジロウのモデルである俺はスターとして立ち振る舞っていた。
「ありがとう。ありがとう、ありがとうね。写真? いいよ、いいよ。はい皆、順番を守ってね! 道行く人の邪魔にならないように!」
写真にもサインにも快く応じる。しっかりと指示をすればちゃんと守ってくれるから安心だ。そうして、エソラ旅館に逃げ出してからの学校生活は問題無く終わった。そう、俺はこの現状を楽しんでいたんだ。
※
その金曜日の夜に東堂からLINEでメッセージがあった。先週から現れていた青眼マシロのファンの連中がほぼゼロになっていたという件だ。今書いているグレイも終盤に向かっていて、夏の刊行予定らしい。これで東堂の身の安全が確保されたなら、俺は自由に動く事が出来る。
「やはり出版社が青眼マシロの件について、あまり酷くなると警察沙汰にすると告知したのがデカイな。まだ本も出して無い素人の過剰防衛って意見もあるけど、被害が出てからじゃ遅い。後はグレイの出版まで、俺も俺のやれる掃除をするだけだ」
現在、グレイを出版しないと東堂が話していた問題は出版に向けて話し合われている。俺が、どうせ書くなら最後まで書いて出版しろと言ったのが大きい。俺の部屋に入って来る金髪の女は腕組みをしながら言った。
「なにスマホ見てニヤニヤしてんのよ。誰から?」
「東堂だよ」
「ふーん。ならその程度のニヤニヤか。風祭ならもっと下がるだろうけど。でも、もう東堂さんも利用される立場だね。私達に」
「言い方が悪いな唯。俺達の利害が一致しているという事だ。これで目的が達成されたなら、ある程度の事は上手くいく。全て成功させてみせるぜ」
「当然ね。私の夢と野望の為にね」
「いや、俺の希望の為にだ」
二人は微笑んで拳を合わせた。今現在、ユーチューバーでも芸能活動もしていないが、東堂が書いた「グレイ」というネット小説の効果で俺は会いに来る人間がいるほどの人気を誇っていた。普通のアイドル芸能人のような状況にもなっていて、俺はこの全てを今後に活かそうと計画し実行していた。
このグレイフィーバーと言える状況を利用して、唯の会社を作る為の資金集めをしていたんだ。クラウドファンディングを利用し、グレイのソウジロウとデートツアーなどを企画していた。
「でも、まさか唯も俺と同じ考えだとは思わなかったぜ。流石は欲と金にまみれても満足出来ない女だ」
「当然でしょ。このピンチはチャンスよ。東堂さんに利用されたのを、総司も利用して更に循環させる。それによって産み出されるエネルギーを私が集めて事業にする。その残りカスを風祭が受ける。これで私達四人は全てハッピーになるのよ……痛っ!」
「誰が残りカスだ西村。私はお前の会社に入るかはわからない」
トイレから戻って来た風祭は唯の脇腹を突いた。二人は軽くもめているが放っておく。このクラウドファンディングシステムをするのは、唯も同じ考えがあったんだ。
会社をしたい唯。仕事を決めたい俺。ジム関連に興味のある風祭。小説家になりたい東堂。全ての利害は一致している。
だからこそ、俺はこのグレイファンディングシステムを実行に移した。その肝である小説のグレイも夏に出版される予定だから、夏までに必死にグレイのソウジロウを演じる必要がある。
「まぁ、このグレイファンディングシステムは成功確定だ。後は、これを否定する面倒な集団が現れないかどうかだ。二人共、誠高校の女子とかとケンカするなよ?」
『しないよ!』
「シンクロしたな。なら大丈夫そうだ」
今回起きた、俺と東堂の個人情報や写真をネットに上げている生徒が多く存在した問題は、誠高校全体でも取り上げられた。最近、誠高校付近に現れていた見知らぬ人間達に俺が囲まれたりしている話を聞いて、俺に対する哀れみを感じている生徒も多数現れている。
二学期から俺を独占していた唯と東堂と風祭は陰で女子達から嫌われていたが、今回の事件がキッカケでその感情に変化が現れていた。
怪我の功名というヤツかも知れない。
仲良くやってそうな俺達にも、かなりの隙があるのもわかった。そして、俺が誰とも付き合っていない事を知る女子達は、俺の特別視する三人の女達とも仲良くやっていた。たとえ嫌われていても、何の問題の無いぐらいメンタルが強い唯は言った。
「これだけの問題が解決した訳だし、私達三人の解決もしてよね? 現時点での彼女でもいいじゃん。三人で迷ってるより、まずは付き合ってみた方がいいんじゃない?」
「そうだな。お前のアドバイスには感謝するよ。俺もそれを考えていたんだ。東堂が来たらそれを発表する」
え……という顔の風祭は、一人話について行けずに困惑していた。というより、暴走している。
「待てよ赤井。それを発表したら……この関係も終わってしまうのか? 私は赤井が好きだが、このムカつく西村も好きだった。それに東堂さんも色々ヤバイと思っていたが、やはり東堂さんも好きだ。これでバラバラになるのは嫌だ!」
