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三章・チョウシュウ王子との婚約破棄編
39話・海運王国のチョウシュウ王子がやって来ました
しおりを挟む海運王国のチョウシュウ王子が、百人以上の家臣団と共に訪れました。チョウシュウは青を基調とした制服を着ており、統率の取れた動きでバクーフの国境まで辿り着いています。今回の人数は、婚約ゲストとしては最大の人数です。今までは多くても精鋭部隊が十数人だったのに……。
どうやら、チョウシュウ王子は自国の最新軍備などを演習などで見せたいようです。海運王国なので他国との外交が盛んであり、海で繋がっていないバクーフ王国との大きな商談のチャンスとも思ったようですね。
バクーフ王国には水の資源としては、近くを流れる川からの水を王国内に供給しています。資源として最大なのが、近くの山から流れる水が溢れた剣王の湖があります。かつて、勇者が使った魔王を倒す為の剣が封印された湖とも言われていますが、海底を探してもそれらしいモノは無いのでただの伝説となっています。
それよりも、今はチョウシュウ王国の人間の宿の手配などが優先です。あらかじめ知っていたとは言え、やはり人数が多い為にその手配も厄介です。バクーフ王国の人間はチョウシュウ王国の人間達を指定された宿屋に迎え入れています。そして、チョウシュウ王子は私が王宮まで案内する事になっています。
「今日のタロットカードの占いは月の正位置。焦りやモヤモヤがあり、行き先不透明な時期という事。それはヒロインモードのスズカの問題と、ニートさんの勇者関係者疑惑。そして、チョウシュウ王子を攻略しないといけないという三竦みの戦いをしないといけない心がタロットとして現れているのね……」
そして、青い制服に身を包むぐるぐるメガネの不健康そうな青年が歩いて来ます。前髪を下ろしている青い髪。青の学ランという制服を着ていて、あの服がチョウシュウ王国の制服なのね。
(あの丸いマジックでぐるぐるを書いたような、ぐるぐるメガネは何なの? ギャグなの? この王子はイケメン系キャラなのかわからないわね。とにかくぐるぐるメガネはダサい!)
そして、私はふとした時に笑ってしまいそうな、ぐるぐるメガネをかけたチョウシュウ王子に挨拶をしたの。
「初めましてチョウシュウ王子。私はバクーフ王国のクエストクラスのアヤカ。ジョブは悪役令嬢の魔法使いですわ」
「なるほど。小生はチョウシュウ王国王子。これより七日間。私の身辺警護をよろしくお願いします。それにしても、悪役令嬢というレアジョブは気になる。データで欲しいよ」
「あらチョウシュウ王子。私の悪役令嬢なんてそこまで凄いジョブでは無いですよ」
「何事も自信過剰が一番」
と、自信過剰な事を良しとする王子のようね。見た目のイメージとは違う王子だわ。しかも、自分のぐるぐるメガネの角を右手の人差し指で軽くタッチしながら呟いていたの。
「オンリーマジック・ブレインマッスル」
いきなり、チョウシュウ王子は王族の血筋であるオンリーマジックを発動させたわ。後で受けた説明によると、オンリーマジックとは脳に記憶した膨大なデータをメガネに映像として映し出す。相手の心音や、心拍数もわかる。相手の身体状況・精神状況をチェックして相手の今を知る事が出来るデータ重視のオンリーマジックのようね。でも、ここは注意が必要。
「チョウシュウ王子。今はデータ採取のような事をされても困ります。特に私への過剰なデータ採取はバクーフ王より禁じられているはずですが?」
「なるほど。確かにそうだ。すまないね。それでは自信過剰にバクーフ王に会うとしよう。小生はチョウシュウ王国王子として全てのデータを探求して見せるよ」
自信過剰なのかよくわからないチョウシュウ王子を連れて、私はバクーフ王宮に向かったの。今回の王子は、どこか掴み所が無いわね。でも、どこかに突破口を見つけないとならないわ。
※
バクーフ王宮のゲストルームにて、チョウシュウ王子はバクーフ王と面会しました。そして、チョウシュウ王国の七日間の活動やスズカ姫を含めた貴族令嬢達との会食パーティーなどのスケジュールを聞いています。
そして、一通りのスケジュールを把握したチョウシュウ王子は早速スズカとの面会を求めました。私も警護人として二人の面会に立ち会っています。
「なるほど。君がスズカ姫か。髪は茶色で長く、身体のスタイルも素晴らしいラインだ。非の打ち所がない美少女という君と婚約出来れば、我がチョウシュウ王国は更なる海運王国になれる事間違い無しだよ。小生も自信過剰になれるね」
「お褒め頂きありがとうございますチョウシュウ王子。私はバクーフ王の十番目の娘のスズカです。七日間の間よろしくお願いします。勿論、それ以降も」
やはり、ヒロインモードのスズカは少し変わった人間でも丁寧に対応しているわ。気難しいような、とっつきやすいような感じの王子に対してスズカがどう出るか見ものね。
すると、チョウシュウ王子は早速オンリーマジックのブレインマッスルを使っていたわ。右手の人差し指でぐるぐるメガネの横をタッチして、スズカの心拍数や呼吸などを測って身体状況・精神状況をチェックしてるわ。なるほど、なるほどとチョウシュウ王子は一人で納得してるわ。少し怖いわね。
「ほほーう。スズカ姫は私を好きな気持ちと、嫌いな気持ちが入り乱れる心拍数だ。これは謎です。謎めいている」
チョウシュウ王子はスズカに興味を示したわね。ヒロインモードと、ノーマルモードの二つの心の矛盾を言い当てた。
(相反する二つの心を見透かすなんて、ブレインマッスルは凄いオンリーマジックね。欲しい魔法だわ)
そうして、チョウシュウ王子はニコニコしてるスズカと私の心まで言い当てたの。
「二人共、この私にドキドキしている感情があるように思える。しかし二人の反応は好いているでも、恋をしているでも無い反応。これは興味深い」
スズカは特に発言もせずチョウシュウ王子の言葉を肯定するように微笑んでいる。そして、青い髪の王子は更に踏み込んでいた。
「それにしても……スズカ姫は逆の気持ちがあるとしか思えないな。これが人間の矛盾という奴なのか! なるほど! 自信過剰に解明したいね! 」
と、高らかに宣言していたわ。
「でも……小生に魅力が無いという事か!王子なのに!」
と、一人でへこんでいたわ。
そして、チョウシュウ王子はこの出来事を自分自身で解決してくれたの。
「……ならば、二人と関係する他ないな。私は君達二人をチェックさせてもらうよ。自信過剰にね!」
よくわからない……よくわからないけど、これでスズカと同じスタート地点に立てたわ。何度も言うけど、よくわからないけどね。
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