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25話・クリスマスを誰と過ごすのか迷う総司
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現在、グレイの石田勇が寝泊まりしているアパートに俺はいた。ここはこのアパートの管理人でもある寺の一部でもある。本来は勇がやる寺の掃除などもしているから、ここも俺のテリトリーの一つでもあった。いつもならここでリラックスしているが、今日はそうもいかない。
そんな俺を気遣ってか、寝起きの勇は茶色の髪をクシでとかしながら話す。
「今日は総司もグレイを卒業して、三人の女の子の誰とクリスマスを過ごすの? という話をするんだよね。高校入学の時の総司とは大違いだ」
「人は何色にも変わるという事だ。これは俺も予想外だった。全ては唯の転校から始まった事だ。俺はその流れの先に流れ着いてここにいる」
「なら、場所はここで良かったのかい? クリアの赤井総司君」
「あぁ。ここはグレイゾーン。中立地帯だ。唯の発案した場所なら何かある可能性があるからな。それに対して出来る事は集まる場所は俺が決めるという対応。お前には悪いが、日頃の寺の掃除の借りだと思ってくれ。早起きが苦手な勇には俺が必要だろう」
「なら、僕もクリスマスデート候補として立候補しようかな」
「バカ言え。お前はもうバイト先の客の女達で予約済みだろ。本当は男とデートしたい気持ちはあるだろうが」
「そうだねぇ。バイトが安定してお客さんに好かれているのは嬉しいけど、僕にも本命の彼氏が欲しい気持ちもある。けど、楽しい会になればいいね。クリスマスは二日間。三人の内の一人は仲間外れになるわけだから」
アクビをする勇は着替えて顔を洗いに行った。もうすぐ昼の12時だ。予定ではこの時間に集まる。そろそろ三人の内の誰かが来る頃だろう。
(勇はこの先、どういう男と付き合うのかは知らないが応援はしよう。誠高校に入ってからずっと俺を支えてくれたからな。勇の気持ちには答えられないが、俺は俺の道を行くよ。グレイではない道を……)
そう、殺風景な部屋で考えていると、顔を洗いに行った勇が戻って来た。
「どうやら、お姫様達が登場のようだよ」
「お姫様……まさか、全員同時にか?」
「キッチンの窓からあの三人の姿が見えたよ。西村さんが誰かが抜け駆けしないようにという案の気がする」
「それはあり得るな。ま、都合がいいと言えば都合がいいか」
「僕はお茶とお菓子を持って来るよ。総司が出ておいて」
「おう、任せた」
そうして、俺は一緒に来た唯と東堂と風祭を部屋に入れた。三人の女の香りによって、ビックリするぐらいの部屋の空気の変化に微笑んでしまう。この殺風景な部屋も空気が彩られたような感じがするからだ。ワインレッドのコートを着ていて、メイクも学校以上に派手になっている唯は勇の部屋を見た感想を告げた。
「石田君の部屋綺麗だね。意外にも殺風景……まさか総司に掃除させてる?」
「させてるっていうか、勝手にしてくれる。こんな掃除に細かくて、少し性格曲がってて、でも真っ直ぐな感じの男は珍しいよね。こんな男がみんな好きなのかい?」
『うん』
と頷く三人の姿に少し照れる。三人の格好を見ると、東堂は長めのスカートで風祭はミニスカート。唯と東堂はいつもの感じであるけど、やはり風祭はかなり気合いを入れてしまっている。風紀委員会の時とのギャップが激しい。
そうして、この二学期からの誠高校での話で盛り上がった。唯の転校から始まり、修学旅行や文化祭での出来事などを回想した。一学期のグレイ時代の話も風祭や勇がして、そんな事もあったなー……と過去を懐かしんでいた。
そして、話は修学旅行の時に明らかになった東堂の小説の話になる。
「小説? 書いてるよ。私はネット小説派だから」
「東堂はネットで投稿してるのか。それは誰でも読めるのか?」
「読めるよ。読書は会員登録不要だから。いつか、みんなにも読んでもらいたいと努力中」
あえて、そのサイトやペンネームは聞かなかった。ここにいる全員は東堂が俺をネタにしようとした事を知っているからだ。東堂がいつか読んで欲しいと言っているなら、その時期を待つ事にした。すると、風祭がしびれを切らしたのか今日の本題を話し出した。
「東堂さんはクリスマスの予定はどうなっている? 私と西村は両方とも空いているが、東堂さんは?」
「クリスマスは私は予定があるから二人に譲るよ。私はクリスマスの後ならいい」
「一日は空かないという事だな?」
「うん。午後から二、三時間は予定があってね。出版社の人との話し合いだから」
『出版社!?』
その東堂の言葉に全員は反応した。流石に、そこまでの人気小説なのか? という気持ちがあったからだ。初めに質問をした風祭は話す気が失せたかのように止まっていた。それを察する唯は言う。
「私は文字だけじゃ疲れるから小説は読まないな。どうせ男女も読まない派でしょ?」
「たまに読む派だ。流行りの恋愛物は読んだりする」
「うは! アンタが恋愛小説……ストーカーに参考になる事あんの?」
「恋愛があっても無くても、小説には人生のヒントがあると思うよ西村さん」
と、東堂は風祭と小説をフォローする。そして、唯は自分の今後を交えて語る。
「男女は総司と付き合って何か目的はあるの? 私は会社のパートナー。東堂さんは小説のネタ。アンタは何なのよ?」
「一緒に生活して、一緒に仕事をする事だ。私は赤井と同じ場所で働きたい」
「ほんとストーカーだわ男女。総司は私の会社で働くから、男女は私の奴隷って事になるのね。お手」
「お前は赤井を犬にしたいのか?」
「どう考えてもアンタに言ってるのよ! ホント使えないわ男女」
「金ピカゴキブリ女の意思など知らん」
「はいはい、クリスマスの予定は譲るんだからケンカしない」
暴れそうになる二人を東堂はなだめた。いつの間にか、こういう時に活躍する勇の姿は消えている。
(勇の奴……逃げたか?)
トイレに行ったまま姿を消していた。
でも、今は勇がいなくても問題は無い。
冷静に俺はこの三人に対して答えを出そうと思っているからだ。
すると、思い立ったように唯は東堂に言った。
「東堂さんに言っておきたい事があったの。小説に私達をネタにする以上、必要であれば東堂さんを利用させてもらうからね?」
「いいよ。私達は持ちつ持たれつで行けばいいと思う。ライバルでも赤井君の輪の中で輝く存在であるのが大事だから」
「ほら、男女も言っておきなよ。私の会社に入る総司といたいなら、私の言う事は絶対」
「何が絶対だ。そもそも会社もまだ存在してないし、実現するのは十年はかかるだろう?」
「そんな時間はかからない予定よ。そもそも私の会社に入れば、総司といれるのよ? これってかなり嬉しい話だと思うけど?」
「ライバルを入社させる必要があるのか?」
「ライバルだから入社させるのよ。私はライバルに勝たないとトップにはなれないから」
唯はどんなライバルがいようとも、それを跳ね除け勝ってみせる自信があるようだ。東堂にも風祭にも絶対に負けないという気迫に満ちていた。こういう点が唯の良いところだと思う。これが唯に恋をした理由だろう。
そして、ホワイトチョコを食べる東堂は微笑んだ。
「やっぱ西村さんは強いね。それに風祭さんも意思が硬い。私も私の人生に負けないようにしなくちゃ!」
何かこの三人は敵対というよりも、いい感じのライバル関係になっている。なんだかんだで、唯も風祭も認めているし三人の相性は噛み合っていないようで噛み合うのかも知れない。
相変わらず三人の女達はわちゃわちゃしてるが、それも悪くは無い光景だった。俺がグレイとレッドの中間地点の感情を安定させる為の良い薬だ。
恋と性欲と愛の区別はこの三人の女でつくと思う。その区別がつけばグレイもレッドも関係無い、新しい俺の色が生まれる筈だ。
そして、俺はその三人の女達に告げる。
「そろそろ今日の本題の答えを出そうと思う。俺がクリスマスを誰と過ごすのか? という今日のメインテーマの答えの発表だ」
すると、三人の女子は俺の答えをじっと待った。
「俺の答えは……」
ゴクリ……という全員が息を飲む音が聞こえるような気がした。そうして、クリスマスを過ごす人間の話し合いは幕を閉じた。
そんな俺を気遣ってか、寝起きの勇は茶色の髪をクシでとかしながら話す。
「今日は総司もグレイを卒業して、三人の女の子の誰とクリスマスを過ごすの? という話をするんだよね。高校入学の時の総司とは大違いだ」
「人は何色にも変わるという事だ。これは俺も予想外だった。全ては唯の転校から始まった事だ。俺はその流れの先に流れ着いてここにいる」
「なら、場所はここで良かったのかい? クリアの赤井総司君」
「あぁ。ここはグレイゾーン。中立地帯だ。唯の発案した場所なら何かある可能性があるからな。それに対して出来る事は集まる場所は俺が決めるという対応。お前には悪いが、日頃の寺の掃除の借りだと思ってくれ。早起きが苦手な勇には俺が必要だろう」
「なら、僕もクリスマスデート候補として立候補しようかな」
「バカ言え。お前はもうバイト先の客の女達で予約済みだろ。本当は男とデートしたい気持ちはあるだろうが」
「そうだねぇ。バイトが安定してお客さんに好かれているのは嬉しいけど、僕にも本命の彼氏が欲しい気持ちもある。けど、楽しい会になればいいね。クリスマスは二日間。三人の内の一人は仲間外れになるわけだから」
アクビをする勇は着替えて顔を洗いに行った。もうすぐ昼の12時だ。予定ではこの時間に集まる。そろそろ三人の内の誰かが来る頃だろう。
(勇はこの先、どういう男と付き合うのかは知らないが応援はしよう。誠高校に入ってからずっと俺を支えてくれたからな。勇の気持ちには答えられないが、俺は俺の道を行くよ。グレイではない道を……)
そう、殺風景な部屋で考えていると、顔を洗いに行った勇が戻って来た。
「どうやら、お姫様達が登場のようだよ」
「お姫様……まさか、全員同時にか?」
「キッチンの窓からあの三人の姿が見えたよ。西村さんが誰かが抜け駆けしないようにという案の気がする」
「それはあり得るな。ま、都合がいいと言えば都合がいいか」
「僕はお茶とお菓子を持って来るよ。総司が出ておいて」
「おう、任せた」
そうして、俺は一緒に来た唯と東堂と風祭を部屋に入れた。三人の女の香りによって、ビックリするぐらいの部屋の空気の変化に微笑んでしまう。この殺風景な部屋も空気が彩られたような感じがするからだ。ワインレッドのコートを着ていて、メイクも学校以上に派手になっている唯は勇の部屋を見た感想を告げた。
「石田君の部屋綺麗だね。意外にも殺風景……まさか総司に掃除させてる?」
「させてるっていうか、勝手にしてくれる。こんな掃除に細かくて、少し性格曲がってて、でも真っ直ぐな感じの男は珍しいよね。こんな男がみんな好きなのかい?」
『うん』
と頷く三人の姿に少し照れる。三人の格好を見ると、東堂は長めのスカートで風祭はミニスカート。唯と東堂はいつもの感じであるけど、やはり風祭はかなり気合いを入れてしまっている。風紀委員会の時とのギャップが激しい。
そうして、この二学期からの誠高校での話で盛り上がった。唯の転校から始まり、修学旅行や文化祭での出来事などを回想した。一学期のグレイ時代の話も風祭や勇がして、そんな事もあったなー……と過去を懐かしんでいた。
そして、話は修学旅行の時に明らかになった東堂の小説の話になる。
「小説? 書いてるよ。私はネット小説派だから」
「東堂はネットで投稿してるのか。それは誰でも読めるのか?」
「読めるよ。読書は会員登録不要だから。いつか、みんなにも読んでもらいたいと努力中」
あえて、そのサイトやペンネームは聞かなかった。ここにいる全員は東堂が俺をネタにしようとした事を知っているからだ。東堂がいつか読んで欲しいと言っているなら、その時期を待つ事にした。すると、風祭がしびれを切らしたのか今日の本題を話し出した。
「東堂さんはクリスマスの予定はどうなっている? 私と西村は両方とも空いているが、東堂さんは?」
「クリスマスは私は予定があるから二人に譲るよ。私はクリスマスの後ならいい」
「一日は空かないという事だな?」
「うん。午後から二、三時間は予定があってね。出版社の人との話し合いだから」
『出版社!?』
その東堂の言葉に全員は反応した。流石に、そこまでの人気小説なのか? という気持ちがあったからだ。初めに質問をした風祭は話す気が失せたかのように止まっていた。それを察する唯は言う。
「私は文字だけじゃ疲れるから小説は読まないな。どうせ男女も読まない派でしょ?」
「たまに読む派だ。流行りの恋愛物は読んだりする」
「うは! アンタが恋愛小説……ストーカーに参考になる事あんの?」
「恋愛があっても無くても、小説には人生のヒントがあると思うよ西村さん」
と、東堂は風祭と小説をフォローする。そして、唯は自分の今後を交えて語る。
「男女は総司と付き合って何か目的はあるの? 私は会社のパートナー。東堂さんは小説のネタ。アンタは何なのよ?」
「一緒に生活して、一緒に仕事をする事だ。私は赤井と同じ場所で働きたい」
「ほんとストーカーだわ男女。総司は私の会社で働くから、男女は私の奴隷って事になるのね。お手」
「お前は赤井を犬にしたいのか?」
「どう考えてもアンタに言ってるのよ! ホント使えないわ男女」
「金ピカゴキブリ女の意思など知らん」
「はいはい、クリスマスの予定は譲るんだからケンカしない」
暴れそうになる二人を東堂はなだめた。いつの間にか、こういう時に活躍する勇の姿は消えている。
(勇の奴……逃げたか?)
トイレに行ったまま姿を消していた。
でも、今は勇がいなくても問題は無い。
冷静に俺はこの三人に対して答えを出そうと思っているからだ。
すると、思い立ったように唯は東堂に言った。
「東堂さんに言っておきたい事があったの。小説に私達をネタにする以上、必要であれば東堂さんを利用させてもらうからね?」
「いいよ。私達は持ちつ持たれつで行けばいいと思う。ライバルでも赤井君の輪の中で輝く存在であるのが大事だから」
「ほら、男女も言っておきなよ。私の会社に入る総司といたいなら、私の言う事は絶対」
「何が絶対だ。そもそも会社もまだ存在してないし、実現するのは十年はかかるだろう?」
「そんな時間はかからない予定よ。そもそも私の会社に入れば、総司といれるのよ? これってかなり嬉しい話だと思うけど?」
「ライバルを入社させる必要があるのか?」
「ライバルだから入社させるのよ。私はライバルに勝たないとトップにはなれないから」
唯はどんなライバルがいようとも、それを跳ね除け勝ってみせる自信があるようだ。東堂にも風祭にも絶対に負けないという気迫に満ちていた。こういう点が唯の良いところだと思う。これが唯に恋をした理由だろう。
そして、ホワイトチョコを食べる東堂は微笑んだ。
「やっぱ西村さんは強いね。それに風祭さんも意思が硬い。私も私の人生に負けないようにしなくちゃ!」
何かこの三人は敵対というよりも、いい感じのライバル関係になっている。なんだかんだで、唯も風祭も認めているし三人の相性は噛み合っていないようで噛み合うのかも知れない。
相変わらず三人の女達はわちゃわちゃしてるが、それも悪くは無い光景だった。俺がグレイとレッドの中間地点の感情を安定させる為の良い薬だ。
恋と性欲と愛の区別はこの三人の女でつくと思う。その区別がつけばグレイもレッドも関係無い、新しい俺の色が生まれる筈だ。
そして、俺はその三人の女達に告げる。
「そろそろ今日の本題の答えを出そうと思う。俺がクリスマスを誰と過ごすのか? という今日のメインテーマの答えの発表だ」
すると、三人の女子は俺の答えをじっと待った。
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