「おいおい風祭。今のは――」
「おい男女。何がバラバラになるのよ? 総司が誰と付き合っても、それは総司の意思よ。尊重するのが大事。それに、私達が今更離れられるの? 風祭は総司と共に私の会社で働く社員なのよ。ここで離れられたら戦力ダウンよ。そして! 私なら今回選ばれなくても最後に選ばれてみせる。それだけよ」
その金髪の女の自信満々の発言に、風祭は揺らいでいた気持ちを立て直した。そして唯を抱き締めていた。
「まさか西村がそこまで考えていたとはな。確かにそうだ。私は赤井を諦めない。そして西村ともずっと友達だ」
「キモっ! 総司助けて! 男女がキモい!」
「原因はお前の言葉だろ。愛されて幸せだな唯」
しばらく二人の二度と見られないかもしれない光景を眺めていた。そうして、俺は落ち着いた風祭にもう一度説明する。
「さっきの話は今の、現時点での彼女だ。それに漏れても今後にチャンスはあるかも知れない。だから唯の言う通り、俺の気持ちを変える事が出来る気持ちを持つのが大事だ」
「私は選ばれなくても、赤井の子を産む覚悟はある」
ヤバっ! と俺は思った。
たとえ選ばなくても、風祭を抱く約束はしてしまっているからだ。そこに唯はツッコミを入れた。
「暴走し過ぎよ男女。まだ私達は高校生なんだからゴムはしなさいよ。総司は絶対にゴムをしてセックスする事。いいわね?」
「当たり前だろ。つか、セックスとかデカイ声で言うなよ……」
この話がややこしくなりそうなタイミングで、インターホンが聞こえた。遅れて来た東堂が俺の部屋に到着する。そして、三人の女に今後の話をした。
「ここにいる三人には感謝してる。最高の仲間だと思う……でも、誰かを選ばないとならない。ずっと皆を待たせるのも問題がある」
『……』
「今の俺の気持ちはバレンタインに出すよ。バレンタインに、俺の彼女を発表する」
今の気持ちはバレンタインに答えを出すという答えを出した。今現在の気持ちを、俺はバレンタインに発表するんだ。恋と性欲と愛の三人の女の一人を、バレンタインに発表する事になった。
グレイの主人公のモデルであるソウジロウの俺に会いたい全ての人間に対して、俺は笑顔で対応している。基本的に女しか来ないから、高校とは違い少し年齢の幅が広がったという認識で対応していた。ファンレターや、差し入れなどを渡す人間もおり、グレイのソウジロウのモデルである俺はスターとして立ち振る舞っていた。
「ありがとう。ありがとう、ありがとうね。写真? いいよ、いいよ。はい皆、順番を守ってね! 道行く人の邪魔にならないように!」
写真にもサインにも快く応じる。しっかりと指示をすればちゃんと守ってくれるから安心だ。そうして、エソラ旅館に逃げ出してからの学校生活は問題無く終わった。そう、俺はこの現状を楽しんでいたんだ。
※
その金曜日の夜に東堂からLINEでメッセージがあった。先週から現れていた青眼マシロのファンの連中がほぼゼロになっていたという件だ。今書いているグレイも終盤に向かっていて、夏の刊行予定らしい。これで東堂の身の安全が確保されたなら、俺は自由に動く事が出来る。
「やはり出版社が青眼マシロの件について、あまり酷くなると警察沙汰にすると告知したのがデカイな。まだ本も出して無い素人の過剰防衛って意見もあるけど、被害が出てからじゃ遅い。後はグレイの出版まで、俺も俺のやれる掃除をするだけだ」
現在、グレイを出版しないと東堂が話していた問題は出版に向けて話し合われている。俺が、どうせ書くなら最後まで書いて出版しろと言ったのが大きい。俺の部屋に入って来る金髪の女は腕組みをしながら言った。
「なにスマホ見てニヤニヤしてんのよ。誰から?」
「東堂だよ」
「ふーん。ならその程度のニヤニヤか。風祭ならもっと下がるだろうけど。でも、もう東堂さんも利用される立場だね。私達に」
「言い方が悪いな唯。俺達の利害が一致しているという事だ。これで目的が達成されたなら、ある程度の事は上手くいく。全て成功させてみせるぜ」
「当然ね。私の夢と野望の為にね」
「いや、俺の希望の為にだ」
二人は微笑んで拳を合わせた。今現在、ユーチューバーでも芸能活動もしていないが、東堂が書いた「グレイ」というネット小説の効果で俺は会いに来る人間がいるほどの人気を誇っていた。普通のアイドル芸能人のような状況にもなっていて、俺はこの全てを今後に活かそうと計画し実行していた。
このグレイフィーバーと言える状況を利用して、唯の会社を作る為の資金集めをしていたんだ。クラウドファンディングを利用し、グレイのソウジロウとデートツアーなどを企画していた。
「でも、まさか唯も俺と同じ考えだとは思わなかったぜ。流石は欲と金にまみれても満足出来ない女だ」
