悪役令嬢はGL展開を回避する為に婚約破棄を目指します!

鬼京雅

文字の大きさ
上 下
20 / 53
一章・アイヅ王子との婚約破棄編

20話・アイヅ王子とお別れです。

しおりを挟む

 アイヅ王子婚約者発表パーティーの翌日、アイヅ王子と家臣団は自国に帰還する為に朝から王宮を出たの。

 今回は何も出来なかった婚約者選びだったけど、アイヅ王子は自分の未熟さを知ったので、これから強くなるとバクーフ王に宣言していたわ。

 おそらく、アイヅ王子はかなり強くなると思う。一夜にして一皮剥けたような強い眼差しの、目標に突き進んで行く猛者のような顔つきになっているからね。


 バクーフ王国の国境付近まで私は見送る事になっているので、クエストクラスとしてアイヅ王子達を護衛したの。

 そして、私もアイヅ王子とお別れの時が来たわ。

「ここまでありがとうアヤカ。僕も自分自身の無力さを知ったよ。この国のクエストクラスにまんまとやられた。良いクエストクラスをお持ちだバクーフ王国は」

「でしょ? 私はバクーフだけじゃなく異世界ジパング最強のクエストクラスになって、勇者様のパーティーに入るのが夢だからね」

「ほう? 勇者のパーティーか。魔王が復活したら君が勇者の相棒になるのも面白いね。ちなみに、他のクエストクラスは何をしているんだい?」

「詳しくは知らないけど、魔法学園の講師や魔法の研究者。ダンジョンを巡ってお宝を探していたり、海底に面白い物が無いか? と泳いでいる人がいるようだわ。会った事は無いから本当かは知らないけどね」

「なるほど。どこの国もクエストクラスとは変わっている存在なのだね。本当に困ったものだよクエストクラスという奴は」

「それ、私に言ってる? 私は王子の事好きなのにね」

「……そうやって困る事を言うから、僕もおかしくなってしまったんだよ。スズカには悪い事をしたかも知れないが、今の僕は未熟だから婚約破棄をして良かったと思うよ。僕は自国防衛を君に任せようとしていた愚か者だったからね」

「それを聞いたらスズカも喜ぶわ。後で伝えとくよ」

「スズカの事、よろしく頼むよアヤカ」

「えぇ、任せときなさい。私はクエストクラスとしてはペイペイだけど、クエストクラスの名誉と誇りは強く持ってるから、スズカもバクーフも支えるわよ」

「流石は我が母上に似た女だ。心が強い」

 フフフと私達は微笑む。
 すると、近くの地面に咲いていた枯れた花に触れるアイヅ王子はオンリーマジック・リボーンを使って花を蘇らせたわ。その花を渡されたので、私は満面の笑みで受け取ったわ。

 突き返される可能性も感じていたようだったから、あえて受け取ったわ。悪役令嬢だけどね。

「……というわけで、今回の婚約は破棄させてもらう。またチャンスがあれば男を磨いてスズカの元に戻ってくるさ。さらばだクエストクラス・悪役令嬢のアヤカ」

「さよならアイヅ王子。また出会うのを楽しみにしているわ」

「やはりアヤカを狙うのはやめられそうにないかもね」

「え?」

 そうして、初の婚約破棄は無事に成功したの。アイヅ王子は最後に私にちょっとだけドキッとする事を言い残して去って行ったわ。

「アイヅ王子……あの男、かなり強くなるわね。さ、私も帰ろうかしら」

「ハヒ! アヤカハウスへ帰りましょうアヤカ殿!」

「スララ? 付いて来てたの?」

 いきなりスライムのスララは現れたわ。ピョンピョン跳ねながら話している。

「ハヒ! 拙者はアヤカ殿の侍従ですから。ビッグサイズになるので、アヤカ殿の体重を教えて下さい。このビッグサイズモードなら拙者に乗ってスイスイスラスラ進めるというスピード感満載の……」

「誰が体重教えると思う?」

 と、スララを踏み付けた。
 そんなこんなで、私はビッグスラーラーに乗ってアヤカハウスに帰宅するの。

 とにかく、目標だった婚約破棄成功!
 しかし、私の仕事は増えた!
 スズカの婚約破棄したら、私が今度は狙われる立場になるとはね。

 あの女……計ったな!

(悪役令嬢を演じてたのに、結局コッチになすりつけただけ? 婚約破棄が成功しても私が王子から外交の交渉しなくちゃならないなんて……)

 しかも、悪役令嬢モードから抜けるのも一苦労ね。言葉使いや、雰囲気を戻すのも辛い。てか、悪役令嬢だから戻らないのが普通なのかな?

「ま、いっか。ねぇ、スララ。私は勇者様のパーティーになるのが夢だから、勇者様を見つけたらすぐ報告するのよ?」

「ハ、ハヒ! 勇者を見つけたら報告すればいいのですね? データをインプットしてくれれば発見しやすくなりますです!」

「勇者様は私の大切な人だからね。もし、変な女といたらミンチにするのよスララ。でないと私がスララを……」

「今日はハンバーグにしましょう! 勇者ハンバーグです! ハヒ!」

 そんなこんなで、アイヅ王国との外交関係が結ばれてバクーフ王国に繁栄をもたらしたの。

 私も早く勇者様を見つけて、トゥルーラブを心に宿してガールズラブの呪いを解かなくちゃね!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

織田信長の妹姫お市は、異世界でも姫になる

猫パンダ
恋愛
戦国一の美女と言われた、織田信長の妹姫、お市。歴史通りであれば、浅井長政の元へ嫁ぎ、乱世の渦に巻き込まれていく運命であるはずだったーー。しかし、ある日突然、異世界に召喚されてしまう。同じく召喚されてしまった、女子高生と若返ったらしいオバサン。三人揃って、王子達の花嫁候補だなんて、冗談じゃない! 「君は、まるで白百合のように美しい」 「気色の悪い世辞などいりませぬ!」 お市は、元の世界へ帰ることが出来るのだろうか!?

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

処理中です...