悪役令嬢はGL展開を回避する為に婚約破棄を目指します!

鬼京雅

文字の大きさ
上 下
36 / 53
二章・トサ王子との婚約破棄編

36話・トサ王子が帰還したので反省会です

しおりを挟む

 トサ王子が帰還してから翌日の夜ーー。
 私はスズカの私室にいました。そこで今回のトサ王子の婚約破棄での反省会をします。ヒロインモードが解除されたスズカは気だるそうに水をガブガブ飲んでます。水太りしろとも思います。

 月明かりがスズカの私室に射し込んでいて、スズカの美しい横顔を照らしている。けど、スズカの顔は美しくも歪んでいたの。やはりヒロインモードの消耗は激しいようね。

「それでは今回の婚約破棄に乾杯!」

「乾杯。という割にはお酒じゃないじゃない」

「だってまだお酒なんて飲み慣れてないし、私達はジュースでしょ。スズカは今は水の方が飲みたいんだろうけどね」

「身体と心を整えるなら水が一番なのよ。今回も婚約破棄が成功したのは素晴らしい結果だわ。馬レースという展開だったけど、上手く勝てて良かった。私も乗馬マスターになれたし」

「どうやらヒロインモードの状態で得たスキルもちゃんと受け継がれているのね。良かった、良かった」

「婚約破棄は上手くいったけど、ドラゴンが飛来した時にドラゴンエッグをスララが食べてしまいドラゴンの羽が生えてるのよね?」

「あー……そうね。ニートさんとドラゴンエッグを巡る探索してたらドラゴン本体と出くわして、子供が生まれるドラゴンエッグを見つけたの。それをスララがドラゴンに食べていいと言われたらしく、食べたようよ。普通食べないけどね」

「……確かに食べたないわよ。スララもアホね。それにニートさんとドラゴンか。色々あるわね」

 スララがドラゴンエッグを食べた事を話したの。しかも、赤いドラゴンベビーが生まれる方のドラゴンエッグをね。やっぱりスズカも呆れていたわ。

「食べてしまった事は仕方ないわね。でもスララの身体に変化が起こってるなら、毎日ちゃんと様子を見た方がいいわ。もう羽が生えてるって事は下手したらドラゴンになる可能性があるわよ。スライムなのにね」

「ははは。ドラゴンになったら従者じゃなくなるから困るな。スララは役に立ってくれているしね」

「とりあえずスララは経過観察ね。ニートさんに一応見せておいた方がいいわ」

「何でニートさんに? ニートさんてドラゴンに詳しいの?」

「元の飼い主というだけよ。それより、ドラゴンが現れたという事は魔王軍の動きが活発になっているという事よ。魔王軍の本拠地はジパング大陸の海の向こうにあるから動けばわかりやすいけど、少数の先遣隊が来てるかも知れないわ」

 私は異世界ジパングにおいて、破滅と混沌を好む魔王軍の話を聞いたわ。クエストクラスとして、国防の為にも勇者様の為にも魔王軍とは戦って勝たないとならない。

「魔王軍が動いている……。それじゃ、このバクーフ王国にも魔王軍が来てる可能性もあると言う事ね。ヤバイじゃない」

「それの対処がクエストクラスでしょ? 婚約破棄の方が楽かしら?」

「いや、多分魔王軍の壊滅の方が楽だと思う。敵はただ倒せばいいけど、人間関係はそうはいかないからね。魔王が来ても私は負ける気がしないもの」

「言うじゃないアヤカ。タフになってるわね」

「もう二回も王子との婚約破棄してるし、ドラゴンとも戦いそうになったからね。勇者様を見つける前に魔王を倒してもいい気分だわ」

「アハハハッ! 本当面白いわアヤカ。私は最高の人間を悪役令嬢にしたようね」

 スズカは涙目になって笑っているわ。
 でも、私はあまり面白くないの。
 このスズカともまた新しい王子が婚約しに来れば一時的にお別れだからね。
 だからこそ、今度は独り言じゃなくてちゃんと言うわ。

「そういえば、スズカのヒロインモードではないモードがあったわね。スズカ自身の人格が変わらないプリンセスモード。これを維持して持ち堪えれば……自我が消えるヒロインモードの呪いにも対抗出来るんじゃないの?」

「……そんな簡単にはいかないわよ。だから「呪い」なんだから」

「スズカは諦めてない? 実際、今の状態なら五年近くも婚約破棄なんてやってられる体力も精神力もないでしょう? なら、自分で呪いを解くしか無いわよ? わかってるの?」

「わかってるわよ。でもこの王族の娘にあるヒロインモードの呪いは生易しいモノじゃない。今の私の疲労を見ればわかるでしょ?」

「だからって諦めていてもしょうがないでしょうが!」

 見つめ合う二人の視線は火花を上げると思いきや、スズカはこの挑発に反応しない。この諦めムードのスズカは気に入らないわ。

 この女こそ悪役令嬢に向いてる女なんだから。この女に悪役令嬢をやって欲しいぐらい向いてると思うわ。

 イラつく私を牽制するようにスズカは窓の前に立ち、外の月を見ながら言うわ。前回の婚約破棄より心なしかその背中も小さく感じたの。

「次の王子は半月後に訪れる予定だわ。今回はトサ王子のように早く到着する事は無いと思う。チョウシュウ王国は規律重視の国だからね」

「次の王子はチョウシュウ王国の王子か。確かチョウシュウ王国は海運王国よね? 漁業が盛んな国だったはず」

「その通り。チョウシュウ王国は海運王国よ。他国との交流も活発で、魔族とも交流があるとされてる国だわ。軍備も最新鋭らしいしね」

「チョウシュウ王国……面白そうね。でも、私はこの半月の間に勇者様探しをするわよ。トサ王子が掴んだ手がかりから探し出してみせるわ。私は私の呪いを超えてみせる。スズカも自分の呪いを超えるよう頑張ってね。早く自由になりたいなら」

「……」

 その言葉に、スズカは答えなかった。私も返事は期待してなかったからいいの。否応無く、次の婚約破棄でぶつかる壁だと思うから。

 そうして、私は勇者様探しをして「トゥルーラブ」を見つける為の努力をする。私は私の呪いを解きたいからね。

 いずれ復活する魔王討伐パーティーに参加して、勇者様の為に活躍する夢があるから!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

処理中です...