「当然でしょ。このピンチはチャンスよ。東堂さんに利用されたのを、総司も利用して更に循環させる。それによって産み出されるエネルギーを私が集めて事業にする。その残りカスを風祭が受ける。これで私達四人は全てハッピーになるのよ……痛っ!」
「誰が残りカスだ西村。私はお前の会社に入るかはわからない」
トイレから戻って来た風祭は唯の脇腹を突いた。二人は軽くもめているが放っておく。このクラウドファンディングシステムをするのは、唯も同じ考えがあったんだ。
会社をしたい唯。仕事を決めたい俺。ジム関連に興味のある風祭。小説家になりたい東堂。全ての利害は一致している。
だからこそ、俺はこのグレイファンディングシステムを実行に移した。その肝である小説のグレイも夏に出版される予定だから、夏までに必死にグレイのソウジロウを演じる必要がある。
「まぁ、このグレイファンディングシステムは成功確定だ。後は、これを否定する面倒な集団が現れないかどうかだ。二人共、誠高校の女子とかとケンカするなよ?」
『しないよ!』
「シンクロしたな。なら大丈夫そうだ」
今回起きた、俺と東堂の個人情報や写真をネットに上げている生徒が多く存在した問題は、誠高校全体でも取り上げられた。最近、誠高校付近に現れていた見知らぬ人間達に俺が囲まれたりしている話を聞いて、俺に対する哀れみを感じている生徒も多数現れている。
二学期から俺を独占していた唯と東堂と風祭は陰で女子達から嫌われていたが、今回の事件がキッカケでその感情に変化が現れていた。
怪我の功名というヤツかも知れない。
仲良くやってそうな俺達にも、かなりの隙があるのもわかった。そして、俺が誰とも付き合っていない事を知る女子達は、俺の特別視する三人の女達とも仲良くやっていた。たとえ嫌われていても、何の問題の無いぐらいメンタルが強い唯は言った。
「これだけの問題が解決した訳だし、私達三人の解決もしてよね? 現時点での彼女でもいいじゃん。三人で迷ってるより、まずは付き合ってみた方がいいんじゃない?」
「そうだな。お前のアドバイスには感謝するよ。俺もそれを考えていたんだ。東堂が来たらそれを発表する」
え……という顔の風祭は、一人話について行けずに困惑していた。というより、暴走している。
「待てよ赤井。それを発表したら……この関係も終わってしまうのか? 私は赤井が好きだが、このムカつく西村も好きだった。それに東堂さんも色々ヤバイと思っていたが、やはり東堂さんも好きだ。これでバラバラになるのは嫌だ!」
「おいおい風祭。今のは――」
「おい男女。何がバラバラになるのよ? 総司が誰と付き合っても、それは総司の意思よ。尊重するのが大事。それに、私達が今更離れられるの? 風祭は総司と共に私の会社で働く社員なのよ。ここで離れられたら戦力ダウンよ。そして! 私なら今回選ばれなくても最後に選ばれてみせる。それだけよ」
その金髪の女の自信満々の発言に、風祭は揺らいでいた気持ちを立て直した。そして唯を抱き締めていた。
「まさか西村がそこまで考えていたとはな。確かにそうだ。私は赤井を諦めない。そして西村ともずっと友達だ」
「キモっ! 総司助けて! 男女がキモい!」
「原因はお前の言葉だろ。愛されて幸せだな唯」
しばらく二人の二度と見られないかもしれない光景を眺めていた。そうして、俺は落ち着いた風祭にもう一度説明する。
「さっきの話は今の、現時点での彼女だ。それに漏れても今後にチャンスはあるかも知れない。だから唯の言う通り、俺の気持ちを変える事が出来る気持ちを持つのが大事だ」
「私は選ばれなくても、赤井の子を産む覚悟はある」
ヤバっ! と俺は思った。
たとえ選ばなくても、風祭を抱く約束はしてしまっているからだ。そこに唯はツッコミを入れた。
「暴走し過ぎよ男女。まだ私達は高校生なんだからゴムはしなさいよ。総司は絶対にゴムをしてセックスする事。いいわね?」
「当たり前だろ。つか、セックスとかデカイ声で言うなよ……」
この話がややこしくなりそうなタイミングで、インターホンが聞こえた。遅れて来た東堂が俺の部屋に到着する。そして、三人の女に今後の話をした。
「ここにいる三人には感謝してる。最高の仲間だと思う……でも、誰かを選ばないとならない。ずっと皆を待たせるのも問題がある」
『……』
「今の俺の気持ちはバレンタインに出すよ。バレンタインに、俺の彼女を発表する」
今の気持ちはバレンタインに答えを出すという答えを出した。今現在の気持ちを、俺はバレンタインに発表するんだ。恋と性欲と愛の三人の女の一人を、バレンタインに発表する事になった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
彼女の母は蜜の味
緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる